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■振袖モデルの日々(7)

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それでまたしばらく脱衣場でおしゃべりしていたのだが、鈴佳は急におしっこがしたくなった。それでトイレを目で探すと、それっぽいものがある。それで「ちょっと」と言って、その場を離れ、トイレっぽいドアの前まで行くのだがあれ?と思って戸惑う。
 
それで立ち止まっていたら後ろから来た宏美が
「どうしたの?」
と訊く。
 
「いや、ここ男女表示が無いけど、女子トイレだっけ?」
「そりゃ当然。女湯の脱衣場に男子トイレがあったら大変だよ」
「あ、そうだよね!」
 
「鈴佳(すずか)って結構楽しい性格のような気がしてきた」
「あはは」
 
それで宏美と続くように女子トイレの中に入る。なんか今更女子トイレに入ること自体は平気になったなあと思った。中は個室が2つあり、2つとも空いていたので、ふたりともそのまま個室に入り、用を達す。
 
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便座に座る前にズボンをさげようとして、あっそうか。スカートだった。と思い、スカートの中に手を入れてパンティを下げ、そのままスカートをめくって腰掛ける。
 
それでおしっこをしてからトイレットペーパーで拭く。立ち上がってパンティをあげる。
 
その時、ふと気づいた。
 
スカートって・・・トイレが楽だ!
 
ズボンに比べて随分短時間でトイレができるじゃんと鈴佳は思った。これからは女の子として出歩く時はスカートの方が便利かもね、などと考えてから、僕、そんなに女の子として出歩くんだっけ?と再度考え「うーん・・・」と悩んだ。
 

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個室から出たタイミングがほぼ同時だったので、手洗いを譲り合い、結局宏美が先に手を洗い、その後鈴佳が手を洗って、一緒にトイレの外に出た。ふたりが戻って来たところで全員脱衣場を出て2階の食堂街に移動した。
 
お寿司屋さんに入り、テーブルに座る。カウンター型になっているので、6人が横一列に並ぶ形になった。
 
「どのくらい食べていいんですか?」
と松美が訊くと
 
「好きなだけ食べていいよ」
と石原さんが言った。
 
「わーい」
という声があがり、それぞれ回ってきたものを適当に取る。鈴佳も何気なく目に付いたサーモンを1皿取った。
 
好きなだけいいのなら、サーモンと中トロと、ブリとヒラメと、甘エビとタイと、イカあたりかなあ。。。などと考えていたら、隣の席の玲花が「3皿にしときな」と小声で言った。
 
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え〜?3皿。
 
そのくらいで遠慮しておけということかな、と思い計画を変更する。3皿しか食べられないのなら、今サーモンを取っちゃったし、マグロは外せないから、残るひとつは・・・うーん、甘エビかなあ。
 
それでサーモンを味わいながら食べ、次に回ってきた甘エビを取る。1日仕事をして、お風呂にも入って、かなりお腹が空いている。3皿では全然腹の足しにならないのは確実なので、お茶をたくさん飲みながら食べた。
 
しかし甘エビもすぐ無くなってしまう。えーん。もう終わっちゃったよ、と思いつつも、中トロが回ってきたのでそれを取ってそれもゆっくり味わって食べた。
 

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その後はお茶を飲みながらみんなとおしゃべりしていたが、お腹が空いて空いてたまらない気分で、でも我慢するためにお寿司が流れて来るコンベアは見ないようにしていた。
 
40分くらいおしゃべりしてから、そろそろ出ようかということになる。
 
「私もうお腹いっぱい」
などと松美が言っているが、彼女の前には皿が2つしか無い。嘘。2皿しか食べてないのに?と思うが、見ると他の子も2〜3皿しか食べてないようだ。石原さんだけが4皿食べていた。
 
お勘定をしてお寿司屋さんを出る。
「おごちそうさまでした」
と全員石原さんに声を掛け、またアルファードに6人で乗って水戸駅まで送り届けてもらった。
 

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駅近くのコンビニに入る。サプリメントが並んでいるコーナーを見るとエステミックスというのが並んでいる。
 
「じゃこれ買ってあげるから飲んでごらんよ」
と姉が言う。
「本当に飲むの〜?」
「おっぱい大きくしたいんでしょ?」
「そんな・・・別に大きくしたくないけど」
「おっぱい少しあると和服以外のモデルもできるよ」
「うーん・・・・」
 
レジでお金を払った後で、とりあえず3粒渡されたので、飲んでみた。
 
「味がしないね」
「まあ無理に味つける必要もないしね」
 

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切符を買ってから改札を通り、玲花と2人でホームで電車を待っていると、電車が入ってくるが、目の前に停まったのは、何だかピンク色の派手な色彩の車両である。
 
