【夏の日の想い出・二足のわらじ】(4)

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2022年2月22日(火).
 
アクアは前日のうちに山鹿クロム・千里と一緒に熊本空港に飛び、熊本市内で一泊したのち、この日の早朝、九州横断自動車道および国道210号で“アクアのアクア”ver3 "v
irgo" のCM撮影を行った。
 
“アクアのアクア”は2020年に最初のバージョン(通称:無印 or ver1)が発売され、その後、2021年に ver2 "Leo" が発売されたが今年は ver3 "Virgo" となった。今回は昨年秋に発売された、2代目アクア(MXPK1#型)のZグレード E-Four:電気式四輪駆動、をベースにしている。
 
また今回は2年ぶりの限定車、“舞音のアクア”、“シンデレラのアクア”も同時に発売されている。
 
この新形アクアの前に立つアクアの撮影、助手席にセーラー服姿の山鹿クロムを座らせて運転する(ようなふりをしている)アクア、などを撮影、実際にクロムを助手席に乗せてアクアが車を運転している所をドローンで撮影した。
 
リハーサルでは運転席に座り実際に運転したのは千里で、アクアはセーラー服を着て!助手席に乗っている。
 
「あのぉ、ぼくがセーラー服を着た意味は?」
「気にしない、気にしない」
 
なお本番でセーラー服のクロムを乗せたのは新バージョン "virgo" にちなんで“乙女”を乗せたこと(*27) 、クロムが乙女座の生まれだからである。セーラー服は衣裳であり、実際に彼女(彼だっけ??)が通っている中学の制服ではない。
 
なお、日田市に江戸時代から残る古い雛人形、慈恩の滝、まさに昭和の生きている化石“ドライブイン古城”(*28) などでも撮影している。
 
(*27) クロムはまだ性体験は無いはず:女かどうかは疑問があるが!
 

ver3 "virgo"の1号車は博物館に納められ、撮影に使用した2号車はキャンペーンに使用され、3号車をアクアがもらった。それでアクアが所有していた2台の“アクアのアクア”のうち #11 の方は花咲ロンドに譲った。
 
「これアクアが乗ったアクアのアクアとしてオークションに出したら高値で売れるよね」
「そういうことをしない人に譲っている」
「あれ?でもアクアって#11を使ってたんだ?てっきり#1 かと思った」
「アクアは2人居るから1人が#3、もうひとりが#11を使ってた」
「アクアって2人いるの〜?」
「何を今更」
 
なおアクアに渡したvirgo #3はこれまで使っていたのと同様、防弾ガラスを使用したVIP仕様である。
 

なお特別限定車の舞音のアクアの1号車は常滑舞音に渡された。実際の仕事での移動に使用される。ただしガラスが防弾ガラスに交換されている。
 
シンデレラのアクアの1号車は恋珠ルビーが“シンドルバット2”の中で使用する。撮影が終わった後どうするかは未定である。
 
舞音のアクアのエンブレムは黒招き猫、シンデレラのアクアのエンブレムはガラスの靴である
 

(*28) “ドライブイン”というのは、1960年代頃のモータリーション黎明期に全国各地に道路沿いに作られた駐車場を持つ飲食店のこと。1980年代以降はロードサイドのファミレスやファーストフードに取って代わられてきた。
 
当時からドライブインとしてやってきた店はかなり少ないものと思われるが、ドライブイン古城(金比羅うどん)はその数少ない生き残りのひとつである。九州横断自動車道ができる時、古城はどうなるだろうと筆者は個人的にかなり心配したのだが、日田IC近くに支店を作ってしっかり生き残っている。
 
2009年に奄美で日食を見るために九州に行った時、インター店ではなく本店のほうに寄ったが、昔と変わらぬ雰囲気で営業中であった。
 
(奄美に行くのにここを通ったのは、奄美空港に降りるツアーが満杯で鹿児島からフェリーで奄美に入るツアーに申し込んだものの、鹿児島行きの飛行機も満杯で取れなかったので、北九州空港に降りてそこから鹿児島までレンタカーで走って行ったからである。高速代節約で甘木ICまでは下道を走った)
 

2022年2月26日(土)から3月4日(金)まで長時間ドラマ『陽気なフィドル』の制作を行った。
 
『陽気なフィドル』主な出演者
 
フリック:アクア
馬・王妃:アクア
フリックの父:倉橋礼次郎
木こり:鴨居淳三
農婦:福衣裕子
クマ:樟南
魔法使い:獄楽
大臣:在杢
町人:釜倉
 
斬首人:キャロル前田
役人:メリー川本・ジェーン佐藤
 
商店主:秋風コスモス
商家の下働きの娘:今井葉月
貧乏な女3・女神:花咲ロンド
貧乏な女2:原町カペラ
貧乏な女1:石川ポルカ
魔法使いのメイド:花園裕紀
厩人:木取道雄
町人たち:§§ミュージックの社員
 
王様:太荷馬武
 
“ムーン”:セブンドリーム号
“スノー”:ホワイトスノー号
王様の愛馬:ギャラクシー号
 
語り手:馬仲敦美
 

王様役で、人間出演者の最後に表示された太荷馬武さんは
 
「ぼくがラストなの?もっとキャリアの長い人いるでしょ?」
と焦っていた。
 

花園裕紀は撮影現場に行くと最初に“走り幅跳び”をさせられた。3.14m飛んで「体力テスト合格」と言われた。ついでに「円周率だね」と言われた!
 
このドラマでは最初、厩舎の世話人役を王様(太荷馬武)およびフリック(アクア)との会話で演じた。
 
すると監督の美高鏡子さんが腕を組んで難しい顔をしている。ありゃあ不合格かなあ。どの辺が悪かったんだろう?と思ったら
 
「君はうますぎるから、この役にはもったいない」
と言われた。
 
それでメイド役になった!!
 
