【女子中学生・秋の嵐】(5)
1 2 3 4 5 6
(C) Eriko Kawaguchi 2022-09-16
10月23日(土).
司は朝から眉毛を整え、ハート模様のショーツにライトピンクのブラジャーを着け、黒いタイツを履いてから、可愛いブラウスとタータンチェックの膝丈スカート(8月にパーキング・サービスのライブで札幌に行った時買った)を穿き、パステルカラーのフリースを着た。そして母に留萌駅前まで車で送ってもらい、旭川行きのバスに乗った。
留萌駅前8:16-10:10旭川駅前
留萌市内ではあまり女装で出歩く勇気が無いのだが、他所の町でなら女の子の格好してもいいよね?というので、今日はお出かけなのである。
部活は土日は無いものの、金曜日まで毎日練習しているので、練習疲れでバスの中ではぐっすり眠る。バスなので乗り換えを考えなくていいのが良い所である。司は到着してやっと目が覚めた。
取り敢えず降りてから、トイレ(もちろん女子トイレ)に入り、おしっこした後で、個室内で顔を化粧水で拭いた。これで結構顔が引き締まる。
手を洗ってトイレを出た後、平和通りを歩き、本屋さんとCDショップを覗き、お洋服屋さんを見てから、スポーツ用品店に行く。そしてピッチャー用のグラブを選んだ。いいお値段するけど、パーキング・サービスのライブのギャラをもらったのがあるので、充分買える。
それでレジの所に持っていったのだが、お店の人から言われる。
「これソフトボール用ではなく、硬式野球用のグローブなんですけど」
「はい、私、硬式野球をしてるので」
「あ、そうでしたか。失礼しました!」
なんで女子がソフト、男子が野球なんてことになってるのかなあ。女子だって野球やっていいと思うのに、と司は思った。
司が今日ピッチャー用のグラブを買いに来たのは、実は「北北海道大会ではピッチャーもしてくれ」と言われたためである。
それは3日前の水曜日のことだった。
「左打者対策ですか!」
と選手たちは監督の説明に驚いた。
「基本的に野球では、右打者は左投手より右投手の球が打ちにくく、左打者は右投手より左投手の球が打ちにくい。プロ野球には左打ちの強打者が多いから、ピンチの時など、相手の左打者に1ポイントリリーフで左ピッチャーを起用したりすることもある」
「あ、それプロ野球中継で見たことある」
という声が多数あがる。
「それで今大会の組み合わせなのだけど」
と監督は説明する。
「初戦は根室のM中だけど、ここのエース左藤君は右腕で変化球主体のピッチャーなんだよ。前川君よりはスピードがあるけど、これは前川君のボールに慣れている君たちなら打てると思う。だからこれに勝つ前提で行く」
と監督は言う。
「M中に勝った場合、準決勝で旭川のT中学と当たる確率が大だ」
と監督。
T中は高校野球の強豪T高校の中等部である。才能豊かな選手が揃っている。千里の元ボーイフレンド・青沼晋治が居た学校であるが、彼は今はT高校の1年生になっている。むろん司を含めてこのメンバーは晋治のことは知らない。
「ひじょうに厳しい戦いだけど、ここに勝てば優勝できる可能性も出てくる」
「優勝!?」
そんなことは考えてもいなかった部員たちが武者震いをする。
「それでこのT中のレギュラー陣は、あちこちから集まって来た優秀な選手が多いだけに、左打者の強打者が多い」
「ああ」
「だから、T中との戦いに、左打者に強い左腕の山園君を温存したい」
「なるほどー」
「だから1回戦は、福川君、君が投げてよ」
司は唐突に指名されて焦った。
「待って下さい。ぼくが投げなくても前川君がいるじゃないですか」
と司は言うが
「M中のエース・左藤君は前川君と同じタイプのピッチャーだから、向こうの選手たちは変化球には慣れている。だから前川君では打たれるのが確実」
と監督。
「僕もビデオ見たけど、左藤君は僕と同様に、カーブ・スライダー・シュート・フォークと投げてくるけど、僕より球速があるんだよ。あのボールに慣れてたら僕の球は簡単に打てると思う」
と前川君も言っている。
「だから今大会では前川君にはバッターとして頑張ってもらいたい」
と監督は言った。
ここ数日は前川君の古いグラブを借りて投球練習をしていたのだが、やはり自分のグラブを買っておこうと思い、この日、司は旭川まで出て来たのであった。
月曜日、司がこの日買ったグラブで出て行くと、みんなから言われる。
「おお、新しいグローブだ。気合入ってるね」
「やれるだけのことをやっておかないと、悔いが残りますから」
「凄い凄い」
この後、司は約1週間、この新しいグラブでピッチャーとして投球練習したり、紅白戦に登板したりした。
司がマウンドに登った時、キャッチャーは1年生の宇川君が務めるが、予備のキャッチャーが必要になるので、1年生の田中君にキャッチャーの練習をしてもらい、紅白戦でも座ってもらった。彼に司は
「古いのでよければ」
と言って、6月まで使っていた古いミットをあげた。
思えば6月5日に新しいミットを買いに旭川に出た時、貴子さんと出会って、自分の運命が変わったんだよなあ、と司は回想した。
10月30日(土).
中学硬式野球北北海道大会が旭川市で開かれた。
これは、北北海道8地区の代表を集めて3日間で大会を行うものである。S中野球部はこの大会に留萌支庁代表として参加する。
試合には、応援団のほか、チアリーダー部、吹奏楽部も動員され、バス2台で会場となる旭川に向かった。
そして司はこの大会初戦のマウンドを任された。前川はライトに入り、マスクは1年の宇川君がかぶる。
応援団の応援が入る中での試合はこれまでも多数経験しているが、チア部・吹奏楽部まで入る応援は初体験だった。でも気持ち良く投げることができた。
試合は4回までは0−0で進行した。司のボールは結構なスピードがあるので、向こうも簡単には打てない。2回に向こうの5番さん(左打者!)が内安打で出塁したが、司の牽制球にタッチアウトで後続を断つ。
こちらも変化球に慣れているとはいえ左藤君のボールは前川君のボールより速いので、どうしても振り遅れてしまい、なかなかヒットが出ない。
それでどちらも3人ずつで攻撃を終えるのが続く。
試合は5回に動いた。やっと相手の球速に慣れてきた4番・阪井がレフト前のヒットを放つと5番に入っている前川がヒット&ランを成功させ、1アウト13塁とする。6番小林はデッドボールで1アウト満塁。相手投手・左藤も前川同様にコントロールが今一のようで、キャッチャーが捕球できないのもここまで数回起きていた。
7番加藤が三振に倒れたものの、8番宇川は粘りに粘ってフォアボールを選ぶ。これで押し出しでS中は1点を獲得した。そして9番の司である。司は監督から何も考えずに無心で打てと言われていた。
初球、信じがたいほどの絶好球がど真ん中に来る(多分フォークのすっぽ抜け)。司はほんとに何も考えずに思いっきりバットを振った。
ボールは高く上がり・・・
スタンドに入った!!
