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■夏の日の想い出・ボクたちの秘め事(1)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-01-20  
これはボクと政子がローズ+リリーとして活動していた高2の2学期の時の物語である。
 
ボクたちは最初『明るい水』というCDをインディーズで出したのだが、ちょっとした偶然から、売れっ子作曲家・上島雷太先生から楽曲を提供してもらい、おかげでその曲を収録したCDを★★レコードから発売することになった。この曲が思った以上に売れたので、ボクたちは全国キャンペーンをすることになった。
 
ボクたちのローズ+リリーの活動は、基本的に学業に支障が出ないように放課後と土日祝日限定ということになっていたが、この時期、その放課後と土日にしばしば殺人的なスケジュールが組まれていた。学校の授業が終わってから、須藤さんに連れられてCDショップや放送局に行ってミニライブをしたり、あるいはラジオ番組でトークをしたりしていた。どうすると午後4時頃から8時頃までの間に5-6箇所、分刻みのスケジュールで動き回っていた。
 
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今回のキャンペーンは10月の4週間、土日フル稼働であった。キャンペーン初日は車に乗せられ関東周辺をたくさん(もう回った数は数えていられなかった)回ったのだが、たくさん歌ってたくさんサインと握手をしてボクはもう、女の子の姿で人と接することに、完璧に抵抗が無くなってしまった。
 
翌日は朝から新幹線で大阪に行き、大阪・神戸・京都などの放送局やCDショップを駆け巡り、夕方また新幹線で帰還した。ボクも政子も帰りの新幹線ではひたすら寝ていた。
 
この時期、ボクも政子もそろそろ勉強にけっこうな時間を使わなければならなくなってきつつあったのだが、須藤さんはボクたちを原則として21時、遅くても22時までには各々の自宅に送り届けるよう(時には結構なお金を使っても)してくれていたので、ボクにしても政子にしても帰宅後少し休んだりお風呂に入ったりした後、だいたい23時頃から夜1時くらいまで、宿題をしたり、自主的に問題集を解いたりしていた。その時、ボクたちは携帯に電話をして、お互いハンズフリーで、つなぎっぱなしにした状態で勉強していた。
 
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政子は「寂しいから歌を歌って」というので、ボクは半ば自動歌唱モードで、様々な歌を歌った。そして政子は何か分からない所があるとボクに質問してきたので丁寧に教えてあげた。それで政子は授業中に当てられてもしっかり答えることが多くなり、また最近はちゃんと宿題もしているなどといって褒められていた。(政子は1年の時は宿題などやっていったことが無かったらしい)8月の模試こそ偏差値48で平均点に届かなかったものの、10月の実力テストでは初めて学年平均を上回る成績を出して、お母さんから電話で褒められたと言っていた。
 

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10月8日(水)。昼休みに図書館で歴史の本を見ていたら、政子がやってきて突然「ハッピーバースデイ」と言った。
 
「ありがとう。覚えてくれてたんだ」とボクは笑顔で答える。
「実は昨日まで忘れてたけど、今朝携帯のアラームが鳴ったので思い出した」
「文明の利器は素晴らしいね」
「今夜さ、お誕生日お祝いするのに、冬のおうちに寄っていい?今日はうまい具合にお仕事もお休みだしね」
「うん。いいよ。お母さんにも言っておく。でもほんとに久しぶりのオフだよね」
 
「そうなのよね。最近ふたりで忙しく動き回るのに慣れちゃったから、昨日の夜までは明日どうしよう?なんて思ってたんだけど、おかげで寂しくない夜が過ごせる」
「寂しいと思った日は呼んでよ。おしゃべりの相手くらいしに行くから」
「うん。そうしようかなぁ。ついでに冷凍室のストック作ってもらおう」
「いいよ」
 
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9月頃から、ボクは政子の家に行くと冷凍野菜だけではなく、シチューとかカレーとかロールキャベツとかハンバーグとかの冷凍まで作っていた。夜遅く帰ってきた時など、さすがの政子も御飯を作る気力が無いものの、インスタント食品など食べていてはお母さんから叱られるということだったので、ボクが作っておいたシチューとかをそのままチンすれば、一応まともな食事が取れるという状態にしてあげたのである。
 
10月に入ってからは、なかなか政子の家に行く時間も取れないので、自宅で作ってドライアイスを入れたクーラーボックスに詰めて、週に2回、学校で渡していた。しかしボク自身もなかなか買い物にいく時間が取れなかったので、母にその買物を頼んでいた。母は「ふーん。あんた彼氏できたの?」などと言っていた。
 
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図書館で少し話した後、ボクは政子と一緒に校舎に戻った。職員室の表に置いてあるピンク電話で自宅に掛けて、母に
「今日、友だちが誕生日お祝いに来てくれるから、少し多めに御飯作ってくれる?」
と言った。
 
「あら、珍しいわね。何人?」
「ひとり。でも。凄くよく食べる子だから3人くらい来る感じで頼める?」
「OK。もしかしてこないだから御飯作ってあげてた子?」
「うん」
「ふふふ。じゃ、たくさん作っておくね」
 
