【夏の日の想い出・星遮りし恋人】(6)
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(C) Eriko Kawaguchi 2021-05-21
常滑舞音の専属バンド“招き猫”の初顔合わせの席で、川崎ゆりこが
「結局、ルーシーちゃんが紅一点か」
と言ったのだが、コスモスが首を振る。
「ん!?」
「私、男ですけど」
と本人が言うと、
「え〜〜〜〜〜!?」
と、私・ゆりこ・花ちゃん・篠原君・谷口君が驚いたような声を出した。
ゆりこがここにいるメンツを見回す。
「社長は知ってたの?」
「契約書交わしたし」
「あ、そうか。レイアは知ってたの?」
「当然。長い付き合いだから。ちゃんと解剖して、ちんちん付いてるの確認した。タマタマは無かった」
と桜野レイア。
「セクハラしているな。ひろちゃんは分かった?」
「体臭が男性の体臭だから」
「君はそんなのが分かるのか」
「女性の体臭はよく分からないけど、男性の体臭はわりと分かりますよ。去勢している人も分かる。凄く体臭が弱いから」
「それはつまり君がもう女の子になっているからだな」
「ボクは男の子ですけど」
「面倒くさいから、今更そういう嘘を言わなくてもいい」
「マネちゃんは分かったの?」
「知らなかったけど、その程度では驚きません」
「さすが」
舞音が少し考えてから言う。
「でも、ルーシーさんが男の子だったのなら、今はこのバンド、全員男の子だけど、そのうち全員女の子になっちゃう可能性あるんですね」
「確かに確かに」
と、ゆりこ。
「いっそのこと、全員性転換してからデビューします?」
「うーん。それでもいいけど」
などとコスモスは言っている。
「私は性転換してと言われたら、性転換してもいいなあ」
「ああ。女の子になりたいですよね?」
「僕、やはり性転換した方がいいですか?」
「迷うなら無理することはないよ」
「僕は女の子になりたくないですー」
と谷口君。
「うん。別に強制はしない。あくまで希望者だけ」
と、ゆりこ。
「でも君の女装見たことある。ドレス姿が可愛かった。普通に女の子に見えた」
とルーシーが言う。
「どこで、そのようなレアなものを・・・」
と谷口君は焦っている。
「まだ睾丸があるのも谷口君だけかな」
と、ゆりこが言うと
「僕もまだありますよー」
「ボクはありますよ」
と篠原君・木下君(上が篠原、下が木下)。
「篠原君にはあるかも知れないけど、木下君は玉も棒も無い気がする」
とゆりこ。
「どちらもありますけど」
と木下君が言うが
「いや君には無い気がする」
とルーシーまで言っている。
「質問です」
と舞音が言った。
「男と女の境界線はどこで引くんでしょうか?」
「うーん・・・」
と全員悩む。
「ちんちんがあるかどうかかなぁ」
「うん。たまたまは無くてもちんちんがあればまだ男だと思う」
といった意見が出るが、ルーシーは言った。
「本人が自分はどちらの性別と思っているかだと思う」
「確かに」
「じゃルーシーさんは、自分は男の子という意識なんですか?」
「そうだよ。将来的には女の子になりたいけど、今はまだ自分は男だと思っている。まあトイレは混乱防止のため女子トイレ使うけどね」
「ルーシーさんは男子トイレ使えない気がする」
「木下君も女子トイレ使うよね」
「放送局でだいぶ叱られたから」
と彼は苦笑いしている。
「そもそも木下君の服は男子トイレが使えない服という気はする」
と篠原君まで言っている。
今日の木下君は前開きの無いパンツを穿いている。男子トイレの利用は無理だ。そもそも彼(彼女)は女物の下着を着けていると聞くので根本的に無理っぽい。
「人のこと言えん気がするけど」
と木下君が言うと
「男子トイレの個室使うよ」
などと篠原君。彼のズボンは、よく見ると前の開きが浅いレディスパンツである。これでは立ってできない。
「だけどさ、タイトスカート穿いてる時ってトイレしにくいと思わない?」
などと木下君が言うと
「知らない!」
と篠原君はちょっと焦ったような顔で言う。
「上にあげるのが凄く大変なのもあるじゃん。いっそパンツみたいに下げてしようかとも思っちゃう。クラちゃんどうしてる?」
「僕はタイトスカートとか穿かないから分からないよぉ」
と言っているが、なぜ焦る必要がある?
「篠原君はフレアースカートの方が好き?」
とゆりこが訊く(誘導尋問)。
「僕はタイトもフレアーもそもそもスカート穿きませんよ」
「でもスカート持ってはいるんでしょ?」
「30枚くらいしか持ってないです」
(きれいに誘導尋問に引っかかっている)
「私より多い!」
と舞音。
「なるほどだいたいは分かってきた」
なんか谷口君がドキドキした顔をしている。
「谷口君はスカート穿かないの?」
「穿きません!」
「持ってないの?」
「大学のクラスメイトが僕のアパートに泊まった時に置いて行った女物の服が20-30着あって、大学卒業する時に電話してみたら、取りに行くのも面倒だし、そのままもらっておきなよと言われて、それで取り敢えずモスボックスに入れて押し入れに放り込んでますけど、自分で着たりはしないですよ」
と谷口君は言っている。
「クラスメイトって恋人?」
「違います。大学のそばのアパートに住んでたから、よくクラスメイトが僕のアパートに泊まっていってたんです」
「クラスメイトって男の子?」
「男の子のクラスメイトが泊まっていったことはないです」
ゆりこが私の顔を見ている。私も苦笑した。
「なるほどねー」
とゆりこは感嘆したように声を出した。
「谷口君、きょうだいは?」
「姉が2人と妹が1人居ますけど」
「お兄さんとか弟さんは?」
