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■夏の日の想い出・限界突破(4)

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「マーサが自分のヴァイオリンにイーちゃん、アルちゃん、ユキちゃんと付けたのと似たようなものかな」
「ふーん。その後の曲を弾いたヴァイオリンは?」
「あれは元々『Luciana(ルツィアーナ)』という名前が付いているんだけど、アスカは勝手に『ひかりちゃん』という名前を付けて呼んでる。
 
「Lucianaって、元々光という意味だろうから、間違ってない気がする」
「そそ」
 
「でも私今凄く興奮してる」
「せっかくヴァイオリン持って来たんだし、今日のステージでマーサ弾いてみる?」
「私も出ていいんだっけ?」
「ノープロブレム」
 
政子がやる気を出して来たので、私は福岡空港に到着してすぐローズクォーツのタカにメールして、マリが今日のローズクォーツのステージでヴァイオリンを弾きたいと言っているがよいか?と尋ねた。タカから速攻で「大歓迎。マリちゃん大好き★」という返事が返ってきた。
 
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「タカって私たちの水戸ライブを偶然見て、その場でCDも買ったというローズ+リリーの一番古いファンでもあるからね。特にマリ派だし」
「ふふふ」
 

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政子は観客から見えるところでは恥ずかしいなどと言ったので、舞台の左端、カーテンの影になる所に立ってサイレント・ヴァイオリンを演奏することになった。それでこの公演にマリが参加していたことは、角度の関係でその姿を見ることができた、最前列右端付近に座った数人の客だけであった。多くの客はヴァイオリンの音は音源で流しているのだろうと思っていたようであった。
 
博多公演は電力会社系の小ホールを使い、『川の流れのように』『萌える想い』
『あの街角で』『ヴァーチャル・クリスマス』『渡せないプレゼント』
『恋人がサンタクロース』『黒田節』と演奏していき最後は『博多どんたくの唄(ぼんちかわいや)』を唄った。
 
そして観客がホールから出てきた所で、私とタカのふたりで『博多祝い唄』を唄う。
 
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「祝いめーでーたーーーの、若松ーさまーよ、若松ーさまーよ、枝も栄えりゃ、葉も茂る、エーイッショーエ、エーイッショーエ、ショーエー、ショーエー、ショーンガネ。アレワイサソ、エッサーソエーーーー、ショーンガネー」
 
するとロビーにいた観客もみな一緒に唱和してくれて最後は大きな拍手でいっぱいになった。更にタカが
「よ〜〜ぉ、(パチン)」
と、《一本締め》をすると、更に盛り上がった。
 
「なに、なに? この雰囲気?」
と須藤さんが驚いていたが、子供の頃博多に住んでいた政子が
「これ、博多ではお約束です」
と言って微笑んでいた。
 

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そしてその夜、私たちはそのまま博多に泊まったが、私と政子は夜中ホテルを抜け出して、ホテルに隣接していたカラオケ屋さんに行き、政子はヴァイオリンを弾きまくった。
 
ちょうどホテルを出る時にタカと遭遇したので、タカも付いてきた。タカがたくさん褒めるので、政子は調子に乗ってたくさん弾いた。更に私のヴァイオリン(高価な楽器なので部屋に置いたりはせず、当然一緒に持って来ている)を貸してというのでそれも弾かせてみた。
 
「この子、凄くいい音するね」
「いいでしょ」
 
「でもこの子、私に反発してる気がする。まあまあとなだめながら弾く感覚。あと高音をうまく出し切れない。これ私には手に余る。マンモスに乗ってるみたいな感じなの。イーちゃんだと猫に乗ってる感じで、アルちゃんだと馬に乗ってる感じなんだけどね。これ高いヴァイオリンじゃ?」
 
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「さあ、よく分からないなあ。私はかなり安い値段でその子譲り受けたんだよ」
「へー」
 
「でも、そのヴァイオリンは弾く人を選ぶと言ってたから、マーサとは相性が良くないのかもね」
 
「こないだ楽器屋さんでアルちゃんのガルネリ・タイプの方を弾いた時に近い感覚なんだよ」
「うん、その子、ガルネリ系の作りだから」
「それでか!」
 
「マーサはやはりガルネリ系よりストラディ系が合ってるみたい」
「冬はこの子、どのくらい弾くの?」
 
「もらったことはもらったけど、あまり弾いてないからなあ」
などと言って、私はそのヴァイオリンを使って『ユモレスク』を少し弾いてみせた。
 
「へー、冬って割とヴァイオリンも弾くんだね」
「私が演奏できるのは今の曲くらいだよ」
「なーんだ。でも性格的には合ってると思った」
「うん、私とこの子は相性良いみたい」
 
