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■夏の日の想い出・デイジーチェーン(6)

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3月3日(火)、★★レコードで、明日発売されるアクアのデビューCDの発表記者会見が行われた。年末の番組で超話題になったこともあり、この日は物凄い数の記者が詰めかけていた。出席していたカノンによると、音楽雑誌だけではなく、女性ファッション雑誌の記者の姿もあったと言う(男性ファッション雑誌の記者はいなかったらしい)。
 
私と政子はテレビ中継で見ていたのだが、時刻になって会見場にアクアが入ってくると歓声や「可愛い!」という声があがる。アクアは、おひな祭りということでお雛様のような十二単(じゅうにひとえ)を着せられていたのである。
 
「アクアさん、やはり女性路線で行くんですか?」
などと質問が入るが
 
「僕、女の子の服は嫌だと言ったんですけど、コスプレだよとか言われて押しきられてしまったんです」
などと、情けない声で言っている。
 
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会見には事務所の紅川社長、★★レコードの氷川さん(暫定担当)、ΛΛテレビの鳥山編成局長、そして上島先生に東郷誠一先生まで出席している。多忙な上島先生がこの手の記者会見に出てくるのは異例だし、東郷誠一先生もあまりこういうところに出てくる人ではない。おそらくはΛΛテレビ側が破格の出演料を出して連れ出したのだろう。
 
デビュー曲でドラマの主題歌『白い情熱』(霧島鮎子作詞・上島雷太作曲)のさわりが流れると
「上島さんが別の作詞者を入れられるのは珍しいですね」
という声が掛かる。
 
「ちょっと新機軸を出したかったのでお願いしました」
と上島先生は言う。
 
「霧島さんって、どなたかの変名なのではという噂も流れているのですが」
「私は直接お会いしていないので分かりません。レコード会社経由で紹介して頂いたもので、彼女とのやりとりもメールだけです」
「彼女ということは女性ですか?」
「さあ、どうでしょうか。女性的なお名前なので彼女と言いましたが、実際の性別は知りません」
 
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更にカップリング曲でドラマの挿入歌『Nurses Run』のさわりが流れる。nurses run というのは英語の回文である。
 
「東郷さんの曲って色々な傾向のものがありますが、これって川崎ゆりこさんや山村星歌さんが歌っている曲と似た路線ですね」
と質問が入る。
 
結構あからさまな質問だ。同じゴーストライターの作品かと訊いているようなものだが、東郷先生はさらりと答える。
 
「そうそう。やはり可愛い女の子にはこういう可愛い歌を歌わせなきゃね」
 
すると
「アクアさんは男性ですが」
と記者からツッコミが入る。東郷先生、実はアクアの性別を聞いていなかったのでは?と私は思った。しかし東郷先生は堂々としたものである。顔色ひとつ変えずに答える。
 
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「いや、これだけ可愛ければ女の子と一緒だよ。性転換手術の代金、僕が出してあげるから手術受けない?」
 
すると
「お断りします」
とアクアは言った。
 

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多数の記者から質問が入り、記者会見は盛り上がった。東郷先生はけっこう上機嫌で、たまに暴走しかかったり、失言ぎりぎりの発言もあるが、氷川さんや上島先生がうまくフォローして破綻しないようにするし、アクア自身も結構如才ない対応をする。私は見ていてアクアって、やはり芸能人向きだぞと思った。何よりあがったりしていないし、かなり機転が利くようである。
 
やがて質疑応答が終わり、実際に歌ってもらうことになる。今日のアクアの伴奏を務めるのはゴールデンシックスである。音源制作にも協力した縁でここに出てきているが、今度の復興支援イベントでも一緒に演奏することになっている。
 
この日のゴールデンシックスはこういうメンツで出てきていた。
 
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リードギター:リノン、リズムギター:マノン、ベース:ノノ、ドラムス:キョウ、キーボード1:ムーン、キーボード2:カノン
 