「ぼく女の子役なんですか〜?」
と不安そうに言う。
 
「できるできる」
と美高さんが言った。それで裕紀はメイド服を着てメイクの人にきれいにお化粧もしてもらって(*29) この役を演じた。
 
「信濃町ガールズって実力派揃いだねー」
と美高監督が笑顔で言っていたので合格だったようである。
 
それで厩舎の世話人役はコスモス社長の付き添い(実は運転手)で来ていた木取道雄さんが演じた。監督が難しい顔をしていたが、裕紀もこの人あまり上手くないなあと思った。しかし監督は木取さんで妥協したようである。悪役なので“身内”で処理したかったようだ。
 

(*29) メイク道具は自分専用のを持っている。普段の信濃町ガールズのレッスンの中にお化粧のレッスンもあるので、自分でも一通りお化粧はできる。
 
篠原君や立山煌君などは女役をすることはあり得ないということで、お化粧のレッスンは免除されていた。でも篠原君は『黄金の流星』では美しくメイクされていた!(木下君のメイク道具を借りたらしい)
 

「でもぼくが厩舎の世話人だった場合、メイドはどなたがする予定だったんですか?」
と裕紀は訊いた。その人の役を取っちゃって悪いかなと思ったからである。
 
「もちろん木取君が女装して」
と監督。
「え〜〜〜〜!?」
と本人。
 
「監督。それはあまりにも見るに堪えないので視聴者から苦情が来ますよ」
とコスモス社長が言っていた。
 
実際には信濃町ガールズの高卒メンバーの誰かを後で呼び出して撮影するつもりだったらしい。裕紀がまだ中学生なので土日の撮影の中で撮ってしまったということのようだ。
 

日曜日に撮影が終わった所で、今井葉月さんに声を掛けられた。
 
「寮に帰るなら、一緒に帰らない?」
「あ、はい。お願いします」
 
それで鐘崎絢水マネージャーが運転する“アクアのアクア” ver2 "Leo" に同乗して帰ることにする。鐘崎さんが運転席で、後部座席の運転手の後ろに葉月、助手席の後ろに裕紀である。
 
葉月は前席と後席との間のポリカーボネイト板を上げた。これで後席の会話は前席には聞こえない。この状態でもインターホンを使えば運転している人が後部座席の人に話しかけることは可能である。
 
「君、セーラー服着てるね。凄く上手いから高校生かと思ったらまだ中学生なんだ?」
 
スタジオや放送局に出入りする時は制服でというのがルールなので、裕紀はだいたい自分が通っている中学の女子制服で出入りしている。男子制服ではなく女子制服なのは、信濃町ガールズで活動していると、たいてい女性用控室が指定されるからである。
 
初期の頃は上は女子制服でも下はズボンを穿いていた。しかし最近は下も結構スカートを穿いていたりする。でもこの格好で学校に行く勇気は無い。それはセレン・クロムも同様である。
 

「はい。今中学3年です」
と裕紀は答えた。
 
「あっ。だったら今度は高校進学だね。今の時期、忙しくなかった?」
「いえ。入試は終わったので」
「あ、そうだよね。もう2月末だもん。公立受ける人はこれからだけど、タレント活動しながら公立高校に通うのは無理だし」
「ぼく、公立に行けるような頭が無いです」
「まああまり勉強する時間も無いしね。どこの高校に行くの?」
「まだ決めて無いんですけど、世田谷区のS学園か葛飾区のL高校に行くつもりです」
「S学園って寮のすぐ近くの?」
「はい。まだどちらにするか決めてないけど、時間が無いから制服は両方作っちゃおうと思っているのですが」
 
「S学園なら私が出た学校だから、良かったら制服あげようか」
「わぁ助かります!」
 
「まあサイズが合ったらね」
「はい」
「制服も高いもんねー」
「そうなんですよねー」
 

「だけどS学園に通うって、裕紀ちゃん性転換してたのね。元々女の子にしか見えないと思ってたから、そうなるのも自然なことだと思うけど」
 
「いえ性転換はしてません」
「え?でも男の子の身体のまま女子校に入ることはできないよ」
 
(↑葉月は自分のことを棚に上げている)
 
「それが・・・」
と言って、裕紀はここまでの経緯を説明した。
 
・3月末で退団しようと思ってたこと。
・それで実家のある埼玉の高校に行こうかと思っていたこと
・でも思い直して信濃町ガールズを続けることにしたこと
 
・それで都内の高校で今からでも願書を受け付けてくれる所を探したらS学園、多摩市のF学園、葛飾区のL高校しか残っていなかったこと。
 
・取り敢えずその3つに願書を出して受験した結果、F学園には落ちたが、S学園とL高校に通(とお)ったこと。
 
・それでS学園は女子校だし、L高校は共学だけど男子寮からは通学困難なので女子寮に移ることを勧められていること。
 
・でもS学園に入るには性転換して女の子の身体にならないといけないし、女子寮に入るなら、おっぱいも大きくして割れ目ちゃんも作ってねと、ゆりこ副社長から言われたこと。
 

葉月は腕を組んだ。
 
「ゆりこ副社長の、女子寮に入るにはおっぱい大きくしてねというのはジョークだと思う」
 
「そうなんですか〜?」
「事務所がタレントに性転換してとか言う訳無いじゃん」
「言われましたけど」
「だからジョークだよ」
 
と言って念のためと言って葉月はコスモス社長に電話して、女子寮に入るのに性転換は必要かと確認してくれた。コスモスの返事は単純である。
 
「女子寮に入れるかどうかの基準は、女子との性交が可能かどうか。裕紀ちゃんは現時点で女子との性交が不可能だから(*30)今の身体のまま女子寮に入れる」
 
コスモスは補足する。
 
「セレン・クロムを女子寮に住まわせないのは、彼らがまだ男性能力を持っているから。あの2人が女子を襲うような子でないのは分かっているけど女子の寮生から逆レイプされる危険があるからね。男女が同じ部屋に入る時は必ず3人以上というルールは“男子”を守るためのメール。裕紀の場合は既に男性能力が無いから逆レイプのしようがない。だから本人さえ希望すれば、別に性転換とかしなくても女子寮に住むのは全然構わない。ま、女子寮生から覗かれたり解剖されるかもしれないけど気にしなければいい」
 
ということで途中から裕紀本人と代わり、ゆりこのはいつもの冗談だから気にするなと言われた。
 
ということで、性転換するつもりが無ければ裕紀の進学先はL高校の一択で、女子寮に引っ越せばいいということであった。
 
「よかったぁ」
と裕紀は胸をなで下ろした。
 
これで男の子にサヨナラしなくても済む。
 
(↑ほんとうに現在男の子なのか大いに疑問があるのだが。彼はもう1年以上自分のペニスを確認していない)
 

(*30) コスモスは女子寮生たちの噂から、裕紀が既に陰茎・睾丸を除去済みと思い込んでいる。
 

「あ、じゃS学園の制服を頂ける話はパスで」
 
「もらっとけば?どうせ放送局に入る時は女子制服でしょ」
「あ、そうなんですよね。だいたいこれまでも今着ている中学の女子制服使ってました」
「それ用に取っておけばいいよ。それともL高校の女子標準服作る?」
「あまりそういう展開にはしたくないです」
-
「でもこれ。私が高校に入った時に似てるなあ」
と葉月は言った。
 
