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■夏の日の想い出・たまご(7)

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この曲のPVでは、私がオムレツを焼いて、それをマリが食べるというシチュエーションで撮影を行った。
 
最初はマリがうずらの卵を持って来て、それを私が小さなフライパンでオムレツに焼いて、磁器の小皿(香蘭社製10cm)に載せ、マリに渡す。
 
それを食べるとマリは鶏の卵を持ってくるので、私はさっきのより少し大きなフライパンで焼き、今度は同じ香蘭社の15cmくらいの皿に載せてマリに渡す。次にマリはアヒルの卵を持ってくるので、私はさっきのよりまた少し大きなフライパンで焼いて、18cmの皿に載せて渡す。次はガチョウの卵をオムレツにして、22cmの皿に載せて渡す。
 
そして最後にマリはダチョウの卵を抱えてくるので、私はそれを巨大フライパンで焼いて巨大オムレツにし、香蘭社の50cm特注品の大皿に乗せてマリの所に持って行く。その巨大オムレツを美味しそうにマリが食べている所でビデオは終わっている。
 
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これを公開した時は「マリちゃん、あれ最後まで食べたんですか?」という質問が来たが「マリのことを理解してくださっている方なら分かるはず」と私はお返事を書き、ネットでは「なるほどー」「質問する必要も無かったな」というツイートが出回っていた。
 

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ところでこの『たまご』の増補した部分のメロディーだが、それはこのような経緯で書くことになった。
 
それは政子と奈緒がふたりで楽しそうに『たまご』の歌詞を作ったのより一週間ほど前の8月3日のことであった。
 
その時期はちょうどローズ+リリーは制作作業の谷間で、私は日々マンションで様々な譜面の整理作業をしていた。
 
政子はだいたいお寝坊さんなのでお昼近くになって起きてくることが多い。おかげでこちらは午前中は仕事がはかどること、はかどること。その日も『枕を揺すれ』という曲のスコアをほぼ書き上げることができた。後は七星さんに見てもらってから風花に清書してもらおうと思い、いったんボールペンを置いて伸びをする。
 
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コーヒーでも煎れようと思ってお湯を電気ケトルで沸かしていたら、訪問者がある。麻央と佐野君のカップルであった。
 
上にあげて、今煎れていたコーヒーを出し、とりあえずお菓子の箱をひとつ開ける。
 
「かもめ伝説か」
と言って麻央が何か感慨深げなので
 
「何か思い出でもあるの?」
と尋ねる。
 
「震災の直前にさ、ボク仙台の友だちんとこに行こうとしてたじゃん」
と麻央。
「うんうん。それを佐野君が止めたんだったね。それで麻央は命拾いした」
と私。
 
麻央が会いに行くつもりだった友人・多田野君のアパートは津波で跡形も無くなってしまっていた。そして麻央が仙台に行く代わりに彼を東京に呼んだのだが、おかげで彼まで命拾いしたのである。
 
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「まあ、麻雀のメンツが欲しかっただけだけどね」
と佐野君。
 
「あの時、多田野が東京に出てくる時、おみやげに持って来たのがかもめ伝説だったんだよ」
 
「へー!」
 
「カモメと名の付くお菓子と言うと圧倒的に『かもめの玉子』が有名だけど、この『かもめ伝説』もあるんだよねー」
 
「でもこれ、茨城のお菓子かと思った」
「宮城県でも売っているんだよ」
「ほほお」
 
「これ『ひよ子』のコピー商品って雰囲気だよね」
「まあ、似てるけど、顔が違う」
「あんこの色も違うね」
と麻央は割って食べながら言う。
 
「うん、ひよこの餡はもう少し白っぽい」
 

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「多田野が言ってたんだよね。この『かもめ伝説』を買って店を出たら、何かカモメが妙に鳴いてて、変な感じがしたって」
 
「異変の予兆を感じ取っていたんだろうね」
「動物はそういうのに敏感だからね」
「磁気の変動とかがかなり起きているはずだけど、人間でそういうの感じ取れる人は少ないんだ」
 