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「でもマリちゃんがこんなにヴァイオリン弾けるなんて初めて知った」
などとタカは言っていた。
 
「マリちゃん、歌は歌わないの?」
 
「はい、ケイ歌って」と政子。
「一緒に歌おうよ」と私。
「そだね」
 
「じゃ俺が伴奏してやるよ」
 
と言ってタカがホテルからアコギ(Martin D-28)を持って来たので、その伴奏で
 
『あの街角で』『遙かな夢』『涙の影』『私にもいつか』『恋座流星群』
『用具室の秘密』『Spell on You』『その時』『甘い蜜』『影たちの夜』
 
とローズ+リリーの歌を歌いまくった。
 
「マリちゃん、ほんとに歌がうまくなったね」
とタカが褒める。
「そうかな。えへへ」
などと政子は少し恥ずかしそうに答えていた。
 
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「ローズクォーツの方のこの後の予定は?」と政子が訊く。
「12月後半は全国のライブハウス8ヶ所、1月はライブハウス16箇所、2月は西日本方面のドサ回り」
 
「体力大丈夫?」と政子。
「俺、10月は死んでた。マキとサトは公演が終わった後飲みに行ったりしてたみたいだけど、俺はあそこまで体力無いや」とタカ。
 
「タカさん、男の子にしては身体が細いもん。ウェストいくつですか?」
「あ、俺ウェストは76」
「体重は60kgくらい?」
「うん。だいたいその付近をウロウロしてる感じかな」
「ちょっと女装させてみたいなあ」と政子。
「パス」とタカ。
 
「でも私も10月は特にしんどかったよ。もう新幹線の中でひたすら寝てた」
 
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「公演地から公演地に直接移動する俺たちはいいけど、ケイちゃんは毎日新幹線や飛行機で往復してたもんなあ。よく身体が持つと思ってたよ」
「いや、限界超えてた」
 
「このままあと半年こんな仕事の仕方してたら、俺たぶん潰れる」とタカ。
「あのさ考えてたんだけど」
と私は腹案を提示する。
 
「スケジュール作成を松島さんにさせるように持っていかない?須藤さんって根本的にこういうの作るのが下手っぽい。アーティストの負荷も移動に掛かる時間も考えずに、空いてたらそこにポンと日程入れちゃう」
 
「確かに。10時に前橋、11時に新潟ってスケジュール見た時は、移動はF15か?と思った。あれはさすがに変えてもらったけど」
 
「あれは私も仰天した。で、ここだけの話、○○プロの前田課長と先日話してたんだけどね」
「あれ?○○プロって何か関わってるの?」
 
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「ローズクォーツの活動資金はね、△△社・○○プロから出てるというか、表に立っているのがその2社で、実は須藤さんも知らない所合計6社からその大元は出ているんだよ。これ絶対他の人には言わないでね」
と私は説明した。
 
「そうだったのか! いやドサ回りはどう考えても大量の赤字を出していると思ったから、よく資金があるなと思ってた」とタカ。
 
「須藤さんが以前○○プロで担当していたアーティストでも、スケジュールがハードすぎるという苦情が度々出ていて、前田さんとかが介入して負荷を減らしていたというんだよね」
 
「なるほどね」
「10月11月から今日までの全国行脚は私もローズ+リリーの全国ツアーが突然中止になって全国のイベンターさんや放送局さんとかに迷惑を掛けたから、そのお詫びの行脚のつもりで参加したんだけど、さすがに今回と同じペースで2月3月もやられたら、私も体力的に限界突破しちゃいそうだから」
 
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「よし、それは松島さんを動かそう。あの人そのあたりさりげなく自分の方に仕事を取るのがうまいみたいだから」
「経理も松島さんが帳簿を付けるようになってから、現金過不足が出ないようになったみたい」
「いや日常的に過不足勘定が発生するというのが問題ありすぎ」とタカ。
 
「須藤さんって、マリと同じで感覚人間だから」と私。
「マリちゃんが会社経営したら、3日で潰れそうだ」とタカ。
「えへへ」
 

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2月の西日本方面のドサ回りは松島さんがスケジュールを組んでくれたおかげで、だいたい1日1ヶ所、日曜は夕方くらいで上がりというペースにし、更に平日私の行程が鬼畜すぎる場合は私抜きで3人だけでのライブ(歌はタカ)という形にしてくれたので、体力的には秋のドサ回りに比べて随分楽であった。
 
