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■夏の日の想い出・ふたりの結婚式(4)

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しかし私たちはこの後、真剣にこの問題について話し合った。その結果、麻央は人工授精で正望の子供を産むことにした。(麻央の卵子に採取した正望の精液を受精させて、麻央が産む)
 
その子供は翌年7月に生まれた。女の子で「もも」と名付ける。そして1年後、特別養子縁組が認められて、ももは私と正望の間の子供になった。
 
もうたくさん子供がいるから、これ以上要らないなどと言っていた正望もいざ自分の子供が生まれると嬉しそうだった。なにより、正望の母・美代さんが四六時中ももに付いていて、実家はほとんど空の状態になってしまう。
 
しかし美代さんがうちに居てくれると、食事を作る係が増えて、我が家はとても運用しやすくなったのである!
 
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「ももちゃんは、戸籍上どうなってるの?」とうちの母に訊かれた。
2027年末頃だったと思う。
 
「私と正望の戸籍で、実子として記載されてるよ。ももの父親欄は正望、母親欄は私」
「お前が産んだとして記載されてるの?」
 
「さすがにそんな嘘は書かない。『木原もも』の戸籍より入籍って書かれてるよ」
「ももちゃんだけの戸籍があったの?」
「いったんそれを経由して、実父母の名前が直接は見られないように配慮してあるんだよ。これって、元々子供を育てきれない人から子供が欲しい夫婦に里子にもらうためのシステムだから」
 
「へー。難しいことするんだね。でも、これであんたにも実子ができたんだ?」
「そうだね。でも私の遺伝子を受け継いでるのは、あやめとかえでだからね」
 
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「ちょっと待って。あやめがあんたの子供だってのは聞いてたけど、かえでもなの?」
「そうだよ。気付かなかった?」
「かえでは、大輔さんの子供かと思ってた」
「私もそう思ってたんだけどね。政子も産むまでどちらの子供か分からなかったというミステリアス・ガール」
「えー!?」
 

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2025年秋まで時間を戻そう。
 
この年、私と政子が相次いで結婚したことから、町添社長は「ローズ+リリー・ブライダル全国ツアー」なるものをぶち上げた。
 
札幌・仙台・金沢・名古屋・大阪・神戸・岡山・福岡・那覇・東京・横浜、と全国11箇所のツアーである。
 
マリ&ケイ・ファミリーの中で最も若い女子高生デュオ、売出中のピーチ&マロンをゲスト出演させるという「抱き合わせ商法」で、ローズ+リリーを若い世代にも知ってもらい、またピーチ&マロンを30〜40代にも知ってもらおうという町添さんらしい戦略であった。
 
さすがに私たちの全盛期ほどではないので、即日ソールドアウトとはいかなかったが(購買層は充分いるが、ファン層の情報に対する反応速度が落ちている)、一週間でチケットは売り切れになった。
 
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2018年の政子の最初の妊娠以来、ローズ+リリーはだいたい1年おきにライブを休業していたのだが、休業の前と後でツアーをしているので、だいたい毎年1回は全国ツアーをしていた。ローズ+リリーの音楽というのは、ロックバンドやアイドルなどとは違って、基本的にはコンサートホールで聴いてもらいたい音楽なので、3000人以下のキャパのホールツアーをしていた。
 
私たちが次々と子供を作り、その子育て奮戦記(琴絵・仁恵共著)へのアクセスが高く、それで私たちの歌にも子育て世代からの支持が篤かった。子育て奮戦記の方もしばしば書籍化され、既に Vol.8 まで出ている。最近はそちらを読んでからローズ+リリーの音楽を聴き始める人たちもいた。
 
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「昔、女子高生のローズ+リリーから、女子大生のローズ+リリー、ママさんのローズ+リリー、おばちゃんのローズ+リリー、おばあちゃんのローズ+リリーまでやろうよ、なんて言ってたけど、ほんとにそうなりつつあるね」
 
などと最近白髪が目立ってきた美智子なども言う。私と政子がわりとのんびり構えている分、裏方として走り回っている美智子はやはりそれなりの苦労をしているのだろう。まだ57歳だが、66〜67歳くらいに見えてしまう。
 
「まあ、冬はおじちゃんじゃなくて、おばちゃんになれて良かったね」と政子。「冬がおじちゃんになった姿って、想像できん」と美智子は顔をしかめて言う。「今一瞬想像して気持ち悪くなった」と政子。
私は笑っていた。
 
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「みっちゃん、白髪染めないの?」
「別に。そういうの取り繕っても仕方無い」
「でも冬のおばちゃんが凄いよね。今77歳だっけ?」と政子。
 
「そうそう。喜寿のお祝いしようかとか言ったら『7歳の誕生日ならする』なんて言ったから、ほんとにケーキに7本ロウソク立ててお祝いした。見た目まだ60前後に見えるもん。豪快だしね」
 