「いません」
「なるほどぉ!」
「え?え?何ですか?」
「私社長の意図が分かりました」
と、ゆりこが言った。
「何だろう?」
とコスモス。
「このバックバンドは、“万一”全員男の子だとしても、舞音ちゃんとの恋愛可能性があるメンバーはひとりも居ない」
「ああ、確かに」
とルーシーが言った。
「皆さんの中で性転換手術なさるおつもりの方あったら、私がその費用出していいですよ」
と舞音が言うと
「その内お願いするかも」
とルーシーが言っている。
「むしろ1年以内に性転換手術受けるつもりのある人は今のうちに受けてもらえませんか?養生期間の給料も払いますし、その間は誰か適当な人に代理させますから」
とコスモスが言う。
「1年以内ということはないと思う。私はいづれ手術受けると思うけど、30歳くらいまでに、女の身体になれたらいいと思ってます」
とルーシーは言っている。
「ボクは性転換した方がいいならしてもいいですけど、あまり積極的には性転換したくないです」
と篠原君。
「事務所が性転換を求めることはないよ」
とコスモスは明言する。
「だったら性転換しません」
と篠原君。
「僕は性転換したくないです」
と谷口君。
「谷口君は性転換の必要が無い気もする」
と舞音。
「え?どういう意味ですか?」
「何となく分かる」
と木下君。
「ヒロさんはやはり性転換済みですよね?」
「なぜ、そう思われるんだろう」
と木下君は苦笑している。
「本当にまだなら、手術代出しますよ」
「取り敢えず遠慮しとく」
「ああ、やはり済んでいるんですね」
ということで結局木下君がどこまで身体を直しているのかはよく分からなくなった。彼はあまりにも雰囲気が女性的なので、去勢だけとは思えないのだが。
いつもブラジャー着けてるし。バストはフェイクですと言っているが怪しい:もしフェイクだったとしても、だいたいバストをフェイクするということ自体既に女装のような気がする。彼(彼女かも)は一時期は低い声を開発して声変わりを装っていたが、最近はそれをやめて女の子の声のような地声を使っている(疲れるからだと思う)。彼はコンビニではいつも赤いボタン押されるんですよねーと言っていたが、当然という気はする。
ルーシーはおっぱいも本物で睾丸は除去済みと本人が明言した。ちんちんはまだあるものの、去勢後は全く立たなくなったらしい。
谷口君は男性的な発達が未熟っぽい。今日みたいに男物の服を着てても女の子と思えば女の子にも見える。声もハイトーンだ。22歳になってもこの状態ということは、おそらく何らかの原因で睾丸の機能が低く、二次性徴があまり強く出てないのだろう。今井葉月などと似た系統か。女性に対して不感症のようだが、体質的なものに加えて女性に囲まれすぎてて何も感じなくなってしまったのかも知れない。高校時代も女子の多い社文科で、ほとんど女子ばかりの合唱軽音部に居たし、音楽大学も女子が圧倒的に多い。小さい頃からピアノ教室に通っていたようだが、それもまた女子がほとんどだったろう。加えてきょうだいが女ばかりだ。女装しないとは思えない!(アクアみたいに、スカートくらい穿いても女装とは思ってなかったりして!?さっきも“友人の女物の服を預かっている”とは答えたが、“自分でスカートを持っているか”という問いには答えてない!)
篠原君は少し事務所の方針を誤解していたようだが、女装しないことはないものの、女の子になりたい訳ではないようだ。そして4人の中で唯一の男声使いである。しかし彼はW63 H92 B88 (TB88 UB86) と言っていたので、体型は(胸の膨らみが無いことを除けば)女性体型のようである。彼は過去に「自分はゲイかも」と発言したこともあり、女の子には興味が無いようである。
ゆりこが、木下君と篠原君(および上田兄弟(姉妹))に女子寮に自由に出入りできるパスを渡したのは「いきなり女の子の下着姿の写真を見せた」時、平然としていたのが、その4人だったかららしい。篠原君はむしろ不快な顔をしたらしいので、本当にゲイなのかも知れない。
(しかし、ゆりこもどういうテストをしているのか?)
花ちゃんも「ああその4人は大丈夫」と言ったらしい。「たまに男の子かも知れないと思う子が歩いてないと、この子たち裸で寮内をうろついたりするから」と花ちゃんは言ったらしいが、なぜ裸でうろつく!??
結局“招き猫”バンドは、ゆりこが言うように“舞音との恋愛可能性が無い”子ばかり集めて編成したバンドなのかも知れない。
なお、このバンド《招き猫》のリーダーは、コスモスが木下君を指名した。
「ボクより年齢が上の人が2人いるのに」
と彼(彼女かも)は言ったが、
「君が芸能歴はいちばん長いから君がすべき」
とルーシーは言った。
「うん。この世界は年齢より芸能歴なんだよ」
と、ゆりこも言う。
「そうそう。だから、2008年にデビューした私より2007年にデビューしたコスモス社長の方が先輩」
と私は言ったのだが、
「ケイ会長は“ピコ”の名前で2003年には松原珠妃さんの写真集に写ったり、“柊洋子”の名前でドリームボーイズのバックダンサーしてたから、私より先輩」
とコスモスは指摘した。
「“美冬舞子”という名前で民謡も歌っていたとも聞きました」
と木下君が言うので
「なんでそんな名前知ってんの!?」
と私は驚くよりも呆れた。
私は2004年春に風帆伯母から“若山富雀娘(わかやまふゆすずめ)”の名前を頂いたので、“美冬舞子”の名前で民謡大会などに出ていたのは2002年春から2004年春までの短い期間である。その頃のことを知っているのは、松原珠妃や博多の従姉の純奈・明奈姉妹くらいだぞ!?