司はもちろんこれまで何度もホームランは打っているが、満塁ホームランというのは全く記憶が無かった。生涯で初めての満塁ホームランかもと思った。
大喜びで(ベースを踏み忘れないように)しっかりとダイヤモンドを一周し、ホームイン。
チームメイトにもみくちゃにされた。
相手投手は呆然としていた。
ホームランのショックからか左藤は次のバッターにストレートのフォアボールを出したので、ピッチャー交替が告げられる。1年生で10番を付けたピッチャーが出て来て、何とかセカンドゴロでフォースアウトを取り、5回裏を終わらせた。
その後、6回表はホームランに気を良くした司が相手をキッチリ3人で押さえる。6回裏は3番・菅原がヒットで出て、4番阪井がまたヒットでノーアウト13塁となる。ここで5番前川が犠牲フライで1点追加する。M中は3人目のピッチャーが出てくる。この人が6番7番をセカンドゴロとレフトフライに打ち取って6回終了である。
7回表は相手が代打作戦でどんどん代打を送り出してきた。司は1人に打たれたものの、すぐに牽制球でアウトにする。そして次のバッターを三振に取り試合終了。
S中は北北海道大会の初戦に6−0で勝利して準決勝に進出した。
なお今回は留萌から近い旭川が会場なので、野球部員も、応援してくれる応援団・チアリーダー部・吹奏楽部も、みんな留萌から毎日バスで往復である。
(つまり司の“宿泊問題”が起きない!!)
翌日10月31日(日).
準決勝の相手は予想通り、旭川のT中となった。
試合前に相手の選手たちを見たが
「ほんとにこいつら中学生かよ?」
と思うようなガッチリした体格の選手揃いである。
一方T中側。
「なんで向こうは女が入ってるの?」
「男の人数が足りないから女も入れたんじゃないの?」
「だけどあの女子、プロテクターとレガース着けてますよ」
「じゃキャッチャーなのかね」
「あの女子選手がホームに立ちはだかってたら、そこに突っ込まないといけないんですか?」
「そりゃ女には突っ込むのが当然」
「そっかー!」
などと卑猥な軽口を叩いていたが、彼らの顔が試合が始まるとがらりと変わることになる。
S中の強飯監督が予想した通り、T中のクリーンナップを構成する左打者たちがS中左腕・山園の速球を打てないのである。
山園は基本的にストレートとカーブしか無いのだが、彼のストレートはしばしばシュートに近い回転になる。すると左打者にとっては手元で突然速度が上がるように見えて、物凄く打ちにくい。
むろん右打者にとっては、それほど大変な相手ではないはずだが、やはりそもそも優秀な左ピッチャーとの対戦経験が少ないというのもあり、結局凡打を積み上げていく。4回になってやっと内安打でランナーを出したが、またもや司の牽制球でアウトになる。
「あのキャッチャー、女とは思えん速い玉を投げるな」
などと言っていた。
それで結局6回までどちらも3人ずつで攻撃を終えるという凄い試合になった。(この試合は大会終了後「事実上の決勝戦だった」と言われた:結果的に翌年春の北北海道大会で“実質的な”シードをされることになる)
7回表。
S中の攻撃は1番がレフトフライ、2番がショートゴロに倒れた後、3番主将の菅原は最初のボールを強振。この玉がぐいぐい伸びていき、レフトスタンドに飛び込んだ!
大喜びで菅原はダイヤモンドを一周。勝ち越しのホームインをする。
相手投手が顔面蒼白であった。
T中はピッチャーを交替させ、1番を付けたエースが出てくる。T中は彼を決勝戦のために温存していたのである。彼が物凄い剛速球で4番阪井を三振に取り、S中7回の攻撃を終える。(彼が最初から登板してたら、きっと完全試合をくらっていたと思った)
そして7回裏。T中最後の攻撃となる。
T中は代打攻勢を掛けて来た。右打者の代打を送り出して来たのである。
山園は先頭バッターは何とかライトフライに打ち取ったが、2番バッターには粘りに粘られた上でフォアボールを与えてしまった。
内野陣が集まる。ベンチから伝令も来るが。
「打たれてもみんなで守るから思い切っていけ」
と言われ、山園も
「頑張ります」
と答える。
そして迎える3番バッター。これも代打で出て来た右打者である。
司は内角低めのボールを要求した。しかし山園は後で「手が滑ってしまって」と言った。ボールはシュート回転をしながら、ど真ん中に入ってきた。
相手バッターが思いっきりバットを振る。
このボールが伸びていき・・・・
入っちゃった。
さよならホームランとなる。
打ったバッターが大喜びでダイヤモンドを一周する。球審がホームでセーフのジェスチャーをした所で、司は頭を抱えてうずくまっている山園の所に行き、彼をハグした。
「ドンマイ。君はこの強豪相手によく投げたよ。また頑張ろうよ」
山園は司にハグされて泣いていた。
整列する。
「2対1でT中学校の勝ち」
「ありがとうございました」
双方、握手をしてお互いの健闘を称えた。
S中応援団・チア部・吹奏楽部はこの2日間旭川まで来て応援してくれたのだが、最後の最後での逆転負けに涙しながらも、選手たちにエールを送ってくれた。
試合終了後、大会長から3位の賞状をもらった。これはキャプテンの菅原君が受け取り、みんなの前で高く掲げて振った。応援団などにも披露したら、またエールを送ってくれた。
チャーターしている帰りのバスの中で山園君の弁。
「悔しいし、頑張ってくれたみんなに申し訳無い。ジョギングとか筋力トレーニングとか頑張ってボールのスピードがもっと速くなるよう頑張る」
「でも打たれた後、福川さんにハグされた時、お母さんに抱かれたような感じで涙が出た」
すると東野君がオマケのコメントを入れる。
「昨日、福川さんがホームラン打った時、ホームイン後にみんなで歓迎した時は妹の活躍を歓迎したような気がした」
「あ、俺も妹のような気がした」
「触っていいのかなあと思ったけど、どさくさ紛れに触っちゃった」
などという声もあがっていた。
「ぼくお母さんとか、妹とか言われてる」
と司が言うと、隣に座っている女子マネの生駒優は
「みんなに親しみを持たれているということよ」
と言っていた。
ちなみにこの2日間のバスでは往復とも、司は優と隣り合って座っていたが、そのことについて司は特に何も考えていなかった!
