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■夏の日の想い出・たまご(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-12-12
 
2015年夏、和歌山県新宮市。
 
今年和歌山では9月に国体・夏の大会が行われ、新宮市は女子サッカーと軟式高校野球(男子)の会場となっていた。新宮市内の幼稚園・保育所の年長さんたちが合同で歓迎のマスゲームをすることになり、夏休みに数回市内の対象全園児が女子サッカーの会場となる「やたがらすサッカー場」に集まって練習が行われた。
 
マスゲームでは男児は黒い服、女児は白い服を着て、男児が三本足の黒い八咫烏(やたがらす)の形、女児は3個の白い卵の形を作り出すように並ぶ。そして音楽に合わせて烏が羽ばたき、卵は回転するという図が描き出される。
 
その日、8月4日も市内の多数の園児が集まってきた。まずは本番でも使用する黒と白の服(リバーシブル)を渡して着てもらい、ホームポジションに並ばせる。
 
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指導する先生たちは場内を見て回り、隊形の乱れをチェックしては園児たちの位置を調整していた。
 
A先生が見て回っていた時、烏の足の部分を形作っている男児たちの中に、髪の長い女の子が混じっていることにふと気づく。
 
「君、女の子はここじゃないよ。こっちにおいで」
と声を掛ける。
 
一瞬近くにいた他の男の子たちが変な顔をした気がしたものの、本人は
「はーい」
と言って、その場所を離れる。
 
「あれ、そもそも君、なんで黒い側を外にしてるの。女の子は白い側を外に出すんだよ」
と言って、いったんその服を脱がせ、裏返しにして白の側を外にして着せた。
 
「このあたりに並ぼうか」
と言って卵の形を作っている女の子の所に連れていく。
 
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「君たちこの子を知ってる?」
「うん。おともだちー」
と言う女の子が数人いる。
 
「さくちゃん、ここに入ってもいいよー」
と言う子もいる。
 
「じゃ、君、ここで踊ってね」
と先生が言うと
 
「はい」
と、5歳の木花朔夜(きはな・さくや)は笑顔で答えた。
 

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同日8月4日、熊本県熊本市。
 
この2015年8月には結婚に伴う一時休業を表明しているアイドル歌手山村星歌が全国ツアーをしていたが、この日は熊本公演が予定されていた。
 
小学5年生の田中蘭は熊本城の公園でピアノ教室で知り合った友人たちと一緒にダンスの練習をした後、適当にパルコ界隈を歩いていた。ダンスの練習は4人でしたのだが、特にまとまって歩いている訳でもなく、お互い自由にパルコやハンズ付近を歩き回っている。
 
蘭は最初地下の無印を見ていたのだが、7階のヴィレッジヴァンガードに行こうと思い、エスカレーターを上がっていた。もうすぐ4階に到達するという時、数段前に乗っていた30代の上等なエンジ色のスーツを着た男性が何か封筒のようなものを落としたのを見る。
 
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男性は気づかずにそのフロアで降りて向こうの方に行く。蘭はその封筒を拾うとその男性の後を追いかけた。
 
しかし男性は意外に足が速い。
 
「そこの格好いい男の人!」
と蘭は大きな声で言った。
 
すると近くに居た男性が10人くらい、蘭の方を見た。
 
おお、自分が格好良いと思っている男が世の中、こんなに居るのかと感心する。
 
「そのエンジ色のスーツ着てる人、封筒落としましたよ」
と言うと、例の男性が自分の鞄を見てびっくりしたような顔をしてこちらに寄ってきた。
 
「ありがとう!助かった」
と言って、蘭から封筒を受け取る。
 
「なんかこれ重たい」
「うん。実は現金が入っていたんだよ」
と言って、男性は封筒を開けてみせる。
 
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中には札束がぎっしり詰まっている。蘭はこんな凄い量の札束が存在するのを初めて見た。
 
「君、小学生?」
「はい」
「200万円入っていたんだよね。御礼に1割で20万円あげたいけど」
 
に、にじゅうまんえん!?
 
と蘭は驚愕する。それって、母ちゃんの給料より多くないか?
 
「でも小学生にそんな金額を渡す訳にもいかないし、明日にも君のおうちに持って行くよ。住所と名前を教えてくれない?」
 
「あ、はい!」
と言って、蘭は男性が出したメモ用紙に自分の住所・名前・電話番号を書いた。
 
「あ、今気づいたけど、君すごく可愛い顔してるね」
と男性は言った。
 
ギョっとする。まさか、これってナンパとか言うやつ。えっと・・・イカのお寿司って何だったっけ??
 
