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■トワイライト・魂を継ぐもの(4)

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「悪かったなあ。私、買わないのに」などと梓が言う。
「いいんじゃない?私が買うから問題無いよ」
「梓ちゃんはもう買ったの?」
「母にレンタルの手配をお願いしようかと思ってるんです。盛岡の方の成人式ではそれを着て、東京の成人式では和実さんから借りて出ようかと」
「あら、和実、そんなお貸しできるような振袖持ってた?」
 
「手染めの友禅が1枚あったのよね。ただ、かなり痛んでて。ヤフオクで安く出てたのを、私と姉ちゃんと半分ずつ出して落とした奴。取り敢えず来月になったら洗い張りに出してみようかと思ってるんだけど」と和実。
 
「わあ、ふたりで出し合ったって、落札価格もけっこうしたのかしら?今更だけど」
などと梓が言う。
「そうでもないよ。ただいつも落としてる価格帯よりは少し高かっただけで。練習用というより、普段着で着たいね、なんて言って入札したんだよね」
 
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「それを借りて良かったのかしら?」
「着物はできるだけ着てあげないと」
 
「和実はどれ買うの?」
「私ね。。。。最初、振袖用に100万、資金を用意してたんだよね。でも被災地を頻繁に訪れてたら、みんな大変なのに、私だけ100万の振袖着ていいもんだろうか、って気持ちになっちゃって。予算を40万に落として、60万は被災地に寄付しようと思ったのよ」
 
「でも40万で買えるクラスの振袖なら、和実、何着も持ってるじゃん」
「なのよねー。みんな実際には2〜3万で買ったのばかりだけど。でも淳が半分出すから、いいの着なさいよと言って」
「ああ」
「更にはお母ちゃんも半分出すから、と言って」
「おお」
「胡桃の成人式の時は全部出してあげたんだけど、こちらも今震災のあとの家の修理とかでたいへんだったから、申し訳ないけど半分ということで」と母。
 
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「でもちゃんと娘として認めてもらえたのね」と梓。
「これ、息子だとは人に言っても信じてもらえないもん」と母。
「ですよねー」
 
「それで結局、当初の予算から70万ボランティアで関わってる某市に寄付して、淳とお母ちゃんから30万ずつもらって、自己資金30万と合わせて90万くらいの予算で考えようかと」
と和実は説明する。
 
「いいと思うな。お金に余裕のある人がどんどん消費しないといけないよ。今みたいな時期は」と梓。
「うん。それは思う。お金を使うことも大事だよなって」
「経済活動の活性化だよ」
「だよねー」
 
「あ、その予算だったら、これとか良いんじゃない?」と梓は1枚の写真を指さす。「うん、それ可愛いわよね」と母。
「それもいいけど、こちらも可愛いよね」と胡桃。
「うん。そのどちらかかなあ」
 
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9月になり学校が始まると、和実は朝から15時くらいまで学校に行き、そのあとメイド喫茶に行って、夜0時の閉店まで仕事をするというパターンの生活に戻った。ボランティアで東北に行く日は、お店を19時くらいで切り上げて、その後誰かと組んでトラックを運転して往復し、明け方東京に戻るコースである。トラックの運転は、男性は男性同士、女性は女性同士の組み合わせにするようにしていたが和実は性別の特性上、男性とも女性とも組めるので、しばしば調整に使われていた。
 
9月の上旬、和実が、梓と若葉と一緒に学食でお昼を食べていたら、3人のテーブルに寄ってくる人影があった。和実が手を振ったが、若葉も手を振っている。
 
「若葉、これ貞子から頼まれた。まとめて送ってきて、キャンパスは近くでしょ、渡しといてって言われて」
と言って、唐本冬子は3人の席に座る。
 
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「若葉、冬子と知り合いだったの!?」と和実。
「うん。中学の時、陸上部で一緒だったんだよね」と若葉は答える。
「でも和実も、冬子と知り合いだったんだ?」と若葉も驚いているよう。
 
「6月になんと岩手県で偶然遭遇してさ。その時はまさか同じ大学とは思わなかったのよね。その後あらためて都内でまた会った時に、隣のキャンパスにいたことを知ったという」
と和実も言う。
「私は若葉と和実が知り合いだったなんて、今知ったよ」と冬子。
「わあ、面白い遭遇が発生してる最中か」と梓。
「5月に私と梓と和実がお互い友だちだったことに気付いた時もこんな感じだったね」
と若葉。
 
「だけど文学部と理学部は、たしかに地図で見たらキャンパス隣かも知れないけど、けっこうな距離があるんだけどな」と冬子。
「だよねー。全然冬子とは遭遇しないもん」と若葉。
 
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「あ、私も何か食べよう」と言って、冬子は注文カウンターに行き、お昼のランチをとってきた。
 
