広告:オトコの娘コミックアンソロジー- ~強制編~ (ミリオンコミックス75)
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■夏の日の想い出・熱い1日(4)

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「おお、いい図だね」
などと言って、畠山さんが写真を撮っちゃう。(今日は4人とも各々の学校の制服)若葉も自分のデジカメで撮っていた。
 
左から、小風・和泉・私・美空、というのが、その後 KARION の基本的な並びとなるが、この時がその最初であった。
 
そして私たちの後ろに、コーラス隊の千代子と久留美が並ぶ。
 
少し譜読みをした上で演奏スタート!
 
伴奏のスコアは無いが、スタジオミュージシャンさんたちは、こういう事態には慣れているので、ピアノ譜だけを見ながら、適当に各自のパートは創作しつつ演奏する。若葉はこういうシチュエーションで楽器を弾くのは初体験だとは思ったが、元々肝が据わっているので、無難に弾きこなしていた。
 
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歌う側も、和泉と私はもちろん、美空と小風も初見・即興には強いようで、すぐ新しい譜面に沿って歌う。
 
しかし、前の譜面とは全然違う、レベルの高い曲になっている! 声域も違う!私のパートも和泉のパートも2オクターブ以上の声域を要求している。もちろん私も和泉もちゃんと歌える。
 

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「おお、いい感じになった。でも、もう少しいじろうかな」
と言って、ゆき先生は更に譜面をいじって行った。
 
念のため各々の声域を再度確認させてと言われて、ピアノの音に合わせて高い方と低い方の声出しをした。
 
「美空ちゃんは普通のアルトの声域より下の方まで結構出るね。小風ちゃんは確かにアルトだろうけどメゾソプラノ領域まで出るんだ」
 
と感心したように言っている。私と和泉については「ここまで出るならいいや」
などと言われて、声域チェックは途中で打ち切られてしまった!
 
何度か試唱しながら、再度先生は曲をいじっていく。
 
最終的に仕上がったのは、4つの声が有機的に絡み合う、とても美しい曲だ。歌詞も、最初はほんとにアイドル歌謡っぽかったのが、もっと大人向けの歌詞に書き換えられている。曲のレベルが高いので、歌詞もしっかりしたものに変えたようである。
 
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正直、KARIONは最初に見せられた曲ではおそらく数千枚程度しか売れなかったろうが、この改造されたバージョンになったおかげで5万枚近く売れる曲になったのだと思う。
 
ただ最初のものから、あまりに曲が変わってしまっていたので、後でさすがの木ノ下先生も怒ったが、5万枚近く売れたので、結局は不問にしてくれた。(一応、ゆき先生がレミーマルタンのセントール・リモージュを持って謝りに行ったらしい)
 

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カップリングする2つの曲『小人たちの祭』(ゆきみすず作詞・東郷誠一作曲)と『鏡の国』(広田純子作詞・花畑恵三作曲)に関しても、ゆき先生は作詞・作曲者に連絡して、改変の許可を取り、どんどん書き換えて行った。
 
東郷先生はそういうのを全然気にしない人なので「どうぞー」の一言で終わったが、『鏡の国』の作詞作曲者は、駆け出しのソングライターさんだったので、驚いてスタジオに飛んできて、ゆき先生の改変作業を見学し「勉強になります」
などと言って、見守っていた。花畑さんは、ゆき先生の隣に座り、ポータブルキーボードで変更された曲の試奏などもしていた。
 
『鏡の国』は最初はごくふつうの曲だったのだが、この改訂で、和泉と私、小風と美空がミラーになって歌う形式に改訂された。
 
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「これ振り付けも、和泉ちゃんと洋子ちゃん、小風ちゃんと美空ちゃんを左右対称の服着せて、左右対称に振り付けにしようよ」
 
などとゆき先生は楽しそうに言っていた。もはや私がこのユニットに入っているのが既成事実になりつつあった!?
 
そういう訳で、この日は楽曲の改変作業でほとんど1日潰れてしまった。
 

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譜面を調整しては私たちが歌う、という作業は結局、月曜日以降も続けられ、最終的に譜面が固まったのは水曜日、11月14日であった(平日は放課後だけの作業になる)。若葉もずっと毎日この作業に付き合ってくれた。
 
そしてその間ずっと私は和泉たちと一緒に刻々と変わっていく譜面の「試唱」
をしていたが、畠山さんはその経過を全部録音してもらっていた。実際に録音の作業をしていたのは有咲である。麻布先生は、こういう音域の広い曲は若い耳でないと、きちんと音を捉えきれないからと言って、有咲の耳の感覚を活用したのである。
 