「でももう、あの人も民謡界の長老格になってきたね」
「うん。あちこちの大会にゲストで呼ばれて全国飛び回ってるしね。その飛び回るパワーが凄いけど」
「自分で運転して回るんでしょ?」
「そうなのよ。あの年で車中泊旅行だもん。どこに行くのにも。真っ赤なGT-R。軽快に走って颯爽と停まって、どんな美女が降りてくるかと思ったら振袖着たおばあちゃんが降りてくるから、度肝を抜かれる」
 
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「うーん。冬の家系は元気な人が多いのかねえ・・・。冬のお母さんがまた若いし、冬だってまだ充分24〜25歳で通る」
 
「でも77歳でも振袖着るんですね」と事務所に遊びに来ていた春奈が言うが「民謡の人はみんなステージでは振袖だからね。年齢関係無く」と私は説明する。
「大会なんかでは、結構孫のを借りてきた、なんて言ってる人たちもいる」
 
「ああ。スリファーズも3人ともおばあちゃんになるまで続くといいなあ。それで振袖着てキャンペーンするの」
などと春奈は言った。
 
「3人仲良しだし、続いていくんじゃない? 60歳で3人振袖着て歌えばいいよ」
「私ね・・・・60歳で3人ミニスカ穿いてステージに立つなんての提案したことあるんだけどね」と春奈。
「あ、いいんじゃない?」
「さすがに60歳でミニスカ穿く自信は無い、って彩夏に言われた」
 
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「春奈は新婚生活どう?」
「えへへ。猿です」
 
春奈はこの7月に結婚していた。媒酌人は★★レコードの町添社長夫妻が務めてくれた。
 
「うんうん。新婚さんは猿でいいんだよ」
「私、女の子になって、それで結婚できるとは思ってなかったから、もう本当に幸せ」
「いい人見つかって良かったじゃん」
 
「うん。やっぱりこれ、中学生時代にケイ先生や青葉先生に出会って、恋を諦めたらいけないって、励まされたおかげかも知れないな、と思う。だって、恋って突然できるものじゃないでしょ? 恋ができる心の態勢をずっとキープしていた人だけが恋できるんだよ」
 
「ああ、そうかも知れないね」
 
「さすがに青葉さんみたいに子供まで産む自信はないけどね」
「青葉は超人だから」
 
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全国ツアー、初日の札幌の舞台の幕が上がった。
 
割れるような拍手がいったん収まり、ローズ+リリーのホールライブでは恒例となったアコスティック楽器のアンサンブルで演奏が始まる。私のフルートとマリのヴァイオリンに、鷹野さんのヴィオラ、宮本さんのチェロが合わせてくれる。今年のオープニングは『夏の日の想い出』。今となってはこの曲自体がとっても想い出の曲となった。
 
演奏が終わると、大きな拍手。
 
「こんにちは。ローズ+リリーです」
と私と政子は声を合わせて言う。
 
「私たちの活動も17年になりました。私たちが歌い始めた時におぎゃぁと生まれた子がもう高校生なんて、すごいですね。私たちはダブル高校生という感じです」
「私たち何周年までやれるんだろうね?」
「私たちが生きてる限りは。20周年、30周年、40周年、50周年、・・・」
「50周年やる時は67歳か。ケイ、50周年では何を着る?」
「そうだね。ビキニの水着を着ようか?」
 
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それで会場がどっと沸いたが、マリはまじな顔で
「じゃ、みなさん今のケイの発言覚えててね。50周年のライブではきっちりビキニの水着をケイには着てもらいますから」
 
と言うので、また会場が沸く。
「50周年でマリは何着るの?」
「そうだなあ。セーラー服でも着ようかな」
 
また会場が沸く。
 
「よし、マリにはきっちりセーラー服を着てもらおう」
「それ見てお客さんがみんな逃げてったりして」と政子。
「あ、会場のお客さんにもみんなセーラー服着てもらえばいいんだよ」
「ああ。いいね。でも男の子もセーラー服なの?」
「そうそう。着てもらう」
「それで癖になって、女装にはまるお客さん出たらケイ責任取ってよ」
「その時は、性転換手術してくれる病院を紹介してあげるよ」
 
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少々長めのオープニングのMCが終わると、前半のライブはアコスティック楽器の伴奏で進められていく。最初はお酒のCMで定番化して知名度の高い『花模様』
からである。伴奏はスターキッズだが、この時期スターキッズはメンバーが7人に増えていた。
 
七星さんのフルート、鷹野さんのヴァイオリン、香月さんのヴィオラ、宮本さんのチェロ、酒向さんのコントラバス、それに近藤さんのクラシックギターと、月丘さんのハープシコードが加わる。
 
これまでローズ+リリーでリリースした曲はシングルだけで60枚以上に及び、だいたい年1回くらいのペースでリリースしてきたアルバムが20枚ほど。発表した楽曲は400曲ほどにもなる。その中でも古い曲から新しい曲まで取り混ぜて私たちは歌っていった。前半の「アコスティック・ナイト」で歌うのはその中でも比較的、静かな曲・メロディアスな曲が多い。
 