「何かあったんですか?」
「いやあ、あの時は参った」
と笑いながら葉月は言う。
 
「私アクアの代役で物凄く忙しかったからさ。高校の入試について情報収集する時間も無くて。願書出した全ての高校に落ちた、と思ってたんだけどね。S学園は用紙だけもらっていて受けるつもりがなくて記入もしてなかった。ところが母に印鑑もらいに行った時、その用紙もあったもんだから母が勝手に記入して一緒に出してくれてたんだよ。自分では、2次募集もいくつも受けたけど、全部落ちて、もう行き先が無いと思ってたけど。実はS学園が通ってたからここに入ったんだよ」
 
(↑話の脚色が酷い。しかしあの複雑な事情を他人に説明するのは無理。そもそも全貌を理解している人が誰も居ない。千里はきれいさっぱり忘れてるし)
 
「2次募集!?」
 
「だいたい3月中旬から定員に満たなかった高校が二次募集をすることがある。思った以上に入学辞退者が出た時、あまりにも定員より少ないと文部科学省から叱られるし補助金も減らされる。だから二次募集を掛けて定員を埋めるところがあるんだよ。概して滑り止めにされるような低位校が多い。でもどの学校が募集するか、どのくらい取るかは分からない。だいたい3月中旬から掲示が出るから気をつけてないと見落とす。裕紀ちゃんの場合も、通いやすい高校の二次募集があったらすぐ応募するといいよ」
 
「そうします!」
 

やがて用賀に到着する。
 
葉月さんはここの6階243号に住んでいる。
 
男子寮に女性の今井葉月が住んでいるのも不思議だが、元々ここは葉月さんが以前住んでいたアパートを建て替えてマンションにしたもので、§§ミュージックはこのマンションの1〜5階を借りて男子寮として使っているのである。だから葉月さんの戸はここのオーナールームである。
 
6階にはもうひとつ戸があり、そこには大宮万葉先生の友人さんが住んでいると聞いた。何度か顔を見たが凄く頭の切れそうな女性である。上場企業の秘書室に勤めていて社長の運転手を務めているらしい。寮の駐車場に派手な色のアクアが駐めてあるが、それがその人の個人の車と聞いた。
 
各々のidカードで建物内に入ったあと、葉月のidカードで6階まであがる。裕紀のidカードでは4−6階に入ることはできない。
 
「ここ、なんで6階なのに243号室なんですかね」
「“ふしみ”の符合なんだって」
「へ?」
「伏見のおキツネさんたちと繋がるものが置いてあるんだよ。まああまり気にすることはない」
「へー」
 
それで葉月さんと一緒に243号室に入る。大きなお腹を抱えた桜木ワルツさんが
「いらっしゃーい、花園裕紀ちゃん」
と歓迎してくれた。
 
「赤ちゃん、予定日はいつですか?」
「うん。予定日は3月9日だけどね。初産は遅れがちというから少し遅れるかもね」
とワルツは言っている。
 
裕紀は、女同士で子どもができる訳無いから、葉月さんの兄弟とかから精子をもらって赤ちゃん作ったのかな?などと思った。もちろん父親のことは聞けない。
 

「これなんだけど合うかなあ。裕紀ちゃん、背丈があるし」
と葉月は奥のタンスから女子制服を出してきて言った。
 
確かに裕紀のほうが葉月よりも背が高い。しかし試着してみると特に問題なく着ることが出来た。
 
「じゃ夏服・冬服ともにあげる」
「ありがとうございます。助かります」
 

その後、勧められて食卓に座り、お茶とお菓子を頂いた。
 
「すみません。もらってばかりで」
「若い内はそれでいいんだよ。その内たくさん稼げるようになったら後輩におごってあげればいいんだし。私もよくゆりこちゃん(川崎ゆりこ副社長)やみちるちゃん(桜野みちる:桜野レイアの姉)から言われたよ」
「そんな日が来たらいいですけど」
 
「まあこの世界毎年100人くらいの歌手がデビューして、1年後まで生き残るのは10分の1、2年後まで残るのはその半分、なんて世界だからね。俳優はその10倍規模だけど、減衰も激しい」
「全くそうですね」
 

昇格試験に合格した兵庫県の杉本ひかりは、§§ミュージックから荷物が届いていたので開けて中を見た。中学の制服である。向こうの中学に進学することになるので、そこの制服だろう。
 
「わぁ」
と思って、取り敢えず着てみる。鏡に映してみると何だか可愛い。
 
母が戸惑ったような顔をしている。
 
「あんたその服で新しい中学に通うんだっけ?」
「通ってみたーい」
と本人。
 
「あんた結構そういうの似合うね」
と姉も言っている。
 
母は、いいんだっけ?と思いながらセーラー服を着た“息子”の姿を見ていた。
 

連絡を受けた佐々木春夏は
「ごめーん。間違った。だったら男子制服を作ってそちらに・・・じゃなかった。君は男子寮に入ることになるから、通う中学が違ってくるよね。すぐ手続きするね。制服はあらためて作り直して送るから」
と答えて、すぐに中学に連絡する。
 
この時、新採用にはもうひとり男の子がいたはずと思い出し、名前を確認して世田谷区の中学に連絡し、そちらに転入生を2人受け入れて欲しいと頼んだ。そして足立区の中学には2人転入がキャンセルになったことを伝えた。
 
そして長岡飛鳥の分の足立区の中学の女子制服を頼んでしまっていたのは放置して、世田谷区の中学の制服を作ってくれる業者さんに、料金は倍払うから急いで制服を作って欲しいと頼み、ふたりの採寸表をFAXした。
 
(↑重大なミスをしている気がするぞ)
 

2月27日(日). 男子寮の201,202に住んでいる三陸セレン・山鹿クロムは
「新しい子の部屋を確保したいから301,302に引っ越して」
と言われて2階から3階に荷物を移動した。
 
「ぼくが301でクロムが302ですか?」
「どっちでもいいよ」
と、ゆりこ副社長。
 
「なんかぼくたちどちらがどちらでもいいと思われているみたい」
「まあだいたいセットだね」
 
引越は鈴原さくら・長浜夢夜なども手伝ってくれた。花園裕紀はドラマの撮影中である。立山煌は
 
「女の子の部屋の荷物に触るわけには」
と言って、部屋の中には入らず、重たいもの(本の入った箱など)の移動だけ手伝ってくれた。
 
移動後、業者さんによる清掃と消毒が行われた。
 

2月28日(月).
 
