【女子中学生・秋の嵐】(1)

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万一の場合のため、カチューシャ!(*20) の発射準備をしてスタンバイしていた、きーちゃんは、カチューシャの片付けと撤収を弟の天野香山(あまの・かぐやま)に頼むと、千里たち2人は自分のトリビュートに乗せ、2人を送って、村山家のあるC町へ向け車を走らせた。
 
「何か凄いものがあった気がする」
「気のせい、気のせい」
 
(*20) カチューシャは多連装ロケット砲。ロシア軍の装備だが管理が適当なので、わりと外部に横流しされており、ゲリラがよく使用する。本来はZIS-157/ZIL-157トラックに搭載して使用する。
 

香山は基本的に千里関連のプロジェクトにも、霊的な処理のグループ(小登愛の死去に伴い桃源が事実上のリーダーになった。“シュテントウジ”と称する。後述)にも関わっていないが、きーちゃんからすると姉弟で使いやすく、大型自動車を運転できるので徴用した。ちなみに“かぐやま”という名前は、しばしば“かぐや”と聞こえてしまうことがあり、名前だけ聞いて女性と誤認されることもある。しかし本人はあまり女装には向かない外見である!
 
「あんたがもう少し優男(やさおとこ)なら女の子に変えてあげたいけど」
「姉貴最近男の娘を100人女の子に性転換したという噂あるけど」
「どっからそんな根も葉もない噂が」
 
変えたのは最終的に男の娘に戻した雅海・司、既に性転換していた真広、更に“千里から頼まれて、これから性転換する予定の子”を入れても7人のはず、などときーちゃんは考えていた。
 
(つまりこの物語で描写されてない“犠牲者”が3人居る:なお当初の目的だった青龍は「せいちゃん女の子になりたいよね。女の子に変えてあげるよ」と言ったものの「まだ100年くらいは男を楽しみたい」と言ったので保留中!)
 

きーちゃんは運転しながら千里に言った。
 
「あのままペニスも切り落とせば良かったのに」
 
「まあ執行猶予で」
 
「でもあんたホントに強いね」
「向こうが油断してたしね」
「千里は大したことないように見えるから、相手も最初は100%にならない」
「ま、それはあるかもね」
「でもきっと100%の千里を見た人は、この世に生きてない」
「それは恐い話だ」
 
「私は千里さんが負ける訳無いと思ったから安心して見てましたよ」
とコリンは千里の隣に座って言っていた。
 

P大神にもらっているP神社深部の1室(ここにはどうやっても勾陳は侵入できない)で、きーちゃんからもらった“臓器ライブ保管キット”に入れた“臓器”をトントンと叩きながら千里は尋ねた。
 
「おい、お前の真名(まことのな)は何だ?正直に答えないと電源を抜くぞ」
 
(脅迫している!)
 
“臓器”が答える。
 
「へー。本人から読み取れる真名とは全然違う。なるほどねー」
 
それで千里は紹嵐光龍の真名が、虚空やH大神が真名と思い込んでいた“大和光貴”ではなく実は“浮羽小碓”であることを知ったのである。彼の真名を知っていたのは彼の母親と、彼が幼い頃に仕えた厩戸皇子(通称聖徳太子)のみであった。彼は厩戸皇子の死後、1382年間も真名を秘匿し続けたが、痴漢を働いたせいで、千里にバレることになった。つまり彼は“最初の主人”と“最後の主人”にだけ真名(まことのな)を知られたのである。
 
なおこの後、勾陳は様々な?千里に30回以上去勢されることになる!(懲りない人である)
 

(*19) 千里はこの刀を見て、刃文が刃先に迫る、いかにも切れそうな刀だと思ったが、これが実は村正の最大の特徴である。
 
鋼(はがね, steel)とは、鉄と炭素の合金であるが、一般に炭素含有量が2%以下のものを鋼(はがね)と言い、それより多いものは銑鉄(せんてつ。別名“ずく”)と言う。銑鉄は南部鉄瓶や文鎮の類い、農機具などの“鋳物”の材料に使用される。
 
日本の伝統的な製鉄は、国内で容易に入手できる砂鉄を原料とするが、特に日本刀の材料になる“玉鋼”(たまはがね)は、真砂砂鉄という純度の高い砂鉄から生成される元々炭素濃度の低い良質の鋼てある。(普通の砂鉄は赤目砂鉄)
 
基本的に鋼は、炭素含有量が高いほど、そして高温状態からの冷却速度が速い(焼き入れ)ほど、硬くかつ脆くなる。鋼は硬いほど脆く、丈夫なほど柔らかい。
 
日本刀の製造過程では、下処理の段階で、硬い方から順に、刃金、側金、棟金、心金、という4種類の鋼を生成する。これを↓のように組み合わせて1本の刀にする。
 

 
ここで重要なのは、刃先の部分には、刃金(はのかね)と呼ばれる最も硬い材料を使うこと、そして刀身の中心部分には、心金(しんがね)といって最も丈夫な材料を使うことである(ここに非鉄金属を使うものもある)。この組み合わせにより、日本刀は「よく切れて折れにくい」という本来相反する性質を併せ持つことができる。
 
心金の反対側には棟金(むねがね)といって、心金よりは硬い材料を使い、刀身を守る。この刃先と反対側の部分を棟(むね)あるいは峰(みね)といい、ここで相手を打つのが“峰打ち”である。時代劇では峰打ちなら平気みたいな“お約束”になっているが、実際には鋼鉄で打たれれば、充分死ぬ可能性があり、刃先で斬るよりは少し生存可能性が高い程度に考えておいたほうがよい。金属バットで殴ると充分人が死ぬことを考えてもらえばよい。
 
勾陳は丈夫なので、峰打ちあるいは金属バットで100発殴っても死にはしない。むろん頭を殴られれば痛いし、瞬間的にはクラッと来る。
 
日本刀を作る場合は、最初に、刃金・心金・棟金を繋いで“芯”を作り、それを両側から側金(がわがね)で挟み込む。側金は棟金よりは硬く、刃金よりは柔らかい(=丈夫)な材料である。そして、この側金と刃金の間に研磨によって現れる模様が刃文(はもん)である。
 
村正はこの刃文が刃先のすぐ近くにあり、切る部分のそばまで、丈夫な材料で保護されていることを示す。つまり極めて折れにくいのが村正の特長である。
 
(上記の図では刀身が六角形になっているが、これは流派により、5角形や7角形にするものもある)
 

