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■夏の日の想い出・花の咲く時(4)

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「ところで『三角錐』ってタイトルが曲のラインナップと関わってない気がするんだけど」
と七星さんが訊く。
 
「『愛の三角錐-Love Tetrahedron-』という曲があったんですよ。でも楽曲のクォリティの問題で外した、というより押し出されました」
 
「ありゃ。じゃ来年のアルバムとかに回す?」
「うーん。本来のこのアルバムタイトル曲ですからね。扱いが難しいな」
 
「ベストアルバムでも作る時にボーナストラックに入れようか」
とTAKAOさん。
 
「ああ、そんな感じかな。悪くない曲なんだけどね〜」
 

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KARIONの音源制作はここ数年、麻布先生の友人の音響技師・菊水さんのスタジオで行われている。麻布先生が音響を管理した『Flower Garden』の出来が凄すぎるので、こちらも全部やり直すという話に、菊水さんも燃えた。
 
「麻布に負けないようなの作っちゃろじゃない」
と言って、ひじょうにテンションが高く、普通なら簡単に済ませるような所も手間を掛け資材も多数投入して丁寧に音を拾ってくれた。『アメノウズメ』のようなダイナミックな曲は、録音の管理を敢えて耳の感度が良いまだ専門学校在学中の助手さんに任せた。
 
サウンドの仕上げに関しては、私と和泉、菊水さんの3人でかなり熱い議論をして方針を固めていった。長年共同作業をして信頼関係がしっかりしている仲なので出来る議論だという気がした。
 
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なお、このアルバム制作の費用に関しては、当初2000万円程度を予定していたのが「作り直し」方針でどう考えても直接経費だけでも4000万円は掛かることになった。最初の2000万円の内既に1000万円くらいは使った上での方針転換だったので、新たな資金が最低でも3000万、できたら4000万ほどの準備が欲しい。その後宣伝費も結構掛かる。しかし畠山社長はなんとか資金の工面は頑張るからと言って、私たちの自由にさせてくれた。
 

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「取り敢えず2000万は確保した。宣伝費に必要なお金も含めて後3000万ほどは銀行が貸してくれそうなんだ。来週また銀行の支店長と会ってくる」
と畠山さんは言った。
 
「よかったですね」
「まあ、売れなかったらどうしようというのはあるけど、今回は君たちに社運を賭けることにするから」
「万一売れなかったら、私のヌード写真集出していいですよ」と和泉。
 
「うーん。。。それは個人的には欲しいが、あまり売りたくない」
「社長〜、それセクハラっぽい発言」
と小風。
 
「でも水沢歌月のヌード写真集なんてのもいいかもね」と和泉。
「おお、それは衝撃的」
「うーん。もし売れなかったら、それ出してもいいよ」と私も言う。
「おぉ!本人の承諾も得られた!」
 
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「水沢歌月は、実は高校時代に撮ったヌード写真も存在するんだよね〜。私も撮っておけば良かったなあ」と和泉は言う。
 
「凄い。ってか、高校時代って、まだアレだよね?」と美空。
「それがさあ、見せてもらったけど、あそこまで写っている写真を見ても普通に女の子のヌードにしか見えない」
と和泉。
 
(むろん和泉に見せたのは自分のヌード写真だけである。政子や雨宮先生のヌードは他人には絶対に見せない)
 
「冬って、当時既にもう女の子の身体になってたんだっけ?」
「その説が濃厚という気もする。身体の線も完璧に女の子だしさ。きっと冬は本当は小学生の内に去勢して、中学生の内に性転換してるんだよ」
「まさか」
 
「でも、もし本当にお金足りなくなったら、蘭子ちゃん、個人的に貸してよ」
と畠山さんは言う。
「ええ。いいですよ。特別割増金利で」と私。
「なんだか怖いなあ」
 
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7月19日。私は政子、UTPの悠子と花枝、★★レコードの氷川さん・加藤課長、そしてスターキッズ及びローズクォーツのメンバーなどと一緒に羽田から台北(Taipei)の松山(Songshan)空港行きの便に乗り、台湾に入った。
 
ローズ+リリーの初海外ライブである。ライブは20日の午後からなので、20日に入ってもいいのかも知れないが、国境を越える時に不測の事態が起きた場合のことを考え、前日に入っておくのである。政子は台北に着くなり
 
「中華料理がお腹いっぱい食べたい!」
 
と言い、私と悠子・氷川さん・七星さんの5人で台北市内の台湾料理店へと繰り出した。事前のリサーチで、味も良く値段も手頃(政子が少々食べても青くならなくて済む)の店を確認していたので、そこに入り、コース料理を頼んだ上で、更に追加でいろいろ注文した。
 
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政子はお店の人と中国語(台湾は北京語圏)で会話して料理の材料や味付けなども尋ねて、真好(チェンハオ)!を連発して、本当に嬉しそうだった。
 
政子は色々な外国語ができるものの発音は無茶苦茶なのだが、その無茶苦茶な発音の中国語が一応、相手には通じていたようであった。でもどこか田舎から出てきたお姉ちゃんたちと思われていたかも知れない!
 