さて、その博多の従姉・明奈なのだが、私の母方の従兄姉の中で、実は最後まで未婚で残っていたのが、明奈と私だった。その明奈がついに4月3日(土・大安・みつ)に結婚することになった。これで、いとこの中で未婚は私だけになってしまった。(父方のいとこはそれ以前にみんな結婚してしまっている)
お相手は博多に転勤で来ていた会社員の男性で高岡さんという人らしい。その人が他の地域に転勤すると、明奈も付いていくことになるという話であった。
結婚式は姉・純奈が結婚式をあげたのと同じ、福津市の宮地嶽(みやじだけ)神社で行い、披露宴はリモートで行われた。
前日にうちのマンション宛に、お料理(冷凍)と飲み物(ワインを希望したらグラーブの上等な白ワインと素敵なクリスタルのワイングラスが送られてきた)、それに引き出物のバウムクーヘン(ユーハイム)と《ひよ子》が送られてきている。
《ひよ子》は東京近辺の人には“東京のお菓子”と認識されているが、発祥は福岡県(吉野堂)で、博多では“博多のお土産”の代表格のひとつである(石村萬盛堂の《鶴乃子》と“鳥戦争”と言われた時代がある)。東京の《ひよ子》は博多の《ひよ子》から1960年代に暖簾分けしたものである。
「良い赤ちゃんが授かりますようにというので“ひよ子”らしい」
と、私が御礼のメールをすると明奈は言っていた。
「現在はたまごなのね?」
「いやぁ失敗失敗」
ということで、避妊ミスと言っていたが、“転勤族”というのに母が渋い顔をした(お母さんは地元の民謡関係の人と結婚して欲しかった)のを押し切るための、“確信犯”(誤用)のような気がする。
しかし私は先週(3/28)の“千里たち”の結婚式に続き二週連続の結婚式である。披露宴のリモート参加は平服でどうぞ、とは書かれていたが、私は適当なヴァレンティーノのドレスを着て、WEBカメラ付きのパソコンの前に座った。
10:00 結婚式の様子がZoomで中継される。これは普通の結婚式である。ただし人数を絞り、密にならないようにする。本来は30人以上入る広い式場(純奈の時にここに入っているが学校の教室並みの広さである)を、新郎側・新婦側、各々7人までにして下さいと言われたらしい。
新婦側は、両親、姉・純奈(臨月!)と夫の暢彦さん、風帆伯母!、明奈の父の兄夫妻、新郎側は、両親、姉夫妻(以上は東京から)、弟(金沢在住)、母の弟夫妻(広島在住)
と事前に純奈から聞いていたのだが・・・
中継を見ていてギョッとする。
それは新郎の“両親”、正確には“父”が私のよく知った人だったのである。
「新郎は白河社長の息子さんだったのか」
と私は思わず声をあげた。
それは♪♪ハウス・白河夜船社長だったのである。
ということは結婚式に出席している姉夫妻というのが、♪♪ハウスの中学生タレント神田あきらの両親ということになる。だから、明奈は、この結婚で、神田あきらの叔母になることになる。
「なんか、また業界内で複雑な親戚関係ができるなあ」
と私は思ったが、白河社長と親族になるということは、私は龍虎(アクア)とも遠い親戚になることになる。複雑すぎて関係がよく分からないけど。
(明奈の結婚相手が、龍虎の三従兄弟になる)
その白河社長は結婚式が終わって披露宴の準備が進んでいる時間に、私がリモート参列していることに気付き、DM(ダイレクトメッセージ)を送ってきた。
「ケイちゃん、もしかして新婦の関係者?」
「新婦は私の従姉です」
「おお、だったらケイちゃんと親戚になる訳か」
「またよろしくお願いします」
「うん。よろよろ」
新郎の高岡亀平さんは、1989年度生まれというので、明奈と同学年である。2014年春に大阪の大学の大学院修士課程(化学専攻)を出た後、大阪に本社を置く全国企業に就職した。2年間の大阪本社勤務の後、2016-2018年は北海道支店、2019年春から九州支店に勤務し、明奈と知り合ったということらしい。どうやら本格的な転勤族のようなので、明奈が福岡から離れるのは時間の問題だなと私は思った。北海道・九州と来たら、次は仙台か名古屋か北陸か?あるいは東京か。
披露宴を待つ間に、お料理はチンしてテーブルの前に並べ、ワインは栓だけ開けておいた。披露宴がZoomで中継される。
越天楽の演奏(録音再生)に合わせて新郎新婦が入場してくる。そしてメインテーブルに就く。
司会者(新婦の友人で放送局の元アナウンサー)による開式の辞の後、新郎新婦の紹介が行われる。会場にリアルで出ているのは、新郎新婦・結婚式に参列した人と、この司会者のみである。会場のテーブルには30台の大型液晶モニターが並び、リモート参列者の映像が循環表示されている。わりとたくさんの人に囲まれている感じはあるらしい。
新郎の上司である、課長さん(リモート参加)、続いて新婦・明奈の勤務先の上司である社長さん(やはりリモート参加)が主賓挨拶をする。司会者から、「リモート参加の皆さん、お飲み物をグラスに注いで下さい」という案内があるので、私は冷蔵庫で冷やしておいたクリスタルグラスにワインを注ぐ。ここでまだワインやお酒の栓を開けてなかった人たちが結構いて、慌てて開けていたようである。
そしてリモート参加者たちがだいたい飲み物をグラスに注ぎ終わったのを確認して(1人どうしてもワインを開けきれずに、別途金麦を取ってきて注いだ人がいた!)、新郎の先輩の係長さん(リモート)の音頭で乾杯が行われた。
ウェディングケーキの入刀となる。
前日に新郎新婦が一緒に!作ったケーキらしい(その時点で既に“共同作業”が終わっている気がする)。
入刀と同時に、リアル参列者、リモート参加者双方から大きな拍手が起きる。
そして、風帆伯母が『高砂』を詠う。
明奈の母・里美が能管を吹き、お腹の大きな姉・純奈が鼓(つつみ)を打った。若山流の考え方に従い「翳し」をしない、本来の歌詞を使用する。
高砂や。この浦舟に帆を上げて。この浦舟に帆を上げて。
月もろともに出で潮の、波の淡路の島影や。遠く鳴尾の沖過ぎて、
はや住之江に着きにけり。はや住之江に着きにけり。
しばしば「出る」が縁起が悪いといって「月もろともに入り潮の」と詠われるのだが、若山流鶴派主宰の乙女叔母(若山鶴音)は「月が出るからめでたいのであって、月が入っちゃったら真っ暗闇じゃん」と言う。若山流の家元・若山桜盛(元アイドル歌手の西川令子)も同意見のようであるが、個々の派閥に任せている。他派では翳しする派もあるが、鶴派では翳しはしない、
この後は歓談タイムになり、多くのリモート参加者からオープンメッセージでおめでとうのことばがあり、新郎新婦もオープンで「ありがとう」と返事していた。
余興も行われる。
例によって叔母たち、従兄姉たちの、民謡大会と化す!
「冬ちゃんも何か出し物を」
と言われたので、私は民謡ばかりではと思いポータブルキーボードYamaha PSR-E373を持ってきて『Atoll-愛の調べ』を弾き語りで歌った。
私の歌を聴いて、私が参加していることに新郎側の親戚や友人たちが気付き、結構な騒ぎになっていたようである。白河夜船さんが(孫の)神田あきらを電話で呼び出したようで、招待メールを送ってもらい、急遽Zoomに参加させる。歌えと言われたようで、彼女の持ち歌を歌ったが、歌い終わってみんなに拍手をもらってから、私が参加してることに気づき「きゃー、ケイ会長の前で恥ずかしい」とか言っていた。
(私は♪♪ハウスの会長ではないのだが。♪♪ハウスの会長はコスモスである。もっともコスモスも事実上名前だけで、♪♪ハウスの経営にはタッチしていない)
“リモート・キャンドルサービス”が行われる。参列者は予め、送られてきた荷物の中からキャンドルを取り出す。新郎新婦がひとりひとりの参列者と1対1の画面になりふたりで手に持つキャンドルのスイッチを押すと、その参列者のキャンドルが点灯するようになっている。
これをリモネート参列している60人(組)ほどの人とやるので、これだけで10 分掛かる。その間、新郎の姉・白雪りんご(神田あきらの母)がエレクトーンでヴィヴァルディ『四季』春第一楽章をずっと演奏していた。彼女は歌手志望だったらしいが、18歳で子供を産んでしまったら、それは無理というものである。彼女の音楽的な才能に惚れ込んでいた鈴木一朗社長が、ものすごくがっかりしたらしい。その母の娘にしては、神田あきらは、もう少し歌がうまくてもいいのだが!
