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■夏の日の想い出・勧誘の日々(3)

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歌が終わった所で、司会者が篠田その歌に尋ねた。
 
「なんか今伴奏の人が途中で転びましたが」
「パフォーマンスです。今パンティの柄が見えたという人は何の柄だったか書いて送ってきて頂いたらサインを」
「え?」
「なんて企画はしませんからビデオを何度も再生して確認しようとしないように」
 
とその歌は笑顔で答えた。
 
この事件はテレビを録画したmpeg動画が結構ネットに貼られてちょっとした話題になっていた。実際にはパンティの柄は判別できなかったようであった!?でも本当にハガキを送ってきた人がいたらしい!
 

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席に戻ると、白浜さんから言われた。
 
「洋子ちゃん、とっさの対応が凄い!」
「まあ、ステージ上では色々なことがありますから。私、民謡のステージは子供のころからたくさん経験しているから、たいがいのことには対処できると思いますよ。一昨年は松原珠妃のライブで殺人未遂までありましたからね」
 
「・・・あのステージにいたの!?」
「あれで私、ヴァイオリン壊されちゃったんですよねー。代わりの買ってもらいましたけど」
「あの時の、松原珠妃を守ったヴァイオリニストが洋子ちゃんだったの!?」
 
テレビで生放送をしている会場なので大きな声は出せないが、白浜さんは驚いたように言った。
 
「だって、あそこで松原珠妃を守ったヴァイオリニストはその怪我が原因で亡くなったと聞いたのに」
「この通り、生きてます。だいたい、死んでたら殺人罪が成立してるからJは今頃服役してますよ」
 
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と言って私は笑っておいた。
 
「Jちゃんは何してるんだろ?今?」
「高校生です。フリースクールに通っています。あの子、学校の勉強とか何もせずに歌手やってたから、それからやり直しと言って。フリースクールには、けっこう挫折を経験した子が多いから、それでああいう大事件起こした子でも周囲に受け入れてもらっているみたいですよ」
「へー」
 
「大検受けて、大学に行くんだと言ってました。看護師の資格を取りたいらしい」
「かえっていい看護婦さんになるかもね」
「ええ。頑張って欲しいです」
 

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白浜さんは12位だった子に名刺を渡して勧誘をしていた。しかしその子は他のプロダクションの人にも目を付けられたようで結局5枚ほど名刺をもらって、「どうしよう?」といった顔で、名刺の束を眺めていた。
 
「他のプロダクションからも勧誘されてるかも知れませんけど、取り敢えず適当に話を聞いて、それからどこが自分の好みに合うか考えればいいですよ」
などと白浜さんは改めてその子に声を掛けて言っていた。
 
「洋子ちゃん、今日はこの後、用事とかある?」
と白浜さんが訊く。
 
「えっと。夕方からコンサートマスターをしている中高生のオーケストラの練習に顔を出すことにしていますが」
「コンサートマスター!?」
 
「本来のコンサートマスターは別にいるんですけどね。その人が実際の演奏会では指揮をするので、私は団員ではなくエキストラなんですけど、客演コンマスということで、コンサートマスターの代理をするんですよ」
 
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「すごーい! そうか。ヴァイオリンを弾くんだったね?」
「はい」
 
「そちら何時?」
「練習は18時からですが」
「だったら、まだ時間あるよね。ちょっとうちの事務所に来てくれない?」
「えー!?」
 

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ということで私は、半分拉致られるようにして、&&エージェンシーに連れて行かれてしまった。
 
社長の斉藤さんに引き合わされる。
 
「この子、物凄くうまいんですよ! ちょっとこの子の歌を聴いてもらえませんか?」
などと白浜さんが社長に言っている。
 
私はポリポリと頭を掻き、事務所内の簡易防音室でキーボードを借りて保坂早穂の『ブルーラグーン』を弾き語りした。
 
最初コーヒーを飲みながら聴いていた社長さんが途中で目を見開き、こちらを見ている。うーん。こういうの快感!!
 