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翌20日。台湾時刻で午後1時。
 
4000人の観客で満員の台北展演二館(zhan yan er guan, World Trade Center Show Hall 2)の幕が開き、大きな拍手と歓声があった。
 
酒向さんのドラムス、近藤さんとタカのギター、マキのベース、そして松村さん・鷹野さん・七星さん・香月さんのヴァイオリン、宮本さんのチェロ、そしてヤスのピアノ、サトのキーボード(チェンバロ音)、月丘さんのマリンバ、という伴奏で私とマリは台湾の歌謡曲『雨夜花(ウーヤーホエ)』
(周添旺作詞・登雨賢作曲**)を中国語で熱唱する。台湾出身の歌手テレサテンが日本語歌詞でも歌っている曲である。(私は中国語があまり得意ではないのでカタカナで歌詞を書いてもらっておいた)
 
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(**本当は登の右にオオザトがある文字)
 
歌い終わって「ニイハオ!ウォーメンシー・ローズ・プラス・リリー」
と一緒に挨拶すると大きな拍手と歓声がある。
「ケイ!」「マリ!」という大きな掛け声が飛んでくる。国境を感じさせない熱狂がそこにはある。
 
普段のライブでは私がだいたいMCをするのだが、今日は中国語のできるマリに頼んだ。マリがその件も含めて挨拶してくれている雰囲気。マリの言葉に何か爆笑が起きる。どうも私がネタにされてる気がしたが、幸か不幸か私は話の内容が見えないので、よく分からないままそばで微笑んでマリの言葉を聞いていた。
 
マリはお昼にも市内で飲茶をお腹いっぱい食べてご機嫌なのもあったのか、けっこう長時間しゃべっていたが、やがて
「ナーメ、ウォーメン・シャン(さて歌いましょう)」
と言い、私の方をチラっと見てからマイクに向かい「パイシーチャン、onehundred hours」と言うと、拍手が来る。
 
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後ろの方ではローズクォーツのメンバーが下がってスターキッズ(+α)のアコスティック・バージョンがスタンバイしている。このバージョンでは例によってPAを通さず生の音でやる。マイクも使わないので私たちはマイクを脇の椅子に置いた。
 
ヴァイオリン松村・鷹野、ヴィオラ香月、チェロ宮本、アコスティックギター近藤、グランドピアノ月丘、ドラムス酒向、そしてフルート七星。
 
七星さんは会場が広いので木製のフラウト・トラヴェルソではなく純金製の現代フルートを持って来ている。純金のフルートは吹くのにパワーが必要だが、その分よく音も響く。
 
ストリングスの美しいサウンドとそれに彩りを添えるフルートの音色をバックに私たちは『100時間』を歌い始めた。ここから先は日本語歌詞である。実は中国語に歌詞を全部翻訳して歌うことも考えたのだが、ファンはむしろ日本語のオリジナル歌詞で聞きたいかもということで、日本語のままにした。
 
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レッド・ホット・チリ・ペッパーズが来日して日本語で歌ってくれたら、それはそれで嬉しいが、ファンとしてはやはり英語のオリジナル歌詞で聞きたい気がするよ、という氷川さんの忠告に素直に従った。
 
なお七星さんが吹いているフルートは実はサマーガールズ出版で所有して七星さんに無償貸与している楽器である。こういう高価な楽器は出入国も結構大変なのだが、その付近の手続きは今回持って来た7台のヴァイオリン、私の純銀製フルート、七星さん自身が所有している純銀製・金メッキのサックスなどと一緒に全部氷川さんがしてくれている。
 

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そのままスターキッズの伴奏で途中多少の楽器の持ち替えなどもしながら、アコスティックアレンジが似合う曲を演奏していく。
 
『あなたがいない部屋』『桜のときめき』『君待つ朝』『雪の恋人たち』
『天使に逢えたら』『遙かな夢』『私にもいつか』『夏の日の想い出』
『A Young Maiden』
 
ここまで歌った所でマリはマイクを持ち中国語で「本日のゲストを紹介します」
と言った(のだと思う)。「保坂早穂!」と言ってマリが紹介し、豪華な振袖を着た保坂早穂本人がステージ脇から出てくると、会場内は「えーーー!?」
という感じの驚きの声が広がった。
 
保坂早穂は自分のマイクで「ニイメンハオ! ウォーシー・パオパンザオスイ」
と自分の名前を中国語読みで発音して名乗りを上げた。美しい発音だ。政子もへー!という感じで見ている。そのまま保坂さんは美しい中国語で何やら言っているが、政子は分かっているようだが、私はさっぱり分からない!
 
