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■夏の日の想い出・RPL補間計画(6)

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XANFUSのライブは★★レコードのスタッフの手で録音されていたが、この私たちの歌唱もついでに録音され、★★レコードの資料室のデータに加えられた。その音自体は4ヶ月後に全国のファンが耳にすることになる。
 
帰りの飛行機で政子はとても昂揚した顔をしていて、とても饒舌であった。そして機内に持ち込んだリュックいっぱいのサーターアンダギーが羽田につくまでにきれいに無くなっていた。
 

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私はツイッターなどでは、沖縄行きの後マリのテンションが上がった理由として、難病の少女とのふれあいがあったからとだいたい書いているのだが、(公式見解)実はそれに加えてこのXANFUSのライブでのゲストステージを経験して多くの観客から生で応援される体験をしたことも大きかったのではないかと、私は考えている。
 
雨宮先生は、マリちゃんはステージを経験する度に心の時間が進むよと言っていたが、ほんとうにそうだと思う。政子はこの沖縄行きの後、夏頃は200年と言い、沖縄行き直前には10万年などと言っていたステージ復帰までの時間を100年と言うようになった。
 
そしてこの沖縄行きの後で私たちは受験勉強の合間を縫ってスタジオを借り、新しいアルバム制作のために歌唱を録音したのである。そのアルバムは『Rose + Lily After 1 year』として後に発売されることになる。
 
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11月下旬。私はKARIONの『愛の夢想』に関する打ち合わせに∴∴ミュージックに出て行ったが、先月公開した『雪の恋人たち/坂道』の「売れ行き」を尋ねられたので答えた。
 
「初動で40万行きました。現在70万DLを越えています」
 
「凄いな。ローズ+リリーは休養しながらスーパースターになりつつある」
と畠山さん。
 
「6月のアルバムが40万枚を越えたんでしょ? 当然そのくらい行くだろうね」
などと一緒に打ち合わせに出てきていた和泉も言う。
 
「ひょっとしたらミリオン行くんじゃない?」
「いや。行かないと思う。ミリオン行く曲には独特の波動があると思うんだよね。まだあの時期の作品では私もマリもそういう波動を作り切れてないんだよ」
 
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「ふーん。今は作れるようになった?」
「まだ。でもいづれそういう作品を書きたい」
「私との作品では?」
「それもいづれ書けるようになると思うよ」
 
「よし、マリちゃんと競争だ」
「ミリオンで競争するんじゃなくて、作品の質で競争してよ」
 
と私は笑いながら和泉に言った。
 

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「でもさ、小風や美空も言ってたし、ネットでも結構言われてるみたいなんだけどさ」と和泉は言う。
 
「何か?」
「『雪の恋人たち』にしても『坂道』にしても、マリちゃんの歌が『甘い蜜』
のCDよりうまいよね」
 
「それは当然だよ。『甘い蜜』や『涙の影』は土日に全国ツアーやってる最中放課後に限定された活動時間の中で2〜3回の練習でバタバタと録音したんだもん。あまりテイクも取ってない。それに対して『雪の恋人たち』や『坂道』
は2週間掛けて練習した上で2日掛けて収録したからね。スタジオも伴奏収録を含めて合計60時間くらい借りてるよ。借り賃でバイト代2ヶ月分逝った」
 
(実際はバイト代2ヶ月分つぎこんだのは雨宮先生との音源制作のほうで、マリとの音源制作では自分の勤めているスタジオなのでタダにしてもらっている)
 
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「そんなに時間掛けたんだ!」
 
「だってレコード会社に売り込むためのデモ音源だもん。無茶苦茶手間掛けてるよ」
「そうだったのか・・・・ね、その話、公開してもいい?」
「いいよ」
 
和泉は翌日『愛の夢想』の発売キャンペーンの一環でFMに出演して楽曲の紹介をするとともに受験勉強中のKARIONの3人の様子なども語ったのだが、この時、ローズ+リリーの話題にも触れてくれて、『先日偶然ケイちゃんと会った時に聞いた話』としてこのことを話してくれた。実はマリの歌の品質問題に関してはネットでけっこう「なぜだろう」という声があがっていたので、この和泉の情報はローズ+リリーのファンの間に大きな波紋をもたらした。
 

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その放送があった一週間後、私と和泉(森之和泉+水沢歌月)は町添さんから呼び出されて都内某所で会い、お昼を食べながら1時間ほど会談したのであるが、その会談が終わった後、私は和泉とふたりだけでお茶を飲みながら話をした。
 
