広告:ここはグリーン・ウッド (第4巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・風の歌(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-05-03  
翌週の日曜日は吹奏楽部の大会であった。私は貴理子に随分と
「セーラー服着ちゃいなよ」
と唆されたのだが、自粛してワイシャツと学生ズボンで出て行った。但し下着はブラとショーツを着けて、下着の線が出ないように、その上に色の濃いシャツを着込んでいた。
 
それで集合場所の部室(学校の音楽練習室)に行ったのだが・・・・
 
事前練習を終えた所で貴理子が「ちょっと来い」と言う。
 
隣の音楽準備室に連れ込まれる。
 
「これ着てよ」
と言って(夏服の)セーラー服を渡される。
 
「これ去年卒業した先輩のなんだけどね。事情を話したら、そういう子にだったら、着てもらってもいいというから」
 
「なんで〜?」
「だってさ、さっきの事前練習での冬のクラリネット、全然音が出てなかったじゃん」
「えー。だって始めて1ヶ月半だもん」
「いや、昨日私とふたりで練習した時はもっと吹けてた」
「それは偶然で」
「昨日は女の子の服だったでしょ。冬はやはり女の子の服を着ないと調子が出ないんだよ」
「うーん。。。」
 
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「これ着た方が絶対うまく吹けるから。ほらあまり時間無いから」
と言われて、私は結局、そのセーラー服に着替えてしまった。
 
「さ、行こう」
と言われて部室の方に戻る。えーん、恥ずかしい、と思ったのに、誰も何も言わない。うむむ。私はできるだけ目立たないように俯いていた。
 

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会場に移動する。クラリネットやフルートなど、またホルンくらいの楽器までは各自で持ってバスで移動。ユーフォニウム・チューバ、コントラバスなどの大型楽器は、協力してくれる数名の先生の車で運ぶ。
 
現地で各自の楽器があることを確認し、会場の裏手の公園で1回だけ合わせた。その時やっと、2年生のクラリネット担当、知花さんから言われた。
 
「あ、唐本さん? もしかして」
「はい」
「気付かなかった。可愛い!ってか、さっきと演奏が見違えた」
「そうなんです。冬ちゃんは、女子の制服を着ないと、本来のパワーが出ないんです」
「へー。だったら、いつもの練習にも女子の制服で出てくればいいのに」
「ね?」
 
「それ、もう初心者のクラリネットじゃないよ。1年くらいやってる子の演奏だよ」
「私よりうまいんですよね、こういう服を着ると」
と貴理子。
 
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「セーラー服着ていいからさ、これからも時々でいいから練習出てこない?」
「あはは・・・・」
 

私たちの学校は全体の5番目に登場した。
 
最初課題曲の『吹奏楽のための風之舞』(福田洋介作曲)という曲を演奏する。木管と金管の掛け合いなどもある、ちょっと格好良い曲である。「風の楽団(wind band)」で「風之舞」という曲を演奏するということ自体が何だか面白い。
 
金管のパワフルな演奏に対して、木管の繊細な演奏が応じる。フルートなども格好良い見せ場があるが、クラリネットも懸命に演奏する。そもそもうちの学校の場合、木管セクションの人数が少ないので、あまり強弱を考えずに吹いても何とかなる感じであったので、その分初心者の私としては楽であった。
 
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5分ほどの演奏が終わる。私は貴理子や、知花さんと見つめ合って頷いた。けっこう満足いく演奏が出来た。
 
そして次は自由曲でT-SQUAREの『Omens of Love』である。これも格好良い曲で、知花さんがクラリネットをアルトサックスに持ち替えて演奏する。このアルトサックスが主役になる曲だが、知花さんがサックスを持つと、2年生のもうひとりのクラリネット奏者は必ずしも巧くないので全体的にクラリネットが不安定になる。そこで私と貴理子の責任も重大なのである。
 
しかし私も貴理子もこの曲のクラリネットパートを何とかノーミスで演奏することができた。練習では成功確率が必ずしも高くなかったので、演奏し終わった時、私と貴理子は思わずハグし合ったが、その時、背中に鋭い視線を感じた。あはは、きっと貴理子の彼氏の金本君だなと思った。ごめんなさーい。だって感動したんだもん!
 
