【夏の日の想い出・二足のわらじ】(5)

前頁次頁After時間索引目次

1  2  3  4  5 
 
3月に入ってから、§§ミュージックのタレントやマネージャーがスケジュールに関して電話やメールで問合せると、しばしば“お留守番の山門(やまと)です。その件は・・・”という返事が返ってくることがあった。
 
「瞳ちゃん留守にしてること多いのかなあ」
「瞳ちゃん辞めたりしないよね?」
と不安を言う声もあった。全員のスケジュールを完全に把握しているのは美咲瞳だけなので、万一彼女に何かあったら大混乱に陥るのは必至である。
 
(誰も沢村部長に頼るつもりは無い!)
 

3月16日(水).
 
常滑舞音の12枚目のシングル(?) 『ダリのまねをしたのはだり?』が発売された(CD/CD+DVD)。下記の楽曲とそのカラオケ版が収録されている。
 
1.『ダリのまねをしたのはだり?』(未来居住作詞・福沢聖子作曲)
2.『アイドルを探せ』(スカイヤーズ作詞作曲)
3.『二足のわらじ、四則と漢字』(水野歌絵作詞・醍醐春海作曲)
4.『夢運ぶ春のうららの黒猫便』(名寄多恵作詞・岡原加奈作曲)
5.『La plus belle pour aller danser』(シャルル・アズナブール作詞、ジョルジュ・ギャルヴァラン作曲)
6.『アイドルを探せ』(Song by Skyers, Electone by Mane)
 
DVD bonus video:『猫のひな祭り』
 
(もはやアルバムではないのか?)
 
どうしてもこの時期に発売せざるを得ない曲が幾つもあり、アルバム級のシングルになってしまった。シングルを2枚発売する案もあったが、同時2枚発売は連続ミリオンを途切れかねさせないという意見が強く没となった。
 
1,3,4,5 は招き猫バンドの伴奏で水谷姉妹がコーラスを入れている。
2はスカイヤーズの伴奏, 6は舞音のエレクトーン伴奏でスカイヤーズが歌っている。
 
こんなに楽曲が入っていたら1800円か2000円くらいにしてもいい所だが、5月末までの特別価格1400円と設定した、
 

『ダリのまねをしたのはだり?』(未来居住作詞・福沢聖子作曲)
 
ダリの名作『記憶の固執』(La persistencia de la memoria)っぽい感じのコスプレである。“融ける時計”“柔らかい時計”などの別称もある絵だが、海岸っぽい背景に、3つの“柔らかい時計”が描かれている。
 
(著作権保護中でここに表示できないので実際の絵は検索してみてください)
 
ひとつは木の枝に掛けられ、ひとつは机のようなものに半分掛けられ、もうひとつは白い謎の生物の上に掛けられている。
 
舞音は樹木のようなポーズをして立ち、その左腕に柔らかい時計(ビニール製)が掛けられている。フード付きの白い服を着た水谷妹が死んでいるかのように横になり、そこにも柔らかい時計がひとつ掛けられている。また水谷姉が机のように上半身を90度折り曲げるポーズをしてそこにも時計がひとつ掛けられている。
 
(水谷姉は青いポールに掴まってこのポーズをし、青いポールは編集で消した)
 
昨年秋以降、水谷姉妹は“ダリたチョコシュー”というこの絵をモチーフにしたお菓子のCMをしているが、舞音と一緒にそのコスプレをすることになった。この曲は水谷姉妹がカバーしてそちらのCMにも転用される。
 

この状態で招き猫バンドの4人は次のような扮装で楽器を演奏し、舞音は樹木のポーズを崩さないまま歌っている。
 
平田(B) 青い貫頭衣
木下(Gt)黄色い十二単
谷口(KB)赤い振袖
篠原(Dr)金色の宇宙服
 
篠原君だけ女装じゃないのは「僕が女装したらDVDの売上が半減する」(本人談)だからだそうである。谷口君は
 
「え〜?ぼく女装するんですか〜?」
と抵抗を示したものの
「振袖着てみたくない?可愛くなるよ」
などと言って着せてしまった。
 
この曲は時計メーカーのCM曲として流された。曲の最後に舞音と水谷姉妹がポーズを崩して一斉に鈴を鳴らすところがあるが、
「だらーっと(だりーっと?)寝過ごしそう」
という意見もあった。
 
CMでは舞音の
「新入学・新入社でひとりぐらし始める人、舞音の目覚ましも一緒にね」
という声が入っている。
 
この舞音の目覚まし時計(舞音の「おはよう・おきよう」という声入り)が物凄く売れて、一時的に品切れになる所も出、メーカーは嬉しい悲鳴をあげた。
 

『アイドルを探せ』(スカイヤーズ作詞作曲)
 
4月から2クール放送予定のドラマ『アイドルを探せ』の主題歌である。このドラマの主演は常滑舞音と吉永浩、そのライバル役が太田芳絵と来生宗厚である。1964年フランスのアイドル映画『アイドルを探せ (Cherchez l'idole)』のリメイクで、とにかく筋とはほとんど無関係に多数のアイドルが出てくるという、半ばアイドル紹介映画である。当時の集団アイドルなども映っている。ドラマでは毎回2〜3組のアイドルが歌を披露する。
 

『二足のわらじ、四則と漢字』(水野歌絵作詞・醍醐春海作曲)
 
小学生向けの参考書・問題集のCM曲である。舞音の写真が表紙になった参考書・問題集も出ている。CFの中では舞音が算数の問題を解いていて、7×6=44 と解答してバツをもらい「あれ〜!?」と頭を抱えるところが映っている。CFの最後では舞音が笑顔で「お姉ちゃんも勉強頑張るからみんなも頑張ってね」と言っている。
 
「掛け算の九九もできない人が表紙というのでいいんですか?」
と悠木恵美マネージャーはシナリオを見て確認したのだが、実際参考書問題集の売上が伸びたらしいので、良かったのだろう。
 
舞音はうっかり 7×6=42 と解答してしまい3回NGを出した。わざと間違うのもなかなか難しい。
 

『夢運ぶ春のうららの黒猫便』(名寄多恵作詞・岡原加奈作曲)
 
黒猫運輸さんのCM曲で、あけぼのテレビの桜レポート番組のテーマ曲でもある。大黒猫(ルーシー@招き猫バンド)が運転する黒猫便のトラックの助手席に座る黒猫扮装の舞音。そして段ボール箱(中身は空!)を持って荷物をお届けし、白猫さん(水谷姉)から猫足形のハンコをもらう舞音。
 