なお、野球部の女子マネージャーはこの大会まで3年生の生駒優がベンチに座ってスコアブックを付けていたのだが、大会後は1年生の水野尚美にバトンタッチすることになっている。尚美は実はまだ野球のルールがよく分かっておらず!(インフィールド・フライとか説明しても理解できずにいたようだった)不安を訴えていたので今回の新人戦までは3年生の優がスコアブック係を務めたのである。
2004年11月1日(月).
新紙幣が発行された。肖像画は1万円札が旧紙幣と同じ福澤諭吉、5千円札は新渡戸稲造から樋口一葉に変更。千円札は夏目漱石から野口英世に変更された。
2004年11月2日(火).
プロ野球の実行委員会・オーナー会議は、新規加入の申請をしていた、仙台・ライブドア・フェニックスと、東北楽天ゴールデンイーグルスについて審査を行い、楽天の新規加入が認められた。
(その後、2006年1月にライブドア事件が起きたのでこの時本当に楽天を選んでよかったと思う)
この結果、11月8日に選手の分配ドラフトが実行された。近鉄・オリックスの両球団の選手はいったん統合され、その中から“オリックス・バッファローズ”が主力選手25人を確保した上で、残りを公平に?オリックスと楽天で分配するという、極めて身勝手な選別が行われた。
このワガママな操作に反発した近鉄の主力投手・岩隈久志は「分配の際に選手の意志は無視しない」という合意を楯に取り、「自分は楽天に行く」と言って譲らず、いったんオリックスに分配された上で12月22日、楽天に金銭トレードされる形で楽天入りをした。
この結果、翌年の楽天はこの岩隈の存在で、何とかプロ球団として最低限の成績をあげることとなる。岩隈は2005年度は27試合に先発。楽天がこの年あげた勝星38の内の9を岩隈で勝っている。岩隈はこのプロ野球再編事件における英雄である。
11月3日(水・祝・大安・たつ).
この日、旭川市内のホテルで、2つの婚約式が相次いで行われた。
午前中に行われたのは、杉村初広と西村鈴花の婚約式である。“世間体”を考えて、初広が紋付き袴を着て、鈴花が振袖を着ている。指輪はお互いにプレゼント済みであるが、この婚約式で改めて、双方相手の左手薬指に填めてあげた。事情を知らないホテルスタッフは「最近は婚約指輪も結婚指輪同様、双方が着ける流儀もあるのかな」くらいに思ったかも知れない。
なお双方の両親は、紋付き袴と黒留袖である。
ふたりは初広がまだ大学生ということもあり、2006年夏頃に結婚する約束であるが、状況次第ではそれ以前に籍だけでも入れるかも、ということにしている。
この婚約が急がれたのは、杉村家側としては、初広が女になってしまったのにそれでも結婚してくれるというありがたい女性を逃したくないという事情、一方で西村家側としては、男嫌いで「男とは結婚しない」と言っていた鈴花が取り敢えず戸籍上は男性である人と結婚すると言っているので、これ幸いというところで、どちらも“相手の気が変わらない内に”話を決めてしまおうということになったのである。
2人は来年の春からは同棲してもよいというのを双方の親が認めているので、事実上は来年の春に結婚するようなものである。
この婚約式に、真広は振袖、古広は高校の女子制服姿、黒沢柚美は振袖で出席した。
午後からは、杉村古広と黒沢柚美の婚約式が行われた。
こちらは先に同意していたように、
・柚美が妊娠中の子供を古広が胎児認知する(実行済)。
・古広が18歳になった所で婚姻届と子供の入籍届を出す。
ということになっている。結婚式は古広が高校を卒業した所で挙げる予定である。
ふたりは、双方とも振袖を着てこの婚約式に出席した。初広と鈴花はどちらも色留袖、真広は普通の振袖(午前中のとは別のもの)を着た。双方の両親は、紋付き袴と黒留袖である。
出席者が並んだ写真を見ただけでは、誰が婚約したのかよく分からない写真かも!?
真広の振袖は午前中に着たのは、実は母が昔着た振袖(加賀友禅)で、午後着たのは、先日親戚廻りの時に着た、友禅風振袖である。
柚美は先日古広からダイヤの指輪を贈られているが、婚約式の中であらためて、古広が柚美の左手薬指に填めてあげた。柚美は指輪のお礼にセイコー・ルキアの女性用腕時計を贈っており、この婚約式で柚美が古広の左腕に填めてあげた。
2004年11月13日(土)0:02.
上島雷太の恋人・木原大央(たお)は、女の子を出産した。上島の長女となる、木原扇歌である。
上島と大央は、9月頃までは同居こそしていなかったものの、ほとんど夫婦同然の生活を送っていた。しかし出産が近づくとさすがにセックスはできなくなる。すると、上島は浮気の虫が騒いでしまった。
浮気したことはすぐにバレることになる。
大央は
「新しい女ができたのね。でも結婚してはもらえないだろうというのは最初から覚悟してたから」
と言って、上島に新しい恋人ができたことを容認した。
「でも私の出産と、産後しばらくのサポートはお願いできる?」
「もちろんだよ。雑用とかもどんどん引き受けるから何でも言って」
それで上島は大央の出産に立ち会い、一緒に名前を考え、退院にも付き添ったし、お宮参り、百日祝いなども一緒にやった。
上島の新しい恋人は歌手の花崎アユミ(芸名:花村かほり)であった。この年、彼女は『帰りたい』(ゆきみすず作詞・すずくりこ作曲)が売れに売れていて、物凄く忙しかった。その多忙な中で上島とデートしていたが、実際問題として彼女はあまりの疲労のため、デート中に眠ってしまう!ということが多かった。
結果的に上島は、ひたすら彼女の食事世話係と化していた(この頃は上島もまだけっこうな暇があった)。
だから実は、アユミとは恋愛関係にあっても、この年はほとんどセックスしていない!!
この時期、上島は超多忙な歌手と、出産前後の女の2人に食事の世話をしたり、買物をしてきたり、と甲斐甲斐しく奉仕していたのである!