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と考えていたら男性は更に言う。
 
「君、アイドルとかになる気無い?」
 
へ?
 
蘭は考えた。母ちゃんが言ってた。都会に行くと、女の子にアイドルにならないかとか声掛けて、裸にされてHなビデオとか取って、搾り取ろうとする男がいるから気を付けろって。まさか、こんな田舎でも・・・
 
と蘭が焦って考えていた時、男性は
「あ、ごめんごめん。僕はこういう者」
と言って名刺を蘭に渡した。
 
《★★レコード制作部JPOP部門統括課長・加藤銀河》
 
あら?この人は本物??★★レコードって大手じゃん!Hなビデオの話ではない???
 
「ほんとうは今から君のおうちに行ってお母さんに挨拶しないといけないんだろうけど、僕、これからコンサートに行かないといけないだよ」
 
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「母に挨拶って・・・アイドルにならないかという話ですか」
 
と蘭が言うと、加藤さんはちょっとびっくりしたような顔をして
 
「あ、いやお金を拾ってくれた御礼のことなんだけどね」
と言う。
「あ、そちらか」
 
「いや、もし君にその気があったら、ぜひアイドルの話もさせて欲しい。君って何かセンスいいんだよ。歌とかうまい?」
「そうですねー。学校のコーラス部には入っているんですけど」
「お、それは期待できそうだ」
 
「でも何のコンサートだったんですか?」
「山村星歌という子のコンサートなんだけど」
「わあ!見たーい!」
 
「何ならチケットあげようか? 少し見づらい席でもよければ」
「欲しいです!友だちと一緒でもいいですか?」
「うん。いいよ。何人?」
「4人なんですが」
「じゃ用意しておくから、18時に県立劇場に来て。僕か★★レコードの北川というのに声を掛けてもらったら入れるようにするから」
「北川さんですね! 分かりました!」
 
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ずっと後にローズ+リリーのバックバンドを務めることになるフラワーガーデンズのメンバーは全員が元々私と関わりのある子たちであった。それが各々偶然の作用によって知り合い、集結してバンドを形成するのである。
 
リードギター担当のラン(松元蘭:本名・田中蘭)は2004年4月3日に熊本で生まれた。この時私と姉の萌依、アスカ、従姉の明奈の4人で水前寺公園に行っていて、たまたま近くで産気づいた女性がいたので、その人を病院に運ぶお手伝いをしたのである。結果的にお産にまで立ち会うことになった。それで生まれたのが蘭であるが、この「蘭」という名前は実は蘭若アスカの苗字から1文字もらったものである。私やアスカと、彼女のお母さん・美子さんとはその後、ずっと年賀状のやりとりが続いていた。
 
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その美子さんから2015年8月に電話が掛かってきた時、私はびっくりした。★★レコードの加藤さんという人から、娘にアイドルにならないかと勧誘されたのだがと言うのだ。私は加藤さんなら信頼できる人ですよと言い、もしその気があるなら、加藤さんにも私の知り合いだと言っておくといいですよと伝えた。
 

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リズムギター担当のキキョウ(福井貴京:ふくいたかみ)は2006年8月18日に石川県輪島市で生まれた。
 
「苗字は福井ですけど、石川県生まれでーす」
というのが彼女の自己紹介の決まり文句になっている。
 
彼女は実は上島雷太先生と、元(?)作曲家・福井新一さんの間の娘である。福井新一さんはプロフィールを全く明かしていないため、多くの人が男性の作曲家と思っているが、実は女性であり、本名は福井玲花である。本人としては女と思われると舐められるし、男に負けない活動をしたいと思って男名前でずっと活動していたらしい。
 
そして実はゴーストライター嫌いな上島先生が使っている唯一のゴーストライターである。
 
上島先生と福井さんは2005年頃、交際していて、上島先生としては結婚を望んでいたようである。それで妊娠するようなこともしたのだが、その後ふたりは恋人としては破綻してしまい、福井さんは地元の能登に戻ってひとりで子供を産むことにした。子供は産んでよいと上島先生も言い、胎児認知したらしい。
 
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それで2006年夏に実家で産気づいた時、たまたま実家に誰もいなかったので、自分で車を運転して病院に行こうとしたら、途中で苦しくなってちょうど見かけた道の駅に車を駐めてしまった。そこにうまい具合に私や蔵田さん、鮎川ゆまなどが居て、彼女を病院に連れて行ってあげた。それで産まれたのが貴京である。
 