という物語仕立てになっている。
 
招き猫バンドのルーシー(平田留美 24歳)が出演しているが、彼女は大型免許を持っており、実際に4tトラックを運転して撮影している。
 

『La plus belle pour aller danser』(シャルル・アズナブール作詞、ジョルジュ・ギャルヴァラン作曲)
 
舞音はフランス語でそのまま歌っている。
 
1964年の映画の主題歌で当時はシルヴィ・ヴァルタン( Sylvie Vartan 当時20歳)が歌った。タイトルの意味は直訳すると“ダンスに行くのに最も美しく”となる。シルヴィはこの映画の筋には全く関係なく、唐突に画面に現れてこの曲を歌っている。それでこの歌と映画とどういう関係があったのかも全く不明である。
 
この映画はこのように筋と無関係に多数のアイドルが登場しては歌を歌うという、ミュージカルのような、ただの歌謡ショーのような映画である。恐らくは映画の筋が添え物であり、多数のアイドルの歌を聴かせることが目的で、その歌を聴いて当時の観客は充分楽しんだのだろう。今回のドラマもその路線で行く。登場する多数のアイドルは話の筋とは無関係である。
 
映画のラストは大元締めという感じでシャルル・アズナブール(当時40歳)が出てきている。今回のドラマでその役目を果たすのは、スカイヤーズになる予定である。それで今回の主題歌もスカイヤーズから頂いた。
 
舞音はスカイヤーズと聞いて“雲の上の人”に緊張したらしいが、彼らは
 
「わあ、本物の舞音ちゃんだ!」
と大騒ぎで、サイン色紙を交換して、大喜びだったらしい。
 

『アイドルを探せ』(Song by Skyers, Electone by Mane)
 
No.2はスカイヤーズの伴奏に舞音が歌を乗せたのだが、このラストの音源は逆に舞音がエレクトーンで伴奏し、その伴奏でスカイヤーズが歌う、というお遊びをしている。スカイヤーズの面々が
「舞音ちゃんエレクトーンうまいんだね」
と感心していた。
 
乗りの良い舞音の伴奏が聴ける。
 
スカイヤーズのBunBunは「可愛い女の子の歌を期待している所に俺たちの歌が流れたら石が飛んでくるよ」と言っていたが、ネット配信サイトでは結構なダウンロードがあり、みんなビックリしていた、
 

DVD bonus video:『猫のひな祭り』
 
猫の段飾りを作っている。
 
お雛様:常滑舞音
お内裏様:立山煌
三人官女:水谷姉・花園裕紀・水谷妹
五人囃子:地多めぐみ・宮地ライカ・豊科リエナ・箱崎マイコ・三陸セレン・山鹿クロム
左大臣:恋珠ルビー
右大臣:花貝パール
 
立山煌は「こんなに先輩たちがいる中でぼくがお内裏様なんて」と尻込みしていたが「うちは男の子が少ないから」と言って束帯を着けさせた。花園裕紀は「ぼく女の子役なんですか〜?」と抵抗していたが、「君は女の子にしか見えないから男役させると女子が男装してるように見える」と言って五衣唐衣裳(いつつぎぬ・からぎぬ・も:通称“十二単”(じゅうにひとえ))を着せた。
 
五人囃子が6人居るのは、愛嬌!
 
(実を言うとこの6人が全員上の段に昇るのを尻込みしたので裕紀が上に上げられた)
 
背景に流れるのは常滑舞音withスイスイか歌う『嬉しい雛まつり』(サトウハチロー作詞・河村光陽作曲)である。チェンバロで伴奏しているのは花園裕紀。五衣唐衣裳を着たままチェンバロを弾く様子がビデオには映っている。
 
セレンが「この子ピアノ上手いからチェンバロ行けますよ」と推薦したし、十二単でチェンバロというのが絵になるので弾かせたが、ひじょうに上手いのでプロデュースしている雨宮先生がご機嫌だった、
 
先生は彼が男子であることに気付かなかったようである。
 
もっとも裕紀はチェンバロはピアノほど強弱が出にくいのでかなり戸惑っていたが数回の練習で弾きこなした。
 

シングルの音源制作は例によって、感染防止対策上の問題と、舞音が忙しすぎるのもあり、だいたい演奏と歌が別録りである。今回の演奏収録の時は、暇な!大崎忍に代理ボーカルをさせて収録している。忍はもう卒業間近であまり授業が無いので、制作に参加させた。
 
「でも演奏の収録は昼間にやるんですね」
「夕方からは舞音ちゃん、テレビ局とか雑誌の取材とかCM撮影とかに行くから時間取れない。木下ちゃんや谷口ちゃんがリハーサル役に借り出されるから演奏できなくなるし」
 
「ぼく舞音ちゃんの代役やってと言われてだいぶ女装させられてる。恥ずかしい」
と谷口君が言っている。
「本番と同じ衣裳着けてないとライティングを確認できないからね」
 
「忍ちゃんも高校卒業したら舞音ちゃんのリハーサル役やってよ」
「たぶん時間は取れそうな気がします」
 

「でもルーシーちゃん、こんな寒い時期によく短いスカート穿いてますね」
と忍は言う。
 
「ぼくはショートスカート大好き。ロングスカートはオナニーしにくいから嫌い」
「それが理由なんですか〜?」
「女にロングスカート穿かせるのはオナニー防止のためなんじゃないかなあ」
「そうですか?」
 
(男の子ってすぐオナニーの話するんだから!いやらしいわね!!)
 