千里Gが真剣で素振りをしているので、起きてきたVは
 
「また危ないものを振ってる」
などと言ったのだが、振っている刀がいつものと違う気がした。
 
「それ新しい刀?」
「凄く古い刀」
「へ?」
「500年ほど前の千子村正(せんご・むらまさ)の作品だよ。美しいよ」
と言って、Gがその素振りしていた刀を見せる。
 
「なんかこの刀恐い」
と千里Vは言う。
 
「この刀を持つと、これで人を斬ってみたくなるんだって」
「危ない刀だなあ」
「心の弱い人は絶対持ってはいけない刀だろうね」
「だから妖刀と言うのかな」
「そうだと思うよ」
と言って、Gはまたその村正で素振りをしていた。
 
「しかしこれ清香には絶対持たせられないなあ」
とGは素振りしながら言っている。
 
「それまさに“猿猴(えんこう)に刃物”ってやつね」
とVは言った。
 

8月28日(土).
 
司の携帯に、**衣料・留萌ジャスコ店から
「お待たせしました。冬服ができました」
という連絡があったので、司は半袖ポロシャツにレディスジーンズという中性的?な格好で取りに行った(本人が中性的と思っているだけで実際には女子にしか見えない)。
 
「9月に入ってからになりそうだったのですが何とか9月になる前に間に合いました」
「ありがとうございます」
 
と言って受け取る。試着してみるが、ピッタリである。お店のお姉さんがウェストの所や首の所などに指を入れたりして確認するが
「大丈夫のようてすね。ウェストはアジャスターで±5cm程度までは調整できますので」
「分かりました」
 
「このまま着て帰られます?」
「いえ。元の服に戻ります」
「今日は少し気温が高いですもんね」
 
ということで、司はここに来た時の服装に戻り、冬服セーラー服は持参のトートバッグに入れて持ち帰った。
 

帰宅すると母が「何か買ってきたの?」というので正直に
「夏服セーラー服を作ってくれた人が冬服も作ってくれたの受け取って来た」
と言う。
 
「わあ。着てみて」
と言われるので着てみる。
 
「おお、可愛い、可愛い」
と言って母が記念写真を撮ってくれた。
 
「じゃ月曜日からそれで通学するのね」
「そんなの恥ずかしいよぉ!」
「今更という気がするけど」
 

8月30日(月).
 
夜勤から戻り、午前中寝ていた灰麗は、郵便屋さんの音で目を覚ました。見るともうお昼の12時である。ベッドに横になっている裕恵に
 
「お昼何か作るね」
と声を掛けてから、郵便受けを見る。
 
封書が来ている。
 
裁判所!??
 
何だっけ?何かの強制執行通知だっけ?と焦って(←簡単に架空請求詐欺に引っかかりそう)開封する。
 
するとそこにはこのような文面が書かれていた。
 
「申立人の性別を男から女に訂正する。あわせて名前を配次からハイジに変更する」
 
えっと・・・どういう意味だっけ??
 
考えても分からなかったので、灰麗は取り敢えず、お昼御飯に“マルちゃんしょうゆ味ラーメン”を作り始めた。1袋分を鍋で作って玉子は2個落とす。そして2つの丼に取り分ける。
 
「御飯できたよ」
と呼ぶと、裕恵が起きてくる。
「ありがとう」
と言って、食べ始める。
 
「何か郵便来てたの?」
「うん。これなんだけど、どういう意味だろう?」
と言って、裁判所からの手紙を見せる。
 
「つまりハイちゃん、法的に男から女になったということでは」
「え?そうなの?」
「7月16日から法的な性別が家庭裁判所に申請すれば変更できるうようになった(←少し勉強した)から、ハイちゃん申請したんでしょ?それが認可されたということだよ」
 
「うっそー!?」
 
私、そんな申請した覚え無いのに。それに名前をハイジに変更って何それ〜!??私アルプスに行かなきゃ!???
 

8月31日(火)の明け方。
 
公世はまた夢を見ていた。夢の中にまたまた千里が出て来て
「公世ちゃん、とっても女の子になりたくなってるよね。女の子に変えてあげるね」
と言った。
「別になりたくない。女に変えないで!」
と公世は千里に言ったものの
「じゃ、また明日」
と言って千里は去って行った。
 
そこで目が覚めた。
 
「夢か。何かぼく最近この手の夢をよく見るなあ。夜中にトイレに起きた時、女の子の身体になってる気がすることよくあるけど、朝起きてみたら、ちゃんとちんちんあるから、あれ多分夢なんだろうなあ。でも、やはりぼく自身の中に本当は女の子になりたい願望があるのかなあ」
 
などと公世は心が揺らぐ思いがした。
 
取り敢えずトイレに行ってくる。
 
そして、おしっこの出方がいつもと違うことに気付く。
 
え?まさか。
 
公世は自分のお股を覗き込んだ。
 
うーん・・・・。
 
公世は自分の頬をつねってみた。
 
痛い!
 
「これ夢じゃないの〜?困るよぉ。これどうしたらいいの?」
 

部屋に戻った公世はとりあえずブラジャーを着け!黒いアンダーシャツの上にいつも着ている“ワイシャツ”を着た。
 
「あれ〜。こんなに胸があったらワイシャツ入らないんじゃないかと心配したけど、ちゃんと入った。良かったぁ」
 
パンツも今日はボクサーが穿けない気がして、ショーツを穿いた。ピタリとショーツが股間にフィットする感じは悪くない気はする。
 
それで学生ズボンを穿いてから居間に行って朝御飯を食べる。
 
「あら、今日はブラウスに着替えてから出て来たんだ?」
「ブラウスじゃなくてワイシャツだけど」
と公世が言うと、母と姉が何か視線を交わしていた。
 
それで出掛けたが、
「今日は体育がなくて良かった。部活は休もう」
と思った。
 
「でも明日はどうしよう?身体測定まであるのに・・・」
と公世は悩みながらバスに乗って学校に向かった。
 

公世はその日(8/31)、本人としてはごく普通の学校生活を送った。でも隣の席の祐川さんが、やたらと自分を見るのは何だろう?と思った。
 
トイレに行く。身体の構造上!小便器が使えないので個室に入るが、公世が個室を使うのは、栃木から戻ってきた後ずっとなので(最後に小便器を使ったのは1学期の終業式の日)、公世としてはもうこれが普通になりつつある。便座に座り、おしっこをするが、何かもうこのおしっこの仕方でいい気がした。ちんちんあると、おしっこが、たまにうっかり外に飛び出してしまうことがあるけど、この身体の構造だとまっすぐ下に落ちていくので失敗が無い。それにおしっこする時のストレスが凄く少ない気がした。
 
