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■夏の日の想い出・3年生の秋(5)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-09-07
 
姉が初めて彼氏小山内和義さんを紹介してくれた時、私は「えー!?」と叫んだ。
 
「冬ちゃん、久しぶり」と彼は笑顔で言った。
 
それは小学生の時の親友、麻央のお兄さんだったのである。
 
「私たち、中学の時同級生だったんだよね。でも私が東京に引っ越したから離れ離れになっていて、連絡も取ってなかったんだけど、仕事の関係で偶然遭遇して、それから急速に仲が進行しちゃったのよ」
と姉は言った。
 
「でも、僕は冬ちゃんのこと女の子と思い込んでいたよ。僕が結婚申し込んだ時に、萌依ちゃんから、うちの弟に変なのがいるんだけどいい? と言われて、『え?萌依ちゃんに弟なんて、いたっけ?』と思っちゃった」
「あはは」
 
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「でももう性転換手術もして本当の女の子になって、戸籍も女になってるんなら全然問題無いじゃん」
「すみません。変なのがいて」
と私は笑顔で答えた。
 
ふたりは7月8日(日)の大安吉日に結納を済ませ、今日2012年10月27日の挙式となったのである。
 
式には当然新郎の妹である麻央も出席するし、私も出席するが、強引に出たい人・出したい人たちが数名いた。
 
政子は「私たちは夫婦なんだから、冬が出席するなら私も出席する」と主張し、私の姉の友人という名目で招待し、席は私の隣にした。正望は私が出席させてと頼んだのだが、私と正望が婚約者に準じる関係であることは非公開なので、結局、新郎の友人名目で招待してもらった。そしてリナは「親友の姉と親友の兄が結婚するなら、私も行かなきゃ」と言い、結局こちらも私の姉の友人名目で招待して、席は麻央の隣にした。更に奈緒まで「政子が出て、リナちゃんに麻央ちゃんまで出て、私を招待しないなんて、あり得ないよね?」と言ったので、こちらも私の姉の友人名目で招待した。席は政子の隣にした。
 
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そういうわけで、直接姉とは関係無い、私の関係者がぞろぞろと披露宴会場には、紛れ込んでいたのである。
 
もうひとり紛れ込んだ人がいた。
 
「ケイちゃんのお姉ちゃんの結婚式なら、マリちゃんとふたりで歌うよね?」
「ええ。マリは当然私とペアですから出席しますし、私たちふたりが出席すれば、当然何か歌います」と私は答える。
「じゃ、それ聴きたいから、適当な名目で僕も会場に入れてよ」
 
ということで、新郎の友人名目で、町添部長も招待してもらったのである。町添さんが御祝儀を100万円も包んでくれていたのを知って後から驚愕したが。
 
(私たちも上島先生の結婚式には私名義で80万、政子名義で80万包んで、キャンペーン中で北陸にいた私たちに代わり、津田社長が披露宴に行ったらしいが。この業界では一般常識とかなり懸け離れた額の御祝儀を包む習慣があるようだ)
 
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町添さんと正望は隣り合う席にした。会場で町添さんは「私の彼氏」を品定めしていた感じで色々話しかけていたようだったが、法律家を目指す真面目な青年ということで、良い印象を持ったようであった。
 

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結婚式に出席するのは昨年12月のマキの結婚式に続いて2度目だ。私は昨年のお正月に着た振袖を着た。今年のお正月に着た振袖では豪華すぎて、姉に悪いからである。麻央もけっこう良い感じの振袖を着ていた。政子も私に合わせて(あまり豪華すぎない)振袖を着ている。リナ、奈緒はドレスを着ている。
 
もっとも正確にはもう1つ、今年3月に霧島で「夢の中で」体験した、私と政子自身の結婚式というものがある。
 
考えてみれば、私は昨年12月のマキの結婚式で花嫁が投げたブーケをつい受けとめてしまった。そして「じゃ次はケイちゃんとマリちゃんが結婚するのね」
などとXANFUSのふたりに言われたのだが、そのことば通り、3月に私と政子は結婚式を挙げたわけだから、あのブーケには意味があったんだな、と思う。
 
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私と政子が「結婚式」を挙げた直後、記念写真を自宅マンションで撮ろうとしていたら、偶然姉が来訪した。そこで写真係になってもらい、たくさん私と政子で並んでいる所を撮影したもらったのだが、その時、姉は「折角だからお花も欲しいね」と言い、近くの花屋さんでブーケを買ってきてくれた。
 
そして撮影終了後「じゃ、ブーケは次の花嫁さんに」と言って姉に渡したのだが、姉が和義さんと再会したのは、そのブーケを渡した翌日だったらしいのである。マキの結婚式から今日の姉の結婚式まで、美事にブーケがリレーされたことになる。
 