電話を切ると政子が「私3人分も食べるかなあ」などというので
「5人分くらいって言った方が良かった?」と言うと、政子は笑っていた。
 
ちょうどそこに琴絵が通りかかる。
「お、楽しそう。おふたりさん、頑張ってね−」
と笑顔で言って、手を振って、通り過ぎていった。
 
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学校が終わってから政子を連れて家に帰ると、母が驚いた。
 
「お友だちって女の子だったの!?」
「あ、どうも。お邪魔します」
「いや、たくさん食べる子というから、てっきり男の子かと・・・」
「すみません。私、第2のギャル曽根って友だちから言われてます」
「うんうん、いいのよ。いらっしゃい」
と母は政子を歓迎する。
 
「でもやはり冬彦が男の子の友だちを連れてくる訳無かったわ」
「ボク、男の子の友だちなんていないよ」
「だよねー。友だち連れてきたのも中学の時、貞子ちゃん連れてきて以来かな」
「貞子とは高校が違っちゃったからね。でも年に何度か会ってるよ」
「へー」
 
学校からの帰りがけに、途中のケーキ屋さんで政子が買ってくれたケーキをみんな(父はまだなので、ボクと母と姉)で食べ、母が作ってくれていた料理を出してきた。
 
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「鶏の唐揚げ作ろうかと思ったんだけど、私揚げきれないから。取り敢えず鶏肉を切るところまではしたんだけど」
「あ、ボクが揚げるよ」
と言って、少し食べたところで、ボクは台所に行って揚げ始める。と政子も来て「手伝う」と言って、一緒に揚げ始めた。
 
「私もふたりのそばにいよっと」と言って姉も台所に来たので、母もやってきて結局4人で唐揚げを作りながら会話することになった。揚がったのをその場でどんどん食べて行く。
 
「あら、それじゃ政子さん、ひとり暮らしなの?」
「ええ。それで私この春まで料理なんて作ったこと無かったから、冬ちゃんにかなり助けてもらってます。こないだからは料理の冷凍をだいぶ作ってもらっているし」
「ああ、あれも政子さんに渡してたのね。てっきり私、冬彦に彼氏ができて、彼氏に御飯作ってあげてるのかと」
「男の子と恋愛するつもりは無いけどなあ・・・」
 
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「今やってる設営のバイト、政子と一緒になる日が多いんだよね。特に今月と来月は忙しくなりそうでさ。お買い物に行く時間もないもんだから、それでお母ちゃんに買い物まで頼んでたんだよね」
「なるほど、そういうことだったのね」
「まともなもの食べてなかったら、両親のいるタイに召喚されることになっているので、私。でも受検勉強頑張りたいから、日本に留まりたいんですよね。冬ちゃんに作ってもらってる冷凍ストック、ほんとに助かってます」
 
「実際、政子、かなり成績上げたよ。1年生の時は大学行く気無いよね?って感じの成績だったというか、赤点ぎりぎりだったのに、先週の実力テストでは400人中の180位まで上がってきたからね」
「すごい。頑張ってるわね」
「ボクもだけど、今のバイトしてて、使える時間は少なくなってるけど、結局短時間に集中して勉強する癖が付いて、成績上げてる感じ」
「そうなのよね。だから私も認めてあげてるんだけどね」と母。
 
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「夜中11時から1時くらいまで、冬ちゃんと携帯をつないだまま一緒に勉強してるんです。一人暮らしで夜中ってけっこう寂しいもんだから、冬ちゃんに歌を歌ってもらってて」
「ああ、それでいつも歌ってるんだ!」と母。
「冬彦、かなり裏声で歌ってるよね。それも凄くきれいに出てる。最初女の子が歌ってるのかと思った」と姉。
「あれは宴会芸で」とボクは笑いながら言った。「1年生の時の音楽の時間にもバス・テノール・アルト・ソプラノ、全パート歌ってたよ」
 
このボクのソプラノボイスは翌年発売された『甘い蜜』で一般の人には公開されることになる。
 

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11日から13日の連休では、初日は飛行機で高松に入り、岡山・広島と移動して広島空港から帰還。2日目は新幹線で新潟に入り、富山・金沢と移動して小松空港から帰還。3日目は新幹線で仙台・八戸と移動して夕方青森空港から帰還した。この間、実は2日目に北陸を移動していた日、上島先生が東京で以前から交際していた元アイドル歌手の春風アルトさんと結婚式を挙げたので、ボクたちは『ローズ+リリー』の名前で祝電を打っておいた。(披露宴には津田社長が代理で出席して、ローズ+リリー名義で○十万とかの御祝儀を包んだらしい)
 
しかしここまではとにかく遠方まで行っても、毎日東京に帰還していた。それがキャンペーン最後の週には、とうとう泊まりが発生した。
 
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「じゃ今日は泊まりなの?」と母から訊かれた。
「うん。会場が大きくて設営の仕事が遅くまで掛かるから、東京まで戻ってこれないんだよね。ごめん」
 
