■春閼伽(5)

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千里は珠洲市・内浦側(*6)の海岸沿いに33m×55mほどの土地を買うと、そこの内側30x30ほどの部分の地面を深さ3mほど取り除いて、鉄板を二重にして山留めし、底にも板を敷いて水槽化した。鉄板を二重にしたのは、最近珠洲市は地震が続いているので地震でずれても大丈夫なようにである。底も二重にしている。
 
その上に鉄板とコンクリートのふたをかぶせ、ダンパーも敷いてその上に30m四方の倉庫を建てた。屋根には太陽光パネルを並べ電気を起こす。そしてここに雨水及び海から取水した海水を淡水化したものを溜めた。太陽光パネルの電気で淡水化装置を動かす。
 
倉庫にはペットボトルの水、缶詰御飯、ツナ缶、スパム、レトルト食品、お米(無洗米)、紙食器、トイレットペーパー、おむつ、生理用ナプキン、赤ちゃん用ミルク、毛布などを大量備蓄した。倉庫内にも大きな水槽を設置して地下水層の水を浄水したものを溜めた。また給水車も用意した。余った水はタンクローリーで運んで、畑に撒いたり、飛行場の散水に使ったり、人形美術館の掘に入れたりした。備蓄品の一部は人形美術館にも置いた。また余った電気はウィングライナーに供給した。
 
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千里は同様の施設を輪島市の中心部に遠くない海岸そばにも作った。
 

(*6) 能登半島では“外側”の日本海側を外浦、“内側”の富山湾側を内浦という。
 

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岡安は大学で坂井マミちゃんに声を掛けられた。
「俊ちゃん、アンノンに載ってたね」
「え?」
「まだ見てなかった?」
と言って彼女は女性ファッション誌を見せてくれた。すると“街角で見かけた浴衣美人”というタイトルで多数の浴衣女性が映っているが、その中にしっかり俊夫の浴衣姿が出ていたのである。確かにあの時
「雑誌に載せてもらうかも知れません」
と言われたけど、こんな有名雑誌だとは思わなかった!
 
「可愛いね」
と女の子たちが言っているが、俊夫も自分で「可愛い!」と思ってしまった。
 
しかしこれで俊夫が女物の浴衣を着たことは多くのクラスメイト女子の知る所となっちゃった!ぼく女装癖があると思われちゃう!(今更何を?)
 
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「スカート穿いてる所は見たことあったけど浴衣は凄く可愛い」
「俊ちゃんって、撫で肩だから浴衣が似合うよね」
などと女の子たちは言っている。
 
あれ〜?ぼく金沢でもスカートで出歩いたことあったっけ?
 
(やはり今更だったみたいね)
 

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8月5-6日(土日)、青葉は『ミュージシャン・アルバム』の取材を行った。今回は5日にクレシェント、6日はファレノプシスである。
 

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「クレシェントさんでーす」
「こんにちわー」
 
「クレシェントって三日月という意味だよね」
「はい。満月に向かって成長していくユニットということで社長が名付けました」
「なるほど」
「でも体型も満月に向かって育っていくんだな、ってお笑いの人に言われました」
「健康的でいいと思うよ」
「そうですか〜?」
「過度のダイエットはよくないよ。§§ミュージックはダイエット禁止」
「へー」
「でも毎朝2kmのジョギングがあるし、歌とダンスのレッスンで鍛えられるから太るのは無理」
「厳しそう」
「雨の日でもジョギングできるように屋根のあるジョギングコースが作られてるし」
「凄いですね」
「まあ痩せこけた身体でまともな歌が歌えるわけ無いしね」
「ああクラシックの歌手とか堂々とした体格の人多いですね」
「この世界はしっかり食べてないと生きていけないよ」
「そうかも」
 
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「アルバム作ってツアーもするとか」
「はい。コロナも落ち着いて来たから全国7ヶ所ツアーを。でも私たちコンサートやるほど今までにリリースした曲が無いんです。それでツアーの前にアルバム出そうというので、鋭意練習中です」
「頑張ってねー」
 
