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■バレンタイン・パーティー(2)

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会場のホテルに入る。『白鴎堂プリゼンツ・バレンタイン女子会 朱雀の間』
という掲示を見て、そちらに進む。化粧品会社の主催で、それで女子限定になっていたようである。受付でチケットを出し、鈴音の名前を言うと、照合されてから「身分証明書を」と言われるので、預かってきた鈴音の学生証を出す。
 
写真と今ここにいる自分とは違うが、証明書の写真はけっこう変な写り具合のものが多いので、問題にはならなかったようであった。番号とQRコードの入った名札を渡され、掌にブラックインクのスタンプを押された。番号は3716だった。「トイレなどで部屋の外に出た後で戻る時、掌を機械にかざして頂きます」と言われた。けっこう厳重な管理体制になっているようである。またおしゃれな紙バッグに入ったお土産を渡された。中をちょっと見たら化粧品のようであった。
「最後にサプライズ企画がありますので、ぜひ最後までいらしてくださいね」
と言われた。何か抽選会でもあるのだろうか。
 
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会場内に入ると、10代の女の子たちが集まっている空間特有の匂い、いわゆる「女臭い」匂いがして、きゃーと思った。忍はこの匂いが少し苦手である。「ここは女子だけの空間」という感じで男の自分は拒否されている気分になる。
 
まずは鈴音に頼まれていたチョコを探す。第一希望のものの所には凄い列ができていたので、忍はそこに並び、ふっとため息をついた。列に並んでいるのもむろん女の子ばかりである。自分がここで浮いてませんように、と心の中で冷や汗をかきながら思った。忍は列の人数とテーブルに置かれた箱の数をざっと比較してみたが買えそうな気がした。しかし中にはひとりで数個求めている子もいる。けっこう途中で不安も感じたが。何とか買うことはできた。しかし、忍がそのチョコを買った時にはもう残りは20個くらいになっていた。忍は第一希望のが買えたことを、鈴音にメールした。返信は無かった。たぶん寝ているのだろう。
 
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鈴音からは義理チョコに使えそうなのがあったら10個くらい買ってきてと言われていたので、会場内を見てまわる。化粧品会社主催だけあって化粧品も置かれているし、メイクレッスンなどもやっていた。それをなんとなく見ていたら「じゃ、次のモデルはあなた」と、こちらに向かって言われてしまった。え?え?と思って左右を見るが、どうも自分が指名されているようである。なりゆきで椅子に座ると、「お化粧の経験はあまり無し?」などと訊かれながら化粧水で顔を全部拭かれる。更に乳液、メイクアップベースと塗られていった。説明は周囲の観客向けという感じである。そして10分もしない内にきれいに化粧された顔が鏡の中にできあがっていた。さすがプロがする化粧である。とてもきれいに仕上がっていて、忍は『これが自分?』と信じられない思いだった。
 
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モデルになったご褒美にとまたなにやら化粧品をいろいろもらった。「ありがとうございます」と言って、席を立ち会場を見て回る。結局義理チョコ用には100円のトリュフを10箱買った。さっきの化粧品と一緒にお土産用にもらった紙袋に入れる。だいたい会場も見て回ったので帰ろうかなと思った時、突然会場内がざわめいた。にわかに会場の片隅にロープで区切ったエリアが確保された。そういえばサプライズがあると言ってたっけ? ドラムスが設置され、スタンドマイクが4本置かれる。そしてマイクを持った女性が登場すると「それではこれよりサプライズライブを行います。出演はザ・モレアーズです」と告げると、会場内に黄色い悲鳴が沸き上がった。
 
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ザ・モレアーズ? 忍は女の子達に凄い人気のイケメン男性四人組ロックバンドということしか知らなかったが、楽器を持った四人が登場し、いきなり演奏を始めるとその迫力に圧倒された。最近の商業音楽は、編集の技術が良いので、下手な演奏でも発売される音源は上手に聞こえるようになっているものだが、このユニットは生でも凄く巧かったし、またノリの良さが快適だった。会場はビートを刻む手拍子の音に満ちていたが、忍もいつしか満面の笑みで手拍子を打っていた。
 
演奏は4曲おこなわれた後、アンコールに応えてもう1曲演奏された。そこまでMC無しでずっと演奏が行われたが、最後にリーダー?とおぼしきベースを持った人がマイクを手に取り、会場に呼びかけた。
 
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「みなさん、今日は突然の登場だったのに、演奏を熱心に聴いてくれてありがとう。ザ・モレアーズは来週、沖縄宮古島でクローズドライブをします。そのライブにこの会場から32人を招待します。当選した人と同伴1名(女子限定)2人分の往復航空券とホテル宿泊券も一緒にプレゼントします。太っ腹なプレゼントをしてくれる白鴎堂さんに拍手!」というので、会場内はキャー!!という悲鳴で満ちる。
 
電光掲示板とパソコンが持ち込まれ、メンバーの4人が交代で8回ずつキーを押し、その度に当選番号が電光掲示板に表示された。当たった人は係員の誘導で受付デスクに行き、手続きをしていた。
 
抽選が進むに連れ次第に会場は沈静化して、細かなざわめきへと変わっていた。そして最後にリーダーがキーを押して電光掲示板に 3716 という数字が表示される。
「はい、最後の当選番号は3716です。この番号の名札の方、こちらにどうぞ」
とアナウンスの声。へー3716。。。。。3716?? 忍は自分の名札を改めて見てみた。3716じゃん。当たった!? 忍は手を挙げて、係の人の方へ歩いていった。
 