神田あきらは、2019年に中学生になると同時に別の事務所からデビューした。しかし昨年コロナの影響でそこが倒産してしまったので、白河さんが自分の事務所に引き取ったのである。あまり自分の身内を置いておきたくないので、コスモスにそちらで預かってもらえないかという話もしてきたのだが、こちらはラピスが急に売れて、とても手が回らなかった。
しかし千里が調べていなかったら、白河社長や神田あきらが龍虎の親戚とは全く気付かなかった。
雨宮先生とも話したのだが、正式に公表する前に白河社長にはこのことを言おうということになっている。雨宮先生も、ライブハウス“ムー”に出ていた頃は、高岡猛獅さんとムーのオーナーの娘婿である白河夜船(高岡亀浩)さんは、単に親しい友人だと思っていて、親戚だったとは知らなかったらしい。
彼は“亀浩”→“亀さん”→“亀氏”→“きし”→“ナイト”→“ナイト・クルージング”(人名っぽくしてみたもの)→“夜船”→“白河夜船”ということで、現在のペンネームができたらしい。ムー当時(∞∞プロの凄腕マネージャーでもあった)は“ナイトちゃん”と呼ばれることが多く、当時ムーに関わっていた多数のバンドや芸人さんが彼を今でも“ナイトちゃん”と呼ぶ。
白河さんがワンティスを担当していたら、ワンティスの運命も変わっていたのかも知れないが、白河さんは当時売れっ子の歌手の担当だったから、おそらく手が回らなかったのだろう。それにワンティスの“無茶苦茶”な活動は、新興プロダクションだから許されたことでもある。∞∞プロのようなシステマティックなプロダクションでは、あそこまで自由はできなかったろう。
キャンドルサービスの後は、祝電・祝FAX・祝メールが披露される。
そして最後に白河社長が音頭を取って「博多祝い歌」を、新郎新婦、里美伯母の4人だけで歌い、披露宴は終了した。
祝いめでたの若松様よ、若松様よ、枝も栄えりゃ葉も茂る。
エーイッショウエ、エーイッショウエ、ショウエ、ショウエ、ションガネ。アレワイサーのエッサーソエーのションガネ。
4人が歌い終わると、参列者から盛大な拍手が贈られた。
なお、コロナ下でもあり、新婦が妊娠中ということもあり、新婚旅行に代えて、新郎新婦はヒルトンホテルに1週間滞在するらしい。ハネムーンベイビーは仕込み済みだから、まあゆっくりと身体を休めるとよいであろう。
新婚の内はお互いいくらでも話すことがあるものだ。
この日は夕方から、今度は東京で、西宮ネオンの結婚式が行われた。相手の女性が大学を卒業してから結婚するという約束だったので、3月に卒業したのを受けて、結婚式を挙げるものである。
この結婚式披露宴には、マリと一緒にリモート参加する。
お相手の女性は、大学を出ても就職せずに、ネオンの妻になることになる。(死語だがまさに“永久就職”:本当に永久かどうかは不明!?)
彼女は実際にはここ数ヶ月ネオンの部屋にほぼ“住んで”いて、結婚するまでは同棲しないという約束に違反していたのだが、私たちは見ぬ振りをしていた。
(聖子と和紗の場合は双方の親族も同意の上“結婚”したので問題無い。ふたりは自分たちだけで式も挙げたらしく記念写真をもらった。同性?なので婚姻届は提出できない!?←と言われたのだが、どうもよく分からない)
ネオンのお相手の名前は常念真史(じょうねん・まふみ)さんという。
さて、結婚式の会場となる渋谷区のホテルには“常念真史様・穂高充乃様・結婚式”という看板が掛けられていた。
新婦の名前が先で、新郎の名前が後になっている。それを見て、あれ?結婚後の苗字は、新婦の苗字・常念を使うのかな?と思った。(一般に新郎側を先に書くことが多いが、新婦側の苗字を使う場合は新婦を先に書く)
が!
直前になって、ホテル側が、新郎と新婦の名前を取り違えていたことが判明する!
確かに“真史”(まふみ)は、つい“まさし”と読んで男性かと思うし、ネオンの名前“充乃”(みつの)は女性の名前と思われがちである。どうもふたりとも性別を取り違えられることには慣れっこのようで、本人たちは笑っていたが、ホテル側は平謝りで、すぐに看板も書き直していた(ホテル入口の“本日の行事一覧”の所のも新婦の名前を先に書いてあったのでそちらも書き直していた:どうも最初は正しく書いていたのを、これは逆でしょ?と言って書き直してしまったらしい)
「みっちゃんがウェディングドレス着て、私がタキシード着ようか?」
「まーちゃんは僕のタキシード着れるかも知れないけど、僕はまーちゃんのウェディングドレスはウェストが入らないよ」
「みっちゃんのウェストが入るウェディングドレスは頼めば普通にあると思うなあ」
ネオンはウェストが73cmと細いので、彼をテレビ番組などが“女装させる”時も彼に合う女性用の衣装は普通に用意できる。それでしばしば女装させられている。
「僕、“女役はしません”という契約だったのに」
と彼は文句を言っていたが、放送局も上手で
「これは男性刑事が捜査のために女装する場面だから」
とか
「これは女装好きの男の子の役だから、女役ではないよ」
とか
「これはスコットランドのキルトだよ。男性用の衣装だよ」
とか言って、ネオンを女装させたりスカートを穿かせたりしている。
女装あるいはスカート(キルト?)姿のネオンはとても可愛いので、ファンにも好評である!