この収録時点では練習以前にまだ曲もできていないのだが、放送日の予定で話している。
 

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翌日はファレノプシスを迎えた。
 
「ファレノプシスさんでーす」
「わーい」
と全員手を振っている。
「ファレノプシスさんって長いですよね」
「グループとしては長いですけど、もうオリジナルメンバーは居なくなっちゃいました」
「ああ、そういうメンバーが入れ替わっていくグループってあるね」
「分裂したり合併したりするケースもある」
 
「洋子ちゃんは以前フラワーサンシャインに居ましたよね?」
「よく言われるんですが、私がいたのはフラワーライツなんです」
「あ、ごめんなさい」
「あのあたり複雑だよね」
「フラワーライツは事務所が倒産して活動停止したんですよ。それでメンバーの中のボーカル3人が別のグループアイドルや集団アイドルに移籍したんです。ところが残りの5人がまとめて♪♪ハウスさんに拾ってもらって新たなボーカル2人を加えてフラワーサンシャインが結成されたんですよ」
「複雑だね」
「でもフラワーライツは1000枚以上売れたCDが1枚も無かったのにフラワーサンシャインは既にゴールドディスク3枚出してるんですよね」
「すごいね」
「ファレノプシスもゴールド出したことないね」
「うん。最高売れたので3万枚だったはず」
「知名度はあったのにね」
「どうしたらヒットするのかって全然分かりませんね」
「うん。幾つかこうやってもヒットしないという法則はあるけどヒットする法則は誰も知らない」
 
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ケイが補足した。
「30年くらい前に『こういう曲を作れば売れる』と言ってマニュアルを作ってそれに沿って作曲家さんたちに曲を書かせた事務所があって、一時期はそこのアーティストがヒットチャートの上位を独占したけど、全部似たような曲ばかりだから、飽きられるとみんな売れなくなった」
「当然すぎる結果だな」
「究極を求めるのなら全部ベートーヴェンの第九になっちゃう」
「少なくともポピュラー音楽では個性が大事だよね」
 
「ベストアルバム出すんだって?」
「ええ。オリジナルメンバーが残ってないからみんな初期の頃のリリース曲は知らないんですけどね。ファンクラブの人に投票してもらって上位の曲を今のメンバーで歌います」
「新しいメンツで歌えば新たな魅力が出るかも知れないよね」
「そうなりたいですね」
 
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8月7日(月)、青葉は再び多江・リルと800m自由形で競争した。
 
水着はやはり一般用の水着だが、今回は飛び込み台を使った。競争に参加するのは前回と同じ、金堂多江、竹下リル・ハネ、田村真美、南野里美、それに青葉(R)の6人である。
 
号砲で一斉に飛び込む。前回は青葉は水中スタートだったので出遅れたが、今回は飛び込み台を使ったので、最初は横一線である。しかし向こう側でのターンの頃には真美と里美が遅れ、こちらに戻って来てからのターンの頃はハネも遅れ、その後は多江・リル・青葉がほとんど横一線でこの3人の勝負になる。
 
そしてゴールではまた、多江、リル、青葉の順だったが、これは機械計時によるものて、見た目ではリルと青葉は同着に見えた。ただ、3人は身長が、多江183cm, リル176cm, 青葉161cm と差があるので、その分先にリルがゴールタッチできたものと思われた。
 
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だからリルは
「実質負けです。身長分の差が付けられなかった。水着のハンディもあるし」
と言った。
 
「でも身長まで含めての競争だから」
「来月もやりましょう」
「うん。来月は認定水着で」
「はい。社会人選手権(11月)に向けての本格勝負ですね」
 

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一方、青葉(L)はTIF(*7) のメンバー3人に協力を求め、次のようなことをしてもらった。
 
・四厘免許を持っている子が深夜に四厘車を運転して、山環(金沢外環状道路山側)入口の今町JCTから山環・加賀産業道路・国道8号を通り、片山津ICの入口まで行ってもらう。
 