「最近の若い男の子でロングスカート穿いてる子がいるけど、男はむしろショートスカートを穿くべきだよ。オナニーしやすいように」
「そういうもんですかね」
 
「昔はショートスカートというのは男の服だった。ショートスカートはオナニーしやすいから穿いてたのだと思う」
「確かにショートスカート穿いた男性の絵とか割と残ってますね」
 
「近代の女性はショートスカートを穿くことでオナニーできるようになり、性の解放が進んだんだよ」
とルーシー。
 
「面白い見解かもしれないです」
と忍も言った。
 

「てもルーシーちゃん、立つんでしたっけ?」
などと谷口翼が尋ねる。
 
「睾丸取ってるから立つわけない」
「取ってても性欲あるんですか?」
 
「睾丸は性欲の増幅器であって睾丸が性欲を作っている訳ではない。性欲は生物としての根源的欲求だよ。性欲と性的エクスタシーこそが菩薩の境地であると仏典には書かれている」
 
「マジですか?」
 
「それに立たないペニスは立つペニスより気持ちいいんだよ」
 
「よく分からない世界だ」
と篠原君。
 
「ペニスは勃起すると感覚が鈍くなるから気持ち良さが激減する」
とルーシー。
 

「君も最高の気持ち良さを味わうために玉を取ろう」
 
「嫌です。それ絶対嘘ですよ」
と篠原君。
 
「翼ちゃんも玉取ってから気持ち良くなったでしょ?」
とルーシー。
 
「ぼく睾丸取ってません」
と谷口翼が言うと、他の4人は顔を見合わせた。
 
「君、嘘を言ってはいけない」
「ほんとですよー」
 
谷口君にはほとんど男性的な発達が見られない。一応声変わりはしているもののハイトーンで女の子の声と思えば女の子の声に聞こえる。顔や足のむだ毛はあまり生えないらしい。自分で顔のむだ毛を剃ることはなく、美容室に行った時に剃ってもらう程度で事足りる。
 
女性体型である。男物のズボンが入らないのでいつもレディースパンツを穿いている。雰囲気も凄く優しい。但し舞音の代役をする時以外、個人的には女装しているところは見たことが無い。下着も男物を使う(と本人は言っている。でも自分の身体に適合するブラジャーのサイズを知っている)。女性不感症である。
 
社員寮に入る前は、彼の友人女性(多数)がよく彼の部屋に泊まっていっていたが、もちろん何も起きない。単に宿泊所にされていただけである。
 
「だったらすぐ取るべきだな」
とルーシー。
 
「翼ちゃんは男性化しないようにオナ禁でもしてるの?」
と忍が訊く。
「オナニーくらいしますよー」
「どのくらい?」
「月に2〜3回しますけど(←そんなにするの多いかな?と思っている。実はもう何年もしてない)」
「それはオナ禁してるのとほぼ同じだ」
と篠原君も言った。
 

3月16日(水).
 
花園裕紀は、M高校の試験を受けに行った。筆記試験は無く、面接だけである。受験生が50人くらいも居てびっくりした。
 
面接ではなぜここを受けたのかというのが最初に質問された。裕紀は正直に答える。
 
・自分は芸能人である。
・でも辞めて地元の埼玉に帰って高校に進学しようかと思っていた。
・でもやはり続けることにしたが都内の高校入試に出遅れた。
・一応葛飾区の高校にも合格しているが、今住んでいる所から遠すぎて通学が大変なので、もしこちらに合格させてもらえたらぜひともここに通いたい。
 
それから幾つか質問されたが、最後に
「個人的なことで本来こういう質問はしてはいけないのだけど」
と言ってから面接の先生は裕紀に尋ねた。
 
「あなたの願書では性別:男と書かれていますが、あなたは女性に見えるのですが、男性なのでしょうか?」
「私は男です」
「声が女の子の声に聞こえますし、バストがあるように見えるのですが、もしかして性同一性障害の方でしょうか。ちなみにうちの高校はそういう方には最大限の配慮をしますし、決して差別したりはしません」
 
「いえ。戸籍上も男です。でも思春期の発達が来てないんですよね。私自身は自分は男だという意識を持っています。バストは、芸能の仕事で女の子役とかすることも多いのでフェイクしているだけです」
 

「ああ、フェイクですか」
と面接の先生は納得したようであった。
 
「制服は男子制服での通学を希望なさいますか?女子制服での通学を希望なさいますか?」
「男子制服で通うつもりですが・・・女子制服も用意しておいていいですか?」
 
「ああ、それは構いませんよ」
と校長先生?が言ってから
「女子制服で通いたかったら、いつでも言ってくださいね。許可できると思いますから」
と付け加えてくれた。
 

結果はその日の内に発表され、裕紀は合格していた。
 
「やったぁ!これで女子寮に引っ越さなくて済む」
と喜び、結果をまず桜木ワルツさんに電話で報告する。
 
「良かったね。性転換しなくて済んで」
「はい。助かりました」
 
その後、佐々木春夏マネージャー、木下宏紀、秋風コスモス社長にメールで報告した。
 

翌3月17日(木).
 
篠原倉光から裕紀に電話が掛かって来た。
 
「おはようございます」
「おはよう。宏紀から聞いたけどM高校に合格したんだってね」
「はい。おかげさまで。宏紀ちゃんには色々助けてもらって」
「裕紀ちゃんがM高校に通うんなら、ぼくが使ってた制服あげるよ」
「助かります!今回あちこち受けたからなんだかんだでお金が掛かってて」
「じゃ夜にも持っていってあげる」
「ありがとうございます」
 
篠原さんがくれるというのは男子制服だろうから、だったら女子制服だけ作ればいいかな、と裕紀は考えた(←何のために女子制服を作る?)。
 
M高校の合格証書がこの日の内に届いたので、S学園とL高校には入学辞退の連絡をした。どちらもネットでできた。
 
でもM高校から来た合格証書には、一緒に「女子制服通学許可証」というのも入っていた!
 
ぼく、どっちで通学しよう??
 

夜0時過ぎに篠原君から電話がある。
 
「今男子寮の駐車場まで来た。降りてこれる?」
「はい。行きます」
 
それで下に降りて行く。“舞音のアクア”?が駐まっている。まだ発売前のはずなのに・・・と思ったのだが、これは普通の“アクアのアクア”(Leo)を舞音版に改造するキットで改造したものらしい。
 
「改造とかよくしますね」
「これは誰でもできるよ。10分で終わるし」
 
ぼくがやったら3時間かかりそう、と裕紀は思った。
 
「でもこの時間までお仕事ですか?」
「うん。本来舞音ちゃんは高校生だから22時までしか使えないんだけど、ああいう売れっ子の場合は、ほぼ無視されるからね」
「大変ですね」
「特に舞音ちゃんの場合、光GENJI1通達の対象になるとかで22時過ぎて使っても違法ではないらしい」
「光源氏?源氏物語ですか?」
「いや、昔、光GENJIってアイドルが居て、その時決まったらしい」
「へー」
 

「それでこれあげるね。もしかしたら裕紀ちゃんにあげることになるかもと思ってクリーニングしといたから」
「ありがとうございます!」
 
「これが男子制服。もしかしたら僕おっぱい大きくしたくなるかもと思って胸に余裕持たせて作ってもらったから、君の胸でも入ると思う」
「それは助かります」
「夏は男子はワイシャツにネクタイだけだから」
「はい」
「君の場合、その胸が入るワイシャツは無いだろうからブラウスにネクタイでも文句言われないと思うよ」
「それしか選択肢は無いかも」
 