赤川次郎は、プレイボーイには、カサノバ型とドンファン型が居ると書いている。ドンファン(ドン・ジョバンニ)は女の征服者であり、自分に靡かない女を熱心に口説き落とすが、いざ自分の物にすると興味を失い、冷たくなる。だからドンファンと付き合った女はみんな彼を憎む。これに対してカサノバは女への奉仕者であり、いつも優しくしてくれる。だから、彼と付き合った女は別れた後でも、彼にずっと尊敬や親しみの情を抱いている。
上島は典型的なカサノバ型のプレイボーイであった。
ただしこういう人は二股・三股・四股!?になりやすい。(八股まで行くと大蛇?)
11月13-14日(土日).
千里Rは旭川に出て、13日には龍笛・フルート・ピアノを習い、14日午前中には越智さんから剣道の指導を受け、午後には天子の所に行って夕食を共にした。
11月13日(土).
真広は従兄の桂助からの連絡を受け、ハンバーガー屋さんのバイトが終わった後、お昼過ぎに札幌駅前で会った。取り敢えず、ミスドに入り、話をする。
「いつもそんな格好なの?」
と桂助は訊いた。
「まあこんなものかな(本当は慌ててオリーブ・デ・オリーブに飛び込んで買った)」
「すっかり女の子になっちゃってる」
「仮面男子をやめたからね」
「胸も結構あるように見える」
「ちっちゃいけどね」
「女性ホルモンとか飲んでるんだっけ?」
「別にそんなもの飲んでないけど」
「でもまぁちゃんが最初から女の子でした、なんてのは絶対嘘だ」
と桂助は言う。
「ふーん。なぜそう思う?」
「だって、まぁちゃん、男子選手として高校時代インターハイにも出てるのに。女子だったら、男子選手になれたはずがない」
真広はニコッと笑った(桂助はドキッとする)。
そして真広は答えた。
「サッカーにはね。男子というカテゴリーは存在しないんだよ」
「へ?」
「サッカーには女子というカテゴリーは存在するけど、男子というカテゴリーは存在しない。女子カテゴリーの試合に男子は参加できないけど、一般のカテゴリーには男子も女子も参加できる」
「そうなの!?」
「だから一般のサッカーチームにいる女子選手は珍しくないよ」
と真広は言った。
「じゃ着替えとかどうしてたのさ?」
「私は個室とかで着替えてたよ(*28)。トイレで着替えたりしたことも多かったけどね」
(*28) 真広が諸事情で!?別室で着替えていたのは事実である。遠征の時も真広は必ず個室を割り当てられていた。真広は平気だと言ったものの、他の選手が平常心で居られないと言われた。実は同じ部の先輩に押し倒されたこともある(キスはされたけど、相手がすぐ理性を取り戻し、レイプはされなかった)。
ちなみに、真広は公世や司と同様、よく女子マネと間違われた!
ついでに女子マネ一同でお金を出し合って選手たちにヴァレンタインを贈る時は「まっちゃんも出して」と言われて、お金を出していた!
しかしそういう訳で“例の人”は、サッカー選手に全力で蹴られ、シューターに全力で握られたのである。ふつうどちらも無事では済まない。千里は本当は留実子同様、スティール缶を握り潰せる。もっとも留実子が純粋な握力で握り潰すのに対して、千里は気合で握り潰す。
真広は高校時代にも痴漢に遭い、軽く蹴ったら相手が怒って過激化(猛獣化?)し、かえってレイプされそうになった経験があった(本気で顔面を蹴って撃退)。それで“半矢”にするのは危険と認識していたので、次やられた時は、最初から相手が反撃する気力が無くなるくらい強く蹴るつもりでいた。
桂助はコーヒーを一杯飲み干した。そして言った。
「まぁちゃんが本当に女の子なのかどうか確かめさせてよ」
真広は自分もカフェオレを一口飲むと尋ねた。
「どうやって確かめるの?」
「ホテル行かない?」
「けいちゃんとなら行ってもいいけど、確認した後、どうすんの?」
と真広は彼を試すように訊く。
「まあちゃんが女の子だったら結婚してよ」
と桂助は言った。
「もし男の子だったらどうする?」
と真広は悪戯っぽく訊く。
「その時はじゃんけんしない?」
「じゃんけん?」
と真広は戸惑うように尋ねた。
「負けた方が性転換手術を受けてお嫁さんになる」
「面白ーい!けいちゃんをお嫁さんにしちゃお」
と真広は楽しそうに言った。
ふたりはミスドを出ると近くの駐車場に一緒に行く。
「へー。BMW(ベーエムヴェー)か。けいちゃんの車?」
「こんなの買えないよ。レンタカーだよ」
「へー」
「だから、車のナンバーが“れ”でしょ?」
「“れ”ってレンタカーなの?」
「そうだよ。内地じゃ“わ”がレンタカーなんだけど、なぜか北海道では“れ”が使用されている(*29)」
「なんで?」
「昔は国のお役人が毛筆で書類を書いて郵送してたから、北海道に届いた書類では、本当は『貸し自動車は“わ”にすべし』と書かれていたのが“れ”に見えたんじゃないかという説もある」
「ありそう!」
(*29)1990年代までは北海道は全て“れ”だったのが、その後、“わ”も使用されるようになり、両者が併存するようになった。また北海道以外で、沖縄では“わ”が枯渇したことから2015年以降“れ”も使用されるようになった。長崎や鹿児島にも「れ」のレンタカーがあるという情報もあるが未確認。
BMW E46 Cabriolet で屋根を開けてオープンカー状態でドライブを楽しみながら、桂助は言った。
「ぼくさ、小さい頃よく、父ちゃんから言われてた」
「うん?」
「お前、真広ちゃんと仲いいみたいだから、お前が女になって、真広ちゃんのお嫁さんになれって」
「へー!」
「だから、小学4年生くらいになったら、女になる手術受けてもらうからとかも言われてたよ」
「さすがに冗談では?」
「今思えば、そうだと思うけど、当時は結構真に受けてて、ぼくその内、女の子になる手術受けないといけないのかなあ。女の子になったら、やはりスカート穿くのかなあ、とか思ってたよ」
「けいちゃん、わりと女装も似合いそうな気がするよ」
「小さい頃、ぼくわりとスカートも穿いてた記憶がある」
「それは見てないや」
「さすがにその格好で親戚の集まりとかには出てないし」
「あ、そうだよね」
でも男ばかりの兄弟なのに、そのスカートって桂助のために買ってくれていたのか?と真広は疑問を感じる。
「でもぼく、中学ではセーラー服を着るのかなあとかも思ってたよ」
「着ればよかったのに」
「でも女になる手術を受けることもなく、おとなになっちゃった。中学も学生服で通(かよ)ったし」
「セーラー服、着たかったんじゃないの?」
「やはり自分自身の性別意識の中に今でも混乱がある気がするよ」
「だったら、思い切って、性転換手術を受けちゃおう」
「・・・・・」
「あ、悩んでる、悩んでる」