「あ、こないだの放送ありがとう。結構反響があったみたい」
「うんうん。実はマリちゃんって、そんなに下手じゃなかったんだね〜という声がけっこう出ていたみたい」
と言ってから
 
「でもさ・・・私あの放送の後で急に気になりだして」
「ん?」
「あの音源、よく考えてみると私去年の8月にも聴いてたけど、本当にマリちゃんってあんなにうまかったっけ?と思ってさ」
「ふふふ」
と私は笑った。
 
「あーーーー!!」
と和泉が叫ぶ。
 
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「まあ、ここだけの話、あの音源を録ったのは本当は今年の8月だよ。受験勉強しながら数日間練習で歌った後で、スタジオを2日借りて収録した」
「えーー!? 私、放送で嘘を言ってしまった」
 
「楽器もスタジオミュージシャンさんを集めて演奏してもらったんじゃない。私が全ての楽器を演奏している。いくらプロとはいえ、楽曲の解釈をきちんとしてない人に演奏されたくなかったからね。実際『長い道』はそれが不満だった」
 
「冬って楽器何でも弾けるもんね!」
 
「ピアノ、ドラムス、ベース、ギター、の順に録音してここでピアノを録り直す」
「うんうん」
「その後、ヴァイオリン、胡弓、ウィンドシンセ、クラリネットを生で演奏した後、電子キーボードでトランペットとフルートの音を加えた」
「なるほど」
 
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「そうやって作った伴奏音源に、私とマリの歌を重ねた。私が伴奏音源を作っている最中もマリはスタジオ内でずっとあの歌の練習をしていて、それから更に半日一緒に練習してから歌を収録した。元々この1年でマリは物凄く上達しているから、その状態であれだけ練習すれば、それなりの歌になるよ」
 
「そうだったのか」
「最後にスターチャイム、トライアングル、マラカス、カウベルなどいくつかのパーカッションを重ねている。だって無料とはいえさ、ローズ+リリーの名前で出す音源だから、ちゃんとしたものを作らなきゃファンに悪いじゃん」
 
「ということは、あの音源は、本当に今年のローズ+リリーの音源なんだ!」
 
「世間には秘密にしておいて」
「まあいいか。冬と私の仲だし」
「じゃ私と和泉たちの仲に免じてこれも秘密にして」
 
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と言って私はロリータ・スプラウトのファーストアルバム『High Life』を3枚渡す。
 
「これ本来は配信限定アルバムだから、CDの形になったものはレア。CDの形で欲しいと言われたFM局とかにしか渡してないから100枚もプレスしてない」
 
「あ、これは私もFMで聴いてけっこういいなと思ったけど、冬何か関わってるの?」
 
「ロリータ・スプラウトというのは、ローズ+リリー・タイニー・スプラウトの略だよ」
「何〜!?」
 
「そのロリータ・スプラウトのサインも私とマリのふたりでしたもの。激レア品」
 
「冬とマリちゃんで歌ったの!?」
「そうだよ。声を変形するソフトで誤魔化してある」
「だって四人で歌ってるじゃん」
「ひとりでデュエットになるソフトで二重化してある」
「うっそー!?」
 
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と言ってから和泉は言った。
 
「ね、ね、その声変形するソフト使ってさ。次のKARIONのCDではボーカルに参加しない?」
「うふふ」
 
なお、和泉には沖縄での「謎の女子高生ふたり組」の歌唱の録音も聴かせた。
「マリちゃん、堂々と歌ってる!」
 
と言って、また新たな闘争心を起こしていたようであった。サーターアンダギーの歌詞が聞き取れないと言ったので、後日MIDI付きでメールしてあげた。でも文字を見ても意味が分からない!と言っていた。
 

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12月上旬。ローズ+リリーはこの年度で2つめの賞、YS大賞の優秀賞を頂いた。
 
昨年は『ふたりの愛ランド』でこの賞を頂いたのであるが、今年は『甘い蜜』
と『涙の影』がダブル受賞した。同じシングル内の曲がふたつ受賞というのはとても珍しい現象である。
 
「私たちこの1年、ほとんど活動休止してたのに、先日もBH賞に今回はYS大賞って。こんなに頂いていいんでしょうか?」
 
などと政子は言ったが、秋月さんは
 
「実際CDは売れ続けているんだから、いいんじゃない? 『甘い蜜』は今でも毎月5000枚くらい売れてるよ。5000枚って、ふつうそれだけでヒットとみなされる数字だよ」
などと答えた。
 
