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■夏の日の想い出・花の咲く時(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-06-23
 
タカの華やかなエレキギターの音が鳴り響き、サトの小気味の良いドラムスワークが始まり、ヤスのキーボードは少しアラビア風の和音なども奏でる。そして私たちは『Spell on You』を歌い出す。
 
物凄く上手い保坂さんの歌の後は、私たちは若さで対抗するしかない。だからここはリズミックで元気な曲なのである。
 
そのまま私たちは『ファレノプシス・ドリーム』『夜宴』『間欠泉』『影たちの夜』
『キュピパラ・ペポリカ』『疾走』『夜間飛行』『恋座流星群』『ヘイ・ガールズ!』
と歌っていく。『間欠泉』だけは香月さんがトランペットを吹いてくれた。
 
そして政子は「それでは最後の曲です。『ピンザンティン』」と言った(のだと思う)。
 
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スターキッズのメンバーが、お玉を持って走り込んで来て、私と政子にもお玉を渡した。そしてお玉を振りながら
 
「サラダを食べよう、ピンザンティン。美味しいサラダを」
「ウォメンチー・シャラーチー、ピンザンティン。メイウェイ・シャラーチー」
 
と日本語と中国語でサビを歌いながら私たちはこの歌を歌った。何と客席でも結構お玉やを振っている人たちがいて、私たちも「おぉ!」と思いながら歌う。
 
客席からも声が聞こえてくるので、私たちはサビの所で客席にマイクを向けながら、熱唱する。
 
そして熱狂の中、歌は終わり幕は降りた。
 

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さて・・・・日本ではここでアンコールされるのは「お約束」だが、台湾ではそうはいかない。アンコールはあくまで、純粋に観客がライブに満足して、本当にあと1〜2曲聴きたいと思った時だけ要求してくれる特別なものである。
 
私たちは静かに観客の反応を待った。拍手は鳴り止まない。台湾側の公演責任者の人が私たちの方を見て頷く。私たちはステージ中央に出て行く。幕が上がる。
 
一際大きな歓声と拍手がある。
 
政子が中国語でアンコールの御礼を言う。更に少しトークをする。そして曲を紹介する。
 
「ニー・フアユアン、You in the flower garden」
 
後ろにはまたローズクォーツとスターキッズ+αのメンバーが入っている。
 
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松村さん・鷹野さん・七星さん・香月さん・宮本さんの5人がヴァイオリンを持っている。近藤さん・タカがアコスティックギター。月丘さんがグランドピアノを弾き、サトとヤスが2台のキーボードで多数の管楽器の音を入れる。これに酒向さんのドラムスとマキのべースが入る。
 
『花園の君』を演奏する。
 
この曲は何と言ってもストリングスの響きが重要である。音源では6人で演奏しているのだが、このステージではパート1〜5の5パートのみにした。但しパート1と2は少し易しい旧譜面を使用している。新譜面のパート1はアスカ以外には弾けず、パート2も私か松村さんクラスでないと弾けない。
 
先日発売した『Flower Garden』のタイトル曲である。この曲は私たちが復活した時に演奏すると約束した曲であったがゆえに、このアルバムのタイトルは『Flower Garden』になったのだ。
 
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間奏部分では私がフルートを、政子がヴァイオリンを持って、華やかなメロディを演奏する。それに松村さん・鷹野さんたちのヴァイオリン五重奏が音の深みを加える。
 
そして私たちは楽器を離してまた歌い出す。2番(Aメロ・Bメロ)を歌い、サビを歌い、Cメロ、Aメロそして再びサビ。サビリピートで終了。
 
私たちは深くお辞儀をする。拍手は鳴り止まない。政子がスターキッズとローズクォーツひとりひとりの名前を紹介する。そして私たちふたりを残して他のメンバーは退場する。私たちは再度お辞儀をする。しかしまだ拍手は鳴り止まない。私たちは見つめ合って頷く。
 
私がグランドピアノの所に座る。やっと拍手が鳴りやむ。政子はいつものように私の左側に立つ。
 
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『あの夏の日』を演奏する。ブラームスのワルツ(Op39-15)のモチーフ《ミードドミ・ミードドミ、ファソファミレミ》から美しい分散和音の展開となる前奏に引き続き、私とマリの3度唱でこの歌を歌う。歌いながらこの曲を書いた高校1年のキャンプのことを思い出す。まだ猫をかぶって男の子の振りをしていた自分。そんな自分の本性を見抜くように女の子の服を着せた政子。ちょっとだけ良心が痛む甘い想い出だ。
 