ふたりは、2時間近くドライブをしてから、室蘭の近くの地球岬まで来た。
「眺めがいいね」
「どこまでも海が続いている」
「地球を丸ごと見渡せる気がするね」
「それぼくも言おうと思った」
というので、2人は笑う。
「なんで地球岬というんだったっけ?」
「アイヌ語だよ。断崖とかいう意味だったはず」
「ああ、この断崖か。あまり近寄りたくない」
「ちょっと恐いよね」
30分ほど眺望を楽しんでから車に戻ると、桂助は携帯でホテルを検索して予約したようである。
「今日はこの近くに泊まろう」
「うん。そして性転換する人を決めるじゃんけんね」
「まあちゃんの性別が分からなくなって来た」
「だから確かめるんでしょ?ちなみに私じゃんけんで負けたことないから」
「うっ・・・」
「性転換手術も予約しておくといいよ。私、けいちゃんが女の子になった時の新しい名前考えといてあげるね。女で桂助は無いからね」
「・・・・・」
桂助の反応を見ていて、この子、本当に女の子になりたいのでは?と真広は思った。
それでロードサイドのレストランで夕食を取ってから、ホテルに入った。お部屋はダブルルームである。
「提案。先にお風呂に入ろうよ」
「それはいい案だ。だったら先に、まあちゃん入りなよ」
「うん」
それで真広はバスルームに入り、身体を丁寧に洗った。“この身体”を洗うのにもだいぶ慣れたなあと思う。最初の内はお風呂に入る度にドキドキしていた。
いったん服を着てからバスルームを出る。
「交替〜」
「うん」
と桂助は答えたが、緊張してるなあと真広は思った。
まあ、いいよね、と思い、真広は服を全部脱いでからベッドに潜り込むと、灯りを消した。ところで彼“持ってる”よね?と思いながら、念のため、自分のバッグを手に取れる位置に置いた。
やがて桂助がバスルームから出てくる。裸のままだ。
薄明かりで、彼の身体が確かに男の子のものであることが認識できる。ただ足がとても白くて毛など全く無いのも確認できた。お腹とかにも毛は無い。
「確かめていい?」
と桂助が言う。
「どうぞ」
と真広は答える。
彼がベッドの中に入ってくる。
「触ってもいい?」
「好きなだけ触ってもいいけど、私まだ赤ちゃん産みたくないから、ちゃんと処置はしてくれる?」
「うん。それはちゃんとする」
と桂助は言った。
ベッドの中で桂助は真広のバストを触ったが、明らかにドキドキしている。
こちらもドキドキだけどね!
「おっぱい本当に大きい」
「でもまだCカップしか無いんだよ」
「大きいじゃん!」
桂助の手が下半身の方に来る。あの付近を触られる。
「ちんちん無いね」
「残念だったね。私にちんちんがあったら、けいちゃん、親公認で堂々と性転換手術を受けて女の子になって、私のお嫁さんになれたのに。本当は女の子になりたいんでしょ?」
桂助はそれには答えず、真広の“中”まで指を入れてくる。
触られる。
気持ちいい!
真広はもう我慢できなくなって、桂助を抱きしめた。
「魔法の言葉を言って」
「魔法?」
「女の子が男の子に心を許す気持ちにさせる魔法の言葉だよ」
「えっと、何だっけ?」
もう!勘が悪いな。
「私のこと、嫌いとか、気持ち悪いとか、化け物とか」
それでやっと気付いたようだ。
「まあちゃんは可愛いし、素敵だよ。そして好きだよ」
それで2人はキスした。
「結合できるかどうか確認していい?」
「いいけど、赤ちゃん対策はよろしく」
「もちろん」
それで桂助は自分のバッグに入れていた避妊具を取り出す。装着に手間取っている!装着の練習とかもしてなかったみたいだなと思う。
でも何とか装着したようだ。
「していい?ぼくの可愛い人」
「どうぞ」
それで真広は桂助にバージンを捧げたのであった。
初めてだったせいか、桂助はなかなか逝けないようだ。彼が焦っているのを感じる。けいちゃん、男性ホルモン弱そうだしなあ。
「なかなか逝けないね」
「ごめん。頑張る」
「私のバージンを奪ったのに、ちゃんと私の中で逝けなかったら、罰として、ちんちん切っちゃうぞ」
「え〜!?」
「ほんとはちんちん切られたいでしょ?」
「えっと・・・」
「実は女の子になりたいんでしょ?私、けいちゃんとはレスビアンでもいいよ。このまま逝けなかったら、このちんちん切っちゃうから明日から私たちレスビアンになるね。スカート買ってあげるから、明日は女同士のデートを楽しまない?」
真広がそんなことを言っていたら、彼は思い詰めるような顔をした。
そして
逝けた!
真広はギュッと彼を抱きしめた。
女の子になるという妄想で性的な興奮度があがって、何とか逝けたようだ。
でも桂助は真広の上で眠っちゃった!!
疲れたのね、と思い、そのままにしておく。
彼は10分ほどで目を覚ました。
彼は真広にキスをした。そして真広の身体から抜くと、避妊具を取り外して、ゴミ箱に捨てた。
真広がティッシュを取ってあげると拭いていた。
真広は言った。
「私さあ、私が確かに女だということになった時、親から言われたんだよ。桂助ちゃんの所にお嫁に行けって」
「ぼくも、実は、真広ちゃんが女になったのなら、口説き落として結婚しろと言われた」
と桂助。
「まあ親たちの意図は分かるけど、親たちの打算とは関係無く、ぼくはまあちゃんのこと好きだよ」
「私も、親の意思とは関係無く、けいちゃんのこと好き」
それでまた2人はキスした。
恋人たちの夜はまだまだ長い。
「でも残念だったね。けいちゃん、性転換して女の子になれなくて」
「正直、まあちゃんと結婚できるなら、どちらが妻でもいい気はした」
「やはりレスビアン婚する?」
「えぇ〜〜〜!?」
「ウェディングドレス同士で結婚式挙げるの。そして私がけいちゃんの赤ちゃん産んで、けいちゃんは私の赤ちゃん産むとかどうよ?」
と真広が煽ると、桂助は
「ぼく赤ちゃん産めるのかなあ」
などと言っている。
やはり女の子になりたいのね。小さい頃スカート穿いてたとか言ってたけど、絶対嘘だ。今でもスカート穿いてるのはたぶん間違い無い。だいたい足の毛はきれいに剃ってるじゃん。きっとスカート穿くために剃ってるんだ。
「けいちゃんは妊娠できそうな顔してるけどなあ」
と真広は言ってあげる。
「でも両方ウェディングドレスとかいいのかなあ」
などと桂助。
やはりウェディングドレス着たいのね。
「次のデートではけいちゃんも、女の子の服を着ておいでよ。女の子2人で遊んでるように見えるから、人が見ても変には思われないよ」
「うーん・・・」
悩んでる、悩んでる。
やはり私たちレスビアンになっちゃう気がする。この子、貴子さんとこに連れてったら、喜んで女の子に変えてくれそうだし。そしてほんとに夫婦同時妊娠とかしたりして!?“男の跡継ぎ”が欲しい、お父ちゃんは困るかもだけど!