門脇真悠(芸名:大崎忍)は3年間住んだ赤羽駅近くのマンションから用賀の男子寮寮母室に引っ越した。彼女は赤羽駅近くにあるC学園高校に通っていて、そこに近いマンションで暮らしていたが、明日は卒業式だから、そこを出て両親や妹(元弟)が住む所に引っ越すのである。
 
学校は明日までだが、この日に引っ越したのは2月中だと引越屋さんが安いのと、平日だと益々安いためである。マンション自体は年契約なので住んでもいても住んでいなくても3月20日までの家賃は支払わなければならない。
 
元々真悠は2016年のロックギャルコンテストで3位になり、信濃町ガールズに入るのにひとりで東京に出てきた。当時中学1年生だった。当初別のマンションに住んでいたが、2019年3月にC学園高校に進学するとともに赤羽に引っ越した。
 
2020年、真悠の父が東京に転勤になった。急な辞令で住む所を探している時間が無いので、一時的に赤羽の真悠のマンションに両親と弟が引っ越してきた。当時は1Kのマンションに親子4人が住んでいるという凄い状態だった。
 
その頃ちょうど§§ミュージックは男子寮を作ろうとしていた。ケイとコスモスは、タレントの母親というのが寮の管理人として最適と考え、真悠の母に寮母を頼めないかと打診した。
 
それで両親と弟は、男子寮の寮母室に引っ越したが、真悠本人は通学の便の問題で赤羽のマンションに住み続けた。しかし今回卒業するので、両親たちの所に同居することにしたのである。
 

真悠の2つ上の姉・晶は香川県の大学に通っており、元々大学近くにアパートを借りていた。現在もその大学に通学中である。
 
真悠の4つ下の瀬那は徳島県に居た頃は男子小学生だった。しかし2020年に中学に進学する時、ちょうどコロナ下で学校の授業がリモートになっている状況を利用して、女子制服を着た写真を学校に提出。その写真が貼られた生徒手帳が発行された。瀬那本人を見た中学の先生は瀬那を女子だと思い込み、小学校から送られてきた書類上の性別が男子になっているのは間違いだと思って性別を女子に訂正してしまった。
 
しかしそのままだといづれ戸籍上は男子であることがバレていたと思うが、授業の頻度が少ない中、ばれる前に東京に転校してきた。それで転校元の中学校の書類で瀬那が女子になっているので、東京の中学でも女子として受け入れられた。
 
つまり、中学に入った後、すぐ転校したというのが大きなポイントである。
 
それで瀬那は現在女子中学生をしているのである。彼女は小学5年生の時から女性ホルモンを飲んでいたので充分なバストがあるし声も女の子のような声である。睾丸は姉・真悠の勧めで除去済み。お股も常時タックしているので、女子中学生として全く破綻せずに過ごしている。
 
その瀬那も4月からは中学3年生である。1年後には高校に進学する。真悠は瀬那に「女子高に入っちゃえよ」と唆している。
 
「でもさすがに女子高はバレないかなぁ」
「夏休みの内に性転換手術受けちゃえばいいよ。手術代は出してあげるよ」
「どうしよう?」
 

2月28日(月)、学校が終わってから花園裕紀は寮で普段着に着替えた後、SCCの車でL高校の標準服を作っている衣料品店に行き、採寸してもらって注文をした。しかしここまで来るのに寮から2時間近く掛かったので、やはり女子寮に引っ越さないと葛飾区の高校に通うのは無理だなあと思った。
 
でも女子寮に入ったら絶対“解剖”されるよね?コスモス社長は気にするなと言ったけど、あれ恥ずかしいよぉ。
 
まあ二次募集でどこか別の高校に行くことになるかも知れないけど、ここに行くかもしれないから念のため作っておく。今混んでいるので3月20日くらいの仕上がりになると言われた。
 

3月2日(水).
 
AT3名義のデビュー?シングル『パスケースとオムレツ』が発売された。ここでAT3とは“あけぼのテレビ3人娘”の略で実際には、鈴鹿あまめ・夕波もえこ・古屋あらたの3人である。
 
これは昨年秋のあけぼのテレビの歌謡番組で、古屋あらたが司会をしていて、出演者のスリルボカンにからがわたのをうまくボケて切り抜けた時のことが元になっている。
 
「あんた1ヶ月に何回くらいオ***するの?」
「オムレツ得意だから5〜6回作りますよ」
「今何色のパ***穿いてる?」
「パスケースはライトグリーンです」
 
番組終了後に注意されたスリルボカンは謝って、おわびにと言って古屋あらたにこの曲を書いてくれたのである。それをこの3人で歌うことにした。伴奏音源はスリルボカン自身で作ってくれたので、AT3はその音源に歌を乗せた。
 
歌詞はオムレツ作りが得意な女子中生がライトグリーンのパスケースに入れた定期券(「TB←→AT3」と書かれている(*31) )を持って出掛けて行くという日常風景?を描いたものである。
 
(*31) "TB"は Tera Byte でも結核(Tuberculosis) でもテッカマンブレードでもタイムボカン (Time Bokan) でもなくスリルボカン (Thrill Bokan).
 

何の変哲も無い歌詞だが、スリルボカンの小気味好い伴奏に3人のボーカルが時にはハーモニーを作り時には呼び合うようにして、気持ち良いサウンドになっている(ボーカルアレンジ:醍醐春海)。
 

c/wは、水野歌絵作詞・北沢晶菜作曲『オムライス・ロック』で、オムライスへの讃歌となっている。
 
3人がオムライスをたくさん食べている映像が出ている。オムライスを作っているのは、アクア!である。
 
(アクアだからジョークになる。他の人だと落ちぶれてサポートに回っているように見える。演じたのはFだが、本人は息抜きになって楽しかったと言っていた)
 
伴奏をしているのは4人の男の娘? Gt.山鹿クロム B.三陸セレン Dr.花園裕紀 KB.鈴原さくら である。実際にこの4人が伴奏している。花園裕紀はピアノもうまいのだが、この4人の中できちんとリズムキープして正確にドラムスを打てるのが彼だけなのでドラムスを打ってもらった。
 
この4人は後述、ホワイトデーの番組でもAT3の伴奏をした(生伴奏)。
 

3月2日は、舞音withスイスイ『こどものうた・はるのうた』がリリースされているがアルバムなので別統計である。シングルでは姫路スピカのシングルも出ているが、3月7日(月)に発表されたウィークリーランキングで、スピカ、WindFly20に次ぐ3位になっていて本人たちがびっくりしていた。
 