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他にもうまい学校が多数あったので、私たちの学校は都大会進出はならなかったものの、20校中の6位と健闘した。過去の成績はだいたい14〜15位くらいだったらしい。
 
「今年は3年生が少なくて、2年生・1年生中心の編成だったのに、凄く頑張れたね。今回のメンバーの多くが来年まで残るだろうから、来年こそは念願の都大会進出目指して頑張ってください」
などと3年生の部長さんから言葉があった。
 
「冬ちゃん、来年も当然参加してよね」
と貴理子からも知花さんからも言われた。
 
「うーん。今年みたいな感じで、夏頃からだけの練習でも良ければ」
「うん、それでOK、OK」
「でも来年はずっとセーラー服で参加しよう」
「えっと・・・」
 
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「あ、学校のクラリネットはいつでも自由に使っていいからね」
「冬ちゃん用のは何か印を付けておくよ」
 
「冬ちゃん、可愛いから何かお花のシールでも貼っておこう」
「あ、薔薇の花のシールとかいいかも」
「ああ、冬ちゃんには薔薇が似合いそう」
 
ということで、私は吹奏楽部の部室、楽器倉庫には出入り自由、クラリネットも私が在学中は、これを専用で使ってね、というのを指定されることになった。
 
ちなみに私が使うクラリネットが薔薇、貴理子のは桜であった。知花さんのクラリネットは自前である。ヤマハの30万円ほどするクラリネットを使用していた。アルトサックスの方は学校の備品で、そちらにはカトレアのシールが貼ってあった。
 
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翌週の週末、名古屋の従姉、美耶の結婚式がある。この時期というのは、従姉兄たちの結婚式が何だか集中していた。
 
2000年が美耶の姉・恵麻の結婚式、2001年が聖見、2002年が俊郎、2004年が美耶で、2006年が鹿鳴、2008年が晃太、2009年が千鳥、といった感じである。しかしこれら、私の従姉兄たちの結婚式に、母たち五姉妹がちゃんと全員出席していたのは、やはり5人の団結力の強さなのであろう。5人の中で母だけは民謡を辞めてしまったのだが、それは団結力には何も影響していないようであった。
 
金曜日の夕方に名古屋に入り、その日は市内のホテルで泊まる。しかし父は例によって、男性親族の集まりに誘われ、市内の居酒屋でかなり飲んだようである。この、母たち五姉妹の各々の夫たちというのも、結構な団結力がある感じであった。父は「いや断りにくくて」などと言っていたが、かなり楽しんでいるようである。聖見・恵麻の夫や、俊郎・晃太などもこの飲み会には参加していたようである。
 
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「冬彦も18になったら飲み会に参加しろよ」
などと父は言っていたが
「お父さん、未成年で飲んだら逮捕されるよ」
と言っておく。
 
「18になったら俺が許可する」
などと父は言っていた。
 
「私たちはアルコール抜きで行こう」
などと言って、母たち姉妹4人(花嫁の母である風帆以外)と、女子の従姉一同、それに「あんたもついでに」と言われた私などは、市内のファミレスに行って、ケーキとコーヒーか紅茶という感じで、お茶会をした。男子でこちらに参加したのは、私と清香伯母の長男・薙彦の2人だけである。
 
最初その薙彦君(高1)と少し話をしていたのだが、
「冬彦君と話していると何だか女の子と話している気分になる」
などと言われる。
「ごめーん。ボク、だいたい女性的な性格だって言われる」
と言っておく。
 
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清香伯母の末娘である佳楽(かぐら・中2)と、里美伯母の次女・明奈(中3)が席をずらして私の隣にやってきて
「冬ちゃ〜ん」
と声を掛ける。私の隣にいた薙彦君を佳楽が「兄ちゃん、ちょっとのいて」と言って押しのけて座る。どうも何かたくらんでいる雰囲気だ。
 
「なあに? 明奈ちゃん、佳楽ちゃん」
「明日はさ、私たち3人で出し物しない?」
「女子中学生3人、じゃなかった、中学生3人だし」
と明奈。最初わざと「女子中学生」と言った雰囲気もあった。
 