「青葉は震災の日、凄く頭痛がしていたとか言ってたかな」
「ああいう敏感な子は感じ取るんだろうね」
 
「あ、そうか。『かもめの玉子』の方は青葉の居た大船渡が本場だね」
「うんうん。あそこ発祥だよね。広い範囲で売られているから、仙台銘菓か何かみたいに思っている人もいるけどね」
 

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「でもカモメって卵産むんだっけ?」
と唐突に佐野君が発言する。
 
「卵産まなかったらどうやって増えるのさ?」
と麻央が呆れたように言う。
 
「いや、赤ちゃん産むんじゃないよなと思って」
「カモメは哺乳類ではない」
「あ、そうか。赤ちゃん産むのは哺乳類か」
「敏春、小学4年生くらいから性教育受け直しなよ」
と麻央は言っている。
 
「哺乳類以外で赤ちゃん産むのは、いわゆる卵胎生の生物。サメの中には交尾までするものがいるよ」
と私は言う。
 
「へー!魚って、メスが卵産んで、そこにオスが精子を掛けるのかと思った」
と佐野君が驚いたように言う。
 
「メスの体内で受精させて、育ててから体外に出すんだよね」
「魚でもそういうのがあるのか」
 
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そんな話をしていた所で、やっと政子が起きてくる。もう11時半だ。昼過ぎまで寝ていることもあるから、まだマシな方か。
 
「政子ちゃん、おじゃましてるよー」
と麻央が声を掛ける。
 
「いらっしゃーい」
と言いながら政子はあくびしつつソファに座る。パジャマ姿だしボーっとしている感じだが、麻央と佐野君ならまあいいだろう。
 

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「そういえば麻央たち、いつ結婚するの?」
と私は尋ねた。ふたりは最近ほとんど同棲状態になっている。
 
「なんかアパート2つ分の家賃払い続けるのももったいないし、ボクのアパート引き払っちゃおうかなと言っているんだけどね」
と麻央。
 
「うん。それでいいと思うよ。籍は?」
「籍は大学院を出てから入れようという双方の親との約束」
「なるほど」
「それまではちゃんと避妊もして、できちゃった婚にはしない、というのも俺が麻央の父ちゃんと約束した」
と佐野君は言っている。
 
「うん。そういうきちんとしたのがいいと思う」
と私も彼らの方針に賛成した。
 
「でも妊娠なんてかったるいからさ、子供作る時は敏春が妊娠しない?と言ったんだけど、無理と言われた」
と麻央。
 
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「俺子宮無いし」
と佐野君。
 
「まあ男が妊娠するなんてのは、タツノオトシゴくらいだろうね」
と私は笑って言う。
 

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「あれ、どういう仕組みになっているんだっけ?」
と麻央が訊く。
 
「メスが輸卵管をオスの育児嚢の中に差し込んで、そこに卵を産み付ける。すると、オスは自分の育児嚢の中に精子を放出して自分の体内で受精させる」
 
「オスの体内で受精するのか!」
 
「そして育児嚢の中には胎盤状の組織ができて、そこから卵に栄養を供給するし、免疫などもそれで付くらしいね」
 
「じゃ、ほんとに妊娠してるんだね?」
 
「一応生物学的には卵胎生ではなく卵生に分類されるんだけど、ほとんど妊娠だと思うよ」
 
「あれ、単に保護しているだけじゃなかったんだ?」
「うん。昔は単にそこに入れているだけと思われていたんだけど、実際に栄養を与えているし、呼吸とかもしやすいようにしてあげていることが分かってきた」
 
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「本当にタツノオトシゴってオスが妊娠する生き物だったのか」
 