「これが女子の冬服と夏服」
「あれ?倉光ちゃん、女子制服も持ってたんですか?」
 
篠原ちゃんが女物着てる所なんて見たことないのに、と思う。
 
「実は(木下)宏紀ちゃんからもらった」
「なるほどー!」
「女装は楽しいから着てみなよと言われて1度試着してみたけど、変態にしか見えなかったから2度と着てない」
「そうですか?可愛くなりそうだけどなー(マジで言ってる)」
 
「男子制服でも女子制服でも好きなほうを着ればいいよ」
「結構迷ってる部分もあるんですけどねー」
「今仕事に行くときはセーラー服着てるみたいだし、男子制服で通学するなら女子制服も持ってって、授業が終わったら女子制服に着替えて仕事先に行けばいい」
「それやるかも」
と裕紀は言った。
 

3月16日(水)23:34、福島県沖を震源とする地震(M7.3)が発生した。最大震度は6+であった。
 
この地震は東京では震度4であった。
 
五反野の女子寮、用賀の男子寮、岩槻の社員寮は全て太陽光パネルを使っているので電気は全く途切れずに供給され続けた。中には地震に全く気付かずに寝ていた子もあったようである。
 
調理室のガスは明るくなって点検が終わるまで使用禁止にしたが、朝食はIHだけで何とか作り、普通にデリバーした。やはり昨年10月の地震以降の改造で、災害に強い状態にあることが証明された。
 
アクアの代々木のマンション、八王子の家はどちらも被害は無かった。電気も途切れなかった。コスモスのマンションも川崎ゆりこのマンションも朝まで停電したらしく「女子寮に住みたい」などと言っていた。
 
「コスモスちゃんもゆりこちゃんも住めるけど、各々の夫は住めないですよ」
「性転換させればいいんじゃない?」
「コスモスちゃんやゆりこちゃんが良ければそれでもいいけど」
 
(本人たちの意志は?)
 

この地震で仙台のクレールは大変だったようである。17日いっぱいかけて片付けをしたが、食器の割れたものが大量にあり、買い直す費用が大変だ、と和実が嘆いていた。
 
織姫・牽牛および若林植物公園の被害については、これから調査するけど、ライブはちゃんとできるようにすると千里は言っていた。モニターなどで破損したものについては、私は取り敢えず小浜のものを回すことにしてすぐ交換が必要な数を調べてくれるよう依頼した。
 

3月18日23:25。
 
今度は岩手県沖を震源とするM5.6の地震があった。16日の地震の余震であろう。今度は震度が小さかったので、クレールも被害はあまり無かったようである。
 
東京方面も全くトラブルは無かった。
 

2022年3月18日(金).
 
この日は都内の多くの公立中学校で卒業式が行われた。
 
下記のメンツが足立区のE中学校を卒業した。
 
新里好永“恋珠ルビー”
平良百合“花貝パール”
溝口千歌“水谷康恵”
立川心桜“松島ふうか”
横山朋菜“箱崎マイコ”
佐藤晴恵“鹿野カリナ”
 
また下記が世田谷区のF中学校を卒業した。
 
末次一葉“花園裕紀”
 
この中で信濃町ガールズに所属している子は4月からは信濃町ミューズという扱いになる。信濃町ガールズのリーダーは、箱崎マイコから豊科リエナにバトンタッチされた。
 
信濃町ガールズ歴代リーダー
1.佐藤ゆか 2015.8-2017.3
2.南田容子 2017.4-2018.3
3.山口暢香 2018.5-2019.3
4.中村昭恵 2019.4-2020.3
5.今川容子 2020.4-2021.3
6.水谷康恵 2021.4-2021.8
7.箱崎マイコ 2021.8-2022.3
8.豊科リエナ 2022.4-
 
原則としてB契約の中学3年生で最古参の天然女子メンバーが務めている。水谷康恵は途中でA契約になったので退任し、その後を箱崎マイコが務めていた。
 
「信濃町ガールズのリーダーは売れないというジンクスは?」
「それはリーダーの決め方からどうしてもそうなる。中3でまだデビューしてないということだから」
「うーん。やはり私は売れないのか」
 

末次一葉(花園裕紀)の担任の先生は、彼の進学先がなかなか決まらない様子だったので心配してくれていたが、卒業式前日の17日になって
 
「近くのM高校の二次募集に合格してそこに進学することになりました」
という報告を聞き、
「良かった良かった」
とホッとした様子であった。
 
「S学園高校にも合格していたのですが、共学校のほうが気楽かなと思って」
「ああ。女子校はいろいろ大変なこともあるよね」
と答えながら、先生は
『S学園って・・・やはりこの子、性転換済みなのかな』
などと思っていた。
 
そもそも女の子にしか見えないし、バストがあるし、女の子のような声だし。
 
卒業式後の“公式”の卒業写真では男子?制服を着たものの、同級生女子から
「一葉ちゃん、今日は女子制服持って来てないの?」
と言われ、女子制服に着替えてから、みんなと記念写真をたくさん撮った。
 

一葉が進学するかも知れないと思い頼んでいた葛飾区L高校の標準服ができたという連絡があったので、卒業式が終わった後(みんなに乗せられて着た)F中学の女子制服を着たままSCCの車で葛飾区まで行き、受け取った。その服でL高校に通うことはなくなったけど。
 
料金は前金で払っているので、そのまま受け取る。
 
「念のため試着してみます?」
「あ、そうですね」
 
と言って試着室で取り出してみたら、なぜか女子標準服だった!
 
なぜ〜と思ったが、取り敢えず着てみる。
 
「ウェストもバストもヒップも特に問題無いようですね」
とお店のお姉さんが、ウェストの所に指を入れたりして言う。
 
「そうですね。きつい所はないです。ありがとうございます」
ということで、裕紀はここまで着てきたF中学の制服(セーラー服)に戻ってから持ち帰った。帰る時
「どうして女子標準服が作られたのだろう?」
と考えてみたが分からなかった(*36).
 