「何か凄い塗装」
「ああ、これは女性専用列車だから」
「え?じゃ僕乗れない?」
「あんた今は女の子でしょ?」
「あ、また忘れてた」
「しっかりしてね。自分が女だという意識をもっとしっかり持たなきゃ」
 
と言って姉はさっさと乗り込むので鈴佳も慌ててそれに続いて乗り込む。
 

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そして電車は発車する。鈴佳はその頃ようやく車両内を見渡す余裕ができた。
 
「あれ、男の人も乗ってるよ」
「うん。この車両が女性専用車両として運行されるのは朝の通勤時間帯だけだから。今の時間帯は男性も乗車できる」
「なーんだ。じゃ最初から悩むことなかったのか」
「もっともあんたは女の子として行動している限り、どんな時間帯でも迷わず女性専用車両に乗れる」
「うーん・・・」
 
(※実際には水戸駅を発着する列車で女性専用車両を連結しているものはありません。常磐線は朝の通勤時間帯のみ、取手から都心方面に向かう普通列車に女性専用車両が設定されていますが、取手以北では使用されていません)
 

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その時、玲花が言った。
 
「お寿司屋さんで、なぜ私が3皿までにしておきなと言ったか分かる?」
「そのくらいで遠慮しとけということ?」
「違うよ。女の子の食欲はそのくらいだから」
「あっ・・・」
 
「女の子は回転寿司で7皿とか10皿とか食べないから」
「女の子って、そんなに少食なの?」
 
「まあ若干例外の子はいるけどね」
「はぁ・・・」
 
「モデルする子は特にカロリー制限しているから。松美ちゃんとか明らかにダイエットしてるね」
 
「松美さん、細いのに!」
「モデルは体型を維持するのも仕事の内だもん。あの子W55と言ってたから」
「嘘!? 高校生なのに」
 
「そのお陰で今日はすごい補正してたね。でもファッションショーとかに出るモデルやろうとしたら、そのくらいのウェスト維持しないとね。ただこれは日本の場合で、ヨーロッパだとそんな細いモデルは使ってもらえないんだよ」
「へー」
 
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「向こうの考え方は健康的なモデルでないとダメということで、細すぎるモデルは排除されている」
「その方がいいなあ」
 
「鈴佳(すずか)、ヨーロッパに行って女の子モデルになる?」
 
鈴佳はわざわざ玲花から「女の子モデル」と言われて、本当に自分が女の子としてモデルをする場合を考えていたことに思い至り、かぁーと顔が赤くなった。そして言う。
 
「鈴佳(すずか)はやめてよ〜」
「いや、私もずっとこの2日間、あんたのこと鈴佳(すずか)と呼んでたら、それが普通になっちゃった」
 
「うーん・・・。石原さんからも鈴佳(すずか)ちゃんとずっと言われてたし」
 
「もう面倒だから改名しちゃおうよ」
「え〜〜!?」
 

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自宅の最寄り駅で降りる。今になってまとめて疲れが出てきたせいか、トイレに行きたくなったので、少しボーっとした状態でトイレの男女表示を見て女子トイレの方に入る。
 
ここ2日間女の子していたので、当然その間は女子トイレを使っていた。それで何だか女子トイレに入るのが普通になってしまっているのである。個室に入り、便器に座っておしっこをし、拭いて出る。手を洗ってからトイレを出る。
 
「お待たせ」
と言って姉のそばに行き、一緒にいろいろ話しながら家に向かっていたのだが、家まであと100mくらいになってから唐突に鈴佳は自分がスカートを穿いていることを思い出した。
 
「しまった。僕、スカート穿いたままだった。ズボンに替えなくちゃ」
「なんで?」
と姉が訊く。
「だって、こんな格好、お母ちゃんに見せられないよ」
「別にいいじゃん」
「どうしてスカートなんか穿いてる?って言われるよ」
「『僕女の子になっちゃったの』とは言えばいいよ」
「そんなあ」
 
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「どっちみち、もう着替えられるような場所は無い」
 
確かにもっと早く気づくべきだった!
 

家の玄関まで来て、姉が鍵を開け
「ただいまあ」
と言って中に入る。
 
すると普段なら母が「お帰り」と返してくれるのだが、反応が無い。あれ?
 