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やがて前半の演奏が終了し、私たちはゲストの《ピーチ&マロン》を紹介し、彼女たちにステージを譲って、いったん下がった。
 
ピーチ&マロンは高校2年生。16歳と17歳のデュオである。ちょうど私たちがデビューした時と同じ年齢の組合せで、今回の「ダブル高校生」の年齢でのツアーにはとてもふさわしいゲストとなった。
 
若さあふれるふたりの歌い方に、つかの間の休憩をしながら舞台袖で着替えている私たちは、ふたりから活力をもらうような思いがした。彼女たちのヒット曲を3曲歌ったあと、ふたりが『A Young Maiden』を歌い出した。これを歌うという話は私たちは聞いていなかったので、びっくりしたが、ワンコーラス歌ったところで、ふたりがこちらを手招きする。それで私たちは微笑んで出ていき、彼女たちと一緒に2コーラス目を歌った。
 
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歌い終わったところで拍手。
 
「素敵な歌でしたね。やはり、この曲って16歳、17歳の子が歌った方がいいですね」と政子。
「うん、これからはこの歌はピーチ&マロンに歌ってもらいましょう」
と私も笑顔で言った。
 
その後、ピーチ&マロンはこの曲をいつもライブで歌うようになり、私たちのライブでは敢えて封印することにした。
 

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ピーチ&マロンが下がったところで、スターキッズが今度は電気楽器を持って入ってきてライブの後半『リズミック・デイタイム』が始まる。
 
近藤さんと宮本さんのエレキギター、鷹野さんのエレキベース、月丘さんの電子キーボード、酒向さんの電子ドラムス、宝珠さんのウィンドシンセ、香月さんの電子トランペット。電気が無ければ音が出ない楽器ばかりだ!
 
前半はドレスを着て歌っていた私たちも年齢は忘れて膝上のスカートで踊りながら歌う。前半はPAを使わず、生の楽器の音と生の声で演奏したが、後半は歌も楽器もPAを通して会場に流す。
 
このアコスティックとエレクトリックの落差を楽しむのもローズ+リリーのライブの売りになっていた。そしてこういうスタイルのライブを実現するのには、スターキッズというバンドが不可欠のものとなっていたのである。
 
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最初今年出して話題になった曲『結婚奇想曲』(本当は『結婚狂想曲』だったのだが、レコード会社からのお達しで『奇想曲』にタイトル変更した)を歌うと、歓声や手拍子に混じって多数の「結婚おめでとう!」という声が掛かり、私たちは間奏のところで「ありがとう!」と応えた。
 
『影たちの夜』『Angel R-Ondo』『Spell on You』などちょっと懐かしいリズミカルなナンバーを歌うと、会場は大いに盛り上がる。今年春に出したネットドラマの主題曲『高校生マーチ』を歌うと、いつの間にかピーチ&マロンが入ってきてコーラスを入れてくれた。私たちはこの曲の2番は彼女たちに任せた。
 
更にリズミカルな曲の演奏が続き、最後は大ヒット曲『お嫁さんにしてね』
を歌うと、またまた「結婚おめでとう」の声がたくさん掛かり、大きな祝福の中で幕は下りた。
 
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そしてアンコール。鳴り止まない拍手の中、私たちはまだ息が荒いままステージに出て行く。
 
「アンコールありがとうございます。何度やっても、アンコールしてもらえるのって、ほんとに嬉しいです。では、あと少しだけ私たちにお付き合い下さい。それでは『神様お願い』」
 
わあーという歓声と大きく拍手が来る。私はベーゼンドルファーのコンサートグランドピアノの前に座り前奏を弾き始める。ずっと17年間そうであったように政子は私の左に立って、一緒に歌い始める。
 
満員3000人の観客が静かにこの曲を聴いている。東日本大震災から14年がすぎたが、あの大きな傷跡は、みんなの心から消すことなどできない。涙を流して聴いている人たちが大勢いる。
 
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歌い終わると大きな拍手。
 
それが静まるのを待って私たちは最後の曲『天使の歌声』をピアノ伴奏と共に歌い始めた。とてもハッピーな曲調に観客の顔がほころび、たくさんの手拍子をもらう。
 
そして歌い終わるのと同時に大きな拍手。
 
私たちは何度も何度も歓声と拍手に応え、そして退場した。
 
スターキッズのメンバー、ピーチ&マロンが袖で拍手で迎えてくれる。七星さんが私たちをハグしてくれる。みんなと握手して、私たちは一緒に会場を後にした。
 
私たちは歌っていく。多分ほんとに30周年、40周年まで歌っているだろう。でも50周年を迎えられるかどうかは、ちょっと自信無いけど。私はそんなことを思いながら、政子にキスをした。
 
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