(彼はスカートでなくても、ショートパンツを穿くことはよくあるので、足の毛はいつも剃っている)
マリも
「ネオンちゃんのウェディングドレス姿見たかったなあ」
などと言っていた。
こちらもリアルの人数制限が掛かっていて、双方とも結婚式に参列する親族は5人までということだった。ネオンは、両親、姉2人、妹の5人、花嫁側も、両親、兄3人の5人であった。ネオンは4人きょうだいで唯一の男の子、花嫁は4人きょうだいで唯一の女の子である。ネオンの下のお姉さんも芸能人志望だった。2015年のロックギャルコンテストで、お姉さんは自分が願書を出すついでに弟の分まで願書を出して、本人は県予選で落ちたものの、弟は全国大会まで進出して、実質2位だった(実質1位は白鳥リズム)。お姉さんはその後もいくつかのオーディションに挑戦したものの、残念ながらどこにも合格しなかったらしい。最近は自主制作したビデオをyoutubeに流したりしているという。
披露宴はこの結婚式に出席した人+祖父母など、双方10人くらいずつ親族がリアルに入って行われた。ただしひとつのテーブルには2人(夫婦のみ)までしか座らせない、充分なソーシャルディスタンスを取っている。更に実はネオンと花嫁には予めワクチンを接種してもらっておいた。
結婚式はZoomで参列している人だけに公開されたが、披露宴はあけぼのテレビを通して全国にネット中継される(スポンサー付き無料放送:スポンサーはネオンがここ数年CM出演している紳士服ブランドと、あけぼのテレビで多くのCMを流している家電品メーカーが共同で引き受けてくれた)。
進行役は、あけぼのテレビの小林雪恵アナウンサー(白いドレス)である。新郎新婦(ウェディングドレスとタキシード)の入場でBGMを演奏したのは、白鳥リズムと白雪1200kmのメンバーである。リズム自身も今日は電気ヴァイオリン Yamaha YEV104 を持って6ピースバンドになっている。ロックギャルコンテストの同期であるネオンのために、リズムが今日の音楽担当を買って出たのである。
開式の辞を川崎ゆりこ(振袖)が述べ、花ちゃん(振袖)が新郎新婦の紹介をする。この2人は会場に居る。
「ちなみに新郎が“充乃”で、新婦が“真史”です。逆ではありませんのでご注意を」
と花ちゃんは、ふたりの名前を紙に書いたものを提示しながら説明した。
「最初これが逆になってたから、そのままだと、真史(まふみ)さんがタキシードを着て、ネオン君がウェディングドレスを着ないといけないところでした。ネオンのウェディングドレス姿見たかったですね」
と言って、笑いを取っていた。
その後、新郎側はコスモス社長(黒留袖)の祝辞、新婦側は伯父さん(ブラックスーツ)の祝辞がある。これはどちらもリモートである。そして、∞∞プロ鈴木社長の音頭で乾杯が行われた。
リモート参列者の所には、あらかじめお料理(お昼頃配送されてきた)と飲み物(シャンパン・ワイン・日本酒・ビール・酎ハイ・サイダーなど好みのもの)が届けられている。私はこちらは会長という立場上万が一にも酔えないので、サイダーをお願いしておいた。マリはワインを頼んだが、瓶を開けきれず、私が開けてあげた。
そしてウェディングケーキの入刀である。高さ30cmほどもある巨大なケーキ(全てがケーキで出来ている!)にふたりが入刀し、キスすると、白雪1200kmがネオンのヒット曲『熱視線ビーチ』を演奏した。
この後、ケーキはホテルのスタッフの手で切り分けられ、“披露宴終了後”、リアルで出席している20人ほどの親族+ゆりこ・花ちゃん、それに演奏してくれた白雪1200kmのメンツに配られた。
そして、ここからはおなじみの“披露宴ライブ”である。
例によって、お気に入りの青い振袖姿のアクアが『ダイヤモンドの意志』を歌う。もうアクアが振袖を着ていても誰も騒がない。アクアの普通の衣装と思われている。
加えて、アクアはやはり女の子になってしまったのだろうと思っている人もひじょうに多い。多分国民の3割がそう思っている。そして国民の3割は最初からアクアを女の子アイドルだと思い込んでいる!(残り4割は関心の無い人、つまりアクアが男の子と思っている人はほとんど居ない!)
続いてラピスラズリが『愛のドテ焼き』(誰だ?この選曲したのは?)、姫路スピカが『夏のうきうきデート』、と続き、品川ありさ、高崎ひろか、花咲ロンド、石川ポルカ、原町カペラ、桜野レイア、山下ルンバ、川崎ゆりこと続く。そしてゲストアーティストとして、三つ葉、ボニアート・アサド、ColdFly5、羽鳥セシル、キャロル前田とアドベンチャー(全員華麗に女装していて「美しい!」という声があがっていた)、ハイライトセブンスターズ、Havai'i 99、スカイロード、バインディング・スクリュー、ファレノプシス、フラワー・サンシャイン、更にバーチャル・アイドルの宮城イナイまで登場したのは視聴者に驚かれていた。そして私たちローズ+リリーがゲストの最後を締めくくらせてもらった。
(視聴者の間では「一部を除いて今いちばん旬(しゅん)のアーティストの揃い踏みだ」と言われていた。
今日の放送はこの“余興”だけでも見る価値充分だったようである。視聴率も高くて、スポンサーさんがご機嫌であった。
最後は、西宮ネオンの感謝の挨拶の後、両親への花束贈呈シーンで番組は終了した。(その後オマケで白鳥リズムと白雪1200kmの6人が、切り分けられたウェディングケーキを食べているシーンが5秒間流れた)
ネオンたちはこの後、会場ともなったホテルで初夜を過ごした後、Honda-Jet
Red(§§ミュージック所有の機体)で、全国を“飛び回るだけ”の新婚旅行をしてくる予定である。気兼ねが要らないようにと、千里の友人のパイロット、エリッサ・ヴェルニエさんが1週間操縦してくれる。
彼女はスペイン国籍だが、日本の永住権も持っているらしい(日本名:工藤映玲南/コロナ以降はずっと日本国内に居るということ)。元々は千里が一時期スペインに長期派遣されていた頃(それいつよ?千里いつも日本にいたじゃん?)親しくなった人らしい。自動車の国際C級ライセンスも持っているが、飛行機も多数の飛行機の操縦経験があるらしい。30代に見えるが千里の友人にはとにかく、スーパーウーマンが多いようである。
時間的には前後するが、3月31日(水)には、Wooden Four のサヨナラコンサートが深川アリーナで無観客・ネット中継(あけぼのテレビ方式)で行われ、100万人を越す有料視聴者が回線接続した。例によって抽籤で選ばれた1000人+1000人の映像・音声参加者+4000人の書き割り参加者が見守る深川アリーナのステージで、2時間半のステージ・パフォーマンスが行われた。