「あ、そうそう、冬子。こちらは私の古くからの友だちの梓ね」と和実。「梓は私と同じクラスなんだよ」と若葉。
「よろしく」「よろしく」
といって冬子と梓は握手をしている。
 
「でも和実の古くからの友だちということは、若葉が私の非公開の古い女の子ライフを知ってるみたいな感じで、梓さんも和実の古い女の子ライフを知ってたりして」
 
「・・・・もしかして冬子さんって、MTFさん?」と梓。
 
「うん。この春に手術したよ。私、10月が20歳の誕生日だから、誕生日来たら裁判所に性別変更の申請出す予定」
「わあ」
「和実もさっさと手術して、性別も変えちゃえばいいのに。今手術しちゃえば年内には晴れて女の戸籍が手に入るじゃん」と冬子。
「あ、私もそれ時々煽ってます」と梓。
「私はいつもそれ煽ってる」と若葉。
 
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「あ・・・・冬子さん、どこかで見たことがあると思ったんだけど、もしかして、もしかして、ローズ+リリーの・・・」
「うん。ケイだよ」
「えー!?どういう縁で、そんな有名人と知り合いに。って、若葉は中学が一緒だったのか」
「そうそう」
「私は偶然の遭遇」と和実。
 
「しかし期せずして、どう見ても女の子にしか見えない元男子がふたり並んでるわけか。ふたりとも声も女の子の声にしか聞こえないし」と若葉。
 
「だけど、和実って、ケイさんの『その時』をラジオ放送で最初に聴いた時に、男の子だよね、なんて言ったんですよ」と梓。
「あ、その話は初耳だ」と冬子。
「たぶん、同類だから類推が利いたのよ」と和実は言う。
「そうそう。高校時代に、和実が書いてくれた励ましの手紙、発掘したよ」
と冬子。冬子が週刊誌の報道を発端にして芸能活動休止に追い込まれた時、和実は励ましの手紙を書いたのである。
 
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「あの時、丁寧な返事もらったから、感激した。冬子、凄く字がきれいなんだよね」
「私も政子も書道部だったからね」
「その書道部で知り合ったんだよね、冬子と政子さんって」と若葉。
 
「ところで、みんな成人式の振袖は確保した?」と冬子。
「私は今年のお正月に注文したよ。安いやつだけど」と若葉。
「私は正月に盛岡で頼んだ所が震災で倒産しちゃって、先月あらためて東京で注文した。ぎりぎり12月までに間に合うみたい」と和実。
 
「私もお正月に頼んでたんだけど、やはり和実と同じで震災でダメになってあらためて頼もうかと思ってたけど震災で壊れた家を直したりしていてお金がなくなっちゃって結局レンタルの予定。でも地元と東京の両方の成人式に出るから、東京の式で着るのは和実から借りるつもりでいるんだけど」
と梓。
 
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「冬子はやっぱり、いい振袖着るんでしょ?」
「最低300万以上するの着なさいって言われたのよね。自腹なのに」と冬子。
「きゃー!」
 
「必要経費で落とせないの?」
「なんと資産計上して減価償却計算しないといけない。償却期間は5年」
「大変だ」
「でも300万以上という話になったのは8月なのよ」
「えー!?」
 
「だって、こないだ出した『キュピパラ・ペポリカ』が、今どーんと売れてるからさ。その売り上げを見て、急に要求される相場が上がっちゃって。それで慌てて8月の下旬に頼んだ。できるのは結局12月」
「わあ」
 
「だから実はそれ以前に、今年の2月に注文しちゃった120万円の振袖も存在するという」
「ひぇー」
 
「冬子、去年のお正月も豪華な振袖着てたよね」と若葉。
「うん。あれも140万した。で、成人式にはどれを着るかをとっても迷ってしまう」
「贅沢な悩みだぞ」と若葉。
 
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「2月に頼んだ振袖はもうできてるの?」
「できてる。見る?」
「見たい!」
 
ということで、結局その日の夕方、午後の講義が終わった後で、和実・若葉・梓の3人で冬子のマンションに行くことになったのである。
 

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ぞろぞろとみんなで「お邪魔しまーす」と言って入っていくと、リビングでパジャマ姿でくつろいでいた政子が、びっくりした顔をして奥の部屋に走って行き、やがてチュニックとプリーツスカートの出で立ちで出て来た。
 
「冬〜、人を連れてくるなら電話してよ」と政子。
 
「だって、私、マーサが今日ここにいるって知らなかったよ」
「今日は午前中の講義聞いてて眠くなったから、ここに来て午後はずっと寝てたんだよね。さっき起きてきた所。冬にメール・・・あ、するの忘れてた」
「じゃ、私が分かるわけないじゃん」
「ということで、その方たちは?」
 