「けいちゃんが女の子になった後の名前だけど、“桂助(けいすけ)”あらため“桂沙(けいすな)”とかはどう?」
「それ何か変だ!」
11月19日(金・大安・たいら).
杉村家の敷地内に建築していた離れが完成して引き渡された。早速、午後には古広と柚美が入居した(母はもう少し月数が進んだら来る予定)。同時に、義浜ハイジ・裕恵夫妻もその隣に建てた(置いた)家に引っ越してきて、裕恵はこれ以降、来年5月に予定されている柚美の出産までドライバーを務める。
しかし古広と柚美、ハイジと裕恵という2組のカップルが並んだ家に入居したのに、全員女性というのは、なかなか凄いことである!(更に4人の“女性”の内3人が遺伝子上はXY)
古広と柚美の家の前には柚美通学用のプリウス、ハイジと裕恵の家の前にはハイジが通勤に使用するスターレットが置かれている。
ハイジはだいたい夕方出掛けて、朝戻って来る。ハイジが戻って来た時は既に、裕恵は柚美を乗せて大学に出ている。裕恵は9時半頃いったん戻るが、ハイジは午前中寝ているので、裕恵は掃除をして御飯を炊いてハイジが起きるのを待つ。だいたい昼頃ハイジが起きるので一緒にお昼を食べる。午後3時か4時頃に裕恵は柚美を迎えに行き、古広とのスイートホームに連れ帰る。夕食はだいたいハイジが作っていて、一緒に夕食を食べた後、ハイジは自分で車を運転して仕事に出掛ける。
これがハイジと裕恵の1日のサイクルである。
なおハイジは裕恵が高岡の事件の時(たぶん)車を乗り逃げされたと思われることから、運転席を離れる時は必ずキーを抜き、車をロックするよう厳命。裕恵もそれは必ず守ると誓った。裕恵はいったんパターンさえ出来上がればそれを確実に実行できる人である。キーを付けたまま離れる癖があったのは、イベンター・事務所で運送の仕事をしていた時の習慣だった。そういう仕事では誰でも運転できるようキーを付けたままにしていた。
一方、柚美は朝裕恵の車で出掛けて、午後講義が終わってから柚美の車で帰宅する。帰りにスーパーに寄ってもらい夕食の買物をする。そして帰宅すると晩御飯を作る。古広はふつうに自力でバスで自分の高校に行き、バスで帰宅する。夕飯を柚美が作ってくれるので、朝御飯はだいたい古広が作る。
どちらも女2人の気楽な生活である。なお、古広は柚美が妊娠中なので、当面セックスは我慢することを約束した。でも柚美にちんちんをいじってもらったりして快楽を味わっていた。
「ちんちんの快楽を覚えさせて、取るのが惜しい気持ちにさせよう」
「ぼく20歳になったらちんちんもタマタマも取っちゃうからね」
11月21日(日).
千里Bの振りをした星子がQ神社でのお務めを終え、帰ろうとしていたら、とても高貴な雰囲気を漂わせた女性が、星子の所にやってきた。誰だろう?と思う。
「おや?そなた千里かと思ったら千里ではない」
「すみません。代理のものです」
と星子は正直に答えた。この人には嘘をついてはいけない気がした。
「千里はどこぞよ」
「実は冬眠してるんです。A大神のお話では10年くらいそのままではないかと」
「困ったなあ。お留守番を頼もうと思ったのに。誰か適当な留守番のできる者を知らぬか。そなたでもよいが」
「私は主人の許可無しではお受けできません!」
などと言っていたら、そこに千里が出現する。
同時に星子をW町の家に転送した。(瞬間的な交替なので小春たちには分からない)
「おお、千里。これから神様会議に行ってくるから留守番を頼むぞよ」
「Q大神様。私は大神様の求めている千里ではなく別の千里です。適当な代理を呼びます」
「よく分からんが頼む」
それで千里(千里V)はある人物を呼び出した。
彼女はタクシーで来たので、運転手に千里が代金を払う。
「どうしたの?」
「沙苗、8日間ほどお留守番をして」
「お留守番?」
と沙苗は全く訳が分からない。
「おお、そなたは素敵な巫女だな。この際、そなたでも良い。留守番を頼む」
「留守番?」
「あ、待て。そなた生理が近いか?」
「はい。明後日くらいに来るかなと思っているのですが」
「だったら生理は千里が代わってやれ」
「まあいいですよ」
ということで11月23日に来る予定の沙苗の生理は千里Vが代理で引き受けることになった。大神様が沙苗の卵巣・子宮・膣(小登愛由来)をVの体内に移動したので、たちまちVは気分が悪くなるが、ぐっと堪える。逆に沙苗はPMSで少しお腹が痛かったのが治った!