ウドゥン・フォー(うどん4ではない)は、2005年にデビューした男性4人組。デビューした当時は大林亮平17, 森原准太15, 木取道雄14, 本騨真樹12という年齢構成で、ほんとに“可愛い男の子”4人組だった。特に当時はまだ最年少の本騨くんは声変わり前で、彼をメインボーカルにして、まさに男の子アイドルユニットという感じで売っていた。
ユニットの名前はメンバー全員が、偶然にも木に関する漢字が入っていることによる:大林亮平(林)森原准太(森)木取道雄(木)本騨真樹(樹)。
本騨くんの声変わりの後は、どうしても路線変更することになり、いちばん歌のうまい大林君を中心に、大林(トップテナー)・本騨(セカンドテナー)のツインボーカルをメインにしたポップ・ボーカルユニットとして活動していく(森原・木取はコーラス:実はこのユニットはバス音域の出るメンバーが居ない)。
しかし一番人気のある本騨くんの結婚(2015年)以降は、どうしてもセールスは落ちていった。各メンバーは次の年に結婚している。
本騨真樹−山村星歌 2015.09.05
森原准太−桜野みちる 2019.02.24
大林亮平−原野妃登美 2020.04.19
木取道雄−秋風コスモス 2021,01.21
そしてこの日、Wooden Fourは、16年間にわたる活動を終了することになった。デビュー当時中学に入りたてだった本騨君は人生の半分以上をWooden Fourとして送ってきたことになる。
彼らは2015年以降、毎年08年組主催・震災復興支援イベントに女装でFlower Fourの名前で出演している。わざわざ公式ホームページまであるが、そちらのプロフィールでは、Flower Fourのメンバーは、亮平(りょうへい)准太(じゅんた)道雄(みちお)真樹(まさき)に“そっくり”な亮平(りょうこ)准子(じゅんこ)道子(みちこ)真樹(まき)の女の子4人組ということになっている。
(真樹だけ字は変えずに読み方を変えている:読み方で性別が変わるというのは藤原栄子の漫画『うわさの姫子』の登場人物・岡真樹(おかまさき)が学芸会の劇で女役をして、パンフレットに“岡真樹”と書かれているので「“おか・まき”ちゃんか。可愛い子だねなどと言われたというのが元ネタである:ついでに彼は自分を女の子と思ってスカウトしようとした劇団の人に“おかま”の“さき”でーす、などと自称した:彼は別に女の子になりたい男の子ではなく、普通の男子なのだが「今度の劇では主役がしたい!」と言ったら、主役は女だったために女役をするハメになった。このネタは、アクアが学習発表会の劇で主役に立候補したら『サウンド・オブ・ミュージック』のマリアだった、というネタにも転用している。もっともアクアの場合は、あまり“普通の男子”ではない気がする)
Flower Fourというユニットの発端は実は、マリがテレビ番組で「全員性転換して女の子になってFlower Fourと改名しなよ」と言ったのが発端だと、私は亮平から聞いた。(マリ本人はきれいに忘れている)
Flower Fourは元々のWooden Fourのファン以外にもわりと受けていた、震災イベント以外には出演しないものの、その名義でCDをリリースしたり、写真集!まで出たこともある。亮平は「黒歴史にして」と言っていたが、この年の写真集ベスト10に入る凄い売れ行きだった。マリは熱心に眺めて楽しそうにしていた。
写真集はメンバー4人が女の子の格好で昔話のお姫様のような雰囲気で、お城の広間やテラス、かぼちゃの馬車!、7人の小人などと写っているというもので、とても可愛かった。
CDはWooden Fourの人気曲のカバーをした実質ベスト盤だが、音声を電気的に女の子の声のように変換して収録している:ピッチを上げただけでなく響きもうまく処理しているので自然な感じで(スーパーコンビュータで処理したらしい)、本当に女子のユニットが歌っているように聞こえる。
なお震災イベントはリアルタイムで歌うので、普段の男声のまま歌っている。
今回のラストコンサートでは、最初に“前座”と称して、可愛いドレス姿のFlower Fourが出て来て“口パク”で郷ひろみの『男の子・女の子』を性別逆転バージョンで歌う(本当に歌ったのは後述の“Blossom Four”)。つまり「君たち男の子、僕たち女の子」と歌って笑いを取る。
(ネットではなぜ「私たち女の子」じゃなくて「僕たち女の子」なんだ?とツッコまれていたが「字数が合わなかったから」と亮平(涼子)は後で言い訳していた)
その後、早変わりで男子の姿に変身(性転換 *1)して、Wooden Fourの16年間の軌跡を辿るようにヒット曲を歌い続けた。
(*1)ロングヘアのウィッグは即外す。ドレスを脱ぐとその下に本編用の衣装を着けていた。女の子メイクはスタンバイしていたスタッフがクレンジングで素早く落とした。
幕間のゲストタイムには“Blossom Four”なるユニットが登場した。
これが何と、山村星歌・桜野みちる・原野妃登美・秋風コスモスという、Wooden Fourのメンバーの奥さん4人で構成されるユニットであった。史上初のコラボで、この後もめったに見られそうにない組合せなので、物凄い歓声があがっていた(「本編より受けてた」と亮平が苦笑しながら言っていた)
歌が圧倒的にうまい桜野みちるがリードボーカル、結構うまい山村星歌がそれに3度下で合わせ、歌手はしててもあまりうまくない原野妃登美がコーラスや合いの手を入れる。そして秋風コスモスはキーボード KORG NAUTILUS-88 (私物)を前に置いて歌わずに伴奏していた!(コスモスが歌わないのは賢明だというみんなの評)
後半も人気曲を中心にWooden Fourはエネルギーを全て消費しきるかのように歌い続け、感動のフィナーレとなった。最後は同じ事務所の後輩 Green menのメンバーたちから花束が渡された。
「そういえばFlowerとBlossomの違いって何ですかね?」
とライブが終わった後、川崎ゆりこが私に訊いた。
「例外もあるみたいだけど、基本的には木に咲く花がBlossom, 草に咲く花がFlower」
と私は答えた。
「へー!」
「だから桜の花は Cherry blossom, イチゴの花は Strawberry Flower」
「なるほどー」
「桃の花は peach blossom であり、 peach flower とは言わない」
「確かに言わない気がします」
「たんぽぽは dandelion flower だね。dandelion blossomとは言わない」
「確かに確かに。例外と言うと?」
「Orangeは本来 Orange blossom なんだけど、Orange flower という言い方もある」
「へー!!」
以前アクア主演で『キャッツアイ』(2017)や『八十日間世界一周』(2018)を撮った、中村万作監督が新たにフランセス・バーネット (Frances Eliza Hodgson Burnett 1849-1924 昔の通称“バーネット夫人”) 原作の『小公女 (A Little Princess)』を撮ることになった。
