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■夏の日の想い出・失恋の想い出(1)

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(c)Eriko Kawaguchi 2011-12-20

 
彼女のことはSとだけ書いておこう。Sは中学3年の4月に他県から転校してきた。ボクは席が隣になったこともあり、色々この学校のことも教えてあげたりしたし、あれこれよく話もしていた。
 
「でも唐本君って少し不思議な雰囲気持ってるよね」
「そう?」
「今まで私が知ってた男の子の中にはいなかったタイプだなあ」
「ふーん」
「あまり他の男の子とはしゃべってないよね」
「そうだね。ボクあまり友だちいないから」
 
中学時代のボクというのは1年生の春から2年生の秋まで陸上部にいたので、同じ部にいた人とは会えばいろいろ話すものの、元々転校していく子・転校してくる子の多い学校でもあり、3年生の時のクラスには陸上部にいた子がいなかったので、クラスではほとんど誰とも話していなかった。陸上部で今副部長をしている貞子やボクと同様2年の秋で陸上部をやめたものの交流のある美枝などとは廊下で話をすることはあったものの、どちらかというとボクの当時の学園生活はかなり孤独に近いものだった。ボクは男の子たちとは全く話が合わなかったし、といって、クラスメイトの女の子たちとは微妙な壁のようなものを感じていた。
 
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「でも私にはいろいろ親切にしてくれるのね」
「別に孤独を愛してるとか、友だちとの交流が嫌いな訳じゃないからね」
とボクは笑う。
 
ボクはSのことはただの友だちのつもりだったのだけど、彼女がボクを特別な目で見始めたのはたぶんあの時からではないかと思う。それはゴールデンウィークの直前頃だった。
 
その日放課後図書館に行って本を借りてきてから帰ろうとしたら、彼女もちょうど帰るところで、ボクらは一緒に教室を出て、並んで歩きながらあれこれおしゃべりをしていた。
 
「でも不思議だなあ。私、これまであまり男の子と話をしたことなかったのに唐本君とはごく普通に話が出来る。私、他の女の子なんかと話すのと似たような感覚で話しているのに」
「うーん。ボク雑学だからね。たいていの話題には付いてくよ」
「でも男の子とはあまり話さないんだ」
「ちょっと下ネタとか苦手なんで」
「へー。純情なのかな」
 
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男の子のクラスメイトたちの話というと、どうにもオナニーとかの話が多い。ボクはそばで聞いていても、ちょっとその話の輪には入りたくない気分だった。野球とかの話もさっぱり分からないし。なんかよく殴り合ってるし!
 
校門を出て少し先まで歩いていた時、後ろの方からトトトトと走ってくる人の足音が聞こえた。そしてその足音の主はSにぶつかるようにすると彼女が手に持っていたスポーツバッグを奪ってそのまま走り去ろうとした。
 
「きゃー」といってSが倒れる。
「待て!」とボクは叫ぶと全力でその男を追いかけた。こちらは腐っても元陸上部員である。あっという間に追いついて相手の足をはらって停める。男が倒れた所でSのバッグを取り返す。
「返してもらうよ」と言い、ボクはSのところに戻った。
 
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「はい、どうぞ」
「ありがとう。唐本君、足が速いのね!」
「一応元陸上部だからね」
「あ、そんなこと言ってたね。あ、そうか。それで前村さんなんかともよく話してるんだ」
「うん。彼女に副部長を押しつけたからね。去年の秋に辞めてなかったら、あやうくボクが副部長をやるハメになってた」
「えー?副部長って女子がするんじゃないの?」
「うん。まあ、そうだけどね」
「唐本君ってやっぱり何だか不思議な男の子だ」
 
彼女は興味津々という雰囲気の笑顔でボクを見つめていた。
 

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その後、彼女と急速に話をする機会が増えたような気がする。なぜか放課後一緒に帰る機会も増えた。
 
ある時、彼女は「クッキー焼いてみたから食べてみて」などと言ってボクにクッキーをくれた。「わあ、ありがとう」と言ってもらい、食べてみると美味しい。「美味しい、Sちゃん、上手だね。じゃ今度ボクも何か作ってきてあげるよ」と言って、翌日マドレーヌを焼いていってあげた。
「えー?唐本君お菓子作りするのね」といって受け取ると食べて「凄ーい。美味しい。上手なのね。私も頑張らなくちゃ」などと言っていた。
 