私は演奏しながら政子の顔を微笑んで見つめる。政子も微笑み返す(道徳規準が違うからステージ上のキスやハグ厳禁と氷川さんから言われているので、政子も控えている)。間奏部分では政子は再びヴァイオリンを持ち、私のピアノの音の配列の上を飛び回るかのように音色を添えた。
 
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2番、3番と歌い、最後、ふたりが歌う長い音符の間にピアノはコーダを弾く。そして終止。
 
私たちは余韻が消えるのを待ってから立ち上がり、ステージ前面に出てお辞儀をした。大きな拍手と歓声。それを私たちは両手を斜め上に掲げて受けとめた。そして再度お辞儀をする。
 
そして幕が降りた。
 

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コンサートが終わった後、政子は保坂早穂さんと楽しそうに会話している。どうも保坂さんに政子は気に入られた感じだ。私は保坂さんに挨拶して握手をしてから政子とハグしキスする。それから現地の公演責任者さんと握手をして(日本語で)少し言葉を交わす。
 
スターキッズとローズクォーツのメンバーとも握手をする。氷川さん、加藤課長、悠子、花枝とも握手し、七星さんとはハグし合った。
 
着替えてから、みんなで打ち上げに行く。この打ち上げはちょっと頭が痛かった。保坂さんと一緒なので、高級店に行かねばならない。でも政子は値段とは無関係にたくさん食べるだろう。この日私は60万円くらいで済むかな・・・まさか100万円食べちゃわないよな、などと少し憂鬱な思いを胸にレストランへ向かった。
 
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(参加人数は現地スタッフを入れて22人なので1人2万円食べると44万円。でも多分これでは済まない。なお支払いはカードである)
 
保坂さんと年齢の近い花枝が保坂さんの向こう側に座り、こちらに政子、そしてその隣が私である。現地スタッフさんは主として加藤さんと近藤さんが日本語で相手している。時々会話を聞いていたがどうも近藤さんは向こうのスタッフからこちらの事務所の社長か何かのように思われている気配もあった。
 

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「でもあんたたちの歌、生で聴いたのは初めてだけど、うまいね」
と保坂さんは言った。
「はい。私たちは上手いです。たぶん保坂さんの次に上手いのが私たちです」
と政子。
 
「ふふふ。本当は私より上手いと思ってるでしょ?」
「そんなことはありません。私が2000年頑張っても追いつけないです」
と政子。本音すぎるトークの多い政子だが、お世辞くらいは言えるようである。
 
「うーん。2000年生きてる自信無いから、その競争は難しいな。でもこういう感じでちゃんと自己主張する子、私大好き」
と保坂さん。
 
「丸花さんがよく言ってますね。自己主張する子だけがスターになれるんだって」
と私。
 
「そうそう。私もそう思う。私も16歳でデビューした当初から、私が一番です、って主張してたよ。だから先輩たちから随分意地悪されたけどね」
と保坂さん。
 
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「楽屋でどんなに意地悪されたって気にしなければいいんです。ステージで全ての答えは出ます」
 
「そうそう。私もそう思ってたから、何されても平気だったね。まあバッグの中身をゴミ箱に放り込まれるわ、口紅を折られるわ、靴をずぶ濡れにされるわ、着替えの下着を引き裂かれるわ、色々されたけど、怒ったら負けだと思ったから、何されてもニコニコしてたね。その内、向こうがこないだは御免ね、とか言うようになったよ」
 
「そうやって謝って来た人たちは自分の味方になりますよね」
「うん。そうやって味方を増やして行った」
 
と言う保坂さんは少し寂しそうな顔をしていた。恐らく本当はこの人は心を許せる「本物の味方」がいないのだろう。
 
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「だけど、私がコンサートのゲストで出たのはかなり久しぶりだよ」
「保坂さん、とっても歌がうまいから、歌唱力の低い歌手の幕間に出て行くと主役の歌手を食っちゃうと思います。だから保坂さんをゲストにできるのは保坂さんに近い力を持つ歌手だけですね」
と私は言った。
 
「うん、それはあるね」
「毎日7〜8時間は練習なさってるでしょ?」
「ああ、そのくらいだと思う。用事とかの無い日はね」
 
「それをしてる歌手だけが、保坂さんに近い力を持てるでしょうね」
「あんたたちもかなりやってるでしょ?」
「たぶん4〜5時間かな。大学の講義で半日潰れるから」
「いや、そのくらいやってれば充分偉い」
 