・ひとりは後部座席左側に乗って、ずっとビデオカメラで沿道を撮してもらう。
 
・もうひとりは助手席に座り、時計を見ていて、何時何分というのを00秒になるタイミングで発音する、交差点ではその名前を読む。車が停まったり動く時は「停止」「発進」などと言う。
 

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(*7) TIFは明恵や真珠が参加しているバイク好きの男の娘集団。元々女の子の集団から別れた(追い出された)経緯から、一部同情して付いてきた女の子もいる。だから加入条件はスカートを穿けること。
 
(設立時に「どうしよう?私スカート持ってない」と言った女の子がいたとか:男の娘たちがプレゼントしたが本人は「女装してるみたい」と言っていた「女装はトレンドだよ」「ちんちん取って女の子に性転換するのもお勧め」「ちんちん取ったらオナニーできないじゃん!」「君いっそボーイズに入る?」)
 
元々男の娘が分離されたのは本当は男のくせに男の娘のふりしている“偽装男の娘”排除のためなので、性転換した場合は女の子集団に移籍可能だが、留まっても良い。しかし“居心地の良さ”から留まる人が多い。
 
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“卯辰山麓男声合唱団”は彼らと親密な関係にある男の子たちの集団TIBのメンバー。
 

青葉は撮影してもらったビデオをチェックして、地図の上に印を付けた。そして夜中、明恵とふたりで、その場所に行ってみた。ここは産業道路より先、国道8号にはいっていた。そこにはふたりが来るまでコンビニがあったのにふたりが来た途端消えた!
 
ふたりは車を駐めてコンビニが見えていた場所に歩み寄る。青葉の眷属・海坊主が、一匹のムジナを捕まえた。向こうは怯えている。
「お前は鉄砲で撃って煮て焼いて食ってやろうか」
「ごめんなさい。もうしません」
「誓うか」
「はい。ですからどうか命だけはお助けを」
「だったら今度だけは見逃してやる」
「ありがとうございます」
 
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青葉はこのムジナを手先に使って、男の娘の改造を楽しんでいた“主犯”が居る気がしたが、ムジナを捕まえればその“おかた”も悪戯はやめるだろうと思い、放置することにした。
 

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金沢市内の某神社。“姫様”はご機嫌斜めであった。
「わらわの密かな楽しみを」
と文句言っているが、青葉のバックにいる大物の神様(ゆう姫)にはかないそうにないので、悪戯はやめることにした。
 
その時、幼稚園生くらいの可愛い男の子が来て絵馬を奉納したが、彼は絵馬にこう書いた。
「おんなのこになりたい」
 
「そうか、そうか。願いを叶えてやろう」
と姫様は楽しそうに言った。
 

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男の子は翌朝、起きてからトイレに行った時、びっくりした。
それで母親のところに行って言った。
 
「おかあさーん、ぼくちんちんなくなっちゃった」
「へ?見せて」
母親が見ると、ちんちん・たまたまが無くなり、代わりに可愛い割れ目ちゃんができている。
「うーん」
と母親は悩んだものの
「女の子用のパンツ買ってあげるね」
と言ってしまむらに連れて行き、女児用ショーツを10枚買ってあげた。スカートも買った。そして男の子用のブリーフは全部捨ててしまった。
 
「あんた、これからはトイレは立ってできないから座ってしてね」
「うん」
スカートを穿いた彼は嬉しそうであった。
 

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彼は保育園の水遊びでは女の子水着を着けた。また彼は8月末には美容室に連れて行かれ、女の子らしい可愛い髪型にしてもらった。
 
彼は元々女の子らしい性格だったので、保育園では普通に女の子として受け入れられてしまった。
 
ただ、保育園の先生は母親に事情を尋ねたので、母親は「朝起きたら女の子になっていた」と答えた。保育園の先生が病院の受診を勧めたので連れて行ったが、卵巣や子宮もある完全な女性であると診断された。そして医師の勧めで裁判所に性別訂正を申請した。それで彼は法的にも女の子になったのである。
 