このシングルはゆっくり売れて3月末には10万枚を突破。AT3は初シングル・初ゴールドを記録することになるが、本人たちは「おまけ、おまけ」と言っていた。
 

桜木ワルツは3月3日に女の子を産み落とした。赤ちゃんは比奈(ひな)と名付けられた。
 

千里は眷属に命じて高岡市の土地を探させていたのだが、青葉の家の隣の土地が売りに出ていることに気付き、すぐコスモスに連絡を入れた。
 
「広さは?」
「約86坪。道路に面した家の内側だけど、幅2mの取付道路があるから、ちゃんと再建可能物件になってる。その道路を除くと76坪。約19半間×16半間。後面は青葉の家の境界と同一直線で保育所の庭に接している」
「じゃ音を出しても平気ですね」
「わりとそうだね」
「19×16半間ならどのくらいの建物を建てられます?」
「建蔽率を考えて最大11×14半間くらいだと思う」
「そのくらいあれば充分ですね。弁護士を行かせますから買い取ってくれませんか?」
「OKOK。取り敢えず仮押さえしておく。§§ホールディング名義?」
「面倒だから私の個人名義で。建てるスタジオも私の個人名義で。“仕事の早い工務店”にお願いしたいのですが」
「了解。誰かそちらに行かせる」
 
ということで青葉が熊谷で若杉千代のトリビュートアルバムの編曲作業をしている間に、知らない所で伏木スタジオ建築計画が進行していたのである。
 

3月9日(水).
 
“北里ナナ”名義の10枚目のシングル『ナチュラル・ルージュ』が発売された。発売日に即100万枚を突破した。
 
2曲(+Karaoke)入りの構成である。
 
『ナチュラル・ルージュ』(加糖珈琲作詞・琴沢幸穂作曲)
 
K化粧品の新しい口紅シリーズのCM曲である。CM映像ではアクア自身がこのルージュを付けて美しくメイクしているところが映っている。この写真のポスターは全国のドラッグストアなどに多数貼られたが、ポスターが欲しいという人が相次ぎ、K化粧品では§§ミュージック側の許可を取り大量に増刷して全国の販売店に配布した。
 
DVDにはこのCMのフルバージョンが収められている。
 
『スクールガール』(夢倉香緒梨作詞・醍醐春海作曲)
 
北里ナナが中学校・高校の冬制服・夏制服を身につけている、想い出アルバム的な構成のMVが話題になった。「ナナちゃん、まだセーラー服充分行ける」という声が高かった。中高生時代の甘酸っぱい恋の想い出を歌った曲である。
 
アクア自身は
「ぼく恋っていまいちよく分からないんですけどね」
とは言っていたが。
 
(↑半同棲している子がよく言うよ)
 

3月9日(水).
 
1日にM高校を卒業した篠原倉光が男子寮(303号室)から岩槻の社員寮に引っ越した。これで招き猫のメンバー全員が社員寮に集まったことになる。引越は卒業後すぐしたかったのだが、忙しくて時間が取れなかった。
 
男子寮の3階は満杯だったが1つ空いた。
 
301 三陸セレン
302 山鹿クロム
303 篠原倉光→転出
304 花園裕紀
 
もし花園裕紀が女子寮に引っ越したらもうひとつ空くことになる!
 

3月10日(木).
 
石川県輪島市の中学校に通う福井貴京(ふくいたかみ)(*32) は、卒業式に臨み中学校を卒業した。彼女は金沢市内の私立高校に既に合格しており、今月中に母と一緒に!金沢市内に新たに建てた家(*33)に引っ越す予定である。
 
彼女は上島雷太と作曲家・福井新一(本名:福井玲花)の間の子供で、木原扇歌・花咲鈴美(本名:花村律子)の妹である。この3人は母は
違っても姉妹という意識を強く持っており、小さい頃から仲が良かった。
 
(木原扇歌が男性的な性格なのもあり(見た目も男性的だが)、特に鈴美と貴京の仲が良い。毎日のようにLINEでおしゃべりしている)
 
また彼女は後のフラワーガーデンズのメンバーのひとりでもある。
 
福井新一さんは男社会の作曲家の世界で軽く見られないように男名前を名乗っているだけで、FTMではない。
 

(*32) 貴京(たかみ)の名前を一発で読んだのは、青葉と千里のみである。友人たちからは大抵“ききょうちゃん”とか“きーみん”と呼ばれており、姉の扇歌と律子までキキョウと呼んでいる。
 
(*33) 青葉が家を建てると聞き、自分も建てるつもりなのだがと照会し、“安くて速いけどお勧めしない工務店”に頼んだ。ユニット工法でわずか1200万円だったので即金で払った。土地代は2000万円でこれも即金で払っている。
 

しかし何よりもあっという間に(約一週間で)できたので、受験の時にもそこに泊まることができてとても助かった。2階建てなのに階段が無かった!のは言ったらすぐ階段ユニットを取り付けてくれた。迷惑掛けたお詫びにといってエレベータまで付けてくれた。東雲はるこの実家に作ったのと同様、降りる時は重力で降り、しかもそのエネルギーをキャパシタに貯めてその電力で上昇するのでとっても省エネなエレベータである。
 
新しい家には祖母(新一の母)の部屋も確保している。新一さんは母にも金沢に一緒に行かないかと言ったものの自分は輪島から動きたくないというので、申し訳無いが置いていく。貴京が高校在学中は分離生活になる。貴京が高校を卒業した後はどうなるか未定である。貴京は東京の大学に行きたいと言っているので(東京の大学を狙うために金沢の進学校に入った)、新一はその時は輪島に戻るかも知れない。
 

3月12日(土).
 
あけぼのテレビではこの日から昨年もやった桜レポートの番組を開始した。約1ヶ月半にわたり桜前線を追いかけて行く。この日は奄美から開始した。
 
レポーターは昨年春は南田容子、秋は三田雪代が務めたのだが、今回はどちらも予定が入っていたので、山口暢香に交替した。レポーターはこの2組である。
 
山口暢香+山口香里奈カメラ(山口コンビ!親戚とかではない)
柳川裕希カメラと+夫でドライバーの春孝さん
 
山口暢香が3月いっぱいで辞める場合は、三田雪代の予定を何とかして空けて再度やってもらおうと言っていたのだが、続けてくれることになったので、この仕事を依頼した。山口は
 
「辞めないと言ったら、いきなりハードな仕事が来たぁ!」
と悲鳴をあげていた。
 
山口は退団した後のことを考えて運転免許を取っていたので、今回の仕事では一部運転も担当することになった(若葉マーク持参で全国を走り抜ける)。
 

例によって、ロケハン担当スタッフが事前に桜の様子を見て、地元の名物をクール宅急便で東京に送り、スタジオでもレポーターと同じものを味わうシステムである。(ロケハン担当も全国を走り抜けることになる)
 