この時、Vの体内には下記の生殖器系統が併存することになった。
A:千里のIPS細胞から育てた女性器セット(3歳女児相当のサイズ)
B:小春の右卵巣・子宮・膣(小さいし卵巣は加齢により衰えている)
C:小登愛の左卵巣・子宮・膣
沙苗自身の女性器セットは沙苗の体内にあるが0歳女児相当のサイズである。小春の左卵巣は千里Bの体内にあり、小登愛の右卵巣はセナの体内にある。
なお千里Vにはとっても小さいながらペニスも存在するので、Vはこれからペニスがあるのに生理が来るという状況を体験することになる。
「じゃ留守番する場所は千里、そなたが案内してやってくれ」
「分かりました」
それでQ大神は空に舞い上がり、どこかに去って行った。
「誰?あの人」
「この神社の神様だよ」
「え〜〜〜!?」
「沙苗、こっち来て」
と言って、千里Vは沙苗をQ神社の本来は神様しか入られない“深部”に案内した。
(実を言うと、P大神・Q大神・A大神の3人といつでも対話できて、P神社深部にもQ神社深部にも自由に入れるのはVだけである。RGYはP神社深部には入れるが、Q神社深部には入ることができない。それでこの作業にはVが飛んできた)
「何ここ?」
「神社の深部だよ。ここの分岐点は必ず右手に行ってね」
「うん」
その分岐点を右側に行った奥に小さな部屋がある。
「じゃここで8日間。留守番をお願い」
「ちょっと待って。私、学校に行かなきゃ」
「学校には行っていいよ。ただ部活が終わったらここに来て。きっと素敵なプレゼントをもらえるよ」
「素敵なプレゼント!?」
「じゃね。困ったことあったら、呼べば誰か来るから」
と言って、千里は帰ってしまった!
「待って。私が帰宅しなかったら、お母ちゃんが心配するよぉ」
と言ったが、すぐにふくよかな女性が出てくる。
「ヒツジ子でございます。沙苗さま。取り敢えず食事をご用意いたしました。お酒なども飲まれます場合は用意しますが」
「中学生だからお酒とか飲まないよ!」
「偉いですね!千里様も飲まれないんですよ」
「それが普通だと思うけど」
「そうそう。御自宅には適当な身代わりを帰宅させておきますので」
「あはは。やはり」
なんか前にもそういうの無かったっけ?
それで沙苗は約1週間、毎晩お留守番をしたのである。その間、沙苗は一睡もしなかったが、全く眠くなかった。何度か変なのが来たことがあったが、千里が駆けつけて来て、粉砕してくれた。千里ちゃん、プリキュアみたーい!と沙苗は思った。
(千里Vは千里Yと同等の力を持つので、悪霊の類いは瞬殺である)
11月28日(日)の夕方、沙苗がQ神社のQ大神の居所でお留守番をしていたら、大神がご帰宅なさる。
「お帰りなさいませ」
「お疲れ、お疲れ」
「何度か変なのが来ましたが、千里が追い払ってくれました」
「ああ、あの子は神様並みのパワーを持っているから」
などと大神は言っている。
「そうだ、沙苗、お留守番をしてくれた礼にそなたの身体を少し改造してやろう」
「は!?」
改造って、ミサイル発射できるようになるとか??
「そなたの卵巣・子宮・膣はまだ生まれたての赤ん坊くらいのサイズしか無い。これを取り敢えず5歳くらいの状態まで育ててやろう。そこに模なさい、朝までには処置が終わるだろう」
「あ、はい」
それで沙苗はそこに横になったのだが、(11/29)朝起きてみたら自宅に居た。
なんか久しぶりの我が家だなあと思った。
そしてここ1週間“ご不在”だった卵巣や子宮が“お帰りになられた”というのも感じた。
一方、千里Vは成熟したおとなの卵巣や子宮の消滅を感じて、小学校の時以来、1年半ぶりに体験した生理を振り返り
「やっぱり生理はきつーい。でも自分が女であることを認識できる」
などと思っていた。
2004年11月29日(月)3時32分、釧路沖を震源とするM 7.1 の地震が発生し、釧路町・弟子屈町・別海町などで震度5強を記録した。死者は無かったものの7人が重傷を負った(軽症者45人)
ちょうど一週間後の12月6日(月)23:15には、今度は根室半島沖を震源とするM6.8の地震が発生、やはり釧路町その他で震度5強を記録した。両者の震源は比較的近く、先週の地震の余震と見られる。これも死者は無かったが、重傷1人、軽傷11人であった。
2004年11月30日(火).
ソフトバンクはダイエー球団を買収することを発表。同日付けで日本プロ野球組織への加盟申請を行った。
ダイエーは福岡市やホークスタウンを所有するコロニー・キャピタルなどとの間に極めて複雑な契約を結んでおり、これが球団売却の障害になるという見方もあったがソフトバンク側は高額の資金投入により、それらを全て継承・解決した。
加盟申請は12月24日に承認された。ダイエー球団は解体を免れ、ソフトバンクが丸ごと継承して翌年からは「福岡ソフトバンクホークス」となることになる。
球団歌の「いざゆけ若鷹軍団」の歌詞は“我らのダイエーホークス”という所が“我らのソフトバンクホークス”と歌い替えられることになる(この部分がとても早口になる)。
2004年11月30日(火).
羽幌町・苫前町・初山別村の3自治体は今年3月から合併に向けての協議を続けていたが、この日、合併協議会を解散。“留萌郡3町村合併構想”はご破算となった。
羽幌町は炭鉱で栄えた町である。
1935年に創業し、良質炭を産出することで知られ、町は大いに賑わった。最も活気のあった時期は、羽幌炭礦鉄道が営業しており、駅前には多数の居酒屋やパチンコ店が並び、映画館やプール施設も作られた。また炭鉱の運営会社は実業団活動にも力を入れており、野球では後にプロ野球入りした選手がいたし、スキー部からはオリンピック代表も出ている。札幌オリンピックのジャンプで金メダルを取った笠谷幸生は所属選手ではないがここで練習していた(実兄の笠谷昌生がここの所属)。男女のバレー部も強かった。
1965年の国勢調査では町の人口が3万人を越えていたことから、町は市制施行を意識した“市庁舎”建設をするなどの動きもあったが、その後、羽幌炭鉱の経営悪化で急速に人口は減ることとなった。
(この急速に人口が減っていった過程で前代未聞の“国勢調査水増し事件”も起きる。1970年の国勢調査で、町の人口を大幅に水増しして報告していたことが発覚し、町長をはじめとする町の幹部が大量に統計法違反・公文書偽造で摘発された)
それ以降、単独での市制施行の気運はしぼんでしまったが、平成大合併の波に乗って3町村の合併の構想も浮上した。しかし、お互いの思惑には距離がありすぎ、話し合いは不調に終わった。
※2000年国勢調査における3町村の人口
苫前町 4,645
羽幌町 9,364
初山別村 1,764
合計 15,773
市制が施行できる人口(5万人)には遠く及ばず、合併しても市になることができない。
11月30日(火).
