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■夏の日の想い出・3年生の秋(8)

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その後、ローズ+リリーはシングルでは『天使に逢えたら』が130万枚行ったのをはじめ、4枚のシングルで合計300万枚、3つのアルバムが合計270万枚のセールスをあげた。ただローズ+リリーの場合、ライブ収入の類いがほとんど無い。
 
一方のローズクォーツは「Rose Quarts Plays」シリーズはだいたい毎回1万枚前後、シングルが3枚合計で35万枚でローズ+リリーより1桁小さい状態。しかしローズクォーツは全国ツアーをやった他、ライブハウスにもよく出演しているので、そのライブ収入が結構大きい。
 
ローズクォーツのCDセールスが悪い訳ではないし、安定して10万枚前後売るアーティストはレコード会社からはVIP扱いなのだが、やはり美智子としては悩んでしまう所であった。そして彼女自身かなり期待していた1年ぶりのオリジナルアルバムが悲惨な初動でショックを受けていたのである。
 
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「私、基本的にはローズクォーツの方針にはあまり口を出さないことにはしてるんだけど、ローズクォーツって、やはりロックバンドだと思いません?」
と私は言った。
 
「うん・・・・」
「みんな器用で、ポップスでも演歌でも民謡でもやっちゃえるから、ついついいろんなことさせたくなるけど、いろんなことするのは Rose Quarts Plays の方でやればいいし、オリジナルアルバムやシングルは、本来の彼らが得意なものに集中させた方が、いいものに仕上がる気がする。もっともロックはCDだけで稼ぐものじゃないだろうけどね。ライブあってのロック。ロックって、観衆と一体になることで完成する音楽だもん。スタジオで『イェィ!!』とかシャウトしても虚しいし」
 
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「そうだよなあ」
 
「ごめんね。ローズクォーツの方は任せると言ってたのに」
「いや。私も再度ちょっと考えてみるわ」と美智子は顔をしかめるようにして言った。
 
「案外、月羽さん(サト)や太田さん(ヤス)の方が冷静に見てるかも。彼らとも話し合ってみたら? 星居さん(タカ)は柔軟すぎて、何でも受け入れちゃう所あるから。その点、私も似たような性格だけどね。ローズ+リリーのポリシーがぶれないのは、政子がしっかりしてるからだよ。出来上がった曲を聴いて、これはスリファーズ用とかこれはノエルちゃん向きとかって、さっと決めちゃうもん。結果的にローズ+リリーに合った曲だけが手元に残る」
 
「さすが、政子ちゃん、ローズ+リリーのリーダーだね!」
 
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スリファーズのツアーでは、春奈はツアー後半になるほど元気になっていった感じであった。本来の回復速度以上に体力・気力が戻って来ている感じである。
 
「なんかお客さんからエネルギーをもらえる感じなんですよねー」
と春奈は言っていた。
「ああ。私も手術後1ヶ月でライブやって、ステージに立ってお客さんから歓声が来た瞬間、元気になったもん」
と私が言うと
「手術後1ヶ月で歌えるのはケイ先生だけです」
と春奈は言った。
 
「でも、青葉なんて性転換手術して11日後に合唱大会のソロを歌ったよ」
「青葉先生は超人ですから例外です」
 

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23日(祝)の沖縄公演には、その青葉を連れて行った。ローズ+リリーのファンで難病と闘っている女性、麻美さんのヒーリングができないか、青葉に見せるためである。22日学校が終わってから羽田行きの飛行機に乗ってもらい、羽田で私と政子と合流し、一緒に那覇まで行って(那覇着22:20)、その日は市内のホテルに泊まる。政子のリクエストで全日空ホテルに泊まったが、青葉は
 
「こんな凄いホテルに泊まるの初めて!」
と言って、かえって落ち着かない風だった。
 
翌朝、青葉が知り合いの沖縄在住のユタ・Tさんを呼び出し、一緒にお見舞いに行った。麻美さんの顔色は良くて、最近は毎日リハビリで歩いたり、手を使う作業として編み物をしたり、声をしっかり出せるように歌を歌ったりしているということだった。
 
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青葉は難しい顔をして麻美さんの身体に手かざししてスキャンした。
「うーん」と言って、Tさんと顔を見合わせている。
 