「育児嚢の中にメスが輸卵管をインサートして卵を産み落とすというのも凄いね」
 
「うん。輸卵管が、男女逆に考えるとペニスみたいなものだね」
 
「人間もそれでいけたらいいのにな」
などと麻央が言う。
 
「ボクが敏春の体内に卵子を産み落として、それで敏春は体内で十月十日子供を育てる」
 
「大変そうだ」
と佐野君。
 
「普通の交尾する生物だと、オスはメスの中に射精した後、数日したらまた別のメスの体内に射精できるけど、タツノオトシゴだと、メスはオスの中に卵を産んだ後、少し経てばまた別のオスの中に卵を産み付けられるらしいよ」
 
「やはり男女が逆転してるな」
 
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「人間も男が妊娠するのなら、あちこちの男に卵子を産み付ける女が出てくるだろうなあ」
 
「ああ、ありそう」
 
「私も男の子の中に卵子産み付けたーい」
と政子が言っている。
 

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そんな話をしていた時に、政子はやっと目が覚めてきたようでテーブルの上に『かもめ伝説』の《空き箱》があるのに気づく。
 
「あ、お菓子残ってない」
「ごめーん。何か出してくるよ」
と言って、私は席を立つが
 
「冬、どうせならケンタッキー食べたい」
と政子は言い出す。
 
「まあいいよ。お昼だしね。どのくらい食べる?」
 
「パーティーバーレルくらい入りそうな気がする」
「元気だね〜」
「さっき、ケンタッキーが山ほど積み上げてあるのを食べようとした所で目が覚めちゃったのよ」
「なるほど〜」
 
「じゃ佐野君もいるし、パーティーバーレル2つ買ってくるか」
 
と言って私はマンションを出た。恵比寿駅前のケンタッキーに行ってくることにする。
 
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マンションから恵比寿駅までは普通に歩いて10分ちょっとである。私は気分転換でもするかのように、少しゆっくり目に歩いて行った。
 
パーティーバーレル2つと頼むと、さすがにすぐは準備できないようで、少しお待ち頂ければというので、席に座って待つことにする。それでテーブルの所に座ってふと、周囲を見回したら、見知った顔を見る。視線が合ったので私は席を立って、彼のそばまで行った。
 
「こんにちは」
と私は笑顔で挨拶する。
 
「あ、こんにちは」
と言って向こうは何だか焦ったような顔。何だ何だ?
 
「先日は、阿倍子の件ではありがとうございました」
と細川貴司さんは言った。
 
「いえ。たまたま行き合ったので、お手伝いしただけのことですから。女同士の助け合いですよ」
 
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「すみません。あとで妹からも千里からも、阿倍子をひとりにするなら、どうして事前に入院させていなかったんだ?と叱られました」
 
それは実は私もあとで考えたことであった。
 
それで少し話していた時、23-24歳くらいの女性がやってくる。細川さんに向かって
 
「ごめーん。遅れた」
と言ったものの、そばに私が立っているのを見て
 
「あなた誰?」
などと言う。
 
私はピーンと来た。これは浮気しようとしていたのか。しかし奥さんがこないだ赤ちゃん産んだばかりなのに!?
 
と思ったが、次の瞬間、別のことも考えた。
 
千里は度々、細川さんの浮気未遂を潰しているようだ。彼女としては自分のライバルを排除しているだけなのかも知れないが、結果的には奥さんのための行動にもなっている。その千里は今ニュージーランドに日本代表の合宿で行っている。それで千里の監視の目が無い隙に浮気しようとしたのか?
 
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そこまで考えると私はその女性に向かって言った。
 
「私、この人の妻ですけど、あなたは?」
 
「えー!?奥さんがいたの?」
とその女性。
 
私は細川さんの方を見て言う。
「あなた、この人はどなた?」
 
細川さんは、半ばパニックになっている感じだ。
 
「あ、えーっと・・・」
などと声を出したまま、何を話せばいいのか分からない様子。
 
「取り敢えず、帰って頂けません?ちょっと夫と話したいので」
と私はその女性に言った。
 
「分かった。帰る」
と言って、その女性は怒った様子で帰って行った。
 

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