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今日は先負で、午後から吉の日ということだったので、挙式が13時から、披露宴が14時からに設定されていた。
 
挙式は神式で、参列者は、新郎の両親、兄2人、弟、妹(麻央)、父の姉、母の兄、新婦の両親、妹(私)と政子、父の兄、母の姉4人、の合計17人であった。政子は最初頭数に入っていなかったのだが、私が式場に入ろうとすると、当然のように私にくっついてきたので、一緒に参列することになった。
 
厳かに進む式に参列していて、私はまた3月の自分たちの結婚式に思いを馳せていた。新郎新婦が三三九度をしている時は、私と政子の三三九度を思い出す。あの後、実際にも何度かやったし、琴絵が巫女役をして再度やったりもした。
 

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やがて式が終わり、少し休憩して披露宴となる。
 
休憩時間の間は、私は政子、奈緒、リナ、麻央と5人でおしゃべりに興じていた。
 
「これで麻央と冬は姉妹になったのか。何か羨ましいなあ」と奈緒。
「姉弟じゃなくて姉妹でよかったね」とリナ。
 
「私と冬はほとんど夫婦みたいなものだから、私と麻央ちゃんも姉妹ってことにしてもいい?」と政子。
「うん、いいよ」と麻央。
 
「えー!?じゃ3人姉妹なの?私も姉妹にしてよ」と奈緒。
「いっそ、私たち5人、義理の姉妹ってことにしない?杯を交わすって感じで」とリナ。「ああ、いいかも」と麻央。
「じゃ、さっきの結婚式の時の杯で」と言って麻央が杯を取り出す。
それに手近にあったウーロン茶をつぎ、5人で回し飲みをした。
 
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「これで私たち、5人姉妹ね」
と言って、私たちはハグし合った。
「ところで誰がいちばんお姉さんなんだっけ?」と奈緒。
「誕生日の順番で言うと、麻央、政子、リナ、私、奈緒だね」と私。
 
「でも小さい頃の冬がどんな女の子だったかを知りたいなあ」と政子。「そのあたりは本人に訊けばよろしい」と奈緒は言う。
 
「やはり、小さい頃から女の子だったんだよね?」
「まあ、それも本人に訊こう」と麻央は笑って言っている。
 
「しかし冬が高校生の時に使っていた一人称の『ボク』がどうも麻央ちゃん由来のようだというのが分かっただけでも収穫だ」と政子は言う。
 
「ボクの真似して使ってたみたいね。でも冬はもう『私(わたし)』になっちゃったね」と麻央。
「だけど、冬は幼稚園の頃は『私(わたし)』って言ってたんだよ。それを小学校にあがった時に先生から『男の子なんだから僕と言いなさい』と言われて直されたんだよね」とリナ。
 
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「冬って言われたことを受け入れちゃうタイプだからね。ボクなんて、先生から『私って言いなさい』と言われたけど、全然変わらなかったから」と麻央。
 
「この中ではリナがいちばん古いお友達なのね」
「そうだね、幼稚園の時からだから」
 
「幼稚園の頃はよく一緒に水遊びとかしてたね。お互い裸で」
「ああ、幼稚園だと、そんなものだよね」
 
「奈緒ちゃんは、冬が男の子だった頃におちんちん見てるの?」と麻央。
「ふふふ。見てるし触ってるよ。少し悪戯したし」
政子が一瞬嫉妬を含んだ目をした。
 
「じゃ、この中で冬のおちんちんを見てないのは私だけか」と麻央。
「政子ちゃんは当然見てるよね?」
「もちろん」
 
「だけどさ。この世で、冬のおちんちんを見たことがあるのは、家族以外ではたぶんリナちゃんと私と政子ちゃんと今日は来てないけど若葉の4人だけだよ。冬はおちんちんを男の子には1度も見せてないようなのよね」と奈緒は言う。
 
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「なんかそれって重要なこと?」と私は笑って言う。
 
「普通は男の子同士でたいてい見てるもんだよね」
「お風呂とかプールの着替えで見たりもするし、男子トイレで立ってしていたら、隣の子のが見えたりするもんだと思うけど、小学校の時の男子の友達から聞いたのでは、トイレで冬のおちんちんを目撃した友人はひとりもいないと」
 
「小学校の時にそれなら、たぶん中学や高校でも同じだよね」
「それって実はおちんちんは最初から存在していなかったとか?」
「そんな馬鹿な」と私は笑う。
 
「うーん。。。少しずつ小さい頃の冬の実像が見えて来たな」と政子は言った。
 

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やがて披露宴が始まり、私たちは会場内の各々の席に付いた。人目があるのであまり正望に接近できないので目で会話したりしていたら、嫉妬した政子からテーブルの下で蹴りを入れられた。ふだんの政子ならこのくらいで嫉妬しないのだが、今日は自分より古くから私を知っている友人が何人もいてイライラしている感じであった。
 
