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■夏の日の想い出・ふたりの結婚式(2)
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目次 8
時間索引 #
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政子と松山君がとても仲良くしているので、私がちょっと寂しい思いをしているふうなのを見て、正望は「ね、僕たちもそろそろ結婚しない?」と言った。
「そうだね。結婚しちゃおうか!」
ということで、私と正望はやっと結婚するに至ったのであった。
私が正望と結婚する一週間前(2025年)。私と政子は仕事で金沢に来ていた。駅前のホテルのスイートルームに泊まり、私たちは久しぶりの睦みごとをする。
「ああ、やっぱり冬とするHも快感だなあ」
などと政子は言った。
「ふふふ。マーサがずっと貴昭君としてるから、私も最近かなり正望としてるよ」
「うん、良いことじゃ、良いことじゃ。でも私ともセックスしてよね」
「もちろん」
と言って、私たちはお互いの身体をむさぼり合う。
「でも金沢のホテルって何か特別な思いがするね」
「私たちが結ばれた場所だしね」
「うんうん」
「高校時代のこととか懐かしいね」
「でも、あの頃のことはよく覚えてるよ」
「女の子の服を着た冬は、あの頃、ほんとに可愛かったなあ」
「今では、おばちゃんになっちゃったけどね」
「おじちゃんにならなくて良かったね」
「ところでさ。かえでのこと、私言っとかなくちゃと思ってさ」
と政子は切り出した。
「ん?」
「百道とは4年前の10月に一度別れたんだよ」
「あれ?そうだっけ?」
「それで別れてから、私もそろそろ3人目の子供産もうかなと思って」
「うん」
「冷凍保存していた精液を解凍することにしたんだ」
「・・・・誰の精液?」
「もちろん、冬のだよ」
「何〜〜〜〜〜!?」
「去勢直前の冬の精液を採取した時、念のため2つに分けて精液は冷凍したんだよ。あれだけが冬の遺伝子を持つ子供を産む手段だけど、体外受精って一発で成功するとは限らないでしょ。だから失敗した時に再挑戦できるように、2つに分けておいた。でも、あやめは一発で妊娠したんだ」
「じゃ、1個残ってたのか!」
「うん。でも採取したのが2010年だからね。10年ももつものだろうかと少し心配した」
「じゃ、かえでは、私の精液で妊娠したの? もしかして」
「それが実は私自身も分からなかったのよ」
「は?」
「今回はあやめの時みたいに体外受精じゃなくてふつうの人工授精にしたんだよね。やはり最近の生殖医療の技術が上がってるから、わざわざ卵子を取り出してやらなくても、たぶん大丈夫ですよと言われたし。まあ2人目だから失敗した時は失敗したというので諦められるし」
「うん」
「排卵が今にも起きそうなのをエコーで確認してもらって、そこに残ってた精液を解凍して子宮に注入して。ふふふ。これで冬の子供をまた産める、と思ったんだけど、その日の夜、ちょうど大輔がきてさ」
「え?」
「凄く熱く口説かれちゃって・・・・・」
「彼としたの?」
「そうなのよ!」
「じゃ、どちらの子供か分からなくなったんだ!」
「うん。人工授精した後、8時間くらいした時に、大輔とセックスした。妊娠が確認できた時、どちらの子供というのもありえると思った」
「ああ」
「でも妊娠中に検査するのは好きじゃないから、かえでが生まれてからDNA検査したよ」
「うん」
「結果は、冬の子供だということが判明した」
「あはは・・・」
「自分の子供で良かった?」
「うん。ちょっと嬉しい」
「だから、あやめとかえでは、時間差双子みたいなものだよ」と政子。
「そうなるか」