そして最終的に木曜日に、ギター・ベース・ドラムス・キーボードの伴奏を録音確定し(キーボードは結局私が弾いた)、その伴奏音源を聴きながら、4人で歌い、それを重ねた音源を聴きながらコーラス隊の2人にコーラスを入れてもらった。金曜日にはヴァイオリン・フルート・サックスの人に来てもらい、この音源に音を重ねた。
 
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ここまでの音を仮ミックスして聴いてみる。
 
ゆき先生がまた悩んでいる。
 
「何かもう少し音が欲しいんだよね」
と先生は言った。
 
「パーカッションでも重ねますか?」
「パーカッションねぇ・・・・」
「カスタネット、トライアングル、カウベル、....」
 
「あ! 鐘の音が欲しいんだよ」
と先生。
 
「なるほど!」
 
「そもそもKARIONって、鐘って意味でしょ? 鐘を入れよう」
「ハンドベルでも入れますか?」
「うーん・・・・・」
としばらく先生は考えていたが
「グロッケンシュピールにしよう」
と言った。
 
「ああ、それもいいですね」
「ハンドベルだと、手間が掛かりすぎるし、即興的な展開が難しい。グロッケンなら臨機応変に演奏できる」
「確かに」
 
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それでスタジオのグロッケンを借りることにし、連絡を入れる。私たちは据置き型のグロッケンをイメージしていたのだが、スタジオの人が持って来たのは、手持ち型のグロッケン、いわゆる《ベルリラ》であった。
 
「あら? そちらを持って来ちゃった?」
「済みません。違いましたか?」
「ああ、それでもいいよ」
とゆき先生が言うので、スタジオの人は、たまたま近くに居た和泉にそのベルリラを手渡した。
 
「これ誰が演奏します?」
と和泉は半ば私の方に視線をやりながら訊いたのだが
 
「いづみちゃん、折角今君が持っているから、君が演奏してみよう」
とゆき先生は言った。
 
「えーーー!?」
 
「だって、あんたのプロフィールに『特技ピアノ』と書いてあったよ。ピアノが弾けるならグロッケンも弾けるよね」
 
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「はい」
と和泉は返事する。このあたりの性格は私に似ている。でもプロフィールとかよく見ている! ゆき先生はアーティストの特性をしっかり見て、その能力を引き出すタイプのプロデューサーである。
 
そういうわけで和泉は、ゆき先生が急遽書き加えたグロッケンシュピールのパートをそのベルリラで演奏し、その音を既存の音源に加えてみた。
 
とても美しい曲に仕上がっていた。
 

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こうしてひととおりの音源が16日の金曜日には仕上がり、その出来に満足してゆき先生も帰って行ったのだが・・・・
 
「ここまで来たら、後は私が歌った所を和泉に再度歌ってもらって入れ替えればいいですね」
と私が言うと、畠山さんは
 
「それだけどさぁ、これこのまま洋子ちゃんの声を残さない?」
と言った。
 
「えっと・・・・」
 
「コーラス参加ならいいんでしょ? 洋子ちゃんが歌ったパートは少し複雑なコーラスということで」
 
「うーん。。。。」
 
と私は渋っていたのだが、
「あ、私が代理でOKします。私、冬の婚約者だから」
などと若葉が言っちゃう。
 
「ああ。私も代理でOKしちゃう。私も冬とは他人じゃない関係だから」
と有咲まで言う。
 
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「冬って言い交わした人が2人いるの?」
などと和泉に突っ込まれるが、
 
「婚約者がOKしたんなら、それでいいね?」
などと畠山さんは笑いながら言って、これで私の声が、このKARIONのデビュー曲の最初の音源に残ることになったのである。
 
小風と美空には私の性別のことは明かしているし恋愛対象が男の子であることも言っているので「婚約者」の件は笑っていたが、千代子と久留美は悩んでしまったようで
 
「洋子さんって、レスビアンなんですか?」
と千代子などは訊いてきて、私は
 
「女の子同士のジョークだよぉ」
と弁解しておいた。
 

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「あ、そうだ、そうだ。冬子ちゃんの名前を考えたよ」
と唐突に小風が言う。
 
「ん?」
「私たちさ、KARIONの中では、一応それぞれ本名をひらがな書きにして《いづみ》《みそら》《こかぜ》と名乗ることになったんだけどね。ふと、《いづみ》の最後と《みそら》の最初が同じ文字で、この部分が尻取りになってるな、というのに気付いたんだよ」
 
「ああ、そういえばそうだね」
「でも《こかぜ》とはつながらないでしょ? ちょっと考えてたんだけど、間に《らんこ》って人がいれば《いづみ》《みそら》《らんこ》《こかぜ》と繋がって、きれいに尻取りになる」
 