今回スタジオでグルメを味わうのは、松島ふうか+水谷姉妹である。昨年春は常滑舞音と水谷姉妹、秋は夕波もえこ+水谷姉妹だったが、メインキャスターだけ交替した。
 
水谷姉妹はライブではかなりMCに起用されているが、番組放送のメインキャスターにするにはまだ力不足である。
 
この番組は黒猫運輸さんがスポンサーで、舞音withスイスイが歌う『夢運ぶ春のうららの黒猫便』が番組のテーマ曲として使用された。この曲は3月16日に発売予定である。
 

その日、理史が八王子の龍虎の家に来て泊まり、翌朝おキツネさんたちにお赤飯をあげようとサンルームに行った時、理史は言った。
 
「南の対(たい)ってあんなに大きかったっけ?」
「ああ。ぼくも改築されてたからびっくりした」
と龍虎は言っている。
 
「やはり改築されたんだ!?」
「まあ今までがハリボテの建物置いてたのをきちんと作ったんだけどね」
 
この家は最初九重が“こんな感じで作ります”と言って、本殿と西南北の3つの対(たい)のハリボテを置いてあったのだが、その後、西の対は本気でユニットルームを並べて客用寝室とし、北の対はガレージを設置した。それで南の対のみがハリボテ状態だったのを、やっと本当に作ったのである。
 
昨年5月からこの家を造り始めて、とうとう4つの中核建物が完成したことになる。
 
(九重は暇な時に唐突に思いついては勝手にこの家を改造している)
 

「見る?」
「うん」
 
というので、おキツネさんたちと少し交流してから見に行く。
 
「これは凄い」
「縦横高さが全部14mのオペラハウス。音響的にはいちばんいいサイズらしい」
「へー」
 
「今度やる映画『お気に召すまま』のシェイクスピア時代に初演が行われたのはWilton Houseというカントリーハウス(*34) なんだけど、そこにはシングルキューブルーム (The Single Cube Room) という部屋があってね、縦横高さが全部30フィート(約9m)なんだって。こういう立方体というのが最高に音響がいいらしい」
「なるほどー」
 
「たぶんそこに入りきれない客を収納するために作ったんだろうけど、 Wilton House にはダブルキュブルーム (The Double Cube Room) という30ft×30ft×60ft (9m×9m×18m) の部屋もある」
 
「カントリーハウスって別荘だよね。さすが昔の貴族様の別荘は巨大だね」
「平安時代の日本の“院”とか、近代の皇族の離宮とかの感覚に近いと思う」
「なるほどー」
 
(*34) カントリーハウスは16世紀以降、主として新興市民層が田舎に所有した巨大な別荘である。所有者はむしろ貴族ではなく市民である。多くは16世紀に解体された修道院の建物をそのまま利用、或いはその土地に新たに建て直したりしたもの。Wilton House は東京ディズニーランドのシンデレラ城の倍の面積を持つ立派なお城である。
 
イングランドは修道院の土地を強制的に収用したものの、度重なる戦争で多額の費用がかかり、これらの土地を売却して費用に充てたので、これらの土地が結果的に新興市民層のものとなった。
 

3月14日(月).
 
この日はホワイトデーである。§§ミュージックのタレント宛てに大量のプレゼントが届く。
 
例年だと2月14日に合わせてアクア宛てのチョコが大量に届いていたのだが、今年アクア宛てのヴァレンタインは例年の半分以下だった。しかしその減った分が倍になってホワイトデーに押し寄せてきた感じだった。
 
熊谷のプレゼント仕分け場は2月21日(月)あたりから荷物が増え始める。
 
コスモスが、今年はヴァレンタインが少ないというのを聞いてスタッフを増やしたので何とかなった感じだった。それでも物凄い数が押し寄せ、その増員したスタッフが2月25日(金)あたりから超多忙になり、
「君たち、お友達でやってくれる人がいたらぜひ連れてきて」
と言って更に増員をした。
 
それで結局、アクア宛てのホワイトデープレゼントは例年のヴァレンタインプレゼントの倍ある感じだった。やはり紅白歌合戦に紅組から出たこともあり、“アクアは女性タレント”というのが確定した雰囲気である。
 
これに、常滑舞音宛てのプレゼントが凄まじかったし、ラピスラズリ宛て、姫路スピカ・白鳥リズム宛て、水谷姉妹宛、セレン・クロム宛て、鈴鹿あまめ・夕波もえこ・薬王みなみ、水森ビーナ、羽鳥セシルなどに宛てたものも多かった。
 
ファンクラブや、その他雑誌などでも「プレゼントは実物ではなくクーポン券の類いで」と呼びかけていたおかげで7割くらいがクーポンだったが、全部を実物換算したらトラック300台分くらいある感じだった。
 
これらをいつものように、G450, CRJ200×2, A318 などで全国各地に運び、各地の児童福祉施設などにプレゼントした。これらの費用と、仕分けの費用、実物で送られてきた分の検査費用、検査不合格分の廃棄費用、お礼状の発送費用は全部で2億円を超えている。全くこの手の行事は事務所に多大な費用を掛けさせるイベントである!
 

この日あけぼのテレビではホワイトデーの特集番組が放送された。
 
前半は信濃町ガールズたち(の内時間の取れる子)が総出演するドラマである。立山煌演じるサッカー部補欠の男の子が好きな女の子(山鹿クロム!)に告白を成功させ、サッカー部でもスターターに使ってもらえるまでを描いている。先月バレンタインで甲斐絵代子演じる主人公が好きな男の子(白鳥リズム)に告白を成功させたドラマの男女逆転版という感じである。
 
信濃町ガールズに男子のメンバーが少ないので、サッカー部のチームメイトを演じたのは、大田区内の中学のサッカー部の皆さんである。撮影もそこの練習場で撮影させてもらった。
 
主人公の幼なじみで彼の告白を後押ししてあげるサッカー部の女子マネージャーとして三陸セレンが出ている。セレンがセーラー服を着ると女の子にしか見えないので
 
「え〜〜?男の子なんですか?」
とゲスト出演してくれたサッカー部の部員たちが驚いていた。
 

ブレゼント仕分け場からの生中継(レポーター:三田雪代)があり、全国の児童福祉施設にお菓子がプレゼントされる様子が、あけぼのテレビと協力関係にある全国各地の地方ケーブルテレビからレポートされた。
 

後半は松島ふうか(一部薬王みなみ)が司会を務めて歌謡ショーが行われた。下記が歌った。
 
原町カペラ
姫路スピカ
AT3(鈴鹿あまめ・夕波もえこ・松島ふうか)
VOS(ヴァンドール+大崎忍)
恋珠ルビー&花貝パール
アクア
 

千里はその日、東京からHonda-JetYellowで飛んで来たコスモスの弁護士さんと一緒に不動産屋さんに行き、昨日のうちに仮押さえしておいた土地の購入手続きをした。代金はコスモスにメールしたら即振り込んだので購入手続きはすぐに完了。そのあと法務局に行き、土地の名義人変更の手続きをおこなった。
 