歌が終わると、社長も白浜さんも凄い拍手をしてくれた。そして社長が言った。
 
「ね、君。契約金3000万円でうちと契約しない? レコード会社は★★レコードでも◎◎レコードでも%%レコードでもいいよ。君のその歌い方なら★★がいいかも知れないな。あそこ、自由にさせてくれるから、個性を潰さない。作曲家も誰か大物に依頼しよう」
 
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「済みません。私はまだ修行途中なので。自分でもう少し満足できる歌い方ができるようになるまでは歌手にはならないつもりです」
と私は正直に答える。
 
「君、それだけ歌えるのに、まだ不満なんだ?」
 
「私、小さい頃から松原珠妃に歌を教えられていたんです。ですから彼女に馬鹿にされない程度には歌唱力を付けてからでないとデビューできないと思っています」
 
「松原珠妃! あれが基準か! それは厳しくなる訳だ! じゃ君もζζプロからデビューするつもりなの?」
 
「いいえ。兼岩会長からは度々勧誘されているのですが、松原本人がζζプロには来るなと言っています。他のプロダクションからデビューしてくれないと、純粋にライバルとして戦えないからと」
 
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「確かに、その方がお互い高め合えるのかも知れないね。保坂早穂と芹菜リセみたいな感じかな?」
「そうですね。私たちも姉妹みたいなものだから」
「でそれだったら、ホントうちに来ない?」
 
「すみません。もう少し実力を磨いてから考えさせてください」
「分かった。君、それじゃ特に今はどことも関わり無いの?」
 
「そのζζプロの谷崎潤子と、○○プロの篠田その歌の音源製作でヴァイオリンを弾いてますし、$$アーツのドリームボーイズのバックで、バックダンサーをしています。他に民謡の大会とかでよく三味線の伴奏をしています」
 
「なんか色々やってるね!?」
「スタジオミュージシャン兼B級アイドルだね、とドリームボーイズの蔵田さんから、よく言われています」
 
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「あはは、なるほど。しかしバックダンサーということは踊りもうまいんだ?」
「小学生の頃、少しバレエしていたもので」
「へー! 何かちょっと踊ってみてよ」
「はい。何か音楽頂けますか?」
 
と言うと白浜さんは、この事務所の中堅歌手・横芝光のCDを掛けた。その曲に合わせて創作しながら踊る。
 
「うまいね!君!」
「ありがとうございます」
 
「ね、ね、君、明日の夕方とか時間空いてる?」
「えーっと・・・」
 
「明日の夕方、横芝光のライブがあるんだけどさ、そのバックダンサーとかしてみない?君、それだけ踊れるなら即戦力だよ」
 
「明日は日中、民謡の発表会で三味線伴奏をするので、そちらが15時くらいまで掛かるんですけど」
 
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「横芝光のライブは18時からだから問題無い」
「それにそもそも振り付けを知りませんが。今のも適当に踊ったものですし」
 
「ああ。それは参加する子みんな知らないから大丈夫。リーダーの子の動きを見ながら、それに合わせて踊ってもらえばいいし、多少違う動きになっても愛嬌」
「あははは」
 

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8月19-21日。私はドリームボーイズのアルバム用のPV撮影のため、伊豆白浜に赴いた。ダンサーチームも常連の、葛西さん・私・松野凛子さん・竹下ビビさん、の4人が全員参加。それに最近加わった花崎レイナさん、鮎川ゆまさん、今回初めての参加になる高崎充子さんの7人。
 
この高崎さんは後にマネージャー業に転じてAYAのマネージャーになった人である。当時は芸能スクールに通いながら歌手デビューを夢見る女子大生であった。
 
ちなみにこのメンツで私の性別を知っているのは葛西さんと松野さんの2人だけである。
 
なお、もうひとりの常連の梅川アランさんは5月に出産して現在産休であった($$アーツと契約は結んでいなかったものの、たくさん貢献しているからということで年内一杯産休手当をもらっている。赤ちゃんはみんなで見に行った。彼氏とは出産直前に籍を入れたが彼も驚いていたらしい。アランのお父さんは無茶苦茶怒ってて平身低頭だったらしいが)。
 
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19日の夕方都内で集合してから、ダンスチームと撮影スタッフはマイクロバスで移動して下田市内に泊まった。そして早朝伊豆白浜に入る。
 
同じ白浜でも南紀白浜と違って伊豆白浜は観光客が少ない。人が少ない分美しいビーチが保たれている面もあるが、とにかく人が少ないのはPV撮影には嬉しい条件で、しかもお盆が過ぎて人が少なくなった海岸を使うというのがミソだ。
 
一応ビーチの一郭を貸し切り、早朝から夕方までひたすら踊った。衣装は曲ごとに変えたのだが、いつものようにボディコンとか、今回はビーチということでビキニも入ったし、リゾートっぽい衣装にミニスカというのもあった。
 