昼休みに沢田(玖美子)さんを捉まえて言った。
「沢田さん、今日ぼく何か疲れが溜まってるから部活休むからと言っといて」
「分かった。無理しないでね」
「うん。ありがとう」
 
もっとも彼は、剣道部で、男子部員とはほとんど対戦してない。男子部員の中に公世とまともに対戦できるメンバーが居ないのである。それでたいてい、女子の方に行って、沙苗や玖美子と手合わせしていることが多い(千里には全くかなわないので逆の意味で練習相手にならない)。
 
それで公世は男子剣道部員のはずが、最近事実上女子剣道部員のような感じになってしまっている。それでその練習風景を見て
「やはり工藤さんは女子剣道部に移籍したのか」
と思っている人も多い。
 
そういう事情なので、公世も休む場合、男子の竹田君に言うより、玖美子に言っておいたほうが適切、という状態になっている。
 

公世と沢田(玖美子)さんが話していたら、そばを新田(優美絵)さんが通り掛かり、沢田さんと接触する。
 
「あ、ごめん」
 
と新田さんが言ったが、沢田さんはそれで一瞬倒れそうになり、公世の方に倒れかかってくるので、公世がとっさに彼女の身体を支えた。
 
「ありがとう」
「いやいや」
 
新田さんがあらためて「ごめんねー」と言っていた。
 
公世は「今沢田さんの身体がぼくの胸に接触したな」と思った。
 
(むろんそれを狙っての玖美子と優美絵の連携プレイ!)
 

この日、公世の居ない所で、数人のクラスメイトが話し合っていたことを公世は知らない。
 
「工藤さん、かなり女性化が進んでるみたい」
「トイレはいつも個室使ってるんだよ。たぶんチンコ取ったんだと思う」
「近くに寄ると、女の子みたいな甘い香りがするんだよね」
「おっぱいはAカップくらいある。触って確かめたから間違い無い」
 
「最近、キャミソール着てること多いみたいだよ」
「工藤さんが着てるの、ブラウスだよね」
「うん。ワイシャツではなくブラウスを着ている。前立てが付いてるからボタンの右前・左前が分かりにくいけど」
「そもそも、袖口の形状とか、衿の先端の形状とかが明らかにブラウス」
 
「多分近い内にセーラー服通学に切り替えるつもりじゃない?」
「セーラー服自体はお姉さんからもらったのを持ってるらしいんだよ」
「トイレも女子トイレ使ってもらうべきでは?」
「実は大会中はずっと女子トイレを使ってたんだよ」
「なんだ、そうなんだ!」
 
「取り敢えず男子更衣室は使わせられないね」
「ほかの男子の前に彼女の下着姿を曝すわけにはいかないよ」
 
(↑既に“彼女”と言われている)
 
「明日の身体測定は書類を私にちょうだい。女子の並びで身体測定した方がいいと思う」
 

その日公世は、夕方4時半頃に自宅に戻った。
 
「あら、今日は早かったのね」
「うん。疲れが溜まってたから、今日は部活休んだ」
「へー。じゃ先にお風呂入るといいよ」
「うん」
 
それで公世は、着替え用のキャミソールとパンティにスウェット上下を持つとお風呂場に行った。脱衣場で身につけていた“ワイシャツ”とズボンを脱ぎ、黒いアンダーシャツ、ブラジャー、パンティを脱ぐ。
 
お風呂に入って身体を洗うが「はあ」と溜息をつく。
 
「明日の身体測定で女の子の身体になってることバレたら、明後日からはぼくセーラー服で通学することになるのかなあ」
などと思いながら、女体を丁寧に洗った。
 
ちなみに公世が使用している石鹸だが
「消臭効果があるから」
 
と言われて、6月に姉から渡された石鹸である。なんか柔らかい感じで少し高そうとは思うものの、散々汗臭いと非難されていたので普通の石鹸から切り替えた(風呂場には現在、母・姉用:ピンク、父・弟用:ブルー、公世用:イエローの3つの石鹸入れが並んでいる)。確かに少し甘い香りがして、消臭効果はあるようである。これを栃木にも1個持っていって使用していた。
 

お風呂からあがり、バスタオルて身体を拭く。キャミソールを着るが
「このキャミソールの感触、嫌いじゃないなあ。何で女の子だけこういう素材の下着を着けるんだろう?」
などと思う。
 
パンティを穿くが、このフィット感がたまらない。これって女の子の身体でなければ得られない感触だ。“よけいな”ちんちんとか玉袋とか付いてたら邪魔になってフィットしないもんね。
 
女の子下着の上にスウェット上下を着て風呂場を出た。
 
取り敢えず夕食までの間に宿題と復習を済ませる。そして夕食後は
「今日は早めに寝る」
と言って、自室に入った。
 

布団を敷いて、電気を消して布団に中に入るが、ドキドキしながら指をあそこの内部に入れ、クリトリスをいじってみる。
 
これほんとに凄く気持ちいい。
 
こんな所をいじることに少し罪悪感もあったものの、公世は「ぼくちんちん無くなったから、これをいじるしか無いよね?」と自己弁護しながらいじっていると、ちんちんでは感じたことのないような、物凄い快感に頭の血管が切れそうな思いがした。(実は7月中旬以来約2ヶ月ぶりの自慰:気持ち良かったのは、むしろそのせいかも?)
 