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3ヶ月ぶりにやってきた父親は訊いた。
「なんであいつスカート穿いてんの?」
「朝起きたら女の子になってたのよ」
「はあ?」
「病院でも診てもらったけど、ちゃんと卵巣とかもある立派な女の子だって。性別が変わるのは12歳くらいまではたまに時々あることらしいよ。本人は元々女の子になりたがってたから喜んでる」
「ふーん。そういうことがあるんだなあ。でも重美とも男の子ばかりだったから、娘も欲しかったよ」
「女の子の和服着せて七五三したいから買ってくんない?」
「じゃ6日すぎに」
 

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千里は、作戦に協力してくれた男の娘3人に言った。
「君たちお礼に本当の女の子に変えてあげようか」
「いえ結構です」
「女装してオナニーするのがいいんです。ぼくパンティ穿かないと立たないから」
「スカートの中に顔を入れてフェラしてもらうのが凄く気持ちいいんです」
「ちんちん切られる妄想するのが最高に興奮するので」
 
まあ本人たちがそれでいいのなら、そのままでということにした。
 

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岡安はトイレのことで悩んでいた。最近買い物とかに行っている時、トイレで男子トイレに入ろうとすると「君こちら違う」とか言われて追い出され、それで女子トイレに入ると、何のトラブルもなく利用できる。それで彼はここのところ、ずっと女子トイレを使っているのである。
 
(何か問題あるんだっけ?)
 

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和栄はバス会社の人から金沢観光のガイドブックを渡された。
「君、これを暗記してくれない?」
「はあ」
「10月までに覚えてもらえばいい。11月に大阪の女子高の修学旅行があるけど、ガイドの頭数が足りないんだよ」
「ははは」
「結婚して退職したOGに頼もうかと思ってた」
「だいたい覚えてもらえば何とかなる。珠姫のご成婚の1601年を間違って1602年と言っちゃってもバレないから」
「あははは」
 

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D製薬は珠洲市でドローンの実験をおこなった。月子が、薬の代わりにパンと水のペットボトルを載せたドローンを内浦側にある珠洲市役所から離陸させ、FPVで飛行させて、外浦側の大谷公民館に白線で描いた着陸場所に着陸させると、大きな歓声と拍手が起きていた。
 
「結構遠くまで電波が届くものなんですね」
「このドローンはラジコンみたいに電波で制御してるんじゃないんです。携帯の通信網を使って制御しています。ですから、携帯電話の通じる所なら飛べます」
「なるほどー」
「更に違法にはなりますが、携帯の圏外になる場所でも自律して飛行して設定した目標地点まで飛ぶ機能も持っています。この機能はウクライナ戦争でも実績があります。ただしこれをやると日本では国の法令に違反してしまうんですよ」
「残念ですね」
 
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珠洲市を含めて能登半島は圏外の場所がけっこうある。auしか通じない場所、docomoしか通じない場所もあるのでスマホを2台持ち歩く人も居る(ソフトバンクは全滅)。また災害などにより圏外の場所が増えることも予測される。
 
(翌年1月の地震では基地局の非常電源の燃料が切れそうになり、あやうく広い地域で携帯が不通になりかけた:ギリギリで燃料補給が間に合った)
 

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霊界探訪編集局では彪志に、現在通行禁止になっているY温泉とF温泉の間の遊歩道の様子をドローンで撮影できないか尋ねてみた。彪志は技術的には可能だが、県とかの許可が必要であると言った。それでテレビ局が県の土木課に打診してみた所、むしろ土木課が様子を知りたいと言った
 
それで石川富山両県の土木課の人が見ている中で彪志は遊歩道に沿ってドローンを飛ばしてみたのである。
 
すると通れそうな部分も結構あるが、通行不能であったり、更に崖崩れが起きそうで危険な場所もかなりあることが判明した。土木課の人が地図にマークしていた。撮影した映像のコピーも渡した。
 

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携帯圏外になって違法操作になってしまう事態を避けるため、千里はあらかじめ九重達に基地局を途中に設置させておいた!
 

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