「済みません。ゴールデンシックスのみなさん、以前見た時とメンバーが違うような気がするのですが」
 
という質問が入る。カノンが答える。
 
「現在ゴールデンシックスのメンバーは私とリノンの2人だけです。しかし音源制作やライブではしばしば元メンバーの人たちに協力してもらっています。今日出てきているメンバーで、SGもどきのギター持っているマノンとベース持っているノノはゴールデンシックスの初期メンバーです」
 
真乃と希美が手をあげる。
 
「ドラムスのキョーはゴールデンシックスの前身のDRKのメンバーでゴールデンシックスにも一時期入っていました」
 
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京子が手をあげる。
 
「そして私の隣でもう1台キーボードを弾くムーンは、DRKのメンバーではないのですが、DRKの楽曲提供者兼共同プロデューサーです」
 
それで月夜が手をあげる。
 
「ちなみに彼女はKARIONの美空ちゃんのお姉さんです」
 
とカノンが紹介すると記者席から「おお」という声があがった。
 

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「ゴールデンシックスって実際問題として何人居たんですか?」
という質問が出る。
 
「元々のDRKは最大膨れあがった時で15人です。その他に今日来てもらったムーンさん、1度だけ演奏に参加してもらった、メンバーの1人のお母さん、そしてプロデューサー役の子まで入れると18人、更にゴールデンシックスになってからのメンバーが今日来ているマノン・ノノ以外にもう1人います。そこまで入れると21人ですね」
 
「凄い人数ですね」
「まあAKBには負けますけど。実はそれ以外にも、DRKが分裂してできたバンドでノーザンフォックス、ヴァイオレットマックスというバンドもあるのですが、そちらの方の実態は私も分かりません」
 
「分裂したのは路線の違いか何かですか?」
 
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「いいえ。元々DRKは旭川で結成したバンドで全員高校生だったもので、大学進学の時に、北海道に残ったメンバーがノーザンフォックス、東京近辺に来たメンバーがゴールデンシックス、関西方面に行ったメンバーがヴァイオレットマックスを作ったんです。ですから私たちはみんな仲良いですよ」
 
とカノンが説明すると記者さんたちも納得したようであった。
 

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その後、やっと演奏に入るが、ゴールデンシックスは(後から聞いたのでは)この日集まって30分くらい合わせただけらしいが、まとまりのある落ち着いた演奏をする。そしてアクアは堂々と美しいソプラノボイスで歌う。
 
上島先生が書いた『白い情熱』はドラマのオープニングにふさわしい平易で覚えやすいメロディーだ。音域も1オクターブ半くらいしか使っていない。アクアは音程もリズムも正確に歌う。
 
続いて『Nurses Run』を歌うが、こちらはリズミカルでテンポの速い曲である。音符はしばしばドミソ・ファソラドのように駆け上がったり降りてきたりもする。細かい音符もあるが、アクアはそのひとつひとつの音符を正確な音程で歌う。このあたりは歌の上手かった両親から受け継いだ素質もあるんだろうなと私は思った。
 
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一転してゆるやかなサビに入るがここで物凄く広く音程を使う。アクアの声は高い音域まで徐々に登って行き、最高点はHigh-F(F6)まで達する。その音の凄さが分かった風の記者さん数人が顔を見合わせている。
 
その後Cメロに入り2回繰り返すのだが、これも会場の中でほんの数人の記者さんが途中で「あれ?」といった顔をした。その中で音楽雑誌の記者さん2人がひそひそと話している。そして納得したような顔で頷いていた。
 
曲はCメロの後ふたたびサビを歌い、Aメロ・Bメロを歌って終わるが、拍手の後でその記者さんが質問した。
 
「気のせいだったら済みません。東郷先生、Nurses RunのCメロってもしかしてAメロの逆回しですか?」
 
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この質問に東郷先生は「えっと・・・」と言いよどむ。さすがに何か言える内容ではなかったようだが、横から氷川さんが言った。
 