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忍が名札を見せると、確認のためといわれ掌のブラックインクをスキャンされた。
「間違いありませんね。当選おめでとうございます。こちらで登録をお願いします」
と言われ、あらためて住所と名前、電話番号を記入させられた。「この当選の権利は他の人に譲ったりすることはできません。当日会場では生体認証でチェックをさせて頂きますので、両手の人差し指をスキャンさせて頂けますか?」「はい」
当選したことが信じられない気分だったので言われるままに両手をスキャナの上に置いた。「それではチケットはご住所に火曜の朝発送します。もし木曜までに到着しなかった場合はすぐにこちらにお電話下さい」といわれて紙を渡される。
 
「なお同伴の1名は女子限定ではありますが、姉妹、友達、お母さん、どなたでもけっこうですので、お名前を月曜日の夕方までにウェブまたは携帯から登録してください。航空券がその名前で発券されますし、また当日、メンバー全員のサイン入り色紙をそのお名前宛で書いてもらいプレゼントします」「あ、はい」
「当日入場は、今お渡ししますワッペンとあなたの生体認証でおふたり入ることができます」といってワッペンを2枚渡される。
 
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「身分証明書などは基本的には必要ありませんが、何らかのトラブルの時のために用意だけはしておいてください。なお女子限定のライブなので、男性の方を同伴してこられても、入場はでませんのでご承知おきください」「分かりました」
 
手続きを終えると忍はふっと大きく息をつくと、少し人混みから離れたところで鈴音にメールをする。「ありがとう」という返事がかえってきた。自分の自宅には電話を入れた。用事が済んだのでこれから、友達の家に寄ってから帰ると伝える。
 
鈴音の家に戻ったのは9時半であった。「どうしたの?その顔!?」と化粧した顔に驚かれた。「いや、メイクレッスンコーナーで捕まっちゃって」というと大笑いしている。鈴音もかなり元気を回復したようだ。「でも化粧美人だね。忍。写真撮っていい?」「お好きに」こちらはもう完全に開き直っている。しかし『化粧美人』って褒め言葉なのだろうか??
 
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鈴音はデジカメで忍の単独写真に、お母さんに頼み自分と並んでいる所の写真も撮って喜び、その上でクレンジングを用意してくれた。お母さんはこちらに丁寧にお礼をいって、タクシー代にプラス手間賃といって5000円札をくれた。遠慮せずにもらっておく。しかし若いお母さんだ。鈴音の姉と言われても信じてしまいそうな感じである。
 
「それで」と言って、忍はザ・モレアーズの突然ライブがあったこと、そして来週の宮古島クローズドライブに当選したことなどを伝えた。お母さんがお腹空いたでしょう、と言って御飯を用意してくれている。忍は自宅に戻ったらまた食べるんだけどとは思ったが、ありがたく頂いた。
 
「そういうわけで、もし都合がついたら誰かお友達誘って行ってくるといいよ。2月12日というので急だけど」「ザ・モレアーズ嬉しい。私も好きだよ。今日も聴きたかったなあ。来週は絶対行きたい!ねえお母さん、行っていいよね」
「あんたも高校生だからね。一人旅くらいいいか。あまりハメは外さないようにね」「うん。でも宮古島か!行ったことないし楽しみ。あれ?でも」「ん?」
 
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「よく考えたら、これ当日生体認証で入るんでしょ?で登録してるの、忍の生体情報」「あ・・・そうか。どうしよう。あ、でも何かの時のために身分証明書を持ってきてと言っていたから、現地で生体認証がエラーになっても、鈴音は自分の学生証で入場できるよ」鈴音は先程から忍を呼び捨てで呼んでいた。いつもは「忍くん」というのが「忍」である。そこで忍も「鈴音さん」と普段言っているのを「鈴音」と呼び捨てにしていた。
 
「なるほど、確かにそうかも・・・でもさ、こうしたらスッキリしない?私と忍がふたりで宮古島に行く。それで会場には私の名前で登録されている忍の生体認証で入る。同伴者は忍の名前を登録しておいて、私は同伴者の忍ちゃんとして入場すればいい」「あら入れ替わるわけね」とお母さん。「そうそう」「でも同伴者は女の子でないと」と忍が言ったが、「だから私と忍でふたり、女の子同士でいいじゃん」と鈴音は言ってこちらを意味ありげな視線で見る。
 
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その時、忍は思い至った。スカートを穿いてお化粧した状態で、この家に戻ってきて、鈴音のお母さんに会った。もしかしてお母さんは自分を、女の子の友人と思っている? あ、だから鈴音は「忍くん」ではなくて「忍」と僕のことを呼んでいるんだ。女の子に「くん」を付けるの変だもん。
 
「ほんと、それはいいわね。忍さん、しっかりした感じでお行儀もいいし、うちの鈴音はルーズで躾も出来てないから、一緒に行ってくださると、私も安心だわ」と、お母さんは乗り気の様子である。
「ね、忍、一緒に行こうよ」と鈴音は少しコケティッシュな視線を送った。「うん。じゃ一緒に行こう」と忍は答えてしまった。
この時点では、好きな女の子とふたりで旅が出来るなんて、という気持ちが忍にはあった。しかし、その旅がどういう旅になるのか、忍にはまだ想像ができていなかった。
 
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