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■夏の日の想い出・勧誘の日々(2)

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この旅館の1階には焼肉屋さんが入っていて、男性3000円、女性2000円、中高生は男子2000円・女子1200円の食べ放題コースが設定されていた。それで、
 
「筋肉付けるのに蛋白質取るぞ!」
 
ということで毎日夕食はここで食べ放題コースに参加していた。付き添いのお母さんはパスと言ったので、女子部員6人で7200円払い(私はもはや完全に女子扱い)、ひたすら食べる。絵里花や貞子は無茶苦茶食べていたし、裕子さんと美枝もほどほどに食べ、若葉もまあ普通の女子程度に食べ、私は少食だった。
 
「冬、もっと食べなきゃ筋肉付かん」
と言われて、皿にどーんとお肉を盛られ
「これ食べ終わるまでは部屋に帰ってはいけない」
と言われて、ひーと思いながら食べていた。
 
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しかし、やはりあれだけたくさん蛋白質を取るのと、毎日のハードな練習の組合せは良かったと思う。
 

最終日前日、つまり宿泊する最後の夜。今日は最後の夜だからカラオケしよう、などと絵里花が言い出した。
 
「私、歌苦手〜」
などと若葉が言ったし
「私が歌うと、ジャイアンも逃げ出すぞ」
などと貞子は言っている。
 
「どういう順番で歌いますか?」
と美枝が訊くと
 
「ジャンケンで負けた人が歌うというのでどうだ?」
と絵里花。
 
「それじゃ、ジャンケン」
 
というのでみんなで一斉に手を出すと、私だけがグーで全員パーだ。
 
「じゃ、冬どぞー」
 
私はポリポリと頭を掻いて、取り敢えず松原珠妃の新曲『硝子の迷宮』を歌う。お店の中にいた人たちが随分大量にこちらを向いたのを感じた。快感!
 
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「冬、歌うまーい」
「ってか、この曲知らない」
「松原珠妃の新曲。来週発売。カラオケは今日の夕方から先行解禁」
「そんな解禁されたばかりでまだ発売されてもないものをなぜ歌える?」
「インサイダー」
 
「おお、凄い」
「まあ、一応今日の朝からFMで流れてるはず」
「ラジオは持って来てないな」
 
「よし、次行こう」
 
また私が一発で負けた。曲を呼び出す。ドリームボーイズの『あこがれのおっぱい』を歌う。これ・・・PVの画像がそのまま流れてる! あはは。
 
「うまーい!」
「ね、ね、冬。今流れてた映像の左端で踊ってた女の子だけど」
「ボクだよん」
「おお!」
「よし、その問題については今夜、部屋で少し追求してみよう」
「あはは」
 
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「次の人!」
 
更に負ける。今度は篠田その歌の『ポーラー』を歌う。これもPVがそのまま流れる。
 
「ね・・・今のPVでヴァイオリン弾いてた子?」
「はい、ボクです」
「なんか普通に女の子してる!」
「これも追求しなければ」
 
「冬、いろんなことやってるね!」
 
「でも、その歌ちゃん可愛いね」
「17くらいだっけ?」
「いや、実は23くらいという噂も」
「冬、インサイダーで教えてよ」
「彼女の年齢はバラしちゃいけないことになってるから。まあ23ってことはない」
「ああ、やはり少し鯖読んでるのか」
「でも17-18で充分通るよね、あの子」
 
「よし、次の人」
 
また負けた!
 
「これジャンケンする必要がない気がしてきた」
「うん。冬、ずっと歌ってていいよ」
「あはは」
 
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ということで、今度は麻生まゆりの曲を歌う。そして私はひたすらジャンケンに負け続けて、谷崎潤子、原野妃登美、田代より子、しまうらら、保坂早穂、と何となく関わっている人の歌を歌い続けた。
 
「さて、そろそろ部屋に戻って、お風呂入って寝ようか」
「今日は冬子のワンマンショーだったね」
「しかしこれだけジャンケンで負け続けるって天才としか言いようが無い」
「まあ歌もうまかったね」
 
などと言いながら引き上げることになる。最後の保坂早穂の歌を歌って、これで終わりというのを宣言した時には、お店のお客さんみんなから拍手をもらってしまった。
 

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それでお店を出て部屋の方に戻ろうとしていた時、私に声を掛けてくる女性がいた。
 