蔵田さんは図らずもライバルの上島先生の子供の出生をサポートしたのだが、そのことに蔵田さんはずっと気づいていなかった。
 
ところで彼女の名前「貴京」は本来「たかみ」と読むのだが、ほとんどの人から「ききょう」と読まれてしまう。しかも右京とか左京のような名前との類推で男の子と誤解されることも多かった。もっとも元々母親が結構男性的な人だし、本人もさばさばした性格なので、小さい頃はけっこう男の子たちと一緒に遊ぶことも多く、男の子たちと一緒に立ち小便なども平気でしていたらしい。
 
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「そのうち自分にもちんちんが生えてくるものと信じてたんだけどねぇ」
などと本人は言っていた。
 
「だってうちのお母ちゃんにもおちんちんあるし、と友だちに言ったら、後で母ちゃんから、めっちゃ叱られた」
などとも言っていた。
 
貴京は高校までは地元で過ごした後、2024年に東京の大学に出てくるのだが、そこで大学の先輩であった蘭(その当時はもうアイドルを引退して、スタジオミュージシャンに近い状態だった)と出会い、意気投合してフラワーガーデンズの源流バンドである「フラワーズ」を結成することになる。
 
なお、上島先生は福井さんにちゃんと貴京の養育費も送金していたのだが、それに加えてこの親子をサポートするため、福井さんの書いた曲を世に出してあげていた。その時、福井新一の名前で発表しても大してお金にならないので、先生はこれを自分の名前で出していたのである。印税は100%福井さんに渡していたのだが、おかげで親子は豊かな暮らしを送ることができて、貴京は小さい頃からピアノ、ヴァイオリン、フルートを習い、元々持っていた音楽的才能をしっかりと育てて行くことになる。
 
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このあたりの事情を知っているのは上島先生と奥さんのアルトさんの他には、雨宮先生と私と千里くらいのようである。
 

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ドラムス担当のジャスミン(浜田茉莉香)は2011年9月3日生。彼女は私の従姉・千鳥の娘で、つまり私の従姪にあたる(槇原愛やうちのあやめたちとはハトコになる)。当日私とマリは富山にライブをしに行っていたのだが、ライブ前に富山市内の千鳥の家で休んでいた時に彼女が産気づいた。そしてライブが終わった頃、生まれたという報せを受けた。
 
風の盆の日に生まれたので「まつり」から茉莉香と名付けられたのだが、本人もお祭り好きで、風の盆には必須の楽器である胡弓(こきゅう)も得意である。ジャスミンというのも本名の茉莉香から来たニックネームである(ジャスミンは漢字で茉莉花と書く)。
 
彼女は中学1年の時に同じ学校の友人たちに誘われてバンドに参加した。この時最初茉莉香はたまたまベースが居なかったのでベースを担当していて、ドラムスは男子のメンバーが打っていた。ところが市内の軽音大会に出た時、ゲストとして来ていたバレンシアの麩鈴が
 
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「君がドラムス打った方がいい」
とアドバイスした。
 
「えー!?でも私、腕力無いからあんなの叩けないですよ〜」
と茉莉香は言ったのだが、
 
「ドラムスは腕力で叩くものではないよ。大事なのはリズム感。ドラムスの子はむしろ、このベースの音を頼りに叩いてるでしょ?」
 
「あ、はい、実はそうです」
「君のベースは物凄くリズムが正確なんだよね。だから君がむしろドラムスを打った方が全体的にうまくまとまるよ」
 
その麩鈴のアドバイスでその後、茉莉香は男の子とパートを交代し、ドラムス担当になった。
 
「おお、弾きやすい弾きやすい」
と茉莉香のドラムスは好評であった。
 
「でも疲れます〜」
「やはり腕立て伏せ毎日100回だな」
「そんなにできません」
「最初の日は1回でいいよ」
「少しずつ増やしていくんですか?」
「次の日は倍の2回、その次の日は倍の4回・・・」
「それ6日目あたりから死にます」
 
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「腕立て伏せしてるとおっぱい大きくなるってよ」
「頑張ります!」
 
彼女は中学2年の時までこのバンドで活動。3年に進級した時にバンドは解散になったものの、今度はコーラス部の東京北部大会で出会った別の学校の子、山下瑞季と知り合い、ふたりで「ガーデンズ」を結成することになる。
 

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■夏の日の想い出・たまご(1)

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