しかしその直後3月11日から始まった大災害には、私たちはただ涙を流すことしかできなかった。私は本当に無力感を感じていた。
 
そんな中、私と政子は震災から2ヶ月たった5月11日から、東北ゲリラライブを始めた。政子のヴァイオリンと私のフルートで、随分あちこちで演奏した。
 

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「だけどゲリラライブと言ったら、ギターってイメージもあるよね」
と政子は言った。
 
「んーじゃ、ギター買おうかな」
「冬、ギター持ってるじゃん」
「エレキギターじゃ、電気無いと演奏できないよ」
「あ、そうか!」
 
ということで私はアコスティックギターを買いに行った。もちろん政子も付いてきた。
 
私たちが良く行く楽器店の店長さんも随分私たちとは馴染みになったので、こちらの懐具合も知っているし、最初マーチンとかギブソンとかを勧められた。
 
私がギブソン J-45 を試奏していたら政子が言った。
「それ、冬にはまだ無理だよ。限界突破に5年掛かる。もっと安いギターにした方がいい」
「へー」
 
それで私はヤマハの普及品FGシリーズを出してもらい弾いてみた。
「ああ、その方が冬には合ってる」
「うんうん。私もそんな気がする。さっきのギターは何だか感覚が遠かった。こちらがしっくりする」
「そのギターでたくさん練習して限界突破を目指しなよ」
「そうだねー」
 
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そういう訳で、私と政子は7月に実行した第2回目のゲリラライブには、新たに購入したヤマハの普及品のギター FG730S を持って行った。
 

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ところで政子が使用しているヤマハのヴァイオリン Artida YVN200S について、私たちはあくまで、次のヴァイオリンを探すまでのつなぎと考えていた。それで私の時間が取れる時にあちこちの弦楽器店を見てまわっていたのだが、政子が気に入るような楽器には出会うことができなかった。
 
その内、6月にヤマハから同じArtidaシリーズで YVN200S の上位楽器YVN500S(本体160万円:これに35万の弓を合わせる)が出たので、結局政子はそちらに乗り換えてしまい、その後、かなり長期にわたって YVN500S が政子の愛用楽器となった。
 

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7月に実行した2度目のゲリラライブで、私たちは一曲目は私のフルートと政子のヴァイオリンで『青葉城恋歌』を演奏したのだが、その後は私のギター伴奏でふたりで一緒に『神様お願い』『帰郷』『コンドルが飛んでいく』『再会』
『聖少女』『Long Vacation』などを歌った。その日政子は選り好んで私たちの作品を指定した。そもそも、その日の政子の歌は物凄く気合いが入っていたし、私たちの素性に気付いて「マリちゃーん」などと声を掛けてくれる聴衆に笑顔で手を振り返していた。演奏が終わった後、サインに応じる時も何だか凄い笑顔で握手も力強かった。
 
「何だか今日はとっても良い雰囲気だったね」
と私は帰りの新幹線の中で政子に言った。
 
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「私ね」
「うん」
「ちょっと限界突破したかも」
「何の?」
「私の休養期間はもうおしまいにしようかと思って」
「いいんじゃない。結構ゆっくり休んだでしょ?」
 
「うん。私のワガママでずっと休んでてファンの人たちに申し訳無かったなあ。ね。冬も本当の女の子の身体になれたし。ふたりで何か歌ってCD作ろうよ」
 
私は震災直後の4月に性転換手術を受けていた。
 
「いいね」
「ステージ復帰には・・・多分、まだ1年くらい掛かりそうな気がするんだけど、まずは私、ファンの人たちに新譜を聴かせたい」
 
「うん、一緒に作ろうよ」
「冬、いつなら時間取れる?」
「えっとね」
 
と言って私は手帳を確認する。
 
「今度の18-19日は休めるよ。18日は仁恵の誕生日で多分1日潰れるから、19日の火曜日に一緒にスタジオに入って録音しない? みっちゃんのペースに合わせてたらいつ作れるか分からないから、私たちだけで音源作っちゃおう。契約上CDの発売に関しては本当は私たちに決定権があるから、まだ待ってと言われても強引に発売しちゃおう。曲は『聖少女』と『不思議なパラソル』でいいと思う。この2曲、絶対70-80万枚は売れる曲だよ。あと上島先生から預かっている『涙のピアス』も使っていいと思う」
 
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「よし、やろうやろう」
と言う政子の顔は、やる気いっぱいであった。
 
 
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