「鈴佳(すずか)、入っておいでよ。誰もいないよ」
と玲花が言うので、鈴佳はおそるおそる中に入る。
 
「お母ちゃん、買物に出かけてるみたい」
と言って、机の上に置かれていたメモを見せる。
 
「良かった。今のうちに着替えよう」
「残念だったね。カムアウトできなくて」
「カムアウトって何?」
「まあいいよ」
と姉はおかしそうに笑いながら言った。
 

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母が戻る前に着て行った服やスカートなどを、肌襦袢・長襦袢と一緒に洗濯機に放り込むが、その時、肌襦袢・長襦袢らついては、玲花のものにはR、鈴佳のものにはSというマークをマイネームで入れた。洗濯機を回す。
 
「これ私の部屋に干しておくから」
「ありがとう。僕の部屋に干してたら、お母ちゃんが仰天する」
「とうとう目覚めたかと言われそうだけどなあ」
「目覚めるって?」
 
姉はまた凄くおかしそうに笑った。何だろう?と鈴佳は考えるが分からない。
 

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自分の部屋に戻り、ふっと息をつく。その時、スカートは脱いで洗濯機に入れたものの、女の子下着をまだ着けたままであったことに気づく。
 
しまったぁ。
 
なんかここ2日間ずっと女の子下着つけてたから、なんか違和感が無くなってしまってたよなあ、などと思う。それで服を脱いでブラとパンティを脱ぎ、シャツとトランクスを着ようとしたのだが、ここでもっと大事なことに気づく。
 
「お股の形を元に戻さなきゃ!」
 
それでとりあえず男物の下着を身につけて再度服を着、脱いだ女物の下着を持って居間に出ていく。
 
「お姉ちゃん、これ洗濯機に入れるの忘れちゃった。まだ間に合うかな」
「ああ、行ける行ける」
と言って姉は洗濯機を一次停止させ、鈴佳の下着を放り込んでふたを閉め、洗濯を再開させる。
 
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「それとお姉ちゃん」
 
「なあに?」
「お股の所、元に戻してくんない?」
「ああ。それその内外れるだろうから、放置しておけばいいよ」
「だって、これしてると僕立っておしっこできないよ」
「座ってすればいいじゃん」
「そんなあ。いつも男子トイレで個室に入ってたら変に思われる」
「そしたら女子トイレを使えばいい」
「逮捕されるよぉ」
 
「あんた最近モデルする時には女子トイレ使っているけど、それで騒がれたことあった?」
「うーん・・・。それは無かったけど」
 
「だから鈴佳(すずか)は女子トイレ使っても問題無いということだね」
「でも学校じゃ困るよぉ」
 
「私の中学の時の制服、まだ取ってあるから、あげようか?それであんた女子制服を着て学校に行ったら?」
「無茶な」
 
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「無茶じゃないと思うけどなあ」
 

「そうそう。女の子になってる時はね、大をしたあとは前から後ろに拭いてね」
「何それ?」
「男の子は大をした後、後ろから前に拭く人が多いらしいけど、それやると女の子は汚れが割れ目に付いて炎症を起こすのよ。だからそれを避けるために前から後ろへと拭く」
「へー」
 
夕食を食べて少ししてから、お風呂に入りなさいと言われたが、今日はバイト先の人のおごりでスーパー銭湯に行ってきたと言うと
「ああ、それもいいね。年末とか家族で行きたいね」
などと父が言う。母も
「やはりのんびりとそういう所で疲れをとるのもいいよねー」
と言っている。
 
しかしそんな会話をしている内にトイレに行きたくなったので行く。大まで出たので、その後拭こうとして姉のことばを思い出す。
 
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それで前から後ろへと拭こうとするのだが、これが難しい。力が入らなくてうまく拭けないのである。
 
これたぶん慣れの問題かなと思った。きっと女の子は小さい頃から前→後と拭いているから拭けるんだ。
 
しかし試しに後ろから前に拭いてみると、紙が隠しているおちんちんの先付近にぶつかる感覚がある。なるほど、これはヤバい。おちんちんが炎症起こしたら大変だ。ということは、この女の子式の拭き方を覚えなくちゃと鈴佳は思った。
 

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翌日の朝になってもお股の処置は外れていなかった。仕方なく鈴佳はそのままの状態で、学生服を着て学校に出て行った。
 
しかしお股の形が女の子のようになっていると、立っておしっこをすることは不可能である。それで個室を使うのだが、毎回個室に入っていると変に思われるかなあと思い、教室の近くのトイレ、職員室の近くのトイレ、図書館のトイレ、体育館のトイレなど、その日鈴佳はおしっこに行きたくなる度に、別の所のトイレに行って男子トイレの個室を使用した。
 
そして結局、このお股の処置は1週間経ってもびくともしなかったのである!おかげで鈴佳はこの1週間、立っておしっこをすることができず、ずっと個室を使って女の子のようにおしっこをしていた。
 
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大の後の拭き方については3日目くらいに大きな発見をした。お股の前から手を入れてそれで前から後ろへ拭こうとすると力が入らないのだが、腰を少し浮かせ横から手を入れると、ちゃんと前から後ろへ拭けることを発見したのである。ただし腰を浮かせるだけの筋力は必要である。
 
これが正解かどうかは分からないけど、やっぱり女の子って色々大変みたいと鈴佳は思った。
 

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