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■夏の日の想い出・ボクたちの秘め事(4)
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目次 8
時間索引 #
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ボクたちはしばらくお互いので遊んでいた。政子が何だか凄く気持ち良さそうな顔をしているのでボクは訊いた。
「ね・・・気持ち良くなりすぎてない?」
「ううん。まだ足りない。もっと気持ち良くなりたい」
「ほんとかなあ・・・」
と言いながらも、あそこを刺激し続ける。かなり濡れている。「濡れる」という概念は知っていたけど、女の子のここが、こんなに潤いを持つものだとはそれまで全然知らなかった。ボクって、やはり女の子の身体のことが全然分かってないんだな・・・と痛感した。
やがて政子の陶酔的な表情が一瞬緩んだ。ホッとしたような表情をする。ボクは何となく指の動きを弱くした。少しして政子が言葉を出した。
「あのさ・・・冬、覚えてる?私が校内で可愛い女の子見つけたって言ってたの」
多分『逝っちゃった』んだなと思いながらボクは答えた。
「もちろん」
「私、男の子を好きになる一方で女の子も好きになる体質なの」
「言ってたね」
「その女の子って実はさ・・・・」
「言わなくても分かってるよ」
「そう?」
ボクは政子の唇にキスした。舌も入れあって強く吸う。舌まで入れたのは4月以来だ。
「いつ頃、分かった?」
「先月くらいに突然気付いた」
政子は微笑んでいる。
「だからね。私、彼氏を作るのと、冬とこんなことするの、矛盾しないの」
「ボクもマーサの前では女の子のつもりでいるから。だから枕元にコンちゃん1枚置くのを、ボクたちのルールにしようよ」
「そうだね」
「それ置いてる限り、ボクたちって、そういう関係でいられる気がする」
「開封したら、私たちどうなるんだろ?」
「それはその時考えよう。でも、ボクはその結果の責任を取るよ」
「うん」
今度は政子がボクの唇にキスした。
「よし、詩を書くぞ!」
と言って、政子は身体をベッドから少し起こすと部屋の灯りをつけた。自分の旅行鞄の中から、レポート用紙を取りだし、いつものバッグからいつものボールペンを取り出し、ふたたびボクのそばに潜り込んでから、詩を書きはじめた。政子はたいてい詩の本体を書き終えてからタイトルを書くのだがその日は先に『私の可愛い人』というタイトルを書いてから詩を書き始めた。
ボクはずっと政子の背中を抱いたままそれを見つめていた。
詩は15分ほどで完成した。
「曲付けてよ」
「うん」
ボクは荷物の中から小型の電池式キーボードを取り出すと、スイッチを入れ、探り弾きしながら曲を付けて行った。これは先月キャンペーンで全国を飛びまわっていた時神戸のショッピングモールで目に留めて、無性に欲しくなって、買ったものである。
20分ほどでほぼ完成する。ボクはキーボードを弾きながら歌ってみた。
「わーい。可愛い歌だ!私のイメージ通り」
と政子は喜んでいる。
「でもさ。ふと思ったんだけど」と政子が言う。
「私がこの手の抑制の利いた詩を書く時って、冬のそばにいないと書けないのよね」
「ボクがまとまりのある曲を書く時も、マーサがそばにいないと書けないね」
「私ここ最近、ひとりで詩を書いてる時も、何となく冬が自分のそばにいてくれるみたいな気持ちで書いてるの」
「それはボクもだよ。自分の部屋でひとりで曲を書いてる時もいつもマーサのことを思ってるよ」
「ってことは、私たちって実は共同で書いてるのかもね」
「うん。そうそう。きっと詩も曲もいっしょに出来てるけど、たまたまマーサのほうが詩という形を紡ぎ出しやすくて、ボクの方が曲という形を表現しやすいだけなんだよ。だから、ボクたちの作品って、作詞:マリ、作曲:ケイじゃなくてさ、作詞:マリ&ケイ、作曲:マリ&ケイ、なんじゃないかな」
「じゃさ、今度から私たちで作る作品はそういうクレジットにしない?」
「うん。今レコーディングやってる『涙の影』と『せつなくて』もそういうクレジットということにしようよ」
「うん。明日須藤さんにそれ言おう」
「うんうん」
翌朝、朝食の席でボクと政子は現在制作中のCDに入っている『涙の影』と『せつなくて』のクレジットを、「作詞作曲:マリ&ケイ」にして欲しいと言った。
「いいけど。どうして?」
「政子が作詞している時、結構ボクも干渉してるし、ボクが作曲している時、結構政子も干渉してるんです。お互いに独立に作業しているんじゃなくて、お互いの存在があって初めて創作ができているんで、連名にした方がすっきりするなと思って」