「女の子になるのも悪くないかなあ。セーラー服、ちょっと恥ずかしいけど、頑張ってそれを着て登校しよう、剣道の道着も白を買ってもらわなくちゃ」
などと思いながら、心地良い到達感の中、公世は深い眠りに落ちていった。
 

(9/1) 明け方、夢の中にまた村山さんが出て来た。
「きみよちゃん、やはり男の娘がいい?じゃ男の娘に戻してあげるね」
 
え?いや、もう女の子でいいけど、と思ったが、村山さんは
 
「じゃ次に目が覚めた時は男の娘だよ」
と言った。
 
え〜〜〜!?戻りたくないよぉ、と思った。
 
そこで目が覚めた。
 
おそるおそるお股を触ってみた。そして溜息をついた。
「ちんちん無くてもいいのにー」
 

きーちゃんは工藤家から離れながら呟いていた。
 
「これでこの子もフラッシュバックで突然性別が変わったりすることはなくなるはず。個人的には公世ちゃんは女の子になってもいいと思うけどなあ」
 
実は真広の症状を聴いた千里が「もしかしたら公世もその突発性性変症候群かも」と言ったので、公世についても、いったん女の子に変えて、再度男の娘に戻してあげたのである。これで男の娘のまま安定するはずである?
 
(実際には公世の場合は、千里Rの無意識な“余計な親切心”が起動した“魔女っ娘千里ちゃん:千里Gold”の悪戯だと思う。でも彼は一時的に女体になったことで開き直りができて、その開き直りの心が彼の実力を120%引き出し快進撃を演出した:ちなみに公世が女子に見えてしまうのは天然であり、千里のせいではないと思う)
 
「でもワイシャツではなくブラウスを着てるのは、少しは女の子になりたいという気持ちが出て来たのかなあ」
などと、きーちゃんは思った。それで“普通のブラウス”も3枚衣裳ケースの中に入れておいてあげた。
 
なお彼のズボンが女子用で、小便器を使えないようだというのも千里から伝えられていたので、お裁縫でファスナーを付け替えてあげた(1本はコリンが作業した)。
 
公世もズボンのファスナーが長くなっているのには気付き、
「これで小便器が使える〜!」
と思った。
 
また“ワイシャツ”が増えているのにも気付いたが
「お母ちゃんが買ってきてくれたのかな」
と思い、ありがたく使わせてもらうことにした。
 
スカートも増えている気がするのは、気にしないことにした!
 

9月1日(水).
 
真広が通う大学で2学期の授業が始まった。
 
真広がライトイエローのブラウスと水色のプリーツスカートという格好で席に座ると
 
「何科の学生さん?」
と声を掛けてきた子がいる。
 
「ぼく杉村だけど」
と真広が答えると
 
「杉村君なの!?女の子に見える!」
「すっごい可愛い髪型」
(昨日美容室に行って来た)
 
「お化粧もきれーい」
(この3日間ひたすら練習した)
 
「ぼく、男物の服を着てても女の子に見えると言われてた」
「それは私たちいつも言ってた」
「とうとう女装に目覚めたのね」
「ぼく女子トイレとか使ってもいいかなあ」
 
数人の女子が顔を見合わせたが
「杉村さんなら女子トイレ使ってもいいと思うよ」
と言った。
 
「むしろ男子トイレの使用を拒否されると思うけど」
 
彼女たちは真広の胸に触りながら
「この胸、本物?」
と尋ねた。
 
「何ならお風呂とかで確かめてみる?」
「もしかしてお股も改造しちゃった?」
 
「目が覚めたら女の子になってたから、まあいいかと思って女の子の服を着て出て来た」
「なるほど。手術の麻酔から目覚めたら、もう女の子の身体だったのね」
と“理解”を示す子がいた。
 
この日、真広はクラスメイトの女子4人(このクラスの女子全員)と一緒にスーパー銭湯に行き、女体を彼女たちに披露して1年12組“女子組”への加入?を認めてもらった!
 
彼女たちからの呼ばれ方も「杉村君」→「杉村さん」→「真広ちゃん」と変化した。
 
翌日行われた、体育の時間の着替えも、彼女たちに手を握ってもらって女子更衣室に入って着替えた。
 
なお真広には昔から「女の子の友だち」は多数居たものの「ガールフレンド」はできたことがない。だから、きーちゃんが想像したように、ガールフレンドから
 
「生理が来ないの」
 
と言われる可能性は全く無い。
 

「あのね、あのね」
と彼女は電話口で言った。
 
「生理がなかなか来なくてね」
「ふーん、そういうこともあるんじゃない?」
 
ぼくなんて一度も生理来たこと無いし。
 
「それで念のためと思って、妊娠検査薬使ってみたの」
「へ?」
「それで陽性だった」
「妖精?」
 
フェアリーがどうした?と思う。
 
「だから産んでいい?」
「ウンデ??」
 
えっと童話作家か何かだっけ??
 
「だから、コーヒンの赤ちゃんよ」
「ぼくの赤ちゃん!?」
 
それって何だっけ!?と頭の中が混乱した。
 
赤ちゃんって、どうやったらできるんだったっけ??
 

9月1日(水).
 
この日はS中で身体測定が行われた。
 
2年1組女子の身体測定票は下記のように出席番号順(?)に並べられた。
 
21大沢恵香→23沢田玖美子→7工藤公世→8祐川雅海→24高山世那→25戸口萌花→26那倉絵梨→27新田優美絵→28原田沙苗→29広川佐奈恵→30風月美都→31村山千里→32矢野穂花→22.琴尾蓮菜(保健委員)
 
雅海の書類は元々は男子の並びに入っているが、毎月の身体測定では、男子保健委員の増田君から女子保健委員の蓮菜に渡され、セナの前に挿入されている。
 
(今月は公世→雅海→セナ、と男の娘3人連続になった)
 
この日の朝、保健委員の増田君と蓮菜は公世に言った。
「今日の身体測定、工藤さんの書類は女子の方に入れておくから、女子と一緒に受けてね」
「そんなことされても困る。ぼくは男だよ」
 
「でも性転換して女の子になったんでしょ?恥ずかしがらなくてもいいよ。最近そういう子多いし、みんなちゃんと理解してるから」
 
なんでみんなこんなに“理解”しすぎるの〜?
 
でも確かにこの学校、そういう子が多すぎない??
 