「東郷先生の悪戯なんですよ。ほとんど逆回しなのですが、実は2箇所だけ違うんです」
 
「おぉ!」
この回答は誰も予想していなかったようであった。
 
「元々題名の nurses run というのが英語の回文でして」
と氷川さんが言うと
「へー!」
という声が多数あがる。そのこと自体に気づいていなかった人もいたようである。
 
「それでAメロの始まりがドソミソファレドですが、Cメロの最後はドレファソミソドになっています。音符の長さは違うのですが。ただ完全対称というのは凶だと昔から言われているんです。完全対称な家に住んだ人間は発狂するという説もありました。ですから昔の画家は対称な絵を描く時にわざとどこかで対称性を崩したと言います。東郷先生もそういう戒めというのは迷信ではなく、やはり人類の長年の知恵だとおっしゃって、わざと2箇所だけ対称性を壊されたのです」
 
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と氷川さんが説明する。
 
「譜面はいくつかの雑誌の4月号に掲載予定ですので、譜面を見比べてみて下さい」
 
と氷川さんは最後に笑顔で付け加えたが、東郷先生は「へー」といった顔をしていた。
 
ネットにも「今初めて知ったような顔だ!」と書かれていた。
 

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中継を見ていた政子が
 
「東郷先生、面白いことするね。冬もああいうのできない?」
と言うが
「今やったら二番煎じだよ」
と答えておく。
 
「そっかー」
「ちなみにこの曲、本当に書いたのは千里だよ」
「へー!」
 
「ちなみに譜面を逆さまにしても演奏できる曲というのも存在する」
「何それ?」
「五線紙をひっくり返すから、演奏順序も逆になるけど、ミが上のファに、ファがミに、ソがレに、ラがドに、と対称に変化する。それでちゃんと曲になっているいうお遊びなんだよ」
 
「それも面白いね」
 
「単に対称にするだけなら誰でもできるんだけど、それでどちらでもまともな曲にするというのは物凄く難しい」
 
「千里すごいねー」
「あの子って才能の無駄遣いしてるって気がする」
「ああ、するする。もっと御飯も食べればいいのに」
「マーサから見たら人類みな少食だろうな」
 
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3月7日、仙台で復興支援ライブが行われた。
 
仙台の3月上旬はむろん真冬である。その時期に朝6時から夜6時まで屋根も無い野球場でやるというクレイジーなイベントであるが、観客は開演3時間前の3時頃から結構集まり始め、主催者側の判断で予定を早めて4時には観客を中に入れることにした。ただし暖房の効率を考えて5時前の入場者はスタンドの1ヶ所に集め、そこに集中的に温風を流した。
 
私たちは前日に仙台に入って前泊しており、朝5時半頃会場に入った。出演者の控え室には、むろん6時からの出番のゴールデンシックスとアクアが来ている。が、そこに美空の顔もあるのでびっくりする。
 
「みーちゃん、どうしたの?」
と私は尋ねる。
 
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KARIONのステージは14時からである。しかもだいたい美空は遅刻魔である。
 
「私は今日はゴールデンシックス〜」
と美空は言っている。
 
「ちなみに今朝はカノンに起こしてもらった」
「なるほどねー」
 
「枕元にカツ丼を置いたらパッと目が覚めた」
などと花野子は言っている。
 
「なるほどー!」
 
「朝ご飯にカツ丼3杯食べてきた。美味しかった」
と美空が言うと
「みそりんにしては少食だね」
などと政子が言う。
 
「朝だからあまり入らないんだよ」
と美空が言うと、花野子たちは笑っていたが、マノン(真乃)は「へ?」といった感じの顔をしていた。
 
そういう訳で今日のゴールデンシックスは美空が入ってこういうメンツになっていた。
 
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LdGt.リノン、RhGt.マノン、B.コンゴウ(美空)、Dr.キョウ、KB.カノン、Fl.タイモ(千里)
 