(*36) 裕紀はこの服を注文しに行く時“普段着”で行っている。普段着を着た裕紀はそもそも女子にしか見えない。バストもあるし、声も女の子の声たし、顔つきが女子の顔である。また裕紀が提示した合格証明書にも“F”の記載があった(*37) それでお店は当然女子の新入生と思った。
 
だいたい裕紀も採寸される時にスカート丈とか測られてる時点で気付くべきである。また男子標準服と女子標準服で代金も違うので注文時に前金で払った時にも気付くべきであった。更に受け取りに行く時も、中学の女子制服を着て受け取りに行っている。お店の人は何か問題があったとも思わなかったはずである(実際多分問題無い)。
 
(*37) なぜ裕紀の合格証の性別記号がFになっていたかというと・・・
 
面倒だから説明略!
 
要するに裕紀が悪い!
 

3月21日(月).
 
和歌山県新宮市の小学校に通う木花朔夜(後のフラワーガーデンズのメンバー)は、卒業式を迎え、小学校を卒業した。式に木花朔夜はセーラー服で並んだ。小学校の卒業式の服装は“きちんとした服装”であればいいということになっているので、彼がセーラー服を着ていても、先生たちは特に文句は言わなかった。一部「似合ってるね」と言ってくれた先生も居た。
 
「さくちゃん勇気あるね」
とクラスメイトたちは彼がセーラー服を着たことを応援してくれた。
 
「さくちゃん今日は女子トイレ使っていいよ」
と女子のクラス委員。
「叱られるよー」
「女子児童が女子トイレを使って叱られる訳無い」
「むしろセーラー服着た子が男子トイレに入って来られたら困る」
と男子のクラス委員も言った。
 

3月21日(月).
 
用賀の男子寮でまた部屋の移動があった。現在203号室に入っている鈴原さくらを、4階で空いている403号室に移動した。
 
「抗議します。ぼくはまだ男の子です。ちんちんもあります」
 
4階は本来男の子ではない子を収容するフロアである。入居しているのは直江アキラ(女性に性変済)、長浜夢夜(性転換手術済)、夢島きらら(去勢済)の3人である。
 
「いや。君は間違い無く男子廃業済みだ。睾丸も無い」
とゆりこ。
 
「ありますよ〜。何なら触ってもいいですよ」
「君の陰嚢の中にあるのは睾丸ではなく去勢したことがバレないように入れているシリコンボールだ」
「なんでそんなことまで知ってるんですか〜?」
 
(女子寮では1人に話したら翌日には全員知っている)
 

ということで彼は4階の“女子フロア”に移動された。
 
引越作業はセレン・クロム・裕紀ほかみんな手伝ってくれた。この日だけは普段4階に入れないセレンたちも入れるように設定した。移動後翌日22日の内に業者さんの手で元の203号室は清掃と消毒が行われた。
 
さくらのidカード上の性別も女子に変更された(でないと4階に入れない)。
 
「ぼく、ちんちん付いてても女の子なんですか?」
「ちんちんはただの排尿器官だ。睾丸の有無と性別意識が大事。君は自分のこと男だと思ったことはないだろう?」
「物心付いた頃から自分は女の子だと思ってました」
「そういう人が去勢したらもう女の子扱いでいいのさ」
 
「一葉ちゃんとかどうなんです?」
 
「彼はちんちんもたまたまも無く(*38) 身体はほぼ女の子だけど、意識が男の子だからまだ暫定的に男子。彼が自分は女の子だと宣言したらいつでも女子寮に引っ越してよい」
 
(*38) 本人以外ほぼ全員の見解!
 

3月21日(月).
 
この日の14:23、中国東方航空の国内便5735便が、広西チワン族自治区梧州市藤県の山間地域に墜落。乗員9名と乗客123名が全員死亡した。
 
この事故は思わぬ波紋を広げることになる。
 

その日千里は若葉に電話して言った。
 
「私も緊急に雇用を試みるけど、全ての機体のパイロットを増員する必要が出ると思う。ライセンス持ってる人の雇用と、ライセンス取りたい人のアメリカへの派遣と両方進めてほしい」
 
「分かった。すぐ対応する。外人さんでもいいよね?」
「英語が話せて、NATO国・NATOグローバルパートナー国(*39)・台湾の人なら」
 
(*39) 日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドである。
 

3月22日(火).
 
昇格試験に合格した島根県雲南市の長岡飛鳥は、§§ミュージックから荷物が届いていたので開けて中を見た。中学の制服である。向こうの中学に転入することになるので、そこの制服だろう。
 
「わぁ」
と思って、取り敢えず着てみる。鏡に映してみると何だか可愛い。
 
母が戸惑ったような顔をしている。
 
「あんたその服で新しい中学に通うんだっけ?」
「これで通ったらだめ〜?」
と本人。
 
「うーん。そんなの認めてくれるのかしら」
と母は悩んでいた。
 

青木由衣子は花ちゃんのところに来て言った。
 
「花ちゃん、私にもいい名前を付けてください。いい名前もらえたら信濃町ガールズ続けたいです」
「ああ、君もか」
 
しかしまあ、みんなが辞めるから私も辞める、みんなが続けるから私も続ける、というのは全く自主性が無いなあとは思ったものの、こういう“普通の子”がいてもいいのではないかと思い、花ちゃんは名前を見てあげた。
 
青木由衣子
総25○英俊奇運 天12△天地波乱 地13◎和合繁栄 人9△下降不遇 外16◎仁心覆幸
 
「うーん・・・・」
と花ちゃんは悩んだ。
 
花ちゃんが30分ほどパソコン上で試行錯誤しているので、青木由衣子はパソコンの画面を覗き込みながら訊いた。
 
「難しいですか?」
 
「君の名前は改善困難だ」
と花ちゃん。
 
「え〜〜!?」
 

「“あおきゆいこ”と読む名前で、画数が良い名前が存在しない」
「そんなあ」
「無理矢理画数を良くしようとすると不自然な名前になる」
「どんなのですか?」
「例えばこれは画数が良いが、画数が良いというだけで愛着が湧かない」
 
碧木唯子 総31◎円満順風 天18○難関突破 地13◎和合繁栄 人15○恭謙昇運 外16◎仁心覆幸
 
「確かにこれ自分じゃないみたいです」
「芸名というのは、ファンがその人に愛着を持てる名前でないといけないのだよ。“青木由衣子”というのは、その点では割と良い名前」
「そうなんですかぁ?」
と物凄く不満な様子。
 
それで花ちゃんは言った。
「苗字変えちゃう?」
「え〜〜〜〜!?」
 

3月23日(水).
 
