■バレンタイン・パーティー(3)

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結局鈴音の家では着替えて元の服に戻ることができなかった。鈴音はトートに入れた忍の服を渡してくれたので、忍は近くのコンビニに寄って、鈴音のセーターとスカートを脱ぎ、元の服装に戻った。ブラジャーも外そうと思ったのだが、なんとなくその場で外すのはやめて、カップの中にいれたハンカチだけ外した。ブラジャーが胸に当たってる感覚が何となく気持ち良かった。 
沖縄に行く件は、自宅に戻ってから鈴音の母が忍の母と電話で話してくれた。「そういう訳で今日はうちの子が行くイベントに代わりに出席してもらってほんとに助かりました」「あらいいえ。その程度のこと、こきつかって下さい。そちらはもうお体は大丈夫ですか?」「ええ、熱も下がりましたし。念のため日曜までずっと寝せておきます。それで来週、沖縄であるライブに往復航空券・宿泊費込みで招待されましてひとりお友達を同伴できるんですよ。今日お世話になったこともありますし、そちらの忍さんに一緒に行っていただけないかと」「あら、交通費・宿泊費タダなんですか?」
「ええ。スポンサーが持つということで」
「タダならいいですわね」
「ええ」
 
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忍はふたりの電話をハラハラして聞いていたが、鈴音の母は「うちの娘」とか「鈴音」と言わず「うちの子」と言っていたし、忍の母も自分のことを「忍」としか言わず「うちの息子」とは言わなかった。結局話はまとまり、忍が来週鈴音とふたりで沖縄まで行くことが双方の親同士で承諾された。しかし忍の母は向こうを男の子と思い込んでいるようだし、鈴音の母はこちらを女の子と思い込んでいる。男女と分かってしまうと絶対許可されないだろから、取りあえずこれでいいのかな、と忍は思ったのであった。
 
でも忍という名前は女の子の名前としても通用するもんな、と彼は思った。何でも母が若い頃好きだった、男性俳優さんの名前から取ったらしいが、名前を付けた時は、女性でも「しのぶ」または「忍」がいることまでは考えなかったとか。 
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忍は自室に戻ると服を脱いでブラジャーを外しベッドの中に入れてからお風呂に入った。その夜、ブラに触ったりしながら寝たら、夢の中で忍はスカートを穿いて学校に出て行き、恥ずかしがっていた。
 
2月11日、忍は身の回りの物と、母から渡されたお小遣いを持って空港に行き、鈴音と落ち合った。ツアーの日程は今日那覇まで行き、那覇市内のホテルで1泊。12日土曜日の午前の便で宮古島に行き午後のライブに参加。夕方の便で那覇に戻り連泊。そして13日日曜日の夕方の便で戻ってくるということになっていた。鈴音から忍の分の往復航空券を渡される。名前は自分の名前だが、性別が F になっていてドキッとした。「ホテルのクーポンは私持ってるね」「うん」 
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「それでね、飛行機は性別が違っていても、世の中いろんな人がいるし、とがめられることはないと思うんだけど、ホテルは女性専用フロアらしいのよね。で、良かったらこれに着替えてくれない?」と袋を渡される。ドキッ。ライブに行く時は女の子の格好をしないといけないとは思っていたが、飛行機に乗る前からそういう服を着ることになるとは思っていなかった。しかし女性専用フロア?行くライブも女子限定ライブだし、なぜ世の中こんなに女だけのものがあるんだ?ほんとに女の子になりたくなっちゃうぞ、などと思ってしまう。
 
「分かった。トイレで着替えてくるね」「一応下着も準備しといたから。下着は新品だから安心して」「下着も女の子用?」「その方が女の子になっている気分になれるでしょ」と鈴音は笑って言う「あ、こないだ忍が使ったブラも入っているよ。スーパーフックを付けといたから装着できると思う」という。先週の服は月曜日に学校で返したのだが、それを洗濯してくれたのだろう。「スーパーフック?」「見れば分かると思う」 
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忍は鈴音から渡された袋を持って多目的トイレに入り、まずは袋の中身を出してふっとため息をついた。トイレで男の服から女の服に着替える場合、男子トイレだと着替えた後が問題、女子トイレは着替える前が問題(というか入れなさそう)。でも多目的トイレだと、そもそも男女の別なく出入り出来て中も広いし、ベビーベッドがあって、そこに服を置くこともできて便利だ。こないだから少し考えていたことであった。
 
まずは渡された服を並べてみた。ライトグリーンのセーター、長袖のカットソー(というのかな?)、スリップ・・・・ブラジャー!!スカート、黒いタイツ、ショーツ!! 忍は見ているだけでどきどきして、困ったことにあそこが大きくなってきてしまった。ショーツはイチゴ模様だ。見ているうちにクラクラとしてくる。これを鈴音が穿いているのを見たら萌えてしまうかも知れないが、これを自分が穿くのか・・・思い切って足を通し上まで上げてみた。アレは横に向けて無理矢理収納した。しかし・・・忍は頭の中で自分の世界観が、ガラガラと音を立てて崩れていく感覚に襲われた。
 
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気を取り直してブラジャーを付けることにする。これは見覚えがある。こないだつけたブラジャーだ。ホックの所に「継ぎ足し」が付けられていた。なるほど。これがスーパーフックか。面白いものがあるものだ。忍はブラを付けて後ろでホックを留めようとするが、うまく掛からない。しばらく苦労していたが、ふと以前母がブラのホックを前で留めてぐるっと反対側に180度回しているのを見たのを思い出した。そうか!ああすればいいんだ。と気づいて前で留めてから回転させ、それから肩紐を掛けるとうまく行った。ウレタン?製のパッドがあったのでそれを入れる。上から触るとほどよい弾力性がある。こないだみたいにハンカチを入れるのより良い感じだ。
 