ボーカルのアクアも入って軽く合わせてみるが、最初数回ミスったりしたものの、すぐにちゃんと合う。
 
「ゴールデンシックスって毎回演奏に出てくるメンツが違うんでしょ?よくそんなにピタリと合いますね」
 
と7時からの出番の篠崎マイが感心したように言うが
 
「私たちは元々進学校で愛好会に準じた形で活動していたから、塾とかで出て来られない子も多いし、居るメンバーで何とか演奏するというのをいつもしていたんですよ」
と花野子が説明する。
 
「だからみんな複数の楽器ができるようになっていったし、誰でも演奏できるように、あまり難しいことはしないように編曲していたし」
と千里も言う。
 
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「まあ要するに私たちのバンドってメンバーが規格品だよね」
「そうそう。簡単に交換可能」
「ふつうのバンドって個性の塊だけど、私たちは合唱部などと同じ」
「誰かが抜けたら成立しないような演奏はしてないもん」
「だから私たちの真似したら、売れないよ」
 
「そんなこと言いつつ、昨年は私の10倍くらい売れてるじゃないですか!」
とマイは言っていた。
 

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「ところで6時半からのフラワー・フォーの人たちは来てないんですか?」
と篠崎マイが尋ねる。
 
「あ、それは男性ユニットらしくて、控室が別なんですよ」
と朝から詰めてくれている★★レコードの北川さんが言う。
 
「あ、なるほどー」
「こちらは女性控え室か」
 
という声があがる。
 
しかし、それを聞いてアクアが「え〜!?」という顔をしている。
 
「あのぉ、僕、男なんですけど」
とアクアが言うと
 
「ん?」
 
という声があちこちからあがる。誰もアクアの存在を疑問には思わず、みんな着替えたりメイクしたりしていた。美空なども、この会場まで着て来た服を脱いで Golden Six と染め抜かれた衣装に着替えようとしていたところ?で、スリップ姿のまま千里とおしゃべりしていた。
 
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「ああ。会場前に居たのを私がこっちこっちと言って連れて来たから」
などと梨乃(リノン)が言っている。
 
「まあアクアは女の子の一変種ということでいいよね?」
と政子。
 
「僕、男ですよ〜」
と本人。
 
「まだ第二次性徴が出る前だから中性ということでも良いのでは?」
とスリップ姿の美空(さっさと服着ろ!)。
 
「うん、全然問題無いね」
と花野子(カノン)も言って、それでこの件はスルーされることとなった。
 

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やがて5:45になって、ゴールデンシックスの6人がステージに出て行く。拍手があるが、まださすがにまばらである。PAさんと電話で連絡を取りながら音響の再確認をするが、早朝なのでメインのスピーカーはオフにしてあり、客席にちりばめた小型のスピーカーだけを鳴らす。会場の回りに立てた防音・防風パネルのおかげで、この音は会場の外までは響かない。
 
やがて6時の時報が鳴る。と同時にリノンがギターをチャラーンと掻き鳴らす。そしてカノンが『みんな、おはよう!』と叫んで、演奏を始める。最初の曲は昨年8月に出したゴールデンシックスのメジャーデビュー曲『Take Six』である。この曲はカノンとリノンが歌った。観客は律儀に手拍子を打ってくれるが、6拍子なので悩むような打ち方になっていた。ウンパンパン・ウンパンパンという形に落ち着くまで結構時間を要した。
 
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曲が終わった所で拍手がある。
 
「あらためておはよう」
とカノンが言うと、観客も
「おはよう」
と返してくれる。
 
「私はゴールデンシックスのカノンだ!」
「私はゴールデンシックスのリノンだ!」
 
と名乗りをあげると、それぞれ拍手があり名前を呼んでくれる。
 
「そして残りの4人はNPCだ」
とカノンが言うと会場はドッと笑う。
 
「私たちも人間だけど」
と後ろで美空が言う。
 
するとこの時やっと多くの観客がそれが美空であることに気づき、ざわめきが起きる。
 
「NPCじゃ無かったんだっけ?」
とカノンがリノンに訊く。
「NPCを用意するつもりが予算が取れなかったから、人間が操作することになったんだよ」
とリノン。
 
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