「性転換なんてしてないよー。ぼくは普通の男の子だし」
 
いや絶対普通じゃない。
 
公世が抵抗するので、増田君と蓮菜が話しあった結果、公世は
 
「他の女子の後で工藤さんを測定するから」
ということになった。
 

それで1時間目の授業の途中で連絡が入り、まずは女子が測定に行く。
 
例によって、雅海は男子制服のワイシャツ(代わりに実際は白いブラウス)とズボンのまま他の女子と一緒に保健室に行き、他の女子と一緒に無地ブラウスとズボンを脱ぎ(女子たちはセーラーブラウスとスカートを脱ぐ)、ブラジャーとパンティだけの姿(キャミソールを着けてる子もいる。そもそもブラ付きキャミソールの子もいる)で列に並ぶ。これで身長と体重を測定された。
 
「雅海ちゃんも女子のセーラーブラウスとスカートで出てくればいいのに」
「恥ずかしいよぉ」
「あるいはもう9月に入ったから、冬服のセーラー服でもいいし」
「うーん・・・」
「雅海ちゃんのセーラー服姿は凄く可愛いという噂が」
「どこからそんな噂が」
 
しかし女子たちは近い内に雅海のセーラー服姿を見ることになる。
 

女子が最後の方まできたところで、蓮菜からの電話連絡で公世は保健室に行き、最後の蓮菜が保健室を出た後、公世が中に入る。
 
「外で待ってなくても中に入ってればいいのに」
と言われたが。
 
それで公世は身長と体重を計られた。
 
ただ男子は通常アンダーシャツまで脱いで上半身裸になるところを公世は「下着は脱がなくていいよ」と言われ、アンダーシャツとパンツという格好で測定された。この時点で公世は
「しまった。うっかり(?)ショーツ穿いて来ちゃった」
と思ったが、ショーツを穿いていることに保健室の先生は何も言わない。それどころか
 
「工藤さん、ノーブラなの?ブラジャーはちゃんと着けた方がいいよ」
などと言われた!
 
公世が保健室を出てから、廊下で待機していた男子たちが保健室に入室した。廊下では蓮菜が待っててくれて
 
「一緒に帰ろ」
と言ってくれたので、公世も
「うん」
と言って、彼女と手をつないで教室に戻った。公世と手をつないだ蓮菜は、公世の手の感触が明らかに女の子の手なので
 
「これかなり長期間女性ホルモンやってるな」
と思った。
 

この日はトイレに行く時も、あらためて沢田(玖美子)さんから
「公世ちゃん、女子トイレに行こう。最初は付き添ってあげるから」
と言われたが
「ぼくは男子トイレ使うー」
と言って逃げるように男子トイレに飛び込み、小便器を使った。
 
「やったぁ!久しぶりに小便器が使えた」
と思った。いつ以来だっけ??
 
それでやっと公世は小便器に復帰することができたのである!?
 

公世が体育の時間に男子更衣室に入ろうとしたら、男子・体育委員の加藤君から言われた。
 
「工藤さん、先生と話し合って、工藤さんの着替えについては、隣の保健室でしてもらうことになったから」
 
それで加藤君が公世を更衣室の隣の保健室に連れ込み
 
「先生お願いします」
と言う。それで保健室の清原先生が
 
「工藤さんは体育や部活の時はこの緑色のカーテン仕切りの向こうで着替えてね」
と言って指示されたので、そこで着替えた。
 
「なんかぼくの扱い、既に男子ではなくなってない?」
と公世は不安を感じた。
 
でもこの日、男子更衣室で着替えていたら、パンツは女の子ショーツを穿いていて、しかもそこに盛り上がりが無いのを見られたし、昨日丸一日ブラジャーを着けていたことから“ブラ跡”も見られて、男の娘疑惑が更に濃厚になっていたと思う。
 

数日後。一部の男子たちの会話。
 
「工藤さんがここ数日、小便器使ってるね」
「工藤さん、手術してチンコ取ったんじゃなかったの?」
 
「取ったのは確実だよ。だって大会の時の身体検査で“間違い無く女子”と診断されたらしいから」
「普通なら北海道代表になって全国5位入賞したら、剣道部の部長になる所をならなかったのも、女子剣道部に移動予定だかららしいよ」
「そういうことだったのか。なんで竹田君が部長なんだろうと思った」
「実際、工藤さんは毎日女子たちと一緒に練習してるよ」
「やはり女子剣道部に移籍したんだ!」
 
「工藤さんの穿いてるズボン見ても、股間に盛り上がりが無いから、間違い無くあれは女子の股間になっていると思う」
「あ、それは俺も思った。工藤さんのズボンには盛り上がりが無い」
「そもそも工藤さんが穿いているズボンは女子用だと思う」
 
「じゃどうして小便器使えるわけ?」
「その件でさ、ちょうど男子トイレで花和君に遭遇したから訊いてみたんだよ。そしたら、チンコが無くても、小便器が使える道具があるんだって」
「じゃ花和君そういうの使ってるの?」
「そうらしい。彼の家は貧乏だから、チンコ付ける手術を受けるお金か無いんだって。だから高校卒業してお金を稼いで手術代貯めるまではそれで乗り切ると言っていた」
 
「へー」
 
「要するに、チンコの代わりに、小便を導くホースを女子のおしっこが出てくる所に取り付けちゃうらしい。STT(*21) とかいうらしいよ」
 

(*21) きっとSTPの聞き間違い。一般的には FUD (Female Urination Device 女性用排尿器具) というが、FTMの当事者たちの間では STP (Stand To Pee 立ち小便(用具)) という言い方が広まっている。
 
FTMの人たちはこれを“パック”(股間に膨らみを持たせる詰め物)に使用するアイテム(疑似ペニスなど)の中に通して使用する。すると、男子トイレの小便器を使用している時に横から覗かれても、ちゃんとペニスからおしっこしているように見える。ただしこのような用途に使えるFUDはある程度形状が限られるし、個々人の体型に合わせた微加工が必要になる場合もある。
 
そういう訳で、留実子は多数の男子から“チンコ使って小便器使ってる”場面を覗かれて目撃されており、留実子に実際はチンコがあるというのは、多くの男子たちの信じる所である(大会などには睾丸が無いから女子に出ていいのだろうと思われている)。
 

「なるほどー」
「それを取り付けてれば、女子でも立って小便できるらしいよ」
 
「じゃ工藤さんもそれを使っているのか」
「だって工藤さん、チンコ取って、女子と医学的にも認定されたんだから、そういうの使うしか小便器は使えないよね」
 
「でも無理して立ってしなくても、個室使えばいいのに」
「男子トイレは個室が1つしか無いからじゃない?」
「だったら個室が空いてたら、そちら使えるよと言ってあげようよ」
「でもいっそ女子トイレ使えばいいんじゃない?」
「きっと衣替えになってセーラー服で通学し始めたら女子トイレに行くんじゃない?」
「ああ、なるほど」
 
「今日なんて前立ての無い普通のブラウス着てるもんね」
「うん、見た見た。きっとブラウス着るのが最初は恥ずかしかったから、ボタンの付き方が分かりにくいタイプで少し慣らしたんだよ」
「じゃセーラー服への切り換えは時間の問題だね」
 

9月4日(土).
 