私は言う。
「ピアニストやヴァイオリニストは自分の技術力を維持するために毎日10時間、15時間と練習します。3日練習しなかったら取り戻すのに1ヶ月掛かると言います。私の従姉に国内でもトップクラスのヴァイオリニストがいますが、彼女も外出しない日は毎日14〜15時間練習してます。私もそのくらい練習して当然と思うのですが、ポピュラー歌手の中にはほとんど練習しない人もいるみたいですね」
 
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「なってないよね。特にプロは素人の倍練習すべだよ」
と保坂さん。
 
「私、デビュー前夜の頃に雨宮先生からプロは素人の3倍練習しろと言われました。その頃、私スタジオミュージシャンしてたから、デビューはしてなくても既にプロだと雨宮先生から言われたんですよね」
と私。
 
「そうか、3倍か。私ももう少し練習時間増やすかな」
と保坂さんはマジな顔で言っていた。
 
「だけど、雨宮って雨宮三森?」
「はい。実はローズ+リリーの影の仕掛け人は雨宮先生なんです」
「へー!」
と驚くような声をあげてから
「あんたたち、あの人に何か変な事されなかった?」
と訊く。
 
「あ、大丈夫です」
「あの人、可愛い女の子見たらすぐ裸にひん剥いて、Hなことしようとするからさ」
「裸にはなったけど、変な事はされたことないなあ」
と政子。
 
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「裸にされた時点で超危険だよ!」
 
「でも雨宮先生、まだおちんちんあるんだっけ?」
と政子は私に訊く。
「さあ、見たことないから分からないけど、たぶんまだあると思うよ」
と私。
 
「そりゃ、あの人のおちんちんを目撃するということは、次の瞬間やられちゃうということだよ」
と保坂さん。
 
「なんか、軍事大国の超機密兵器みたいだ」
「見た者はやられてしまうから目撃者が存在しないという奴ね」
「そそ」
 

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その後私たちの話は国内の音楽シーンの話題になっていく。色々な歌手の話題、また作曲家の話題などが出るが、私は誰かの批判になったりしないように言葉を選んで論評し、政子が変なことを言おうとしたら口を押さえてでも停めた。保坂さんのようなタイプの人の前でうかつに批判はできない。「ケイちゃんがあんたの悪口言ってたよ」などと言いかねない人だ。
 
そんな感じの会話をしばらくしていたが、保坂さんは微笑んで
「ケイちゃんってこの世界で長生きできる性格みたい」
と言った。
「ありがとうございます。あと40年くらいは、しぶとく生き残っていくつもりです」
と笑顔で答える。
 
「ああ、生き残ってそう。もしその頃、私が落ちぶれてたら、御飯おごって」
と保坂さん。
「あ、御飯だったら、いつでもうちに食べに来てください。私子供8人くらい作るつもりだから、きっと私とケイの家って食堂並みだと思うので、遠慮しなくていいですよ」
と政子。
 
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「あんた8人も産む気?」
「そのくらい子供いたら賑やかだなあと。種は適当に調達して。でも半分はケイに産んでもらうかも」
「産めないよー」
 
「ケイちゃん、もう下は全部手術してしまってるんだよね?」
「はい。だから生殖能力は無いです」
「ふーん。でもケイちゃんとマリちゃんで一緒に子供育てるんだ?」
「はい、そのつもりです」
と私と政子は同時に言った。
 
保坂さんは優しく微笑んだ。
 
「あんたたちが子供育てたら、その中から次世代のスーパースターが生まれるかもね」
 
「本人が音楽をやりたがったらさせていいと思いますけどね」
「ふふふ。でも3歳になったらピアノ習わせるといいよ。男の子でも女の子でも」
 
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「それはそのつもりです。特に私、男だからといってピアノやエレクトーン習いたかったのに習いに行かせてもらえなかったから。私とマリの子供たちには性別関係無くちゃんと習わせようと思います。本人が嫌がったら辞めさせればいいし」
 
「そそ」
 
「でもケイは音楽教室には行かせてもらえなかったけど、密かに教えてくれる先生を見つけて、怪しいレッスンを受けていたみたいで」
 
「怪しくないって」
「だって、そのレッスンのこと、全然詳しく教えてくれないんだもん」
 
保坂さんが笑っていた。
 

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