「うん。私の友だちの若葉、和実、梓。和実は覚えてるよね?」と冬子。「2回会ってるからね」と政子。
「で、こちらは私のパートナーのマリ、こと政子ね」
「こんにちは」
「こんにちは」
 
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振袖を見に来たというと、政子も楽しそうな顔をして、冬子と一緒に和ダンスに入っていた振袖をリビングに運んできた。
 
「これが去年のお正月に着た振袖、こちらとこちらとこちらはステージ衣装として着ている振袖。で、こちらが今度のお正月に着るつもりで頼んでおいて、先月できてきた振袖」と冬子。
 
「ステージ衣装のも、プリンタじゃなくてちゃんと型押し手描きだ。でも、この本式手染めの2点はどちらも、きれいな加賀友禅だね。何か女性的?」
と和実。
 
「うん。女性の作家さんだよ。まだ40歳くらいの若い人。こないだ頼んだとっても高い振袖も、同じ人の作品。政子は別の人のを頼んだね」
「へー」
「でも同じ人の作品でもそんなに価格の差が出るんですか?」と梓。
 
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「友禅は分業だからね。図案は作家さんが作るけど、下絵書いて、糊置きして、彩色して、ってのは普通はベテランの職人さんがする。でも超高級品の場合は、そういう作業まで作家自身がする」と和実が解説する。
「あまり多くは生産できないね」
「うん。だからこそ高くなる」
 
「でも、冬、マジでこの振袖どうするの?」と政子。
「完全に浮いちゃったね。美智子からは、写真を撮られる可能性のある場所では着ないようにって言われちゃったし。去年着たこちらのは一度それで写真とかも撮られてるから使ってもいいということなんだけど」と冬子。
「いっそ被災地の女の子に寄付しようかなんて話もしたんだよね」と政子。
 
「冬子さん、それならですね。ここに、地震のおかげで、振袖を頼んでいた呉服屋さんが倒産して、そのあと壊れた実家の修理とかで、お金が掛かって、結局新たに買うのを諦めた女の子がいるんですが」と和実。
「和実・・・・」
「あ、だったら梓ちゃんに寄付しようよ」と政子。
「うん、いいよ。梓とも友だちになったし。友だちに着てもらえるんなら嬉しいから、あげるよ。私もこの振袖、けっこう気に入ってたから知らない人に渡すより友だちに渡した方がいい」と冬子。
 
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「そんな、高いのもらえません」と梓。
「じゃ、無償レンタルで」と和実。
「うん。それでもいいよ」と冬子。
「うーん。レンタルなら。でも借り賃、払いますよ」と梓。
「取り敢えず着てみない?着てみて似合ってたら、借り賃で3万もらって、その3万は私が被災地に寄付するってのはどう?」と冬子。
「ああ、それなら」
 
そういう訳で、その本式手染めの加賀友禅の振袖を、その場で和実が梓に着付けしてみた。
 
「なんか、冬が着たのより似合ってる気がするよ」と政子。
「絵柄が優しいのよね。この人の作品。それが梓の持ってる雰囲気に凄くマッチしてる」
 
そういう訳で、冬子の振袖の浮いてしまった分を、梓が借りることになった。梓はすぐに自分の母に連絡し、こちらで同い年のお金持ちの友だちから、事情があって浮いてしまった振袖を安く借りることにしたので、申し訳無いがそちらのレンタルの予約はキャンセルして欲しいと言った。
 
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「安くって幾らで借りるの?」と電話の向こうの梓の母。
「3万。友だちはタダでいいって言ったんだけど、申し訳無いから払うってことにして。それで友だちは私からもらった3万は被災地に寄付するって言ってる」
「あんたが3万でも払いたいって言ったってことは、元々かなり高い振袖ね?」
「うん。120万で買ったけど、事情があって、成人式は別の振袖着ることになっちゃったんだって」
「きゃー。じゃ、そちらに1万でも送るから」
「そう?少し助かるかも。でも、そちら大丈夫?」
「うん。こないだ、あんたから10万もらったから大丈夫」
 
梓は、自分がその振袖を着ている所を自分の携帯で和実に写真を撮ってもらい、それを母にメールで送った。すると「凄く可愛い!!3万じゃ申し訳ない。こちらから2万送るから5万払いなさい」という返事が来た。その件を冬子に言うと、笑って了承した。
 
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「じゃ、梓からもらった5万に、私と政子で5万プラスして、10万を被災地に寄付するよ。そしたら、梓と梓のお母さんと、私と政子と4人の善意になる」と冬子。「あ、だったら、私も5000円寄付する」と若葉。
「じゃ、私は1万5000円」と和実。
「じゃ、6人合計で12万円寄付ね」と冬子は楽しそうに言った。
 
 
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