「なるほど。じゃ、誰か《らんこ》って名前の子をスカウトしてきてメンバーに入れる?」
と私は訊いたのだが、
 
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「ううん。だから、冬子ちゃんが《らんこ》になってよ」
「へ?」
 
和泉が補足説明?する。
 
「いや、冬さ、私や若葉からは《冬》と呼ばれて、ゆき先生からは《洋子》と呼ばれて、他に青島リンナさんは《ケイ》って呼んでたし、なんか名前が幾つもあって、訳が分からないからさ。KARIONの中では《らんこ》と呼んでしまおうと。漢字では『蘭子』かな。花の蘭。可愛いでしょ?」
 
蘭といえば、蘭若アスカだなぁ・・・などと私はぼんやり考えていたが、
 
「ああ、それはいいね。じゃ私も録音作業中は《らんこ》さんって呼ぶね」
などと有咲が言っている。
 
「じゃ《らんこ》で決定だね」
と若葉が言って、私のKARIONでの名前は《らんこ》になってしまった。
 
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小風は更に、今回の歌は4人で歌ったし、4人で一緒に書くサインを作ろうよと言い、美空とふたりで考えたと言って、 K A R I の飾り文字を横に並べ、下にそれを包み込むように、O と N を細長く変形した文字を描くサインを見せてくれた。
 
「これね、私が K, 蘭子が A, 美空が R, 和泉が I を書くといいと思うのよ。小風のK, 和泉のI, Misora の中に R が入っていて、Ranko の中に A が入っている」
 
「蘭子と美空は逆にもなるのかな?」
と和泉が訊くが
 
「ソプラノの2人を母音、アルトの2人を子音にしたい。ソプラノで音が定まって、アルトがそれに彩りを付けるから」
と小風が言うので、そういう担当にすることにした。しかし何だか、私がこのメンツに入ることが、ますます既成事実化されていってる!
 
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「取り敢えず書いてみよう」
と言うので、4人で書いてみる。日付は本当は11月16日だったのだが、4人が最初に集まった日を記念に書こうというので11月10日の日付にした。
 
この「11月10日」という日付のサインはこの後で、練習を兼ねて5〜6枚書き、また4人の手帳にも記念に書いた。その練習を兼ねて書いた色紙を後で初期のファンの人にサインを求められた時にその場で書いたものに付加する形で渡しているので、そのためこの「4分割サイン」の最初の日付は11月10日なのである。
 
「冬、飾り文字、初めて書くにしては綺麗」
と和泉に言われたが
 
「ああ。私、柊洋子のサインなら、これまで何度か書いてるから」
と言うと
「へー!」
と驚かれた。
 
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どんなサイン書いてたの?と訊かれるので、色紙をもらって2種類のサインを書いてみせる。
 
「漢字を崩した花押タイプは民謡の仕事をしてる時のもの、Yoko Hiiragi とアルファベットを崩して円環状に配置した方は、バックダンサーや伴奏でピアノやヴァイオリンを弾いた時のもの」
 
「これまでどのくらい書いた?」
「漢字タイプは10枚くらい、アルファベットタイプは15枚くらいかな」
「ほほぉ」
 
4人で書いた最初の KARION のサインは、千代子に進呈した(後に彼女たちがローズクォーツの代理ボーカルをしてくれた時に『あのサイン、宝物にしてます』
と言われた)。また柊洋子の漢字のサインは久留美に、アルファベットのサインは和泉に渡した。和泉は交換に『源優子』のサインを書いて私にくれた。
 
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「ちゃんと、源優子のサインもあったんだ?」
「ううん。今考えた」
「おお!」
 
実際問題として、源優子のサインというのは、私に渡したものが唯一らしい。
 

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KARIONのデビュー曲の録音が一通り終わり、私が《らんこ》ということになり、サインまで出来てしまった翌日、11月17日(土)。
 
その日は録音はもう終わっているので、スタジオ側の作業でミクシングなどをするのに、私はスタジオに出て行っていたのだが、そこに畠山さんが来た。
 
そして改めて、私にKARIONに正式に加入してくれないかと口説かれた。
 
正直この1週間、和泉・美空・小風の3人と共同作業をして連帯感も出来ていたし、私自身、歌手としてデビューすることへの憧れも、ますます強くなっていたので、私はとうとう、親に話してみますと答えた。
 
ここで話すべきことは、私が女の子としての生活を持っていることと、歌手として活動したいということだ。どう考えても、前者の方が大変だと思った。
 
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それで私はその日の夜22時頃。帰宅してきた父が遅い夕食を済ませるのを待って父に「話したいことがある」と言った。
 
「何だ、あらたまって?」
と父が訊く。
 
「ボク、実は女の子なんだ」
と私は単刀直入に自分の性別をカムアウトした(つもりだった)。
 
 
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■夏の日の想い出・熱い1日(4)

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