「4つ違いだけどね。だから、大輔のことは気にせず、ちゃんと冬の養子にしてあげてと言ったの」
「そうだったのか」
私と正望は結婚はしたものの、お互いの生活は特に変わらなかった。私はずっと政子の家に住み続けて、7人の子供の世話をしながら仕事をしていたし、正望も仕事が忙しくて、なかなか自宅に戻って来れなかったが、戻る時は政子の家に「ただいま」と言って帰って来て、翌朝「行ってきます」と行って出て行った。
政子の家は、住む人数があまりにも増えすぎたので、昨年改築して3階建てで、部屋数が10個+LDKという広い家に生まれ変わっていた。(この時、離れは解体した)1階に2部屋、2階と3階に4部屋ずつである。
(建て替えの間、近所の空き家を借りて一時期そこで暮らしたのだが、改築終了後、その仮住まいしていた所に貴昭が引っ越してきたので、政子の家と貴昭の家は「味噌汁の冷めない距離」になった)
新しい政子の家では、2階のいちばん奥の部屋が、私と正望のスイートルーム、3階のいちばん奥の部屋が政子と貴昭のスイートルーム、そして1階の2つの部屋は、政子の両親の部屋と私と政子の「仕事部屋」ということにしていた。実際その部屋は防音加工して、エレクトーンを置いていたし、他にもいくつか楽器を置いていた。
子供達は、2階の3部屋をあやめの部屋、夏絵の部屋、紗緒里と安貴穂の部屋とし、3階の1部屋を大輝の部屋にしていた。実際には子供達はお互いの部屋に出入りして遊んでいた。かえではまだ小さいので、ふだんはLDKに居て、寝る時は3階の奥の部屋で政子と一緒に寝るか、2階の奥の部屋で私と一緒に寝るかである。なお、夜間は貴昭はふつう紗緒里・安貴穂を連れて自宅に戻っている。紗緒里・安貴穂の部屋は基本的には昼間の滞在用だが、ここに泊まってしまうこともよくあった。
そして・・・・1階の「仕事部屋」は事実上、私と政子のスイートルームでもあった。実際、私と政子はここで一緒に寝るか仕事場にしているマンションの方で一緒に寝るかで、かえでもこの時期はここで私たちふたりと一緒に寝ていることがいちばん多かった。
3つのスイートルームは、お互いの不可侵領域として私たちはテリトリーを守っていた。また正望と貴昭は、しばしばLDKで、政子の父とお酒を飲んでいた。
「1階のお部屋はママとお母ちゃんの部屋、2階のお部屋はママとパパの部屋、3階のお部屋はお母ちゃんとお父ちゃんの部屋でしょ? パパとお父ちゃんが一緒に寝られる部屋もあればいいね?」
などとあやめは言っていたが、
「いや、パパとお父ちゃんは一緒に寝ないから」
と言うと、不思議そうにしていた。
「でも、ママとお母ちゃんは結婚してるでしょ?ママとパパが結婚したから、次はお母ちゃんとお父ちゃんが結婚する番だよね」
というあやめのことばに、政子は「そうだなあ。結婚してもいいかなあ」
などと言った。
そして、その年の秋、今度は政子と貴昭が結婚式を挙げることになった。
★★レコードの町添社長も「ふたりは息があってるね。ケイちゃんが結婚したからマリちゃんも結婚するんだ!」などと言いながらも、祝福してくれた。
結婚式の1ヶ月くらい前「クロスロード」のメンバーがマンションに集まってきて、私の結婚と、政子の結婚をまとめて祝福してくれた。みんな忙しいので、なかなか集まれないものの、私たちは年に1度は集まって、交流を楽しんでいた。
今回集まってきたのは、桃香・千里夫婦(+早月・由美)、青葉・彪志夫婦(+しおん)、呉羽、和実・淳夫婦(+明香里)、若葉、あきら・小夜子夫婦、春奈、唯香、泰世、それに私と政子、奈緒、正望と貴昭といったメンツである。あきら・小夜子夫婦の子供はもう中学生なので連れてきていない。
あやめと夏絵が付いていくと言ったので連れて来たのだが、あやめが
「すごーい!」
と叫んだ。
「どうしたの?」と青葉が訊くと