「なるほどね。お互いに干渉しあってるのなら、そのほうがいいだろうね。ただ、この手の連名名義って、後で揉めやすいよ」
「レノン・マッカートニーは、レノンが死んだ後で遺族からクレームが入りましたよね」
「そうそう」
「でもボクが死んだ後で、遺族が何か言ったら、その時はその時生きている人たちの利益になるようにまた変更すればいいんじゃないかなと思うんですよね。ボクと政子が生きている間は、ボクたち、連名でやっていきたいんです」
「分かった。じゃ、それで登録するね」
須藤さんは笑顔で言った。
「昨夜はぐっすり眠れた?」
「ええ。冬と何かたくさんいろんなこと話して。私たちここのところ凄く忙しかったから、ゆっくり話せてなかったし。同じ部屋にしてもらって良かったなと思いました」
「そう、それは良かった」
と須藤さんは笑顔で言った。秋月さんはただ微笑んでいた。
このツアーの合間の11月中旬。たまたまその日の放課後はローズ+リリーの予定が入っていなかったので、久しぶりに書道部に出て行ったら、静香先輩もやってきた。
「わあ、冬たちが珍しいと思ったら、更に珍しい人が」と部長の理桜が言う。その日は5人で分担して観音経を書いた。
「太郎(谷繁先輩)から聞いたんだけど、花見さんがさ」
と静香先輩が切り出すと政子がピクンとした。
「今月初めに大学を辞めたって」
「何かあったんですか?」とボクは訊いた。
「バイト先の女の子をレイプして訴えられて」
「わあ」
「あいつ、全く変わってないな」と政子が吐き捨てるように言った。
「最終的には告訴を取り下げてもらったんだけど、示談で凄い金額の解決金を払うことになったみたい。それでとても学費が払えなくなったみたい」
「あぁ・・・・」
「じゃ今花見さんは何してるんですか?」
「当然バイト先からも切られたみたいだからね。仕事を探してるみたいだけど、今不況だし、なかなか厳しいらしい。大学を辞めた経緯って絶対聞かれるしさ。太郎のところにもお金借りに来たんだけど、断ったと言ってた」
「うーん。。。。」
ボクはただ無心に観音経の文字を書き綴っていった。
この月のローズ+リリーのツアーではこのあと岡山のコンサートの後にも泊まりが入った。最初岡山のホテルで泊まるのかと思っていたら、明日の朝、福岡のFM局に出る予定が入ってるということで、岡山市内のレストランで晩御飯を食べたあと、新幹線で博多に入り、福岡市内のホテルでの宿泊となった。
ボクたちはコンサートで完全燃焼した後の移動で精魂尽きていたので、新幹線ではひたすら寝ていたし、ホテルの部屋(ツインにしてもらっていた)に入ると同時に、ベッドに倒れ込んだ。ボクたちはその晩はベッドをくっつける元気もなく、一緒のベッドに入り、半分眠りながら、お互いのあの付近を刺激して、快楽をむさぼった。ボクはタックは付けたままであった。少し目が覚めて来始めた頃、政子が凄く満足したような顔をしているのに気付いた。
「ねえ・・・もしかして気持ちよくなりすぎているということは?」とボクは訊く。
「全然。次の泊まりは年明けのツアーかなあ・・・冬、次はもっと高速に刺激してよ」
「はいはい」とボクは笑って答えた。
「でも今日の晩御飯で出たマスカット美味しかったね」と突然政子は言う。
「実はシーズン少し過ぎているらしいけど、美味しかったね」
「よし。マスカットで曲を作っちゃおう」
と言って政子はベッドから起きだし、自分のバッグから五線紙を取り出した。
「五線紙に直接歌詞を書くの?」
「ノーノー」と言うと、政子は五線部分に/とか\とか〜とか、線を記入し始めた。ボクは目を丸くして見ていた。
「できたー」
と言ってボクに見せる。
「ね、これで歌える?」
ボクは笑って「OK」と言うと、政子が書いた楽譜?にあわせて、こんな感じかな?という雰囲気で『ラララ』で歌ってみた。
「ああ、いい感じ。割と私のイメージに近い」
「じゃ、今歌ったのを譜面に書くから、それでマーサのイメージから少し違うというところを指摘してよ。そこ修正して行く」
「うん」
ボクたちはそういう楽曲修正の作業を1時間くらい掛けてやって、政子が満足するような形の曲に仕上がった。政子はそれに歌詞も付けた。
「タイトルは『マスカット』でいいんだよね?」
「そうそう。金太マスカット切る、のマスカット」
「マーサ、変な歌を知ってるね」
「あれ、面白いじゃん。冬もスカッと切っちゃえばいいのに」
「そのうちね」
「スカッと切っちゃったらもっと高音出るようにならないの?」
「それは小学4-5年生までにやらなきゃ無理」
「その頃しとけば良かったのに」
「その頃はボクはふつうの男の子だったもん」
「ほんとかなぁ」
この頃ボクたちは、まだ自分達がHなことをする度に良曲ができるということには気付いていなかった。そして、この福岡での一夜の次にボクたちが一緒に寝たのは、週刊誌報道に伴う一連の大騒動が落ち着いた、翌年3月のことであった。また金沢での一夜の次に政子がボクのおちんちんに触ったのは、1年半後、高校を卒業した後の鬼怒川温泉での一夜だった。