兵庫県丹波市の小学校で、杉本ひかりは“(男子)学生服”を着て、卒業式に出席。小学校を卒業した。
 
「東京で櫻坂46に入ると聞いた」
「まさか。ぼく男の子だよ。櫻坂に入れるわけがない」
「いや、ひかりちゃんは性転換手術を受けたという確かな情報がある」
 
「証拠1。男子たちによると、ひかりちゃんはトイレで個室しか使わない」
「証拠2。男子たちによると、ひかりちゃんは更衣室でいつも後ろ向いて着替えてる」
「証拠3。男子たちによると、ひかりちゃんのパンツは女子用ではという疑いがある」
「証拠4。女子水着を着たひかりちゃんを姫路のプールで見たという証言がある。おっぱいがあって、お股には何も無かったらしい」
「証拠5。ひかりちゃんのそばに寄っても男の子の臭いがしない。男子たちによると、ひかりちゃんのそばに寄ると女の子の香りがするらしい」
「証拠6。ひかりちゃんがナプキン買ってるの見たという証言がある。だからきっと生理もある」
「証拠7。ひかりちゃんは私たちが抱きついても平気な顔してる」
「証拠8。抱きついてみると分かるけど、ひかりちゃんにはおっぱいがあるし、ブラジャーもしてる」
 
女子たちの情報網って怖いなと、ひかりは思った。
 
「性転換手術とか受けてないよ〜。ぼくが入るのは信濃町ガールズってマイナーなグループ」
 

女子たちが顔を見合わせている。
 
「それ女の子のグループだよね?」
「アクアちゃんとか同じ事務所の白鳥リズムちゃんや常滑舞音ちゃんのバックでミニスカ穿いて踊っている」
「やはり性転換手術したのね?」
「してないって。進学する中学の女子制服はもらったけど」
と、ひかりはうっかり言ってしまった。
 
「それ着てみて」
「え〜〜?」
「持ってきてないの?」
 
ひかりはうまく乗せられ、引越荷物を載せ駐めていた母の車の所に行き、進学先の世田谷区F中学の女子制服を出した。それで車の中でF中学の女子制服に着替える。
 
「かっわいいー」
「さすが都会の中学の制服は可愛い」
「ひかりちゃん女子中学生にしか見えない」
とおだてられ、クラスメイトの女子たちと肩を組んだりしてたくさん記念写真を撮った。
 

ひかりは最初足立区E中学の女子制服をもらったが、
「ぼく男子ですけど」
と佐々木春夏に連絡したら
「ごめーん、間違った!」
と言って、今度はこのF中学の女子制服が送られてきたのである。
 
(佐々木は完璧に頭の中がオーバーフローしている)
 
電話で話したらまた別の中学の女子制服を用意されそうな気がしたので(充分ありえる)、現地に行ってから話すことにして、卒業式は普通の男子用学生服で出席した。
 

それで、ひかりは結局女子制服を着たまま母の車に乗り、一緒に小浜市に向かった。舞鶴若狭自動車道を通り、約1時間で小浜市のミューズ飛行場に到着する。荷物を駐機しているHonda-Jetblueに移す。そして母と一緒に乗り、熊谷市の郷愁飛行場まで飛んだ。
 
その先はSCCの車に荷物を乗せ替え、用賀の男子寮まで行く。
 
フロントの人に挨拶し、寮母さんの案内で203号室(立山煌の隣。先日まで鈴原さくらが使っていた部屋)に入居した。昇格組では春野わかな、広瀬みづほ、東海林椿希に次ぐ4人目の入居者、男子寮では最初の入居者である。
 

昼間の内にフロントの篠田さんに教えてもらってCAN DOに行き、生活に必要そうなものを色々買ってきた。
 
夕方になると、住居人がみんな帰ってきて、歓迎してくれたので
「いい先輩たちだなあ」
と思った。
 
「でも男子の寮生と女子の寮生がいるのね」
とお母さんは言っていた。ひかりはだいたい“察した”が特に何も言わなかった。
 
母はこの日男子寮に一緒に泊まったが、母が泊まるというと、貸し布団を出してくれて(夢島きららが運んでくれた)、夕食も2人分デリバーしてくれた。母は料金を払おうとしたが、デリバーしてくれた篠田さんは「家族の分は無料ですよ」と言っていたので感謝した。
 
「お母さんやお父さんはいつでも泊まっていいですが、お姉さんや妹さんを泊める場合は事前申請してくださいね。ガールフレンドを泊めたりする行為は規律違反ですので」
 
「分かりました!」
 
「親族の女性は4親等以内、つまり従姉妹までは事前申請すれば泊めていいですが、それ以上遠い親族はお断りさせて頂きます」
「なるほど」
 
お母さんは春休み中に一度姉を連れて出てきたいのでと言って、その時は連絡すると言った。家族idカードを作るので、お姉さんの写真をホームページから登録してくださいねと操作方法・手続き方法を書いた紙を渡していた。
 
お母さんは翌24日Blueでミューズ飛行場に送り届けた。例によって1人だけの搭乗に恐縮していた。
 

花ちゃんは青木由衣子に言った。
「苗字変えちゃう?」
「え〜〜〜〜!?」
 
「由衣子という名前は13画(実画式で数えた場合)で、とても良い画数なんだよ。だからこれに合う苗字を検索してみる」
と言って花ちゃんはパソコンを操作した。
 
「3+8画がいいな。これに相当する苗字は、山岸、小沼、三枝、上岡、・・・」
と見ていて花ちゃんは言った。
「大空または大岡がいい」
「へー」
 
「小も大も3画なんだけど、タレントの名前で“小”を使うというのは、可能性を制限するみたいで良くない。“大”の方がいい」
 
大空由衣子
総24◎才知豊栄 天11◎成長大樹 地13◎和合繁栄 人13◎和合繁栄 外11◎成長大樹
 
「大岡由衣子あるいは大空由衣子でどう?」
「大空由衣子が何となく好きです」
「よし」
 

「でもなんで苗字変わったの?と聞かれたら何て答えよう?」
 
そのくらい自分で考えろよと思ったが、花ちゃんは言った。
 
「姓転換しました、ということで」
「え〜〜〜〜〜〜!?」
 
しかしそういう訳で退団の意向を示していた子が全員退団を撤回したのである!
 