“天野道場”にその日、清香が来ると、千里が
 
「師範代を雇ったから」
と言う。
 
その男性の顔を見た清香は携帯を取り出して言った。
「ねぇ。警察に通報していい?」
「俺、何もしてないぞ」
「いや、絶対痴漢かレイプしてるような顔してる」
 
すると千里が言う。
「悪いことした罰に去勢したから、今は比較的安全だよ」
 
「ああ、去勢したんだ?」
「1年間の限定だけど」
「それは限定ではなく永久に去勢すべきだ」
「勘弁してよ〜」
 
「それでも絶対にこいつと2人きりにはならないようにしてね。必ず、私か忌部さんがいる状況にして」
「分かった」
「悪いことされそうになったら、正当防衛で首を刎ねてもいいから」
と千里。
 
「女子に悪いことしようとしたら、私が射殺しますから」
と忌部さんがライフルを見せる。
 
「こいつの寿命は残り数ヶ月と見た」
と清香は言っていた。
 

しかし対戦してみると勾陳がなかなか強いので
「あんた結構やるね」
と清香も言い、勾陳も
「お前もかなり強いな」
と言って、清香のことが気に入ったようであった。
 
勾陳は強い人が好きである。
 
「へー。四谷さんというの?腕前は六段くらい?」
「俺は101段だけど」
「東京タワーほどではないな。あそこの階段は600段だったはず」
などと言われている。
 
「だけど実際101段を取るには何年掛かるんだっけ?」
と柔良が玖美子に訊く。
 
玖美子は答える。
「二段を取るのに初段から1年、三段取るのは二段から2年、四段を取るのに三段から3年だから、n段を取るにはn−1段を取ってからn−1年(*22). つまりn段を取るには、初段を取ってからΣ(i=1;n-1) i 年の経過が必要という計算になるから、n(n-1)/2 だよ。n=101なら、101×100÷2 = 5050. 13歳で初段を取ったら最速で5063歳」
 
「5063歳には見えないな」
と清香。
「彼は1430歳だよ」
と千里が言うと、勾陳がギクッとしている。
 
「1430歳で取れる段位は13歳で初段を取ったとして n(n-1)/2<=1417を解いてn<= 0.5+√2834.25 = 53.7 つまり53段までしか取得できない」
と玖美子は紙に方程式を書いてそれを解き、最後は電卓を叩いて算出した。
 
「つまりこいつが嘘つきであることが確定したな」
と柔良は言った。
 
「でもこいつ練習相手としてはなかなかいい。普段は鎖に繋いどく?檻(おり)に入れとく?」
などと清香は言っていた。
 
どうも猛獣並みの扱いのようである。
 
(*22) 2000年以降の全日本剣道連盟の規定では八段が最高位になっていて、七段は六段取得から6年だが、八段は七段取得から10年ということになっており、ここだけ数列の規則が乱れている。(以前は九段・十段もあったが、現在は既得の人を除き廃止されている)
 

公世はこの日少し遅れてきたのだが、彼女……じゃなくて、彼が来た時、勾陳は
 
「お前すっごく可愛い娘だな」
と言った。
 
「ぼく男だけど」
「嘘だろ?」
「ちゃんとちんちん付いてるよ」
「お前、女になりたいよな?俺が女に変えてやろうか?」
「要らない」
「遠慮しなくていいのに」
「ぼくは女にはなりたくない」
 
千里が釘をさしておく。
「きみよちゃんの身体に何かしたら、あんたの睾丸を廃棄するからね」
「わかったよ。ケチ」
「公世、他の子にも言ったけど、こいつと絶対2人きりにはならないようにしてね。私か管理人の忌部さんが居る状況にして」
「分かった」
 
しかし公世も非常にいい練習相手を得られて、彼はこの後、どんどん力を付けて行くのである。
 

千里は自分が土日に不在の時は、源次に女装させて!千里の代理で道場に居させるようにした。管理人室で太陰とおしゃべりしたり、おやつを食べたり、ゲームをしたりしながら練習室を見ている。むろん戦いになったら勝てないが、勾陳としては千里が居ると思うだけで、悪いことはできない。(勾陳は勘が悪いので代理に気付かない)
 
ただ源次に困ったことがあった。
 
「千里さん、ぼくのちんちんが見当たらないんですけど」
「女の身体でないと身代わりがバレるからね。私の代理する時は女の子になってね」
「ちんちん無いと困るんですけど」
「大丈夫だよ。元の姿に戻ったら、ちゃんとちんちんあるはずだから」
「ほんとですよね?」
と彼は不安そうだったが、男の姿に戻ると、ちゃんとあったので
 
「良かったぁ」
と言っていた。彼は
 
「女になってる時って、おしっこの出方が凄く変です」
とも言っていた。
 
「男の子のおしっこの出方のほうがよほど変だと思うけどなあ」
 
しかし彼は結局毎月1〜2度性転換させられることになった。でも「女の子モードも可愛いよ」と小町に言われて照れていた。
 
「でも源次ちゃん、何度も性転換するの面倒だし、ずっと女の子にしておこうか?」
「男に戻して下さい!」
「遠慮しなくていいのに」
「ぼくは男です!」
「女の子になってたら、おっぱい触り放題なのに」
 

夜。
 
公世は自分の部屋のお布団の中で、股間に付いているものに触りながら考えていた。
 
「どうしてぼく9月1日朝に男の子に戻してあげると言われた時、嫌だ女の子のままでいい、とか思っちゃったんだろう。ぼく別に女の子になりたい気持ちなんて無かったのに。やはり1日女の子の身体でいたら、女性ホルモンの影響とかで、女の子になりたい気持ちとかも出て来たのかなあ」
 
ところで公世は8月22日夕方の夢で“千里Gold”と話していた時に思いついた“左手で軸をしっかり押さえておき、右手の指で先端をいじる”というのを試してみていたのだが、思ったほど気持ち良くない気がした。
 
「クリトリスを指でいじった時は物凄く気持ち良かったのに」
とあの感触が懐かしい気がした。
 
「でもぼく、女の子になりたいとか思わないからね」
と“千里Gold”が居るかも知れない気がした方向を向いて言った。何だかくすくすくすと笑う声を聞いた気がした。
 
公世は結局その夜、軸を押さえておいて先端を刺激するという方法はギブアップし、合宿中に偶然発見してわりとハマッていた、指で全体を押さえて回転運動を掛ける方法で頂点に達し、快感の中で眠りに落ちていった。
 
その眠りに落ちていく中で
「この方法って、女の子になってた日にした、クリちゃんいじりと同じやり方だ」
ということに気付き、往復運動より回転運動の方がそもそも気持ちいいのかも、なとと一瞬思った。
 
この日の夢の中で、公世は白い道着を着けて沢田さんたちと一緒に練習していた(そもそもの日常という気もする)。
 

9月6日(月).
 