ボクと政子は、大学に入ってからはかなり濃厚なことをするようになったし、特に大学2年の秋頃以降は常時セックスをするようになるのだけど(実際ボクは恋人である正望とよりたくさん政子としていた)、高校時代には愛し合ってはいても、ほんとに数えるくらいしか睦みごとはしていなかった。
ホテルのベッドの中でボクたちはそのあとしばらくおしゃべりをしていたが、次第に目が冴えてきた。
「お風呂入ろうか」
「そうだね。汗流しておきたい」
政子は起き上がって浴室に入り、お湯を溜め始めたが・・・すぐに停めてしまった。「どうしたの?」とボクは訊く。
「ねえ、このホテル、個室のバス使わなくても、大浴場があるみたい」
「へー」
「行ってこようかな」
「行ってらっしゃい」
「冬も一緒に行こうよ」
「えー?ボク、共同浴場には入れないから」
「ああ。。。。でもそれ、男湯には入れないということだよね?」
「うん。そんなことしたら須藤さんが腰抜かす」
「じゃ、女湯に入ればいいじゃん」
「は?」
政子はベッドの中のボクの傍に寄って言った。
「冬、おまたはタックしてるでしょ。胸にはブレストフォーム貼り付けてるし。女の子のヌードにしか見えないよ」
「それはそうかも知れないけど、やはりまずいよ。女湯に入るなんて」
「だって、男の子だとバレるとは思えないもん」
「でも・・・・」
「冬は見た雰囲気も女の子なんだよね。それは大きいと思うな。もしおっぱいが無くても、みんな女の子としか思わない気がする」
「そうだろうか?」
「絶対そうだよ。それに私ひとりで入りに行くの心細いし」
「うーん。。。」
ボクは政子と冗談で「これなら女湯に入れるかもね」と言ったりしたことはあったが、実際に女湯に入るなどというのは考えたことも無かったので大いにためらった。しかし最終的に政子に言いくるめられてしまった。
ボクは政子に手を引かれながらホテル地下の大浴場に行った。時刻はもう午前2時である。エレベータを下りたところで左右に道が分かれる。左手には「男湯」という表示、右手には「女湯」という表示。政子はボクの手を引き「女湯」と書かれたのれんをくぐった。きゃー。
「でも、冬、以前リュークガールズの子たちと女湯の脱衣場までは来たじゃん」
「ははは。あれは絶体絶命だったよ」
「ということで、脱ぎなさい」
「分かった。もう覚悟決めた」
ボクは女湯の脱衣場で、服を脱ぎ始めた。ロッカーを開けて、上着を脱ぎ、スカートを脱ぎ、キャミソールを脱ぎ、ブラを外す。ブレストフォームを貼り付けた胸がある。パンティーを脱ぐ。タックして女の子の股間に整形したお股がある。
「うふふ。完璧」
と言って政子は自分も服を脱ぎ、ボクの手を取って浴室に入った。
深夜だから誰もいないかとも思ったが、若い女性の姿が3つあった。少し遅くまで遊ぶか仕事をしていて、結果的にこのくらいの時間の入浴になった人たちだろうか。
政子と並んだ所のシャワーに座り、身体の汗を軽く流し、お股を洗い、足の指なども洗ってから、手をつないで浴槽に入った。
「緊張してないね?」と政子は小声で言った。
「開き直ったから。このお湯、気持ちいい」
「疲れた後のお湯は、ほんとに気持ちいいよね」
「なんか疲れが蒸発していくような感じ」
「うん。やっぱり大浴場に来て良かったと思わない?」
「うん。思う」とボクは微笑んで答えた。
少しHなこともして、その後大きなお風呂でゆっくり暖まったおかげだろうか。ボクたちはその晩ぐっすり寝て、朝7時頃、すっきりした気分で眼を覚ました。
ボクたちがふたりで朝食に1階のラウンジに降りていき、バイキングの朝食をたっぷりトレイに乗せて、楽しくおしゃべりしながら食べていたら、秋月さんもやってきて
「おはよう。元気みたいね?」
と言った。
「はい。私たちとっても元気です」
「昨夜はいっしょに新曲も作ったしね」
「おお、好調だね。凄くすっきりした雰囲気だし」
と言って秋月さんはニコニコ笑顔だ。
「なんかすっきりしたよね」と政子。
「うんうん。このまま福岡・仙台、頑張ります。私たちそのあと修学旅行やったあと、また名古屋になるけど、この勢いで走り抜きます」
「うん。頑張ってね」
そこに須藤さんが少し疲れたような表情で降りてきた。
「おはようございます!」
とボクと政子に加えて秋月さんまで一緒に元気な声で言うと
「あんたら元気だね!やはり若い人たちには、かなわないや」
などと言いながら席についた。
ボクと政子は何だか愉快な気分になって、微笑んでお互いの顔を見つめた。
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