沙苗は母と一緒に札幌に行き、S医大で診察を受けた。
10月下旬に診察してもらった時は、女性外陰部がほぼ完成に近づいているという診断だったのだが、それがついに完成した。沙苗の外陰部は完全に女性のものになったと言われた。
「あれ?」
と主治医が声をあげるので、沙苗は不安になる。
「君、ちょっとMRI撮らせて」
「はい」
それでMRIを撮った後で、主治医は言った。
「5月にできていた小さな、卵巣・卵管・子宮・膣のセットが急成長してますね」
「え!?」
と母は驚いたように声をあげたが、沙苗はやはり大神様の言った通りだなと思った。
「前回MRIを撮った・・・9月27日の時点では0歳女児くらいのサイズだったのが、これはもう5歳女児くらいのサイズまで成長してますよ。先月はMRIを撮ってませんが、外陰部を観察した時の膣口のサイズからは9月の時とそう変わったとは思えないので、この1ヶ月で急成長したのかも」
うん。5年分成長させてあげると大神様は言ってたから、そんなものだろうな。それと1ヶ月で急成長したんじゃなくて11月28日に急成長したんだけどね。
「やはり外陰部の変化が落ち着いたので内面の変化に進んだのでしょうか」
と母。
「そうかも知れません。まだ経過観察しなければ何とも言えませんが」
と先生。
次の診察は12月下旬に受けることになった。
でも次はそんなに変化してなくて先生をまた悩ませそう、と沙苗は思った。
セナは(多分)夢を見ていた。
セナはバスに乗っていたが、乗客が1人降り、2人降りして、最後はセナだけになってしまった。終点は緑が丘操車場前(*30)というバス停だった。
バス停を降りると、千里が居て
「待ってたよ。こちらに来て」
と言って、そこにある1軒の立派な邸宅に招き入れた。
千里ちゃんは額に黄金のサークレットを付けており、腕にも黄金のブレスレット、耳には黄金のイヤリング?ピアス?をしている。服も白いドレスに多数の金色のラインが入っていて、なんかゴージャス〜!と思った。靴も黄金のハイヒールだ。
セナが家の中に入り、千里に従って、赤いビロードの敷かれた廊下を進むと、立派な部屋があり、玉座に女王様?が座っている。セナは
「このベッドに寝て」
と言われたので、そこに横になった。するとスカートをめくられ、パンティも脱がされてしまう。え?え?何するの!?(凄い期待の気持ち)
(*30) 留萌市に緑が丘という地名はあるが、陸上自衛隊の駐屯地などがある場所で、操車場などは無いし、そもそも鉄道もバス路線さえも通ってない。山の中で、ジャスコの近くでもある。このエピソードは実は筆者が夢に見た内容をほぼそのまま書いたもので「緑が丘操車場」というのも夢の中に出て来た名前である。夢の出演者は、セナちゃん、女王様、魔女っ子千里ちゃん、佐々木君だったが、佐々木君より司か公世にした方が面白そうなので公世を選択。
(司は女装には完璧にハマッてしまったものの、女の子になりたいまでの気持ちが今の所“まだ”無さそうなので、現時点でこれ以上女性化させるのは、可哀想な気がしている。でもその内、女子選手になっちゃったりして!?)
「解剖しなさい」
と女王様がおっしゃる。
「はい」
と千里が答え、セナから“部品”を取り外して、そばの大理石っぽいテーブルの上に並べる。
「陰茎」「陰嚢」「輸精管」「精嚢」「前立腺」と千里はひとつずつ言ってはセナから取り外した。ちんちんがテーブルに乗っているので
「ぼく、ちんちん取られちゃった」
とセナは思った。
「睾丸と男性型尿道延長部はどうした?」
と女王様がおっしゃる。
「この子は既に睾丸は除去していますし、おしっこも女の子と同じようにするようになっていて、男性型尿道延長部はありません」
と千里は言う。
そういえばぼく7月以来ずっと女の子の場所からおしっこしてるよなあと思う。やはり男の子の場所まで導く尿道が取り外されてたのかな??
「それが無いと男として不完本だ。何とか調達しなさい」
と女王様。
「分かりました。では代わりに公世の睾丸と男性型尿道延長チューブを取ってきます」
「うむ。それでよい」
ちょっとぉ、そんなの取られたら、工藤君、困るんじゃないの!?
とセナは思ったが、千里は部屋から出て行くとすぐ戻って来て
「公世から外して参りました」
と言って、睾丸と、長いチューブを置いた。
女王様は
「こういう汚らしい男の器官はセナにはふさわしくない。廃棄せよ」
とおっしゃる。すると千里は
「かしこまりました」
と言って、大理石の上に載っている男性器官をゴミ箱に捨てちゃった!!
待って!ぼくはもうちんちん無くてもいいけど、それ工藤君の睾丸とかもあったのに、とセナは思う。
「セナには代わりに立派な女の器官を付けてやりなさい」
と女王様が言ったので、千里は大理石の上に女性器官を並べる。
「卵巣左右」「卵管左右」「子宮」「膣」「小陰唇」「大陰唇」「陰核」「恥丘」
と千里は言いながら並べた。
「それはどこから調達したものか?」
と女王様が尋ねると千里は
「これはセナの亡くなった妹・美加ちゃんのものです」
と答えた。
ドキッとする。美加というのは慧瑠の2つ下の妹だったのだが、死産だったらしい。もう臨月まで行ってからの死産だったので、あまりのショックに母は一時期おかしくなっていたとも父から聞いた。両親はその後、もう一度子作りに挑戦したものの、うまく行かなかったらしい。
「セナの4つ下の妹でしたので、この女性器は現在10歳、小学4年生のものです」
「妹のものなら全く問題無いな。小学4年生ならこれから生理が始まり、セナも女としての第二次性徴が始まるだろう」
え?でもぼく今生理あるんですけど!?
それに、そもそもなぜ死産だった妹の女性器がここにあるの!?
「取り付けなさい」
と女王様がおっしゃるので、金ピカ衣裳の千里は「左卵巣」「左卵管」、「右卵巣」「右卵管」「子宮」「膣」「小陰唇」「大陰唇」「陰核」「恥丘」と言葉に出しながら、ひとつずつそれを取り付けていった。
「全て取り付け終わりました」
「ご苦労。これでセナも立派な女の子になることができた」
と女王様。
「良かったね。セナ。これからは女の子として可愛く生きてね」
と千里も笑顔で言った。
ここで目が覚めた。
セナはそっと自分のお股を触ってみる。
なんかこれまでと全然変わらないんですけど!?
でももしかしたら、今までは“特別な偽装”だったのが“本物”になったのかもという気がした。
ところで工藤君は大丈夫かな!??
(もちろん無事な訳が無い)
1 2 3 4 5 6
【女子中学生・秋の嵐】(5)