「すみません、あなた歌手になるつもりない? 私、こういうものです」
と言って名刺を出してくる。
 
「&&エージェンシー制作部・白浜藍子」
と書かれていた。
 
「すぐデビューというのでなくても、この世界に慣れるのを兼ねてしばらくレッスンとか受けてからでもいいし。もっとも今のあなたの歌を聴いた感じでは、話がまとまれば即デビューでいい気がした」
 
私は一応名刺は受け取ったが、答える。
「済みません。私、契約はしてないけど、あるプロダクションから声を掛けられて、そちらでレッスンとかも受けているので」
 
「ああ、やはり、このレベルの歌唱力あれば目を付けられるよね〜。でもまだ契約してないのなら、もし何かの時は声を掛けて」
 
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「あ、はい。何かご縁がありましたら」
 
ということで、その日は白浜さんとはその程度のやりとりであった。
 

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「冬、凄いね。スカウトされちゃったね」
と絵里花。
「いや、あの歌を聴いたらスカウトしたくなるだろうね。ホント冬ってうまいもん」
と美枝。
 
「でも冬は既にスカウトされ済みだから」
と若葉が言う。
 
「なんかいくつかの事務所に関わってるよね?」
 
「そうそう。色々な義理でというか。○○プロ、$$アーツ、ζζプロ。各々の予定がぶつかったりするから、通ってる民謡教室で調整してもらってる。というか、その民謡教室から頼まれてやってる仕事もあるんだけどね」
 
「じゃ、将来的にはそのどれかからデビューするの?」
「うーん。それは分からないなあ。それに私自身、まだデビューまでに解決しなければならない問題あるし」
 
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「へー」
「でも問題って何?」
「あ、戸籍が女でないこととか?」
「まあ、それは別に構わない気がする。現役女性歌手やタレントさんで実は・・・って人、何人か知ってる」
 
「すごー」
「冬も女の子の歌手になるんだよね?」
「当然」
 
「もしおちんちん付いてたら、デビュー前に取らなくちゃ」
「うーん。それも大した問題じゃない気がする」
「へー。それ取るくらい些細なこと?」
「いや、既に取っちゃってるから問題無いのでは?」
 
「2年生の女子の間では、冬子は性転換済みであることは確定です」
「そうだったの?」
 

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白浜さんにはそれから間もなく、8月中旬にも会うことになる。
 
テレビ局が主催し、複数のレコード会社が相乗りした「新人歌手夢のドラフト」
なる番組の収録が行われていた。それで私は当日会場となっている都内のホールまで(セーラー服姿で)出て行った。
 
適当な席に座って審査を受けている女の子たちを見ている。参加者は書類選考を通り、芸能活動同意書と誓約書を既に提出している16〜23歳の50人である。
 
二部構成になっていて第1部では着衣で出てきて歌を歌い、歌審査で10人の審査員が付けた点数が80点以上であれば、その場で司会者からいくつか質問がなされて、その結果で審査されて決勝戦に進出する15-16名が決定される。
 
休憩を挟んで第2部は水着審査が行われる。こちらは全国の視聴者による投票で1〜5位が発表される。1位から順にレコード会社担当者による入札が行われて所属レコード会社が決定される。1位は木ノ下大吉先生から曲をもらって年内デビューという特典で、万一その場でレコード会社の応札が無くてもテレビ局が責任を持ってどこかを紹介する。2〜5位の子(応札があった場合)のデビュー条件は各レコード会社との話し合い次第である。
 
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6位以下は「残念でした」だが、有望株がいる可能性があるので会場には結構プロダクション関係者などが来ている。
 
昔の「スター誕生」を今風にアレンジし直した雰囲気で、入札も結果のみ発表する方式にして「人身売買」みたいなイメージを払拭する。
 
放送は第1部の決勝進出した子の部分(1人30秒)と第2部全部が放映され、第2部は生放送で、同時に電話投票が行われる。
 
木ノ下先生は2000年に佐多雪之丞『空の契約』で150万枚、2001年に春川典子『純粋』で130万枚、2002年に田嶋已里子『シャンゼリゼ』で110万枚、2003年に松原珠妃『黒潮』で400万枚、2004年に津島瑤子『出発』で120万枚と5年連続でミリオンヒット、今年も粟島宇美子『雨の中の告白』が90万枚とミリオンは到達していないものの大きなセールスを上げていて、(世間的には)最も売れている作曲家のひとりとみなされていた。
 