そうなのだ。『甘い蜜/涙の影』は大手のランキングでもこの1年間、ずっと50位以内をキープし続けており、ロングヒットの様相になっている。有線やカラオケでもずっと10位前後をキープし続けており、他の曲との兼ね合いで何度もベスト3に上がってきたりしている。
 
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実際の授賞式は秋月さんが代理で出席してくださったのだが、私たちは月曜日の放課後、学校が終わってから賞状を受け取りに★★レコードまで出かけて行った。(私も「借り物」の女子制服を着て、ふたりで制服を着て出て行った)
 
秋月さんから賞状を受け取り、記念写真も撮ってから、少し話していたら、松前社長が寄ってきて、
 
「ケイちゃん、マリちゃん、YS大賞優秀賞おめでとう。ちょっと話さない?」
 
などと言って、応接室に招き入れられた。町添さんも一緒に入る。
 

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「なんかここは調度が豪華だ」
と政子。
 
「こっちあまり入ったこと無かったっけ?」
「たいてい会議室のどれかに入ります」
「君たちは★★レコードのVIPアーティストだから、今度からはぜひこちら使って」
などと社長は言う。町添さんも頷いて微笑んでいる。
 
若い社員さんがケーキとコーヒーを持って来てくれた。政子は嬉しそうに「頂きまーす」と言ってケーキを食べている。
 
「ケイちゃんの姿見かける時はたいてい女子制服だよね。でも学校にはいまだに学生服で通ってるの?」
「そうなんですよ。でも誰も男子生徒なんて思ってないです。ケイはもう学校では男子トイレの入室を禁止されて女子トイレしか使ってないですから」
「学生服なのに?」
「そうなんですよ」
 
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私はポリポリと頭を掻いた。
 
「でも、もうセンター試験とかが目の前で大変でしょう」
「いえ。私たちは国立は受けずに私立だけなのでセンター試験は受けません」
「あ、そうなんだ。私立の試験日はいつ?」
 
「2月17日です。それにしても今は追い込みですね」
「ケイは安全圏っぽいけど、私はボーダーラインなので頑張ってます」
 
「夜間は携帯をつなぎっぱなしにして、歌いながら勉強してるんですよ」
「へー」
「眠気防止が半分と、やはり夜は寂しいから、お互いの存在を確認しあえていると、安心なのがあります」
 
「ふたりとも歌うの?」
「去年、ローズ+リリーで盛んに活動していた時期は私が歌っている時間が長かったですけど、最近はマリが歌ってる時間が長いです。時々デュエットになりますね」
「へー、マリちゃん好調じゃん」
 
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「問題集やりながら歌も歌うから、青い水平線〜♪人の世虚しき応仁の乱♪なんて感じで、歌詞の中に問題文が混じります」
 
「何だか楽しいね。それを生中継したいくらいだね」
と松前さんが本当に楽しそうに言う。
 
するとハッとしたような顔をして町添さんが言う。
「それ、本当に生中継しようか」
 
「え!?」
 

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2009年12月27日。私と政子は双方の父の承認を取って、AYAがパーソナリティを務めるFMの番組(全国ネット)にゲスト出演した。
 
「こんにちは〜、ローズ+リリーで〜す」
と私と政子は声を揃えて言う。
 
「こんにちは〜、お久しぶりって、まあ個人的には結構会ってるんですけどね」
とAYA。
 
「そうですね。某所とか某所とか某所ではよく会いますね」と私。
 
「ところでローズ+リリーは引退したんだなんて噂もありますが」
「まっさかぁ。ケイとマリが生きている限り、ローズ+リリーは活動していきます」
 
「でもライブやってないよね?」
「うふふ。それはひ・み・つ」
「やったの?もしかして。いつの間に? でも新譜出してないよね?」
「そうだなあ。作るのは例のベストアルバム以外に4枚作ったんだけどね〜」
 
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(The time reborn / After 1 year / 雪の恋人たち / ロリータスプラウト)
 
「なに〜? でもそれ発売してないでしょ?」
 
「うふふ。それはひ・み・つ」
「ね、ね、もしかしてローズ+リリーの《休養中》って実はフェイク?」
「オー、ノーノーノー。その問題はトップシークレット」
 
「私、結局今年は去年よりたくさん仕事してる気がする」
とマリまで言う。
 
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