『難しいの?』と私は心の中で青葉に尋ねた。たぶん青葉ならこれを読み取ってくれる。
 
「これはあれですよね?」と青葉はTさんに尋ねる。
「私もそう思います」とTさんは言った。
 
「どうですか?」と麻美さんの友人、陽奈さんが心配そうに訊く。
 
「これはヒーラーの仕事ではないです」と青葉は言った。
「これはお医者さんの仕事ですね」とTさんも言った。
 
「ヒーリングしたり祈祷したりすることはできますが、麻美さんの精神状態も気の流れも、とても良くて、どちらかというと、その良好な心と気の状態がこの難しい病気を快方に向けています。ですから、私たちがヒーリングなどをするより、お医者さんの治療をしっかり受けて、リハビリに励む方が、早く快復しますよ」
と青葉は笑顔で言った。
 
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「もしかしてローズ+リリーの音楽が既に麻美をヒーリング済みだったりして?」
と陽奈さん。
「ああ、そうかもです」と青葉は言った。
 
それでもせっかく来たからということで、Tさんが祈祷をし、その後青葉が全身のヒーリングをした。祈祷の間、麻美さんは「なんか健やかな気分」と言っていたし、青葉のヒーリングを受ける間は「身体の免疫細胞が活性化していくみたいな感じ」などと言っていた。
 
青葉は「サービスで異常細胞を少し殺しておきました」などとサラリと言った。
 
Tさんは「もし何かあったらすぐ駆けつけますから」と言って名刺を渡した。
「私が端末になって、川上さんのヒーリングを施すこともできますよね?」
「ええ。Tさんは物凄く優秀な端末みたいです」
と青葉は笑顔で言った。
 
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「私・・・その内退院できます?」と麻美さんが訊くと
青葉は「あと1年10ヶ月」、Tさんは「あと23ヶ月」と同時に言った。
 
実際に麻美が退院したのは1年9ヶ月後の2014年8月末であった。高校1年の時にこの病気に倒れて、病状が急速に悪化して入院したのが2007年11月だったので、6年9ヶ月にわたる入院生活となった。麻美は2010年3月には通っていた高校から一応卒業証書を特例でもらっていたのだが、入院中からしっかり高校の勉強、受験勉強をして退院後地元の国立大学の医学部保健学科に入った。
 
最初、看護師を志望していたのだが、入ってすぐに発達障害児や自閉症の子供の訓練に関心を持ち、作業療法士の資格を取るため、鹿児島の国立大学の保健学科に途中から編入。在学中に大学での勉強訓練以外にもTEACCH,PECS,ポーテージ,その他の訓練システムのワークショップに積極的に参加。卒業後、沖縄に戻ってその関係のトレーナーとして仕事を始めた。彼女が大学を卒業したのは私と政子の間の娘・あやめが生まれて1ヶ月後である。
 
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そして2012年秋のスリファーズのライブは11月25日、横浜フューチャーホールで打ち上げとなる。このツアーを通して、ずっと彩夏がMCをしていたのだが、この日は彩夏は前半までMCをしたところで
 
「実は今回のツアーでずっと私がしゃべり続けたのは、春奈が体調万全じゃなかったからなんです」
と発言した。
 
実は「春奈ちゃん、体調悪いのでは?」という問い合わせがかなり来ていたのである。ジャンケンで決めたとは言っていたものの、今までのライブではいつも春奈がMCをしていたので、何かあったのではと思った人も多かったようである。
 
そこでスリファーズの3人と春奈の母と姉、△△社の津田社長・甲斐さん、★★レコードの加藤課長・氷川さんに、私まで加わり会議をして、性転換したことを公表することを決めた。
 
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彩夏の発言に会場がどよめく。
「春奈ちゃーん、大丈夫?」という声が多数掛かる。
 
春奈が発言する。
「みんな、ごめんねー。確かに体調万全じゃなかったけど、みんなから元気をたくさんもらったから、だいぶ元気になってきたよ」
 
「じゃ、今日はこのあと春奈がMCをしてよ」と彩夏。
「いいよ。最終日だし頑張る」と春奈。
 
「ここで衝撃の発言があります」と千秋が言う。
 
「えへへ。実は春奈は、8月に性転換手術を受けて、本当の女の子になりました」
 
と春奈が発言すると、会場は「えー!?」とか「きゃー!」とかいう声が湧き起こるが、そのうちひとりの観客が「おめでとう!」と言うと、会場全体が「おめでとう!」コールに変わった。
 
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「ありがとう。みんな! それでまだまだ手術の跡の痛みとかで、体調が充分じゃなかったんだけど、ほんとにこの1ヶ月間のツアーで、みんなの応援で、春奈はすごく元気になりました。みんなのおかげです」
 