「バイト本当に忙しくやってるけど体力大丈夫?」
「うん。来週は今の所休める予定だし」
「あまり無理しないのよ」
と母はほんとうに心配するように言った。
 
朝、羽田空港で落ち合ったボクと政子はお互いの顔を見てため息を付いた。
 
「今日明日の予定って凄いね」
「ほんと。スケジュール表見て絶句した」
 
その日渡されたスケジュール表では、羽田空港→新千歳空港→札幌市内(3)→新千歳空港→福岡空港→福岡市内(3)→新幹線→北九州市内(2)→新幹線→神戸(泊)と書かれていた。ちなみに明日の予定には、神戸(2)・大阪(4)・京都(2)・名古屋(2)→新幹線で帰還 と書かれている。括弧内の数字の意味はあまり考えたくなかった。
 
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「1日で札幌と福岡に行くって、まるでアイドル並みだね」
「もしかして私たちアイドルだったりして」
「あはは・・・」
 
やがて須藤さんが来て、飛行機に乗り込む。飛行機に乗る時、ボクたちは大抵須藤さん・ボク・政子の順に座っていた。その日の新千歳行きのジャンボにも窓際の席に政子が座り、通路側に須藤さんが座って、その間にボクが座っていた。須藤さんはよくしゃべっていた。ボクたちはその話を聞きながらけっこう、うとうととしていた。
 
新千歳で降りて車で札幌郊外のショッピングモールに行きミニライブをする。サイン会をしてファンの人たちと握手をする。終わるとすぐに移動してまた別の所で歌う。景色などを楽しむ余裕もなく、ボクたちはとにかく目の前にあることをひとつずつこなして行っていた。
 
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サインを書く時、列がボクの前と政子の前に半分くらいずつ並んでいるので、まず相手の名前を訊いて、訊いた側が「○○さんへ」というのを書き、ボクは「Rose」の部分、政子が「Lily」の部分まで書いて色紙を交換し、残りと「+」
をもうひとりが書く、というようにしていた。ひとりでいる時にサインを求められた場合は、ひとりで全部書くので、ローズ+リリーのサインにはひとりで書いたもの(ケイ版とマリ版)とふたりで書いたものが存在するのだが、ボクたちはほとんど同じ筆跡・筆圧で書いていたので、3種類を見分けるのはかなり困難である。「『何でも鑑定団』の先生くらいにしか区別は付かないかもね」などとボクたちはよく話していた。
 
「でも須藤さん、こういうのに慣れてるみたい」
「そうだね。分刻みのスケジュールで動くのは若い頃かなり経験したんだよね」
「へー」
「自分の現役時代も、マネージャー業に転向してからもね。昔大手のプロダクションにいたことあるから」
と言ったが、当時は須藤さんもボクたちにあまり詳しいことは言わなかったし、またボクたちも自分達のことで精一杯で、特に昔の話を聞こうともしなかった。
 
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札幌市内のFM局に行って10分ほどDJさんとトークをすると、そのまま車で新千歳に戻り、福岡行きの飛行機に乗る。ボクたちは機内でひたすら寝ていた。
 
福岡空港に降りると地下鉄で天神に出て、デパートの入口のところでライブをする。ここは凄い人通りのあるところで注目する人が多かった。そこでサイン会をした後、近くのCDショップに移動してそこのステージでまたミニライブとサイン会。それが終わると博多駅に移動して、ここでまたライブ。
 
そのあと新幹線で小倉に移動し、駅構内のイベントスペースでライブとサイン会をしてから、電車で黒崎に行って、ここでまたライブ。終わったのが20時であった。さすがに疲れた。ボクたちは小倉駅に戻るとそのまま新幹線に乗り込みまたまたひたすら寝た。
 
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この日は朝食は新千歳行きの機内、昼食は福岡行きの機内、夕食は新幹線に乗り込んでから、だったのだが、あまりのハードスケジュールでくたくたになっていて、ほとんど入らなかった。
 
新神戸に着いて、ホテルに入って、とにかくベッドに倒れ込むようにして寝た。かなり寝たところで、携帯に着信があって、ボクは目を覚ました。隣室にいる政子からだった。
 
「ねえ。今になっておなか空いたんだけど、ひとりで買い物に行くのはちょっと怖くて」
「ボクもおなか空いた。一緒にコンビニにでも行こうよ」
「うん」
 
ボクたちは軽く身支度をして部屋の外に出て落ち合うと、一緒にホテルの外に出た。携帯のGPSナビのおかげで近くにコンビニがあるのは分かる。ナビをonにしたまま、ボクたちは歩いて行った。
 
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「でも冬も女の子の服で出歩くのには完全に慣れたね」
「さすがに慣れた」
「もう学校にも女の子の服で出て行っていいんじゃない?」
「そそのかさないで。ほんとに出て行きたくなるから」
「出て行けばいいのに」
 
コンビニでおにぎりやスパゲティ、飲み物やおやつ、フライドチキンやおでんなどを買って帰った。
 
「どちらかの部屋で一緒に食べようよ」
「うん。ひとりでは寂しいなと思ってた」
「ほんと。今度からは一緒の部屋にしてもらえないかな」
「そうだね・・・・」
 

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■夏の日の想い出・ボクたちの秘め事(1)

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