ドリームボーイズのメンバーは当日朝の新幹線と伊豆急で下田まで来て、午後からの参加となり、13時頃から16時頃まで、実際にドリームボーイズが演奏しているバックで私たちも踊っている所の撮影を行ったが、ドリームボーイズがホテルに引き上げた後も、私たちは夕方までひたすら踊った。
 
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さすがにくたくたになった。
 
それから、上旬の陸上部合宿でついた水着の跡がやっと消えかけたかと思っていたのに、これでまたしっかりビキニの跡がついてしまった! とても親には見せられない。
 

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疲れ果てて下田のホテルまで戻ったら、ホテルのロビーに何と静花が居た!
 
「どうしたの?仕事?」
とお互い声を掛け合って笑う。
 
「私はテレビの番組の撮影で来たのよ。凄く美味しい懐石料理頂いちゃった。もう終わったから後泊してから帰るんだけどね」
 
「わぁ、凄い。後で放送日教えて」
「うん。分かったらFAXでも流しとくね。冬は?」
 
「ドリームボーイズのPV撮影。今日は朝5時から夕方5時まで休憩をはさみながら半日、ひたすらダンス。さすがに疲れた」
「おお。でもそれだけ踊り続けられる体力が付いたんだね」
 
「最近かなり水泳やってるんだよ。それで持久力が付いてきた」
「歌手の全国キャンペーンとかもだいたい過酷な日程だからさ。ほんと体力しっかり付けとけよ」
と静花は言う。
 
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「うん、頑張る」
 

そんな立話をしていたら、ちょうどレストランから蔵田さんが出てきた。
 
「お、ナノとピコが揃ってる!」
「おはようございます、蔵田先生」と静花が挨拶する。
 
「頂いた曲、シングル『硝子の迷宮』もアルバム『幻の歌』もとっても好調で嬉しいです。『鯛焼きガール』に続いて素敵な曲を書いて下さって、ありがとうございます」
 
「まあ、『夏少女』で少し縁ができたからね。また縁があったら書くよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
 
などと最初は挨拶をしていたものの、立ち話もなんだしと言われて、そのままラウンジに入ってしまう。うっ・・・これは長話が始まるパターンだ、というので私と静花は一瞬顔を見合わせた。
 
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果たして蔵田さんはグループサウンズ論を語り始めた! これは凄まじく沢山ネタがある話だ。私はきゃーっと思いながら話を聞いていた。
 
それでまずはワイルド・ワンズについて熱く蔵田さんが語っていた時、私たちのテーブルの所に、葛西さんがやってきた。
 
「洋子、ちょっと、前橋さんが話があるって。って、あ!松原珠妃さん、おはようございます!」
 
(この場の序列は 蔵田>>>珠妃>>>>>>葛西>私 である)
 
「おはようございます。確か、ダンスチームのリーダーさんでしたっけ?」
と静花。
「ありがとうございます。葛西樹梨菜と申します。覚えて頂いていて光栄です」
と葛西さんは笑顔で答える。
 
「樹梨菜さん、蔵田先生の彼女ですか?」
「え!?」
「いや、今一瞬、蔵田先生との間に走った視線でそんな気がして」
 
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「静花さん、その件は絶対に誰にも言わないで」
と私は小声で注意した。
「え?そうだったの。ごめんなさい」
 
「いや、でも凄い。一瞬の視線で見抜くなんて。誰にもバレたことないのに」
と蔵田さんは逆に感心している。
 
「洋子にも霊感あるなと思ったけど、珠妃ちゃんも少し霊感あるね」
「あ、それはあるかも」
と言って静花は頷いていた。
 
ともかくも、それで私は葛西さんに連れられてその場を離脱した。
 
しかし、静花と蔵田さんのおしゃべり(というか実態は蔵田さんがひたすら静花の前で話し続ける)は翌朝、9時過ぎまで15時間以上続いたらしい!
 
私はその晩ぐっすり寝て(葛西さん・松野さんと同室になったが、また夜中に葛西さんからお股をチェックされて「やはり手術済みなのね?」と言われた。もう!)、翌朝、朝御飯を食べるのに3人でラウンジに降りて行ったら、蔵田さんと静花がいる。それで声を掛けたら、夜通し話をしていたと聞いて仰天した!! 私たちが行った時は沢田研二とか大野克夫とかの話をしていたようである。
 
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■夏の日の想い出・勧誘の日々(3)

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