千里は弁護士さん、播磨工務店の南田弟とともに現地に行き、正確な測量をして写真もたくさん撮った。作業していたら朋子が出てきて、一同にコーヒーをくれた。朋子はお隣に土地を買ったと聞くとびっくりしていたが、これで青葉がお隣で作業できるようになると言うと、歓迎だと言っていた。
 
「あの子なかなかうちに戻れないとこぼしてたし」
「世界水泳の後は多分1年くらい伏木に居ますよ」
と千里は言った。(←妊娠させる気満々)
 
帰りのYellowに南田弟と弁護士さんが一緒に乗って東京に戻る。その日の夜、コスモスと南田弟でスタジオの設計図を作成した。
 

3月14日(月)のお昼。桜木ワルツから花園裕紀に電話が掛かって来た。
 
「おはようございます」
「おはよう。M高校の二次募集の掲示が出てるよ」
「ほんとですか?」
 
きっと多忙な葉月に代わって気を付けておいてくれたのだろう。
 
「締め切りは明日までだからすぐ願書出したほうがいい」
「そうします。ありがとうございます!」
 
「ほかに女子寮にとっても近いT女子高校も二次募集が出てるけど」
「そちらはパスで!」
 
それで裕紀はその日学校が終わったら寮にも帰らず直接M高校に行き、その場で願書の用紙をもらい記入して提出した。
 
「あら。あなた性別が男にO付いてるけど」
「ぼく男子ですー」
「ああ。弟さんの代理で提出しに来たのね」
 
本人が男であるというのは想像困難であるようだが、裕紀は説明が面倒なのでいいことにした。受験料は必要になるかも知れないと思い少々現金を持っていたので払うことができた。
 
(彼はこの後あけぼのテレビに行き、ホワイトデー特集に出演した)
 

3月15日(火).
 
§§ミュージックが昨年夏に頼んでいたホンダジェットの追加機体が2機納入された。これまで使用していた機体の内、Blue以外は Elite というタイプたったのだが、今回納入されたのは昨年秋に発表された EliteS というタイプである。納入された機体の色は下記である。
 
Gold
Deepsea Blue
 
それでこれまでBlue(定員1+6)を使用していたラピスラズリは、このDeepSea Blue (定員1+7)に乗り換えることになった。Gold の方は今の所空いている。
 
しかしホンダジェットが2機追加されて運用に少しゆとりができたので、Tigerは塗り直しすることにして、いったん運用から外した。この機体は夏頃までには塗り直す条件だったのである。単色で塗る手もあったのだが、虎さんの絵がいいとみんな言うので、絵の上手い夕波もえこに原画を描いてもらい、それをもとに新しい絵を描くことにした。
 
Tigerは、主としてあけぼのテレビで使用していたのだが、塗り直しが終わるまではGoldを使うことにする。
 

映画『黄金の流星』でアクアの出番がとっても増えた経緯はこのようであった。
 
この企画は最初2時間ドラマとして計画された。
 
ところが話を聞いた大和映像がベルヌ作品というので興味を示し、結局この作品は映画として制作されることになる。これが2月頃の話である。それで予算が当初の3倍になり、原典のフランス語が読めるということで、フランス人の夫を持つ脚本家レイモン紀子さんに脚本が依頼された。レイモンさんは当初日本語で脚本を書き始めた。
 
ここでモンド・ブルーメがアクア映画というので、この企画に興味を持ち、映画は日独共作とし日独英仏4ヶ国語で配給するという話になる。これで予算はまた3倍(当初の9倍)になった。
 
それでレイモンさんはこの脚本をフランス語で書くことにし、イギリス人、ドイツ人の脚本家が、レイモンさんのフランス語脚本を見て各々英語版・ドイツ語版の脚本を書くことになる。日本語脚本はフランス語が分かる稲本亨さんに引き継がれた。それで実はこの物語の最初の方の日本語脚本は実際にはレイモンさんが書き掛けだったものが流用されている。
 
この体制で当初スタジオに砂糖を播いて撮影しようかなどと言っていた後半のグリーンランド編が、醍醐春海が所有する北海道の島で撮影できる見込みが立ち、かなり質の高い作品が作れそう・・・ということになってきた3月中旬。
 
モンドブルーメの世界戦略部門から注文が付いたのである。
 

この作品を日独英仏4ヶ国語だけで配給したとしても、アクア主演であれば、他の国からも再配給してほしいという要求がある。その時、宗教規律の厳しい国とか政府統制のきつい国ではカットしなければならない場面が出てくるが、主役のアルケイディアとセスが何度も結婚・離婚を繰り返す部分がそういう国では宗教指導者や概して保守的な政府指導者の怒りを買うのが確実(宗教的に緩い国ではお笑いになる)。だからそういう国の版ではこの部分を全てカットせざるを得ない。
 
すると、主役のアクアと七浜宇菜が全く出てこないことになる。
 
アクア主演なのに!
 

コスモスとモンドブルーメのジールマン社長は直接電話で話し合った。
 
それで宗教規律の厳しい国向けのバージョンでは、アルケイディアとセスが何度も離婚・結婚を繰り返すという話はカットし、クライマックスでふたりが協力して老人たちを助けたことで、2人は愛し合い結婚することにした、という話だけが描かれるようにすることを決めた。
 
そしてアクアと宇菜の出番がほとんど無くなるので、代わりに2人を本編部分にも出すことを決め、アクアにジルダルとルクールをさせ、宇菜に2人を助けるアシスタントの役をさせるということも決めたのである。
 
ジールマンとコスモスは、大変な負担を掛けることになったアクアたち2人のギャラを2本の映画合計で3200万ユーロ(41.4億円)という破格の金額にすることも決めた(1人1本10億円)。但しこの相場は今回だけの特例であり、次の映画企画は『白雪物語』のギャラ(Mr.AQUA, Ms AQUA 2人の合計で)1000万ユーロ(13億円)をベースに考えることでも合意した。
 
しかしアクアのギャラを払うためにこの映画の予算は更に3倍(当初の27倍)になった!(結果的に千里は島と船の借り賃を“妥当な額”払ってもらった)
 

しかしそういう訳で『黄金の流星』でのアクアの出番は当初から大幅に増えた。ちょっと顔出すだけだからと言われて、オファーを受けたのに!
 