そんなある日、ボクは貞子から「ちょっと来て」と言って廊下の影に連れ込まれた。「どうしたの?」と訊く。
 
「冬さ、Sちゃんと最近よく話してるよね」
「うん。ボク友だちが少ないから、おしゃぺりの相手ができて楽しい」
「・・・・Sちゃんが冬のこと好きだってのには気付いてないの?」
「え?」
「やっぱり気付いてなかったか」
「だって・・・・」
「冬は基本的に男の子が恋愛対象だもんね」
「いや、そういうつもりはないけど」
「でもSちゃん、完璧に冬を男の子として意識してるよ」
「うーん。。。。そう言われたらそんな気がしてきた」
「どうするの?自分は女の子は恋愛対象じゃないと言う?」
「困ったな」
「困るくらいなら彼女があまり傷つかない内にちゃんと言わなきゃダメだよ」
「いや、そういう意味の困ったじゃなくて・・・・」
「冬もSちゃんのことが好き?」
「少し考えてみる」
「うん」
 
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その日もSとは帰りが一緒になったが、貞子に恋愛要素を指摘されてみると、変に意識してしまい、何だか会話がたどたどしくなってしまった。
「どうしたの?今日の唐本君、変」
「あ、ごめん。ちょっと考え事しちゃって・・・」
「あ、そうだ、唐本君の誕生日っていつ?」
「誕生日?10月8日」
「わあ。。。天秤座か」
「うん。Sちゃんの誕生日は?」
「私は12月22日」
「それって射手座?山羊座?」
「それが実は分からないのよ。自分では性格的に山羊座かなって思ってるんだけど。何か星占いの本、見る度に12月22日生まれは、射手座って書いてある本と山羊座って書いてある本があるんだ」
「出生時刻分かる?」
「それで分かるの?」
「うん」
「夕方の5時23分」
「ちょっと待って。調べてみる」
ボクは携帯を取り出すと、ホロスコープ計算サイトにアクセスして、Sの出生データを入れてみた。
「Sちゃん射手座だよ」
「え?ほんと?」
「射手座の29度58分41秒。ギリギリだね」
「へー」
「天秤座と山羊座だと相性悪いけど、天秤座と射手座なら相性いいね」
「ほんと、よかった」
 
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ボクの頭の中で、その自分で言った「相性いい」という言葉がいつまでも鳴り響いていた。
 

翌日は土曜日だったのでボクはお昼御飯の後、町に参考書を見に行くと言って家を出たが、いつしか、近所の高台の見晴らしのいい場所に来ていた。Sのことを考えてみる。自分としては友だちのつもりだった。でもこれって恋にしてもいいのだろうか?
 
恋って今まで片思いなら何度もしたことがある。ボクは自分はバイだなというのは意識していた。恋をした相手がだいたい男女半々だった。でも相手が男の子の場合は相手が自分を同性と思っているので発展の要素が無かったし、相手が女の子の場合でも、たいてい親しくなっていく課程で相手がボクの女の子っぽさに気付いてしまい、結果的に女友達みたいな感じになって恋愛要素が育たなかった。Sの場合は、彼女がボクの女の子っぽさを感じ取る以前に仲が進行してしまったのかも知れない。Sのこと嫌いではないよなあ。でもホントは友だちでいたかった気もするのだけど。でも恋人になってもいい気もしてきていた。
 
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そんな感じで悩んでいた時、ポンと肩を叩く人があった。
「あ、絵里花先輩」
「どうしたの?冬。何か悩んでるみたい」
それは陸上部の1年先輩の絵里花であった。今は高校1年生である。
 
「うん。ちょっと」
「珍しいね。あまり悩むタイプじゃないと思ったけど」
「けっこう葛藤ありますよー」
 
絵里花は少し考えるふうにしてから、こんなことを言い出した。
「そんな時はパーっと女装しちゃおう」
「えー?」
「女装すれば気分が変わるからきっと悩みも解決するよ」
「そうですか?」
「うちにおいで。また女装させてあげるから」
「あはは」
 