「ついでに性転換もしてみる?」
「考えておきます」
「男の子になったら同じ画数の大宙由衣子にする手も」
「男の子で“子”で終わるのは無いと思います」
「三木のり平さんの本名が“則子”と書いて“ただし”と読んだ」(*40)
「へー(←誰だろう?と思っている)」
「由衣子は“よしひこ”と読めるかも」
「無理〜」
 
(*40) 「則子」と署名していたら、字が汚かったことと、男で則子は無いだろうというので「則平」と出演者一覧に書かれてしまった。それで開き直ってそれを芸名にした。(芸能界では誤読されたのを芸名にしたというのは割とよくある話)
 

3月23日(水).
 
アクアの28枚目のシングル『静かなるVirgo』が発売され、その日の内に売上は100万枚を超えた。
 
今回のシングルには5曲収録されている。
 
『静かなるVirgo』(甲斐流星作詞・ケイ作曲)
4月1日から販売される小型ハイブリッド自動車“アクアのアクア”ver3 "Virgo" のCM曲である。
 
CM映像のフルバージョンがDVDには収録されている。日田のお雛様の前に立つスーツ姿のアクアとセーラー服姿のクロム、慈恩の滝の前に立つ2人、名物うどん店“ドライブイン古城”で釜揚げうどんを前にするアクア、美しいロックフィルダム(*41) 寺内ダムを背景に立つアクアなども入っている。これらはCM版では“ひな編”“滝編”“うとん編”“ダム編”として流されたものである。九州横断自動車道を走る“アクアのアクア”空撮映像も迫力である(←実際には大半は国際C級ライセンス持ちの千里が運転するのを空撮している)。
 
(*41) コンクリートでダムム堤体を作るのではなく大量の石を積み上げて堤を作り川を堰き止めたものを言う。とってもインスタ映えするスポットである。
 
筑後川水系には、レストラン古城近くにある夜明ダム、蜂の巣城の攻防で知られる松原・下筌ダム、福岡市の水瓶のひとつ江川ダムなど、多数のダムがあり、バイクツーリングにお勧めである。(ついでに鯛生金山や耶馬溪にも行こう)。
 

『陽気なフィドル』(ケイ作曲・森之和泉作詞)
ゴールデンウィークに放送予定の同名ドラマのテーマ曲に、森之和泉(KARIONの和泉)が歌詞を載せたものである。本来は歌詞のない曲だったので、作曲と作詞の順序が逆転している。
 
この曲はもう少し後で発売したかったのだが『静かなるVirgo』を早く発売したかったので、早めの発売になった。エレメントガードが伴奏しているが、曲中に入っているフィドルを演奏しているのはアクア本人である。フィドルのパートは下記の歌無し版とは異なる。
 

『哀しき羊飼い(trauriger Hirte)』(music and Zither performance by Georg Voigtmann)
 
ドラマ『陽気なフィドル』の中で使用された曲で、チター奏者のゲオルグ・ファイフトマンさんが演奏している。アクアは歌っていない。このCDの売上が大きかったのでファイフトマンさんは凄い印税を受け取ってびっくりしたらしい(思わず車を買ったとか)。
 
『陽気なフィドル(Fiddle only)』(Fiddle performed by AQUA)
 
ドラマ『陽気なフィドル』の中で使用された曲のオリジナル。葉月のピアノとアクアのフィドルのみで歌は無い。
 
フィドルを重奏している所があるが、多重録音ではなくアクアは実際に複数の弦を使ってひとりで重奏している。これはDVD版のほうで実際に演奏しているアクアを見ると確認できる。
 
このフィドルのパフォーマンスの映像でアクアは真っ青なドレスを着ており、顔も派手にメイクしている。その意味はドラマを見れば分かる。しかしアクアがドレスを着てお化粧しているというのでファンは喜んでいた。
 

『静かなるVirgo (karaoke)』
表題曲のオフボーカル版。ボーカルを抜いてミクシングしたものだが、その抜いたボーカルの代わりにメロディラインがフルートで入っている。このフルートはノンクレジットであるが、実際に吹いたのはアクアであることを§§ミュージックは認めた。ノンクレジットになったのは実は吹く人を決めていなかったためである。つまり印刷が間に合わなかったためノンクレジットになった。
 
DVD版ではCMのメイキング映像が収録されており、セーラー服姿のアクアに歓声があがっていた。先日の“ナナのセーラー服姿”でも言われていたが
「アクアのセーラー服姿可愛い」
「充分中学生に見える」
とこちらも評価が高かった。また慈恩の滝の“裏側”も映っており、この滝を知っている人の間から歓声が上がっていた。
 
(ナナのセーラー服姿を撮ったのはアクアM!で、自動車のほうは紳士用スーツ・セーラー服ともにFである。だいたいこの2人は期待されているのの逆をしている:Fのほうが運転がうまいので、このCMはFで撮った:普段からポルシェを運転してるから上手いのだと思う)
 

3月24日(木).
 
世田谷区のF中学で終業式が行われ、上田雅水(2年生“直江アキラ”)、松元徳世(1年生“長浜夢夜”)はいづれもセーラー服の制服で出席した。
 
ふたりはその日のうちに男子寮から女子寮に引っ越した!
 
上田雅水は男子寮405号室から、女子寮の姉・信希が住んでいる部屋C209号室に。松元徳世は男子寮402号室から、女子寮の元々指定されていて私物も置いていたA607号室に移動した。
 
2人とも4月からは足立区のE中学に女子生徒として通う。雅水はE中学の女子制服を12月に注文して既に受け取っている。彼女は自然に?性別が変わってしまったのでF中学在学中に男子から女子に性別が修正されている。
 
夢夜は元々E中学の(女子)制服を持っていた。これは元々彼女が信濃町ガールズに入った時、女子と思われて女子寮に入ってE中学に通うと思われていたからである。しかし
「ぼく男子です」
と本人が言ったので、入寮先は男子寮に変更され、制服も世田谷区F中学の女子制服を作り直した(←説明がおかしいぞ)。でも彼女はすぐに女子寮の部屋もリザーブされ、結構な荷物をこちらにも置いていた。女子寮に泊まっている日も多かった。彼女が実際には女性であることはすぐ判明したので(*42) キリのいいところで女子寮に移るよう言われていた。
 
ふたりが引っ越した後、男子寮402,405号室は業者さんの手で清掃・消毒が行われた。
 
(*42) セレンたちの推測では多分性転換手術済み。それもかなりの低年齢で受けたのではとセレンたちは推察している。「睾丸なんて小学校に入る前に取るべきものだよ」などと本人は言っていた。
 
彼女の父も性転換して女性になっており、両親は法的に婚姻しているビアン夫婦である。ほかに(天然女子の)姉1人、(性転換予定の無い)弟2人が居る。弟2人は父の性転換後に生まれた子供なので、父は生まれた時から女性だった。
 

3月24日(木).
 