「頑張ってね!」「身体大事にしてね」などの声が掛かる。
 
「このツアーにマリ先生・ケイ先生がずっと付いてきてくださったのも、私の体調を気遣ってなんです。マリ先生・ケイ先生、ありがとう」
と言ってステージの袖を見るので、私と政子は一緒に出て行った。
 
私は会場に向かって挨拶した上で発言した。
 
「私も去年の春に同じ手術を受けたので、宿とかで、春奈ちゃんの傷の具合とかチェックさせてもらってたけど、ファンの人の応援で元気になった分かな。傷の状態がどんどん良くなってますよ。ふつうの人ならもう1年近くたった状態になってると思う」
 
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「わあ・・・」などというどよめき。
 

春奈が突然思いついたように言った。
 
「ねえ。ケイ先生、私が女の子になったお祝いに何か曲を下さい。ツアー完走記念も兼ねて」
 
「いいよ。じゃ、今作っちゃおうか。マリ、行ける?」
「ああ。何だか行ける気がする」
 
私はバックバンドのキーボードの人の所に行き、楽器を借りた。
政子が私の左に立つ。
 
「マリ、タイトルは何にする?」
「じゃ、『女になった日』」
「まんまじゃん!」
 
「じゃ私が即興で1回演奏してみるから、2回目はマリがそのメロディーに乗せて、詩を作りながら歌ってくれる?」
「いいよ」
 
私は2000人の観衆から押し寄せるエネルギーのようなものを受け止めながら、キーボードを弾いていった。時々止まったり探り弾きをしながら、Aメロ、Aメロ、Bメロ、サビ、と演奏し、更に A A B サビと繰り返してから、間奏をはさみ、Cメロ、Bメロ、サビ、と演奏して、更にサビを2回演奏して終えた。
 
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「行ける?」
「今の演奏聴きながら詩は考えてた」
「よし。行こう。彩夏ちゃん、マリが歌う詩を書き留めてくれない?」
「はい」
 
バンドリーダーの人が余っている五線紙とペンを彩夏に渡してくれた。
 
それを見て、私は再度今作ったばかりの曲を演奏する。政子はその演奏に乗せて歌を歌っていった。「女になった」というのを「初めて恋をした」という意味に解釈している。たぶん、私にそういうタイトルを言った時、そういうことを思いついていたのだろう。
 
演奏とマリの歌唱が終わると客席から拍手。
 
「じゃ、スリファーズ、今そこで書き留めた詩を見ながら歌ってね」
「はい」という元気な声。
 
再度私のキーボード演奏に合わせて、今度はスリファーズの3人が歌った。観客も手拍子を打っている。政子も楽しそうに手拍子を入れていた。
 
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大きな拍手と歓声で歌が終わった。私と政子はキーボードを貸してくれたバンドの人にお礼を言って、袖に下がった。
 
この時、即興で作った曲は、翌日スタジオで再録し、年末に緊急発売されて、80万枚のビッグセールスを上げた。また11月頭に発売していたCDも急激に売上が伸びて、そちらも1月末までに累計80万枚に達した。
 

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11月末。私たちが作ったのとは別の「ローズ+リリー・トランプ」が世に出た。少女漫画雑誌の付録に付けられたもので、切り離して使うタイプである。私たちの似顔絵を専属の漫画家さんが描いて作られている。こちらはハートとクラブがマリで、ダイヤとスペードがケイになっている。ハートは百合の花が散りばめられていて、ダイヤはバラの花、クラブはカエデ、スペードはアヤメになっていた。
 
そして月明けに出たその雑誌のライバル誌は「スリファーズ・トランプ」を付けていた。そちらはダイヤが彩夏、クラブが千秋、スペードが春奈で、ハートは王が春奈、女王が彩夏、ジャックが千秋になっていた。
 
2冊の雑誌を買ってきた政子がカードを切り離しながら楽しそうに言う。
 
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「日本中に女装男子をはびこらせようという魂胆みたいね」
「春奈ちゃんへのファンレターって元々男子と女子から半々だったらしいけど、性転換を発表してから、女子からのファンレターが急増したらしい」
「ユリスキーか?」
 
「でも男の子のファンからも女の子のファンからも恋人になりたいって書かれてるって」
 
「私、日本の将来が少しだけ不安になった」と政子は言った。
 
 
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■夏の日の想い出・3年生の秋(8)

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