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片山君は女子トイレにも連れ込まれていたが女子トイレ名物の待ち行列に驚いていたので、(少なくとも慣れるほどまでは)女子トイレを使ったことはないようであった。
夕食の時には
「この機会に性転換手術を」
と言われていた。
「やめとく」
「嫌ではないのね」
「性転換手術されちゃったら女で生きていけるとは思うけど積極的に女の子になりたいわけではない」
「なるほど。ちんちん無くなっても構わないんだ」
「構う!」
「いや女の子になるのも嫌では無いと聞こえた」
「ぜひ日常的に女の子の服を着よう」
「そんなことしてたら本当に女の子になりたくなるじゃん」
「全然問題無いじゃん」
「取り敢えず睾丸を取ろう」
「え〜?」
「18歳くらいまでに睾丸取ると女らしくなれるらしいよ」
「どうしよう?」
やはり悩むのか。
「男として生きていく場合でも睾丸は不要だよ」
「そうかなあ」
「ちんちんがあれば問題無いよね」
「ちんちんが有れば取り敢えず男湯と男子トイレは使える」
「睾丸があると夫婦生活も射精して終わりだけど、睾丸が無ければ射精しないから気持ちいいだけでずっと続いて行ってつい朝までしてしまったりするらしいね」
「わあ、気持ち良さそう」
「へー」
あと一押しかな?
「睾丸無いと子供作れないのでは」
「睾丸を取る前に精液を冷凍保存しておけばいい」
「精液って冷凍保存するのか」
「フリーズドライでも保存できるらしいよ」
「フリーズドライよりは冷凍がいいな」
「でも精液の保存があれば睾丸もちんちんも不要だね」
「ちんちん無いとおしっこに困る」
「座ってすればいいだけのこと。何も問題無い」
「いっそ性転換して女同士の夫婦になってもいいよね」
「女同士の夫婦って温泉なんかにも一緒に入れて便利らしい」
「素敵ね」
「雅ちゃん、可愛いの好きだよね」
「可愛いダイアリー使ってるよね」
「見せて見せて」
というので見せると
「おお可愛い」
とみんなに言われていた。
「リトルツインスターか」
「キキとララ、私も好きー」
「シナモロールのシャーペンも持ってたね」
「うん。まあ」
「そういうのどこで買うの?」
「普通にお店で買うけど」
「そういうお店に入れるのね」
「そういうお店に雅ちゃんが居ても違和感無いよ」
「雅ちゃんは多分女性オンリーの店にも入れる」
あとでイヤリングとカチューシャをプレゼントされていたが、似合っていたし可愛くなったのでみんな驚いていた。カラーリップまでプレゼントされて塗っていたが更に可愛くなった。この日はずっと着けていた。
「中学時代に先輩の男の子に押し倒されたことあると言ってたね」
「なんでそんなのばらす」
「それでやられちゃったの?」
「キスはされたけど途中で彼が自分で中断したよ」
「押し倒したくなる気持ち分かるかも」
と男子たちから声があった。
なお彼のホテルの部屋はシングルである。ツインだったら同じ部屋になった男子は平常心ではいられなかったかも。(カチューシャしてるしスカート穿いてるし)
部屋割を決めたのはクラス委員だが「セクシャリティの問題」と言っていた。公世もシングルである。
彼はその後度々女の子の服を着せられることになる。
ビーチの後は、宮古島熱帯植物園に寄った後、雪塩ミュージアムに行き、そのあと宮古島空港から那覇空港に移動した。
なお、翌年2009年には、熱帯植物園内に宮古島市体験工芸村が開設されたが、この当時はまだなかった。
晩御飯はゴーヤチャンプルーだった。片山君は飛行機に乗る時も夕食の時もスカートを穿いていた。
旅行3日目、沖縄本島での初日は午前中首里城を見学し、ここで3枚目の集合写真を撮る。この時、公世が女子制服の上下を貸してあげたので、片山君はこの集合写真にはセーラー服で写った。公世には千里が持って来ていた着替え用の制服を貸してあげた。
(心理的な問題で片山君は男子?の公世が著ている服なら著てもいいと思うが千里の服は女性が著ている服なので著るのに抵抗がある。公世と千里はお互いに服の貸し借りは平気)
午後からは美ら海水族館に行った。
「この字で“ちゅらうみ”と読むって難しいね」
「北海道の地名と沖縄の地名は難しい」
夕方はホテルからも近い国際通りに出ていろいろ買物してる子が多かった。
国際通りでは千里もTシャツを2枚買った。
清香と公世はホテルの近くの路上で屋台のハンバーガーを買っていた。千里の分も買ってきてくれたので食べたが美味しかった。