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(しかし実はこの頃から既に「楽曲品質の波」が、かなりひどくなってきつつあったし、結局は『出発』が木ノ下先生の最後のミリオンヒットになった)
 

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私が第1部の各「歌手の卵」のパフォーマンスを見ていた時、トントンと肩を叩かれた。
 
「こんにちは。こないだ千葉で会った子だよね。あなたも今日のオーディションに出るの?」
 
と声を掛けたのが白浜さんだった。
 
「ああ、こんにちは。白浜さんでしたね?」
「わぁ! 名前覚えてくれてたのね?」
「私、割と人の名前覚えるの得意なので。あ、済みません。私、柊洋子と言います」
 
「ひいらぎ・ようこさん、と。演歌歌手か何かみたいな名前ね」
「暫定的な芸名です。先日は名刺もお渡しせずに済みませんでした」
 
と言って、私は《音楽家・柊洋子》という名刺を渡した。連絡先は津田先生の民謡教室にしている。
 
「おぉ!名刺が出てくるとは」
と言って受け取っている。
 
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「私、実質セミプロのようなものなので」
と言って私は微笑む。
「今日は、ゲストコーナーで歌う、篠田その歌ちゃんの伴奏なんですよ」
「あ、そうだったんだ! って何の楽器するの?」
 
「私、その歌ちゃんのヴァイオリニストです。音源製作では毎回弾いています。ただし今日は変則編成なのでピアノを弾きますが」
 
「へー! ヴァイオリンとかピアノとかやるんだ?」
「どちらも自己流に近いんですけどね」
「自己流で、音源製作の伴奏ができるほどうまいというのは凄いよ。あ、篠田その歌ちゃんは、○○プロだから、津田民謡教室とは関連が深いね。洋子ちゃんもそれなら実質○○プロ所属に近い形?」
 
「まあ、津田先生が○○プロの元専務ですからね。でも実際両者は業務的にはほとんどつながりは無いんですよ。確かに民謡教室から○○プロに移ってCDデビューした民謡歌手は数人いますけど。私ほんとに、こないだも言ったようにどことも契約してないんです。もっとも事務所も伴奏者やダンサーとわざわざ契約しませんけどね」
 
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「確かに、確かに。そもそもこの業界は口約束で済ませているものが多すぎる」
 
「まあ、それでたまに揉めますけどね」
「ほんとほんと」
 
という感じで、途中から私たちはほとんど雑談になってしまった。
 

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この日のゲストコーナーでは3人の歌手が歌い、篠田その歌はその中の3人目だったのだが、この時、ちょっとしたハプニングが起きた。
 
篠田その歌のバックバンドは「ポーラスター」といい本来7人編成なのだが、今日はギターでリーダーの杉山さんと私、それにほとんどライブに参加できない私の代わりにいつもライブでヴァイオリンを弾いてくれている田崎さんという人の3人で来ている。それで私はキーボードに回っていた。
 
Aメロ、Bメロ、Aメロ、サビ、と演奏して次は間奏に入った所。最初に杉山さんのギターソロが入り、その後にヴァイオリンのソロも入るのだが、ギターソロがもうすぐ終わろうとした時、
 
田崎さんが転んじゃった! スカートが派手にめくれてカメラが慌てて向きを変える。
 
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どうもステージに多数走っているケーブルに靴のヒールが引っかかってしまったようだ。
 
私はとっさに右鍵盤をヴァイオリンの音に切り替えると、本来ヴァイオリンで演奏されるべきソロパートをエレクトーンの右手で演奏した。杉山さんがびっくりした顔をしていたが、私はほとんど顔色ひとつ変えずに弾いていた。その間に田崎さんも立ち上がり、こちらに会釈して、間奏が終わった所から普通の伴奏を再開する。
 
篠田その歌は一瞬ビクッとしたようであったが、何事もなかったかのように、また歌い続けた。
 

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