「うーん。まあいいけど。でも何やるの?」
「GO!GO!7188やろうよ」
「なるほど。男の子1人と女の子2人のユニットだね」
「歌は3人で歌う。私がギター弾いて、明奈ちゃんがベース」
「じゃボクはドラムス?」
「それ考えたんだけど、ドラムス持ち込むのが大変だから、キーボードにしてもらおうかと」
「ああ、キーボードなら問題無いよ。ドラムスなんて打ったことないし」
 
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「それで曲は『浮舟』にしよう」
「それって、恋が終わる歌では?」
「ああ、歌詞ちょっと改造するから。なんか和風っぽくていいじゃん。あの曲。明日歌詞カード渡すね」
「確かに和風ロックって感じだよね。じゃ、よろしく」
 

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そういう訳で、翌日の午前中、美耶の結婚式が行われた。披露宴は午後1時からであるが、披露宴に出席しない私たち子供は適当に食べておいてと言われ、みんなで、結婚式が行われているホテルのレストランに行く。
 
「お勘定は親持ちだし、豪華なの食べよう」
などと言っている子もいるが、私はキシメンのミニセットを頼んだ。
 
「冬彦君、そんなんで足りるの?」
と薙彦君が驚いている。彼はハンバーグと味噌カツのコンボセット大盛りに更に名古屋コーチンの手羽先盛り合わせを単品で頼んでいる。
 
「ああ、冬ちゃんは昔から少食だよ」と明奈。
「でも陸上競技やってるって言ってなかった?運動やってたら食べそうなのに」
 
「うん。それで体重が軽すぎて向かい風に押し戻されてるから、頑張って食べろと言われてるんだけど、なかなか増えないんだよね〜」
「そりゃ、その程度しか食べないんじゃ、体重増えないだろ。今何kg?」
「38kg」
「38〜? 有り得ない」
「軽すぎるよね。私だって47kgあるのに」と明奈。
 
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「この春までは36kgだったんだよ。何とか2kg増やした」
「信じられん体重だ」
 
「ボク体重が付かない体質みたい。毎日晩御飯2杯食べてるのに」
「2杯って、それ自体少なすぎる。中学生男子は普通でも5〜6杯、スポーツやってるんなら7〜8杯、食べてもおかしくない」と薙彦。
「えー? そんなに食べるもの?」
 
「私でも3〜4杯食べるな」と佳楽も言う。
「2杯なんて、普通の女の子の食べ方だよ」
と佳楽たちの姉で大学生の歌衣まで言っている。
 

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さて、子供グループがレストランでの昼食を終えて会場近辺に戻ってきた頃に披露宴が始まった。白無垢姿の美耶が、紋付き袴姿の新郎と並び、来客者を会場に迎え込むところであった。私たちが手を振ると、美耶も振り返してくれた。
 
さて、うちの母の系統の従姉兄は私と姉、新婦の美耶も含めて15人であるが、その内既に学校を出ている7人が披露宴に出席し、大学生以下の7人が外でたむろしていた。
 
これは清香伯母の子供達の歌衣(大1)・薙彦(高1) 佳楽(中2)、里美伯母の子供達の純奈(高2)・明奈(中3)、そしてうちの姉(高3)と私(中1)である。
 
今回は7人とも出し物がある。姉は純奈と組んで『Can you celebrate』を歌うと言っていた。歌衣は三味線を弾いて『さんさ時雨』を歌うらしい。薙彦は新婦の弟・晃太と組んで『明日があるさ』を歌うと言っていた。
 
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そして佳楽・明奈・私の「中学生3人」はGO!GO!7188の『浮舟』を歌うと言われ食事の後で、「改造版」の歌詞カードをもらったのだが・・・・どうも何か仕掛けがあるような気がしてならなかった。明奈も佳楽も何だか楽しそうな顔をしている。
 
やがて披露宴は余興が始まったようである。姉と純奈、薙彦と晃太、そして歌衣と各々無難にこなしていく。そして私たちの順番になる。
 
私たち3人が入って行くと、司会の人は
「次は新婦の従妹、女子中学生3人組によるバンド演奏です」
と言った。
 
やはり「女子中学生」という話になってる!
 
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