紋付き袴と黒引き振袖の新郎新婦が結婚行進曲の音楽に乗せて入場しメインテーブルにつく。今日は姉と和義さんの中学時代の同級生で、東京在住の友人が司会をしてくれていた。司会者から新郎新婦の紹介があり、続いて、新郎の会社の社長と新婦の会社の社長から祝辞があった。そしてケーキ入刀である。
 
私も政子もカメラを持って撮影に行く。たくさんのフラッシュが焚かれる中、姉と和義さんは嬉しそうな顔でケーキにナイフを入れた。前日に姉が手作りしたものだが、作り方がよく分からんというのを私が電話で指導しながら作ったものである。実は1個目は失敗し、深夜に再挑戦した2個目をここに持ってくることができた。
 
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その後、新郎の会社の専務の音頭で乾杯をした。政子は「やっと食べられる」
と言って食べ始める。「私のもあげるね」と言ったが「当然もらう」と言って凄い勢いで食べている。向こう隣に座ってる奈緒まで「私も全部は食べきれないから少しあげる」と言って、幾つかの品を政子の前に移した。「ありがとう、妹よ」などと言っている。先程の誕生日順の姉妹の長幼では、政子が次女で奈緒は五女になる。
 
このあとスピーチがいくつかあり、やがて余興に入る。新郎の友人たちが臼と杵を持ってきて、餅を搗き始めたのには驚いた。搗いたお餅はみんなに配っていた。姉の友人たちはやはり無難に歌を歌ったりするグループが多い。新郎の伯母さんが琴で「六段の調べ」の演奏をした後、母の姉たちが三味線、太鼓と唄を分担して『めでた』を唄う。
 
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「めでた、めでたの若松様よ、若松様よ、枝も栄える、葉も繁る」
 
博多では「祝いめでた(博多祝い唄)」、富山県では「福光めでた」として知られ、他にも多数の地域で唄われている全国的な、おめでたい民謡である。旋律が違う花笠音頭もこのバリエーションだが、元は伊勢の木遣り唄だったのではないかとの説もある。
 
母の姉たちが唄っている時、麻央の親戚の叔母さんが「あの人達凄くうまいね」
と言ったらしい。麻央が「だって民謡教室の先生達ですから。一番上のお姉さんは全国大会で優勝したことありますよ」と言うと、「へー凄い!」と感心したらしい。
 
「次は新郎の妹さん、麻央さんとご友人によるギター演奏です」
 
という案内で、麻央が大学の友人2人と一緒に前に出て行き、クラシックギター3つによる合奏で『恋のアランフェス』(アランフェス協奏曲第二楽章)を演奏する。麻央は振袖なのでちょっとやりにくそうだったが、この美しい曲をきれいにまとめていた。
 
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「そして最後は新婦の妹さん、冬子さんとご友人によるデュエットです」
 
と案内され私と政子は奈緒の拍手に送られて出て行った。披露宴会場のエレクトーン(stageaがあることは事前に確認済みであった)を借りて、椅子に座る。政子はいつものように私の左側に立った。USBメモリから演奏データをロードする。
 
リズムシーケンスをスタートさせ、前奏を聴いた所で私たちは『Long Vacation』
を歌い始めた。
 
元々は別れと再会を繰り返した末に結婚した友人夫妻(晃・小夜子)のために作った曲だが、中学時代に恋人未満の関係のまま別れ、12年の月日を経て再会し結婚した姉たちに贈るのにもふさわしい曲だ。
 
Long Vacationというのは「愛の長い休暇」ということで、恋人でなかった時代は愛が休んでいたのだという意味だが、この曲を発表した時、ローズ+リリーの多くのファンが、これはローズ+リリーの休養期間終了宣言、事実上の活動再開宣言ではないかと感じたらしい。実際、私たちはこの曲を発表して以来、矢継ぎ早に何枚ものシングル・アルバムを発表してきた。
 
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私たちが歌っていると、新郎新婦の目に涙が浮かんでいるのに気付く。私たちはふたりの愛のために一所懸命この歌を歌っていった。
 
私たちが歌っている時、麻央の親戚の叔母さんが「あの人達異様にうまいね。それにエレクトーン弾いてるのに、まるで生のバンドと演奏してるみたい」
と言ったらしい。麻央が「だってプロの歌手だから。ミリオンヒット5枚出してますよ」と言うと、「うっそー!」と絶句したらしい。
 

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夏の日の想い出・3年生の秋(5)

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