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でもその内、保坂さんが歌うことになったようで、近藤さんの方を見る。前奏が始まる。スターキッズは通常の電気楽器を持っているし再びここからはPAを使用する。
 
保坂さんのヒット曲『ブルーラグーン』を歌い出す。私とマリは後ろの方に設置したマイクでコーラスを入れる。
 
この曲を歌って拍手が来た所で、私とマリ、更に松村さんも下がり、そのまま保坂さんがスターキッズの伴奏で更に2曲歌った。
 

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保坂さんが台湾公演のゲストに来ることになったのは、実はほんの6日前の○○プロ臨時株主総会の席上で、私と政子が偶然保坂さんと顔を合わせて会話したことからであった。
 
私と政子は実は○○プロの少額株主で(数年前、丸花社長が「あ、これあげる」
と言って、株券を私たちにくれたことで、私たちは株主になった)、株主総会にも顔を出したのだが、その時懇親会の席上で、向こうから声を掛けてきたのである。
 
「やっほー、マリちゃん、ケイちゃん、おっはよー」
と保坂さんは明るい。
 
「おはようございます。取締役就任おめでとうございます」
「いやね〜、私いつも『○○プロの御意見番』なんて勝手に言ってたら、浦中君が『だったら取締役してください』と言ってね」
 
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と明るい口調で言う。この人は結構明暗の落差が激しく、どちらかというと少し離れて鑑賞しておきたいタイプなのだが、ハイテンションになっている時はとても調子がいい。私は適当に合わせていたが、政子はそのあたりの機微には無頓着のようでけっこう危険な単語の並んだ会話をしていて、私は地雷を踏んだりしませんようにとヒヤヒヤしながら聞いていた。
 
「そうそう。来週、あんたたち台湾公演だって?」と早穂。
「わあ、よくご存じで」と私。
「中華料理たくさん食べるの楽しみです」と政子。
 
「あら、中華料理いいわね! 私も食べたいなあ。一緒に行きたいくらい」
「あ、だったら行きましょうよ」と政子は言っちゃった。
 
「あら、いいの? じゃおごってくれたらあんたたちのライブのゲストで歌ってあげるわよ」
 
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ということで、保坂早穂のゲスト出演が決まってしまったのであった。
 

保坂早穂は別のレコード会社に所属しているが、その件は町添さんが先方の幹部と電話して、ギャラは友情出演ということで無し、交通費・宿泊費・食費はこちら持ちということで話を付けてくれた。保坂早穂が自分で出ると言ったのでは、向こうの幹部さんもそれを認めざるを得ない。保坂の影響力は凄まじいのである。
 
元々この台湾ライブでは幕間ゲストは作らずに、スターキッズのインストゥルメンタル曲でつなぐつもりでいたのだが、急遽保坂の曲を3曲演奏して、その内の最初の1曲はローズ+リリーがバックコーラスで入るという演出を決めた。
 
私たちは昨日台湾入りしていたのだが、保坂さんは今朝台湾桃園(Taoyuan)空港に着いたのを、★★レコードの台湾支店長と、加藤さん・花枝とでお迎えに行っている。
 
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保坂さんは日本でも結構若い人から、かなりの年配の人まで幅広い層に絶大な人気を持っているが、台湾でもファンが多いようで、観客は興奮していた。
 
政子なども「すごーい。うまーい」などといいながら、舞台袖で聴いていた。
 
デビューしてから18年。35歳になっても、歌唱力は充分20代前半の歌手並みのものを保っているし、毎年最低1枚はアルバムを出してそれなりのセールスを上げているのがまた凄い。この人はまさにスーパースターであろう。
 
私も基本的にむやみにビブラートを掛けない主義だが、保坂さんもほとんどビブラートを掛けない。その分とても精密な音程が要求される。喉をかなり鍛えていないとできない技だ。おそらくデビュー以来毎日最低4〜5時間の練習を欠かさずしているのであろう。
 
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保坂さんが歌っている間に私たちは汗を掻いた服を脱ぎ後半の衣装に着替える。喉を潤す。政子はおやつを食べている。そして保坂さんが3曲目を途中まで歌った所で私と政子はヴァイオリンを持って出ていく。ふたりでヴァイオリンを弾き、歌に彩りを添える。
 
保坂さんが歌い終わる。ヴァイオリンを顎から離した政子は「保坂早穂さんでした。今一度盛大な拍手を」と(多分)言って、再度客席から大きな拍手が来る。保坂さんは私たちと握手して、袖に下がった。
 
政子が少しMCをする。その間にスターキッズが退場(私たちのヴァイオリンは悠子と花枝が回収してくれる)して、代わりにローズクォーツが後ろの方に入ってくる。政子が曲名を告げる。
 
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「チョウ・ニー Spell on You」
 
そう言って政子は私をまっすぐ指さした。
 
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■夏の日の想い出・花の咲く時(4)

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