隅田可愛(芸名:春野わかな)は豊島区の小学校を卒業した。卒業式には4月から進学する足立区のE中学のセーラー服を着て並んだ。彼女は既に女子寮に入居しているので、引越作業は無い。
 

3月24日(木).
 
各地で中学校の終業式があり、下記が出席した。
 
愛知県碧南市 鳴田あゆな(中1)
福井県越前町 糸川穂美(中1)
北海道北斗市 小野寺雪(中1)
佐賀県有田町 石田一絵(中1)
島根県雲南市 長岡飛鳥(中2)
 
小野寺雪は終業式が終わるとそのまま母の車で函館空港に向かい、数日分の着替えを入れた旅行バッグひとつで待機してくれていたHonda-Jetsilverに飛び乗った。
 
「荷物それだけですか?」
「はい。他の荷物は後で宅急便で送ります」
「なるほどー」
 
という訳で12時半に熊谷の郷愁飛行場に到着。15時頃、五反野の女子寮に到着した。女子寮4番乗りで、A304の部屋に入寮した。荷物がバッグひとつなので入寮受付をした花ちゃんが驚いていた。
 
また、福井県の糸川穂美は終業式が終わると中3の姉と一緒に、学校の校庭で待機していた両親の車に飛び乗った。車は両親が交替で運転して北陸道→名神→東名/新東名→首都高とトイレと給油に伴う休憩のみで走り、夕方20時過ぎ、足立区五反野の女子寮に到着。そのまま入寮した。女子寮5番乗りで、A305に入寮した、
 
その日はお姉さんと2人でA305に泊まり、両親は近くのホテルに泊まった。
 
3月24日の内に入寮したのは小野寺雪と糸川穂美の2人である。
(これが物凄く効いてくる)
 

愛知県の鳴田あゆなは当日は家族に激励会をしてもらい、引越荷物を車に積んで翌朝未明お父さんの運転で自宅を出た。そして3/25 10:30頃に五反野の女子寮に到着。入寮した。彼女はA306に入った。
 
佐賀県の石田一絵は佐々木春夏から27日までに入寮するよう言われていたなと思い、25日までは、のんびりとしていた。26日に朝から車に荷物を積んで父に佐賀空港まで送ってもらう。母と2人でHonda^JetRedに乗り熊谷まで飛ぶ。その後、SCCの車で五反野に運んでもらい、26日お昼過ぎに入寮した。
 
彼女が最後の入寮者で、A307に入った。
 

一方、島根県の長岡飛鳥は終業式の翌日3/25に Yellow で出雲空港から熊谷まで運んでもらい、SCCのドライバーさんに用賀の男子寮に運んでもら・・・うつもりだったのだが。
 
飛鳥が女子にしか見えないので、用賀は間違いだろうと気を利かせた運転手さんに五反野の女子寮に運ばれてしまった。
 
「君女子寮に入る?君なら入れてもいいよ」
と寮長の花咲ロンドから言われたものの、結局巡回バスで男子寮に移動して303号室に入居した。
 
男子寮は飛鳥の入居でこのようになった。
 
401 夢島きらら
403 鈴原さくら
 
301 三陸セレン
302 山鹿クロム
303 長岡飛鳥
304 花園裕紀(寮長)
 
203 杉本ひかり
204 立山煌
 
西宮ネオンは5階501に住んでいる。205.305.405は兄弟(姉妹?)用で直江姉妹(入居時は兄弟だった)が405を出た後は空いている。
 
「これで2階は男の子、3階は男の娘、4階は女の子になった」
などと川崎ゆりこは言ったが、その説には多分3人ほど不同意の人が居そうだ(夢島きらら・鈴原さくら・花園裕紀)。
 

「なんか男子寮の人数も随分増えてきましたね」
「15室の内現在8室ふさがっている。約半分だな。まあもし足りなくなったら、3階の住人、セレン・クロム・裕紀・飛鳥の4人に性転換手術受けさせて、女子寮に移動しちゃえば問題無い」
 
「またそんなこと言ってたら社長に叱られますよ」
「いやあ、こないだは、だいぶ搾られた。人権問題だって」
「どうかした事務所だとタレントに美容整形を強制する所あるらしいですね」
 
「人権問題だなあ。まあ502.503が空いてるから、仲の良いセレンとクロムをまとめて502に放り込む手もある」
「それが現実的という気がします」
 
「同じ部屋に放り込んだらビアンのカップルと思われたりして」
「ビアンになるんですか?」
「男性同性愛でないことは間違い無い」
「確かにそれは違います」
 

3月26日(土).
 
花咲ロンド(本名:大村祭梨)が通っていた大学を卒業した。
 
彼女は少なくともアクア以降の§§ミュージックで芸能活動をしながら大学を卒業した最初のタレントである。
 
コスモス社長からは
「よく二足のわらじで頑張ったね」
と褒められ、金一封をもらった。
 
西宮ネオンは大学に入りはしたものの、芸能活動と両立が困難になり途中で退学している。
 
中学生は法律で保護されているので学業絶対優先だし、高校生はある程度考慮してもらえるものの、大学生は仕事とぶつかる場合に全く考慮されないので、その中で単位を取れるだけの出席日数を確保するのはひじょうに大変である。
 
花咲ロンドは確かに歌手としてはそれほど売れていないがドラマとかにはよく出ており、途中でギブアップした西宮ネオンより仕事が忙しかったはずだが、本当によく頑張ったと褒めてあげてよい。
 
「寮に入ってて御飯が食べられたし、お父ちゃんが毎朝ショートメールで私から返信があるまでモーニングコールしてくれていたからかも」
と本人は言っていた。
 
毎朝起きるまでひたすらショートメールをしていたお父さんも全くご苦労様である。この卒業はお父さんのおかげかも知れない。
 
ネオンの場合は、当時は都内のマンションにひとり暮らしで朝御飯も食べずに学校に出るというパターンも多かったようである。彼が大学に入学したのは2018年で、男子寮ができて御飯に困らなくなったのは2020年夏である。
 
 
前頁次頁After時間索引目次

1  2  3  4  5 
【夏の日の想い出・二足のわらじ】(5)