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タイツを穿いてみる。最初丈が全然足りずに股がかなり低い位置になってしまったが、下の方から少しずつ伸ばしていったら、なんとか足りた。忍はそれからスリップをつけ、カットソーを着てスカートを穿いた。今日のはウェストがゴムではないが、アジャスターが付いていたので、最大にすると何とか入った。最後にセーターを着る。
 
鏡に映してみて、思わず可愛いと思った。わりと似合ってるじゃん。そう思うと心持ちアソコも鎮まってきた。忍は大きく呼吸をしてからトイレを出た。 
「お待たせ」と柱の横で待っていた鈴音に声を掛ける。
「うんうん。可愛い。充分女の子に見える」と嬉しそうだ。
 
忍が着替えている間に鈴音がマクドナルドでマックグリドルを買ってくれていたので、椅子に座ってそれを食べている時、鈴音が提案した。「忍、着替えを持ってきてるよね」「うん」「男の子の服でしょ」「もちろん」「それ、ここのコインロッカーに預けていかない?」「え?」「私、一応日曜日の分までの着替え、自分のと忍のと持ってきたんだ。旅の間はそれを着ればいいし」「それ、女の子の服?」「もちろん」「旅の間はずっと女の子の格好でいると・・・」「その方が面倒くさくなくていいと思うよ。男になったり女になったりするの、大変だって」確かにそうかも知れない。しかし3日間女の子の格好で通すとは・・・・ 
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「ね、いいでしょ?これは女の子同士のふたり旅」と言って首を傾げてニコッと笑う。忍はこの笑顔に弱い。「それに男の服と女の服と両方持っていくと荷物も多くなっちゃうし」と鈴音は付け足した。それは言えてる。長旅はいかに荷物を減らすかがポイントだ。
 
「分かった。置いてく」忍は決断してそう言うと、自分の着替えだけひとつのバッグにまとめ、さっき脱いだ服もそれに入れてコインロッカーに入れ鍵を締めた。これでここに戻ってくるまでは、鈴音が用意した女物の服を着る以外無い。忍は朝家を出るまで淡い期待をしていた『お泊まり旅行デート』というイメージが頭の中で霧散していくのを感じた。でもいいや。とにかくこの旅行を通して鈴音とこれまでより親しくなれるだろうし、と思い直す。まさかHすることにはならないだろうしなあ、などとも思った。忍は万一そういうことになった時のために、アレを買っておくべきかどうか実は悩んだ。しかしそこまで行くことは無いのではと思って結局買わなかった。買いに行くのが恥ずかしかったこともある。 
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手荷物を預け、カメラや機内で読むつもりの参考書、筆記具などを入れたリュックだけ持って、検査場を通る。性別 F の航空券を係の人に見せるのは少しドキドキした。しかし特に何も言われなかった。金属探知機を通るとキンコンと鳴った。「お客様、何か金属製の物をお持ちですか?」と尋ねられる。腕時計かも知れないと思い、外して通るが、また鳴る。「お客様。ワイヤー入りのブラジャーとか付けておられますか?」そういえばあのブラ、硬いのが入っていたと思い「はい」と答える。ハンド型の探知機で調べられたあと、ボディーチェックさせてくださいといわれ体を上から下まで触られたあとで放免となった。
 
ブラで金属探知機に引っかかったと鈴音に言ったら「へー、珍しい」と言う。最近の探知機はそういうのにはめったに反応しないらしい。「友達でハーフウィグ付けてたら、その留め金に反応したと言ってた子いたけどね」と鈴音は言った。 
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搭乗待合室で待っているうちに搭乗案内まであと10分くらいという案内がある。トイレに行ってくるといって席を立ったものの、入口のところで立ち止まってしまった。ここには多目的トイレが無い。男子トイレと女子トイレだけだ。どこか多目的トイレのあるところを探しに行こうか?しかしあと10分だから時間を食うとまずい。 
悩んでいたらトントンと肩を叩かれた。「私も行っておきたいから一緒に入ろ」と鈴音が笑顔でいう。「手握ってあげる」といって、鈴音は忍の手を握った。ドキッ。そのまま鈴音に手を引かれて、女子トイレに入る。
 
初めて見る女子トイレの中。そこはずらっと個室だけが左右に並んでおり、男子トイレで見慣れた小便器が無い。忍は異世界に来たかのような錯覚を覚えた。幸いにも個室は幾つも空いていた。「たぶん洋式の方が楽だと思うよ」と鈴音が言うので洋式と書かれた個室を選んで入る。ドアをロックして、ふっと息をついた。 
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忍は最初スカートをめくり、タイツとショーツを少し下げて立ったまますればいいかと思ったが、すぐにそれは無理だと判断した。結局タイツとパンツを膝くらいまで下げ、座ってすることにした。ホースの先を指で押さえて方向をコントロールして放出し、またため息をつく。女の子って、けっこう面倒くさいな。女子トイレが混むという理由が分かった気がした。どうしても男より所要時間が掛かるはずだ。 
おそるおそる個室のドアを開けると鈴音が手洗い場の所で待っていた。ニコリとこちらを見ているので少しほっとして手を洗い、一緒に外に出た。正直、トイレに入る時よりも、個室から出る時のほうが勇気が必要だった。
 
すぐに搭乗開始の案内があったが、いきなり長い列が出来たので、ふたりはしばらく席で待っていて、列が短くなってから搭乗口に行った。機体はジャンボだった。席は1階最後部の座席 58H,58K。窓際に鈴音を座らせ、忍が通路側に座った。
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