「だって、元男の人だった女の人がたくさん!」
と言う。
「へー。誰が、元男の人だったか分かる?」と尋ねると
「この人でしょ、この人でしょ、この人でしょ」
と言って、あやめは全員きれいに指摘した。
「すごいね。リードの達人!」と桃香が感心している。
「私だって、元々知ってなきゃ、分からないよ、このメンツは」
と和実は笑っている。
「いや、医者の目で見ても、このメンツは凄すぎる」と奈緒。
「冬もそうだけど、青葉ちゃん、和実ちゃんは骨格が女だよね」」
「私と和実と春奈の3人は二次性徴が始まる前に女性化を始めてるから、男だった痕跡も残ってないはずなのに、それが分かるってのは、あやめちゃんは今ここにいる私たちを見てるんじゃなくて、私たちの過去の影まで見てるんだろうね。霊感が凄いね」と青葉は言う。
「でもどうやって女の人になったの?」とあやめは不思議そうに訊く。
「お医者さんに手術してもらって、おちんちん取って割れ目ちゃん作って女の子の形にしてもらったんだよ」と私は簡単に説明する。
「へー。奈緒ママでも手術できる?」
「私はやったことないけど、うちの病院でも男の人を女の人にする手術はしてるよ」
と奈緒。
奈緒・礼美・仁恵たち、あやめたちのお世話に来てくれる友人たちは《奈緒ママ、礼美ママ、仁恵ママ》などのように、あやめたちからは呼ばれている。
「ふーん。大輝でも奈緒ママの病院に連れて行けば女の子にしてもらえる?」
「手術すればなれるだろうけど、別に大輝は女の子にはなりたくないと思うよ」
と私は言う。
「そう? 大輝、スカート穿かせると可愛いのに」とあやめ。
姉がいる弟というのは、どうも女装させられる宿命にあるようだ。
「でも最初に集まった時は、あやめちゃんのママだけだったよ。手術が済んでたのは。でも今はもうみんな手術終わっちゃったね」と和実。
「へー。でもおちんちん取るの嫌じゃなかった? 大輝はおちんちん取っちゃおうか? って言うと嫌だって言うけど」
「そうだね。大輝はおちんちん持っておきたいんじゃない?でもここにいるみんなは生まれた時から女の子になりたいと思ってたし、おちんちんは要らないと思ってたからね」
「ママも?」
とあやめが私に訊くので、私は微笑んで
「そうだよ。あやめくらいの年には、もう女の子になりたいって思ってたよ」
と答えた。
「パパも女の人になりたい?」とあやめは突然正望に尋ねる。
「別になりたくないよ」と言って正望は笑っている。
「でもスカート穿いてることあるよね?」
「あれはママの悪戯だよ」
「へー」
「でも、ママ、おちんちん取る時痛くなかった?」
「凄く痛かったよ。でも女の子になりたかったから我慢したよ」
「へー。大変なんだね。私、最初からおちんちん付いてなくて良かった」
「ねぇ、あやめちゃん」と青葉が話しかける。
「あやめちゃん、お化けとか見えるでしょ?」
「うん。でもママが『あっち行け』って言うと、行っちゃうよ」とあやめ。
「あやめちゃん、まだ『閉じ方』分からないよね」
「閉じ方??」
「冬さん、ちょっとあやめちゃん借りていい? そろそろこの子に教えておいた方が良さそうなことがある」
「うん。奥の寝室使って。あそこ結界がしっかりしてるから」
「うん。あやめちゃん、ちょっとお姉ちゃんと遊ぼ」
と言って、青葉はあやめを奥の部屋に連れて行った。
夏絵はちょっと不思議そうに
「あやめって、学校でもよく何もないところ見て『変なのが居る』とか騒いでるのよね。気のせいだと思うのに」
と言う。
あやめは早生まれなので、夏絵と同じ小学1年生である。
「そうだね、きっと気のせいだよ」と和実が優しく言った。
「そういう時は夏絵ちゃんが、あやめちゃんを元気付けてあげればいいよ」
「うん」
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