アクアFは「いつものこと。いつものこと」と笑っていたが、アクアMは反発した。でもフィアンセの南川彩佳がギャラの額を聞いて「やります、やります」と勝手に同意したので、アクアは渋々この映画に1ヶ月半ほど専念することになったのであった。
 
それで、アクアの他の仕事を代替することになった羽鳥セシル・水森ビーナ・松梨詩恩・白鳥リズムなどが悲鳴をあげた!!(*35)
 

しかし『黄金の流星』は予算が大幅に膨れ上がり、高い質の映画にするためにCG制作会社まほろばグラフィックスは大量増員し、100人態勢でこの映画の迫力あるシーンの数々を描いた。
 
それで『黄金の流星』は『お気に召すまま』に負けない話題作となり、国によっては、こちらのほうがかえって受けた所もあった。
 
配役は大幅に変更された。
 
当初松田理史が演じる予定だったジルダルを Mr.AQUA が演じ、ルクールをMs AQUAが演じることになったので、原作のルクールは既に亡くなっていることにされ、映画に出てくるのはその娘という設定になった。しかしルクールが女性になったことで、この映画は随分華やかな雰囲気に変化した、
 
ジルダルに予定されていた松田はアトランティスの船長の役に回り、船長の出番が大いに増えた。
 
広瀬みづほが通信士役で登場することになり、みづほはドイツ語・フランス語に加えてモールス信号も練習することになる。結果的にみづほは、アクアが今年前半に主演した4つの作品『陽気なフィドル』『黄金の流星』『お気に召すまま』『竹取物語』全部に出演することになった。
 

(*35) この余波で§§ミュージックの中堅所も多忙になった。しかしそれが丁度良かったのである。
 
政府によるコロナ規制が2022年春あたりから弛んできたのを受けて放送各社も撮影の際の衛生基準を緩和した。これに対して§§ミュージック、∞∞プロなどの慎重派は、きちんとした感染対策をしてほしいと要望。それで態勢を元に戻してくれたプロデューサーもいたが、話が決裂したケースも多々あり、§§ミュージックを含めて∞∞プロ系列のプロダクションはそういう番組からタレントを引き上げた。
 
その結果、§§ミュージックのタレントの仕事がかなり減った。それがこのアクアの仕事の代替の玉突きで中堅の仕事が増えたのと打ち消し合って何とかなったのである。
 
また∞∞プロの鈴木社長は経営難が伝えられていたネットテレビ局のホーライTVに出資して、実質配下に置いた。それで自主制作番組をホーライTVで流し始めた。これによって∞∞プロやΘΘプロのタレントの仕事はかえって増えた。また、§§ミュージックのタレントがホーライTVにも出演するケースが出てきた。取り敢えず白鳥リズムと信濃町ガールズたちの番組を、あけぼのテレピのスタッフで制作してホーライTVに毎週流すことを決めた。
 
あけぼのテレピは回線幅拡大のため12月に中小ネットテレビのハイネットTVと提携し、2月には出資して系列化しており、またЮЮネットが中小ネット配信会社の平平ビデオを支配下に入れていたので、AYS連合(あけぼのテレビ・ЮЮネット・★★チャンネル)が拡大してAYSHHH連合という感じになった。
 
中規模のネットテレビが6社連合して準大手になってきた感じである。
 
ホーライTV・ハイネットTVはネットテレビ大手のアロロとも提携関係にあり、この両者の会員は(あくまで一部だが)アロロ、あけぼのテレビ双方の番組が見られるという美味しい状態になった。
 

「え〜!?ゆりえちゃん(今川ようこ)も、えみちゃん(左倉まみ)も辞めないの〜?」
と青木由衣子は叫んだ。
 

3月16日(水).
 
東京都・北区のC学園中学に通っていた美崎ジョナ(本名:風谷リンゴ)は中学卒業証書授与式に臨んだ。美崎はこのまま内部進学してC学園高校に入る。
 

3月16日(水).
 
山形県酒田市の中学に通う東海林椿希はこの日終業式を終え、その日の内にお父さんの車に引越荷物を積み、夕方、東京五反野の女子寮に入った。
 

3月16日(水).
 
宮崎県都城(みやこのじょう)市の中学に通っていた藤真理奈(ふじ・まりな:広瀬みづほ)は、この日中学を卒業した。式が終わり、記念写真など撮ったあと、母の運転する車で宮崎空港に向かう。車には引越荷物が既に積まれている。そして宮崎空港に駐めていたHonda-JetBlueに母・兄・妹と4人で乗り、熊谷の郷愁飛行場に向かった。熊谷から先はSCCのドライバーさんが運転するワゴン車に荷物ごと乗って東京に向かう。そして五反野の女子寮に入った。
 
先日のドラマの撮影でも宿泊したA302に正式に入寮する。
 
母と妹は“Guest”の入館証を付けたが、お兄さんは事前に写真を送って作ってもらっておいた“家族特別入館許可証”という写真付きの入館証を付けた。
 
「男性の入館者は厳しく制限してますから」
と副寮母の花ちゃんが説明すると、お母さんは
「そうでしょうね」
と納得していた。
 
ちょぅど母たちが花ちゃんと話していた時に東海林椿希と両親が到着。椿希と真理奈は握手していた。
 

両者とも取り敢えず荷物を3階に上げた。
 
(女子寮のエレベータは3基あるので同時に引越ができる)
 
寮長の花咲ロンドが双方の家族を案内していた。
 
椿希のほうは、お母さんと本人の手で荷物がほどかれ、お父さんはホームセンターに行って少し物を買ってくると言っていた。でも東京の道は慣れてない人には大変なので、花ちゃんは、海浜ひるがおに案内させた。
 

真理奈たちの方は、荷物を置き、お兄さんの手で配線などが行われ、その間に本人と母が買い出しに行き(SCCのドライバーさんに案内してもらった)、妹はおやつを食べていた!
 
「妹さんは信濃町ガールズ入る気無い?団員の姉妹は入りたいと言えば本部生にするよ」
などと花咲ロンドが勧誘している。
 
「興味はあるけど娘が2人東京に出てきたらお父ちゃんが寂しがるだろし」
「マリが出て行くのにもぶつぶつ言ってたからなあ」
とお兄さん。
 
「お兄さんは信濃町ガールズに入る気無い?」
「ぼく男ですよー」
「君なら女の子の服を着せたら女の子で通りそうな気がするが」
「勘弁してください」
 
「お兄ちゃんなら性転換しても行けると思うなあ」
「何ならいい病院紹介しようか?」
「どうしよう?」
 
迷うのか?
 
 
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【夏の日の想い出・二足のわらじ】(4)