千里はサーターアンダギーを買ってきたので、清香とシェアした。
千里が国際通りを歩いていたらいきなり40代のご夫婦に声を掛けられた。
「あのお、すみません。もしかしてユタさんですか」
ユタというのは沖縄の民間の霊能者である。正規の神職であるノロとは厳然と区別される。
「いえ、私は内地の神社の巫女です」
「ああ、内地の巫女さんでしたか」
「何かお悩みですか」
「実はずっと体調が悪くて。でも病院にかかってもはっきりしなくて」
千里は成り行きで占ってあげることになる。
「静岡かどこかの方ですか」
「よく分かりますね!浜松なんです」
タロットを引くと棒のカードが出る。
「多分何かの腫瘍です、これ東京の大きな病院で診てもらった方がいいですよ」
「行ってみます!」
「千里よく相手の住所分かったね。静岡とか」
と近くに居た涼香ちゃんに言われる。
「いや相手を通して浜名湖が見えたから」
「すごーい!浜松って言ってたね」
「でもなんで私ユタと間違われたんだろう」
「千里に凄い霊感があるからだと思う。あの奧さんも霊感持ってた。霊感ある同士は分かるんだよ」
とみどりちゃんが言う。
「へー。私そんなの全然分からない」
この手のセンサーは実は青にはあるが、赤はあまり発達していない。
この手のセンサーを持つ人は電話で話しただけで相手の霊感を感じ取る。占いの店の運営者などが結構この手のセンサーを持っている。
夕食はホテルのレストランでタコライスであった。
「タコライスってタコが入っているわけじゃないんだ?」
「それはお約束のボケだな」
「タコス・ライスを略したものだよ」
「タコスだったのか」
「でもなんでタコが入ってない?と文句言う人がいるのでタコを入れたタコライスを出す店もある」
「メロンパンにメロンを加えるようなもんだな」
「ああ、メロン果汁を使っているメロンパンってあるよね」
片山君は国際通りに女子たちと一緒に行ったが、可愛い服を買ってもらい、即着せられていた。それで彼は今日もスカートを穿いて夕食を食べていた。
「だいぶスカートに慣れたでしょ?」
「これだけ穿けばねー」
「足の毛は剃ってるの?」
「ぼくあまり生えないんだよねー」
「羨ましい」
「左合わせの服は上手にボタン留めてたね」
「子供の頃はお姉ちゃんのお下がりの服着てたから」
「それでお下がりのスカートも穿いてたのね」
「スカートのお下がりはもらってない」
「女の子下着とかは着けてないの?」
「洗濯物が乾いてなくて借りたことはある」
「じゃ女の子下着にも抵抗無いね」
「抵抗あるよー」
「じゃ明日は女の子ショーツ買ってあげるね」
「うーん・・・」
「女子トイレも慣れたでしょ?」
「あまり慣れたくなーい。男子トイレに入るのに抵抗を感じるようになっちゃう」
「姫路に戻っても学校では女子トイレを使えばいいよ」
「叱られるよー」
「いやきっと許される」
「悩んだら“みんなのトイレ”においでよ」
と公世が誘っている。
「そうさせてもらうかも」
「まあこれで男子トイレはもう使えなくなったね」
彼はきっともう小便器を使うことは無いだろう。
「学校ではセーラー服で授業受けよう」
「そんな恥ずかしい」
恥ずかしいというだけの問題なのか?
「慣れたら平気になるよ」
うん。きっとそうだ。
「私、先輩でここの制服まだ持ってる人いないか訊いてみるよ」
と片山君と同じ卓球部の優花ちゃんが言っている。スポーツしてた女子の服なら入るかもね。片山君自身も細いし。
彼はこの修学旅行で人生変わったかも?
「雅ちゃん秋の大会では女子の部に出ない?」
「それはさすがに不正行為だと思う。うちの学校が除名されるよ」
4日目最終日。朝一番にホテルから歩いて行ける距離にある波上宮(神社)を訪れ、ここで4枚目の記念写真を撮る。
そのあとバスで移動して午前中は瀬長島の景観を楽しんだ。
瀬長島は沖縄本島のすぐそばにある小さな島で道路(海中道路と呼ばれる)でつながっている。後にウミカジテラスという施設が作られているが、この当時はまだ無かった。
この近くでお昼を食べてから午後は玉泉洞(鍾乳洞)を訪れた。
最後はサンエー那覇メインプレイスでお買い物タイムとなる。片山君はまた可愛い服を着せられていた(彼ももう男装に戻さなきゃいいのに)。
昨日の約束で?女子用ショーツも買ってもらっていた。渡されて悩んでいたが結局穿いたようである。すると更にキャミソールも買ってもらい、やはり著ていた。
午後4時に集合。那覇空港に移動し、再びチャーター便で伊丹空港に戻った。片山君は可愛い服のまま搭乗していた。
しかし結構密度の高い4日間だった。