絵里花先輩は自宅にボクに合う女の子用の服を用意してくれていて、ボクに時々女装をさせてくれていた。ボクも女の子の服を着て可愛い感じに変身するのが、まんざらでもないので、こちらから進んで女装させてもらいに行くこともあった。その格好でさすがに外を出歩く勇気はないが、女装で絵里花先輩や貞子などとおしゃべりしていると、普段と違った感覚に不思議な脳の刺激を感じて、しばしば壁にぶちあたっていたことが解決したりするのをこれまで何度か体験していた。
 
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先輩の家に行くと今日はお父さんもお母さんもいなかった。
「今日はお店が忙しいみたいで、お母さん手伝いに行ってるんだ」
「いいんですか?留守の時に」
「冬はここでは冬子だよ。女の子の友だち連れてきて叱られる訳がない」
「そうですね」
 
ここでの女装もこれが4回目。変に恥ずかしがったりはしない程度には慣れてきた。下着はボク専用のものだが、上着やスカートはけっこう絵里花先輩自身のを貸してくれていた。
「今日はこれ着てみない?」
「わぁ。マーメイドスタイル。可愛い。お借りします」
 
「冬子、突然誘っても足の毛はちゃんと処理済みだよね」
「偶然ですよ。いつも処理しているわけじゃないけど」
「まだ抜いてるの?」
「悲しいことに抜くのでは追いつかなくなって最近は剃ってます」
「去勢しちゃえばいいのに」
「えっと・・」
「去勢しないと身体はどんどん男の子になっちゃうよ」
「うん」
 
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ボクは着て来た服を全部脱ぐと、女の子パンティを穿き、ブラジャーを付け、今日はキャミソールを着た上にマーメイドスカートを穿き、それに合わせてマリンルックのプルオーバーを着た。
 
「わあ、可愛い。もう冬は私専用の着せ替え人形にしたい」
「えへへ。悪くないなあ、それ」
「お茶入れるね」「うん」
 
絵里花はエスプレッソマシンで濃いエスプレッソを作り、泡立てたミルクを入れて甘ーいマキアートを作ってくれた。
 
「ボクいつもはブラックコーヒーだけど、たまにこういう甘ーいの飲むと、これもいいなと思う」
「以前からブラックだったっけ?」
「陸上やってた時は甘いのじゃんじゃん飲んでたけど、辞めた後いきなり体重52kgまで行ったから、やばいと思ってカロリー考えるようになったの」
「へー。昔は40kgくらいだったよね」
「今体重48kgまで落とした」
「身長いくらだっけ?」
「167cm」
「ちょっと待って・・・」
絵里花が携帯を操作している。
 
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「標準体重は61.3kg, 美容体重でも55.7kgと出るけど」
「でも体重52kgの時は重くて身体が動かない感じだった。67のスカートもきつかったし」
「ふーん。。。。やっぱり日常的にもスカート穿いてるんだ」
「あ、えっと・・・それはお姉ちゃんが通販で買ったののデザインが気にいらないから、ちょっと穿いてみてと言って穿かされて・・・結局ボクもその時はサイズが厳しかったから返品したというので・・・・」
「ふふふ。私の前で言い訳しなくてもいいのに。でもサイズが合っていたら、そのスカートもらってたの?」
「うーん。姉ちゃんもなんかボクに女の子の服を着せたがるんだよね」
「それは冬子の本質が分かってるからでしょ」
 
「ボク今そのあたりで悩んでいて・・・」
「好きな女の子ができたの?」
「何で分かるの!?」
「そんな気がしたよ」
 
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「ボク、今まで片思いでなら女の子好きになったこと何度かあるけど、今度のは両思いっぽくて。それでボク自身が女の子っぽいのに、ほんとに女の子と恋人になっちゃってもいいのかなって悩んじゃったの」
「彼女の前では男の子っぽくしてるの?」
ボクは首を振る。
 
「だって数日前まで恋人に近い状態になってること自体に気付かなかったんだもん」
「友だちのつもりだったんだ?」
「うん。だからふつうに絵里花や貞子と話すときのこんな感じの口調で話してる。声は男の子の声使ってるけど」
「冬子の言葉って《ボク少女》の話し方だよね。一人称はボクだけど女の子の口調なんだもん」
「男の子っぽい話し方を試してみたら気持ち悪いからやめろと貞子に言われた」
「うん。それって想像するだけでも気持ち悪い」
 
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