これはΛΛテレビと丸川出版が共同で設立した制作会社《六本木制作》の企画である。大和映像も10%出資しているので、そちらと技術的・人的な交流もある。
主役(Sara Crewe セイラ・クルー)は、オーディションで選ばれた新人・来島京夢(くるしま・みやび:高校3年生)が演じるのだが、その重要な友人Ermengarde St. John (アーメンガード・セントジョン)役に、信濃町ミューズの中村昭恵(高2)が指名された。
中村昭恵は以前から様々なドラマや映画に、わりと重要な脇役で出演していて、大和映像や六本木制作の社内でも評価が高かったらしく、今回の指名となった。しかしドラマの脇役とは違い、今回は2ヶ月ほどの長丁場の撮影でその間、この映画に専念することになる(他の仕事は割と演技力のある斎藤恵梨香などに代わってもらう)。主人公に準じる露出度になり、かなり本格的な女優活動ということになるので、コスモスは彼女については、もう“女優デビュー”ということにすることにした。§§ミュージックから“女優”としてデビューするのは今井葉月 *3 に続いて2人目ということになる。
これに伴い中村昭恵は信濃町ミューズは卒業ということになり、契約もA契約(但し歌手の子たちとは一部条項が異なる:アルバム制作義務などが無い)に切り替えた。
彼女のマネージングについては、信濃町ガールズのお世話の補助をしていた横田毛理(よくた・めりい *2)をメインとし、ガールズ担当の広橋窓佳にもサポートしてもらうことにした。
(*2)この人の名前を一発で読んだのは千里と青葉だけ。彼女も長期バイトから正社員に身分変更:これまで2年間バイトを続けていた−実はこの3月に大学を卒業したばかりだった。
(*3)葉月の契約書には“女優”と書かれており“俳優”とは書かれていない!更に突然の妊娠に充分注意すること、などという条項もある!コスモスは桜木ワルツを3月頭に呼んで「ワルツちゃんは妊娠してもいいけど、当面は葉月を妊娠させないでね」と注意していた!?ワルツは首をひねりながらも「する時はちゃんと避妊します」と答えていた。
さて、その今井葉月(天月聖子)であるが、4月下旬、久しぶりにお休みがもらえた日に自宅にいたら母が来て「ちょっと来て」というので、和紗に「ちょっと出てくるね」と言い、母の車で出かけた。
着いたのは黒部座(くろぶざ:シェイクスピアゆかりのグローブ座のもじり)の事務所であった。
父(天月晴渡)、父の兄(天月映良)、その子の歩の3人が難しい顔をしていた。聖子が来ると、従姉の倉緒がお茶とお菓子を出してくれた。
(歩は聖子の父の兄(天月映良)の子で、倉緒は聖子の母の妹(上野陸奥子)の娘)
「単刀直入に相談がある」
と父は言った、
「お前に昨年支援してもらって、コロナの下でも何とか公演を続けてきたんだけど」
「やはり経営状態が厳しい?」
「実はそうなんだよ」
と父。
「私も提案してやはり今更かも知れないけど、ネット中継の環境を整えた方がいいという話もしていたんだけど、何から始めていいか、よく分からなくて」
と歩が言う。
聖子は説明する。
「自前で機器を導入してネットに流すのはそんなに難しいことではないけど、課金回収の仕組みを自前で作るのは無理だと思う。だからそういう仕組みを持っている所、★★チャンネルとか、ЮЮネットとかと契約した方がいいよ。マージンは取られるけど、それで課金回収できる」
「あけぼのテレビは?」
「あそこは回線幅に余裕が無いし、基本的に全ての放送番組に責任を持つから外部で制作した番組は流さない。だから元々、一般の人の自主制作番組を流すのが目的のЮЮネットや★★チャンネルの方がいい」
「あぁ」
「いや、実はそのあたりの事情もよく分かっていなかった」
「それにしても実は資金繰りの問題がある」
と父が言う。
「それで兄貴と話していたんだけど、聖子、お前いっそうちの劇団を丸ごと買い取ってくれたりしない?」
「いいよ。幾らくらいで?」
「昨年7月に2900万円出資してもらったんだけど、残りの3100万円分も買い取ってらえたりしたら」
つまり全株を聖子が取得することになる。
「うん。いいよ。あと、ネット中継に必要な機器があったらボクがその費用出すから、接続業者さんと話して機器を確認して」
「★★チャンネルとЮЮネットとどちらがいい?」
「大差無いと思うなあ。まあ、ボク自身との関係を考えたら、★★チャンネルかな」
「じゃそちらで。誰と話せばいいんだろう?」
「ボクが連絡するから、こちらは誰が交渉する?」
「歩がいいかな。俺はネットワークの専門用語とか言われても分からん気がする」
「了解。じゃ歩ちゃんで」
ということで、話はわりと簡単にまとまったのであった。
黒部座は資金が潤沢な聖子がオーナーになることで、当面の倒産の危機は去ることになった。聖子は劇団の運営に関しては、今まで通り、父と伯父さんで話し合ってと言った。
それで聖子は黒部座の会長に就任することになった。
株式会社の株主・役員には年齢制限は無い。株主は0歳でもなれるが、役員は印鑑証明を取る必要があるので16歳以上ということになる。ただし未成年の内は全ての決裁に保護者である父か母の同意書が必要なので作業が面倒になる。
常滑真音はその後もCM出演依頼が多数舞い込み、そのCMソングを歌っていたら、凄い数になってしまった。とても全部シングルでは出せないので、取り敢えずアルバムを1枚出すことになった。
これがそのラインナップである。
アルバム名“招き猫”:−
『からくり人形』(ロボット掃除機)
舞音が高山のからくり人形に扮している。実際に高山に行き、からくり人形が動く所も見せてもらった。その映像もCFには取り込んでいる。
『Time is Mane!』(高機能腕時計)
その時計をしてプールで泳いだり(防水仕様)、ロードレースを走ったり(コースナビ機能・ラップ記録機能付き)、夜間に天体望遠鏡で天体観測しながら時計を眺めたり(日出入・月出入・全国300ヶ所の干満潮時刻表示機能付き)している。
実際に舞音はこの時計を着けて郷愁プール(一般には非公開の50mプール)を通算800mほども泳いだし、10kmロードを走り、2021.5.26の皆既月食を観測した。
「今回の撮影大変だったね」と言ったら「ハーフマラソン走らされてたYe-Yoよりマシです」などと言っていた!(3×3大作戦)CM公開後、「マネちゃんの水着姿可愛い」などというコメントが多く「私頑張って長距離泳いだのにー」と舞音は、ご不満の様子だった。
『マネマクラ』(寝具)