この日、転入生があり、2年1組に編入された。男子で増毛町から移動してきた児玉君である。彼には取り敢えず、最後尾に机を搬入して座ってもらったものの、転校生がひとりポツンと座るのは良くない!というクラス委員の上原君とセナの話し合いで、席替えが実施された。席替えは急遽用意したくじを男女別に引いてもらうことで実施した。
 
「え?ぼく女子のくじを引くの?」
と雅海が言っているが
 
「当然当然」
と言われている。公世に関しては事前に上原君が本人に確認した所
 
「ぼくは男子だし女の子になるつもりはない」
と本人が強く主張するので、暫定的に?男子のくじを引かせた。
 
この結果、新しい座席はこのように決まった。
 

 
そういう訳で、雅海はとうとう女子を表す赤いマークの席になった!
 
転入生の児玉君は、前クラス委員の恵香の隣である。サポートするには適任者だろうということで、ここは上原君とセナで決めた。
 
「男女のクラス委員が並ぶの?」
「並べた方が連絡とかで便利だよと大沢(恵香)さんから言われてそうした」
「男女の美化委員も並んでる」
「偶然偶然」
 

「児玉君の出席番号は何番だっけ?」
「17番」
「あれ?でもこれまで男子の最後は三木君の15番だったのに」
「誰か1学期前に転校したんじゃないの?」
「あ、そうかもね」
 
(むろん千里Bが男子の16番を取っちゃったせい)
 

9月6日(月).
 
この日午後から、S中では水泳大会が開かれた。
 
「え〜〜〜!?200mに出るの〜〜?そんな凄い距離、泳げないよー」
と千里は言ったのだが
 
「千里ちゃんが400mでも800mでも泳げるのは、実際に見て判っている」
と新しくクラス委員になったセナが言う。
 
「うーん。まずい人に見られたな」
「私も見てるよ。頑張ってね」
と前のクラス委員、恵香も言った。
 
2年1組から200mに出るのは千里と玖美子、100mが沙苗と絵梨、50mが佐奈恵と蓮菜だったが、この6人が女子でターンができる全員である!(一応壁タッチさえすれば、端で立ちあがって再度泳いでもよいことになっている)
 
雅海は女子の25mに出そうとしたが
「ぼく男子ですー」
と主張するので、男子の25mに出した。男子水着の生徒が並ぶ中、ひとりだけ女子水着を着けて25mを何とか泳いだ(男子の最下位)。セナは平和に女子25mを泳いで(最下位の優美絵に次ぐ)女子ブービーだった。
 

公世は
「女子200mに出る?念のため公世ちゃんの身体に合う女子用スクール水着を用意したよ」
とセナと優美絵が言い、水着を手渡される。
「サイズはお姉さんに確認したから」
などとセナが言っている。
 
また姉貴絡みか!と公世は思ったが、
 
「僕は男子だし、男子水着を着る」
と言って、男子の200mに出て、全体で3位だった。自分でもびっくりしていたが、やはりこの夏の剣道の濃厚な練習で、筋力がかなり鍛えられていたようである(特に下半身が鍛えられたのが大きいと思う。キック力がかなり上がったはず)。
 
「きみちゃんブラ跡が無いのは1週間くらい前からブラジャー着けてなかったの?」
「ブラジャーなんて着けないよ!」
 
(でも実は8/31は丸一日ブラを着けていた。この日までにブラ跡が消えてホッとしている。また自分の部屋の衣裳ケースにはブラジャーが8枚も入っている)
 
ちなみにこの女子用スクール水着は、公世がそのまま何となく持ち帰ってしまったので、自室の衣裳ケースのキャミソールなどが入っている段に収納されることになる。
 
なお公世については
「水着になってる所見るとよく分かる。工藤さんって女性体型だ」
「きっと3〜4年前から女性ホルモン飲んでたんだよ」
などと言われていた。
 
司はクラスの女子たちから
「司ちゃん、恥ずかしがらずに女子水着を着なよ」
と言われたのだが
 
「恥ずかしー」
と言って、男子水着で(でもブラ跡が分かる)、男子の200mに出て、7位入賞であった(タイム決勝)。同じ野球部の前川君がそれに続く8位になった。
 

千里は例によって「あまり上位になりませんように」と祈りながら?200mを泳いだが、女子3位だった。1位が留実子で2位が玖美子。その玖美子から
 
「手抜きはいかんなぁ」
と言われたが。
 
クラス対抗リレーは、千里→絵梨→蓮菜→玖美子と繋ぎ、留実子の入っている2年3組に次ぐ2位だった(沙苗も出そうとしたが逃げたので蓮菜が代わった)。
 
部活対抗リレーでは、剣道部は、紅音→聖乃→千里→玖美子と繋いで3位。バスケ部は、久子→伸代→数子→留実子、とつないで優勝である(2位はソフト部)。
 
留実子は個人200m, クラス対抗リレー、部活対抗リレーで優勝して3冠であった。
 
留実子は最初「応援団・女子」で出たかったようだが、応援団の女子は留実子1人だけでチームが成立しなかった!のでバスケ部に出た(チア部女子は出たが下位のほうだった。ちなみにチア部男子も4人揃わなかったらしい!?)。
 
なお男子では、剣道部が、吉原→佐藤→竹田→工藤とつないで優勝した。
 

この日(9/6)、千里が剣道部の部活を終えて帰り支度をしていたら、携帯に着信がある。何だろうと思って見ると、蓮菜からである。
 
「はい」
「千里、さっき玲羅ちゃんが神社に来て教えてくれたんだけど、今日はお父さんが自宅に居るんだって」
「へ!?」
 
「台風(*23)が近づいてるでしょ?だから今週はお父さんの船は出港取りやめになったらしいよ。正確には出港したけど、お昼頃には戻って来たって」
「え〜〜〜!?」
「いよいよ、セーラー服で学校に通ってること、お父さんにカムアウトする?」
「う・・・・」
 
それはいつか父には納得してもらわなければならないことだが、今それを言うと家の中が台風になる!
 