スヤスヤと眠る舞音。仕事が忙しくなってきていることもあり、本当に熟睡してしまったので、その様子を撮影、CF化している。本人はビデオを見て恥ずかしがっていた。メーカーさんからお布団・枕のセットをもらい、早速女子寮の自分の部屋で使うようにしたら「よく疲れが取れます」と嬉しがっていた。
『マネは剣よりも強し』(文具)
招き猫のロゴ入りのボールペン(ジェットマネー)。あわせてそのメーカーの文具全般のCMで使用された。CFではマネがボールペン(途中で巨大化する)を持ち、剣(エペ)を持った篠原倉光と戦って倒している。篠原君は「マネたー(負けたー)」と言って倒れる。この撮影のために舞音はフェンシングのレッスンを3日間受けたが、3日練習しただけにしては、結構様(さま)になっていた。この子は元々器用な感じである。
発売記念で合計1万名様に常滑焼のミニ招き猫が当たるキャンペーンをしたら応募者が物凄く、当選者を3万人に増やした。オークションにも流れていたので常滑焼き協同組合が、同様のミニ招き猫の通販を行うようにしたら、これが大人気商品となった。
『100%学生生活』(学生服)
舞音が様々なタイプの中高生制服を身につけている。女子制服のみでなく男子制服も着ているが「かっこいいー」と好評だった。(男子用制服は実は、舞音のバストが収まるように作られた特注品)このメーカーからは「高校を卒業するまではよろしくお願いします」と言われた。撮影に使用した制服は差し上げますよとは言われたが、もらっても使い道がないので辞退した。(どこかの蒐集家が「もったいない」と言いそう)
『まあスポーツねぇ』(スポーツ用品)
バスケットで敵の防御をかいくぐり3ポイントを決める所、バレーで華麗に回転レシーブする所、100m走でトップでゴールする所(時計が9.57になっている *4)、テニスで華麗にボレーを決める所などが映っている。
これはシリーズになっており、一度の撮影では1つの競技だけしている。スリーポイントは300本くらい撃って、やっと1本入ったのをCFにした。千里が付いてて、かなり熱心に指導していた。だからこれは本当にスリーを決めた映像で、フェイクでも吹き替えでもない。決めた後、舞音は嬉し泣きしていた。
回転レシーブはやり方を習うのに半日掛けたが「今日は打ち身が痛い」とこぼしていた。
100m走は、現時点の“男子”の世界記録がウサイン・ボルトの9.58 である。舞音の記録は本当は15.57だったが、偶然にもボルトの記録より0.01秒小さい小数点以下になっていたので、小数点以上は改変した。しかし15.57は運動部でもない高校生女子としては充分いい記録という気はする。話を聞いたネオンが「僕なんか18秒くらいかかる」と言っていた。撮影で一緒に走ったのは、都内の中学の陸上部女子の子たちで、むろん舞音が1位になるように、手抜きして走ってくれたが、「わりとマジになりましたよ」と言っていた。(おかげで映像がかなり本物っぽくなった)
テニスのボレーも3時間くらい撮影を続けて、やっといい感じで決まったものを使用した。
『マネ・セーブ・モバイル』(格安スマホ)
舞音と水谷姉妹に恋珠ルビーまで出演している。歌は、舞音の歌に、水谷姉妹とルビーがコーラスを入れている。
この4人が仲が良いことはわりとファンの間では知られているが、オーディションの優勝者であるルビーが12位だった舞音主演のCMに共演してサポートするというのは「ルビーはプライド無いのか?」と驚いた人もあった。ルビーは
「私プライドありませーん。人気ありませーん。ちんちんもありませーん」
と明っかるく答えていた。
「ちんちんは無いだろうけど、人気はわりとあると思う」
と多くの人の反応。
以上8曲に加えて
『とことこ・なめなめ・招き猫』(Tokoname Mix)
『マネがマネのマネをした』(Fife solo mix)
『とことこ・なめなめ・招き猫』(Kuroneko more Mix)
『マネ・イズ・マネー』(Be shonen mix)
の4曲が入って12曲入りアルバムである。
Tokomane mix は歌い込む縁起物が増えている。
「七福神は初夢、ひょっとこにお多福、福助も常滑!」
「茶釜は館林、金太郎は足柄、招き猫は常滑!」
七福神は舞音が、恵比寿(釣り竿を持つ)、大黒(米俵を担ぐ)、福禄寿(長い頭)、毘沙門(鎧を着けてる)、布袋(お腹が大きい)、寿老人(鹿に乗ってる:鹿の中身は山鹿クロム:鹿つながり)、弁天(ヴィーナを弾いてる)にコスプレして、その映像をまとめて合成している。ひょっとこ・おたふくはお面を着けているが、ひょっとこはまだいいとして、おたふくなんてアイドルに着けさせるお面ではない。でもそんなお面を面白がって着けるのが舞音だし、そんなお面を着けた舞音を喜んでくれるのが舞音のファン層である。福助は裃を着けて座布団に正座して福助のコスプレである。福助人形は大阪発祥で全国的に作られているが、瀬戸と常滑がトップシェア争いをしているらしい。
茶釜では、ぶんぶく茶釜のタヌキのコスプレで火鉢に乗り、金太郎はまさかり(プラスチックにアルミ箔を貼り付けたハリボテ)を担いで熊の着ぐるみ(中身は三陸セレン)に乗った金太郎のコスプレをしている。
Fife solo mix はその名の通り、舞音のファイフソロが長い。実は『カルメン』の『ハバネラ』の一部を取り込んでいる。
ラ・ラ♭・ソ・ソ・ソ♭・ファ、ミミレド・ドシドレドシ
というメロディーである。
Kuroneko more mixは、水谷姉妹を含む10名の信濃町ガールズが黒猫に扮した。
Be Shonen mixは、舞音が拉致され「君は可愛すぎるから性転換してもらう」と言われて強制手術(執刀医:川崎ゆりこ)され、性転換?して男の子になってしまう。でもやはり札束風呂で今度は性転換して女の子になり?おっぱいが膨らんでベビードールを着けた美少年(美少女?)2人(三陸セレン・山鹿クロム)を抱いている。(性転換した意味が無い気がする)
ヒゲを生やし短髪の男の子バージョン舞音ちゃんは“嫌らしい感じでいい”と好評だった。(舞音のバストは画像加工して消している。ついでに胸毛を生やしている。パンツには詰め物 *4 をしている)フェイクバストを貼り付けた三陸セレンと山鹿クロムは自分の美胸に陶酔している感じだった!
全曲伴奏は《招き猫》バンドであるがヴァイオリン(実は大崎志乃舞)と追加キーボード(実は恋珠ルビー)、コーラス(実は水谷姉妹)も入っている。結構フィーチャーされているフルートは舞音自身が吹いている。
(*4)雨宮先生が靴下を丸めて“ペニぐるみ”を作ってあげたら「きゃー」と悲鳴をあげて面白がり、男物のトランクスの中に入れていた。
「これつけたまま男湯に入ってみたい」
「ほとんど痴漢志願だな」
「おっぱいあるから無理だと思う」
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【夏の日の想い出・星遮りし恋人】(6)