「分かった。ありがとう。何とかする」
 
(*23) 台風18号である。長崎県に上陸した後、日本海を北上し、北海道を含めて日本海沿岸に多大な被害をもたらした。羽幌町では9/8に観測史上最大の瞬間風速46.9m/s、札幌でも同じく観測史上最大の50.2m/sの風速が観測され、北海道大学の有名なポプラ並木の多くが倒壊した。この台風で観測された最大風速は広島県広島市で観測された60.2m/sで、厳島神社の左楽房(国宝)が崩壊した。
 
この台風による死者・不明者は45名。この中には山口県下松(くだまつ)市で座礁した貨物船の乗組員22名が死亡した事故が含まれている。
 
この台風は北海道に甚大な被害を与えた点で、洞爺丸沈没事故を引き起こした、1954年の台風15号(通称:洞爺丸台風)と比較される。
 

それで結局千里はこの日、小春の家に帰宅?し、そこで体操服に着替えて自宅に戻った(買物はコリンに頼んだ)。なお、千里YはいつものようにRより帰りが遅いので、30mルールで消滅する。
 
自宅に帰るのは、神社に居る千里ではなく、剣道部の千里だろうと推察する蓮菜は大したものである。
 
翌日の朝は朝御飯を食べた後、千里Rが勝手に消滅!したので、千里Yがバス停近くに出現して普通にセーラー服で登校した(いつもの千里たちのパターン)。
 
この週は木曜日までこれが続いた。ただし9月8日(水)は学校自体が臨時休校になった。部活および神社での勉強会は9/7-8がお休みになった。
 

9月10日(金).
 
S中の2年生は校外学習に行った(1年生は先週行っている)。
 
朝7時に学校に集合するが、例によって遅刻魔の留実子が7:03くらいにお父さんの車で駆けつけて来て、叱られていた。
 
クラス単位3台のバスで今年は稚内に向かう。
 
国道232号を走り、途中の道の駅でトイレ休憩して、11時半頃に稚内市に到達する。
 
稚内市は日本政府が実効支配している領土の中では最北に位置する自治体であり、最北端は、宗谷岬の沖に浮かぶ弁天島である。有名な野寒布岬(のしゃっぷみさき)は北端ではなく、その隣にある宗谷岬のほうが北端になっている。“わっかない”の“わっか”は、道内によくある“OOワッカ”という地名と同様に水を表す。“ナイ”は川や沢を表し、現在の港1丁目付近にあった小川が地名の由来とされる。
 
稚内駅は、日本最北の鉄道駅である。現在は新旭川駅から稚内駅まで1本だけのルートになっているが、1989年までは、宗谷本線の音威子府(おといねっぷ)駅から南稚内駅まで別ルートを走る天北線(てんぽくせん)という線も存在した。その頃は南稚内が最北の分岐駅だったのだが、天北線の廃止で現在は新旭川駅が最北の分岐駅となっている。
 

到着すると、まずはその稚内駅を見学する。ガイドさんの説明を聞いていたが、記念に入場券を買っている子たちも居た。
 
その後、すぐ近くの稚内公園に移動する。ここで氷雪の門、九人の乙女の碑などを見る。その後、やっとお昼になる。
 
「お腹空いたぁ」
という声多数で、既に公園でフランクフルトなど勝手に買って食べている子などもいた。入ったお店は稚内のソウルフード?チャーメンの店でみんな美味しそうに食べていた。
 
「変な定食っぽいものより、こういうのがいいよねー」
「うちの先生たちは理解がある」
 
となかなか好評であった。
 
でも自主的にギョウザ、チャーハン?、中華丼?、やきそば!?などを追加して食べている子たちも居た。
 

満腹した後は、バスで野寒布岬に移動する。そして、まずは岬の眺望を楽しむ。ガイドさんが
「遙か向こうに見えるのが日本が実行支配している領土の最北端、宗谷岬です。あちらには、日本最北端の碑、間宮林蔵の像などが立っています」
などと解説していた。
 
↓概略図

 
(宗谷岬の北西にある弁天島が45.525Nくらい、礼文島の北にある平島が45.484Nくらいで、両者は僅差である。この弁天島が日本が実効支配している領土の最北端。礼文島本体の北端は45.463N,野寒布岬が45.450Nくらいで両者はほぼ並んでいる。礼文島と平島の間にあるトド島はアゲハ蝶のような形をした島で、比較的近年まで夏季だけ漁のために住んでいる住人がいた。風が厳しいので年間を通しての定住は困難であるらしい)
 

野寒布灯台を外から見学し、イルカの像と戯れ?、ノシャップ寒流水族館に入る。ここで1時間ほど掛けて見学した。
 
まずはアザラシ君たちに女子たちの歓声があがり
「可愛い〜」
「連れて帰りたいくらい」
などと言っているので男子たちから
「女子の“可愛い”の基準が分からん」
という声も出ていた。
 
その後、多数のお魚たちを見るが
「可愛い」
「美味しそう」
などという女子たちの声に
「やはり女子たちの感覚が分からん」
と飛内君などは言っていた。
 
たくさん盛り上がってから最後にペンギンを見るが、これもたくさん歓声があがっていて、この水族館の見学は特に女子たちに好評であった。
 

水族館を出たのがもう14時半である。
 
「じゃ帰りますよ〜」
「宗谷岬行かないんですか〜?」
「往復2時間掛かるから、泊まりがけでないと無理」
「え〜〜?間宮のリンちゃん(間宮林蔵のことらしい)見たかったのに」
「個人的に見に来てね」
 
ということで、帰途に就いた。
 
帰りも途中の道の駅でトイレ休憩し、S中に辿り着いたのは、19時頃である。多くの子は保護者の車で帰宅した。
 
でも千里は消えちゃった!!(村山家の夕食はコリンが作った)
 
 
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【女子中学生・秋の嵐】(1)