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■春足(11)
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「敷地は何メートル×何メートル?」
と千里姉が訊く。
「35m×21m」
と青葉が答える。
「ちょうどバスケットコートが取れる」
と千里が嬉しそうに言う。バスケットのコートは28m×15mである。
「なんでバスケットコート作らないといけないの〜?」
と青葉が言う。
「25mプールだって取れるじゃん」
と千里が言うと
「おお。それは良い。お金はあるんだろうし、プールは作ろう」
と桃香まで言い出す。
「でも津幡行けば24時間泳げるから」
と青葉。
「でも津幡まで1時間かかるぞ。それにたくさん練習して疲れている身体で運転して帰って来るのは危険だ」
と桃香が言うと
「ああ、それは私も心配していた」
と朋子まで言う。
「よし、だったら南田さん、地下2階に25mプール作ってよ」
と“千里が”言った。
「いいですよ。費用は掘削代・基礎工事代別で浄化設備付き3500万もあれば作れますから」
「青葉にとっては、おやつ代程度だな」
と桃香。
「でも地下2階なの?」
と桃香が訊くと
「地下1階にはバスケットコートを作るからね」
と千里。
「え〜!?」
やはり、ちー姉、バスケットコートを作りたい病なのでは?
そういう訳で、うやむやの内に、地下にバスケットコートとプールができることになってしまった。バスケットコートは天井7m, プールは天井3m+水深2mとる。
それでB1/B2間の床の厚さ、プールの下の基礎まで考えると14mも地下を掘ることになる。地下の部分は「私が言いだしたから、私がその分の建設費を払う」と千里姉が言ったので、もうお任せすることにした!
「だけど津幡から帰ってくる時の疲労問題はどっちみちあるよ。青葉、お金はあるんだから、ドライバー雇いなよ」
「そうだなあ」
「事故でも起こしたら、放送局も首になるし、水連からも謹慎処分くらうぞ」
と桃香は言う。
うーん。水泳は辞められるものなら辞めたいのだけど、クビと退会では大違いだ。
「青葉、お友達も後輩もたくさんいるし、誰か2人くらい頼んだら?」
と朋子も言い出した。
「2人?」
「1人では無理だよ。その本人が過労で倒れる」
「確かに」
「だから私のドライバーは今3人体制」
千里姉のドライバーが3人必要なのは、千里姉が3人いるからでは?と青葉はツッコみたかったが、母も桃香もいるので言わなかった。
しかしドライバーの件は、明恵たちに、心当たりを尋ねてみようと思った。
その件は置いといて!“地上部分”の間取りをみんなで検討する。
「なるほど6LDKの平屋建てですね。住人の方の吉方位は分かりますか」
「こうなっています」
と言って、青葉は一覧表を提示した。
朋子 1960,02.03 艮(東)
桃香 1990.04.17 艮(東)
青葉 1997.05.22 震(西)
彪志 1993.11.15 兌(東)
千里 1991.03.03 乾(東)
つまり青葉だけが逆である。
なお子供たちはこのようになっている(緩菜は女として見る)。
早月 2017.05.10 坎(西)
由美 2019.01.04 兌(東)
京平 2015.06.28 震(西)
緩菜 2018.08.23 乾(東)
「東四命の子と西四命の子を同室にする?」
「由美と緩菜はいいけど、京平と早月は男女を同じ部屋には入れられない」
「面倒くさいから、京平君は性転換しよう」
「だーめ」
「あるいは兄妹だから気にしないことに」
京平は母親が千里で、早月は父親が千里なので、ふたりは“ツイスト兄妹”である。
「小さい内はいいけど、中学生くらいになったらそうはいかない」
「確かに妹と同じ部屋ではオナニーできんな」
と桃香も言っている。
「オナニー以前にお兄ちゃんのいる部屋で着替えたくないよ」
と千里。
「あの子たちの関係がよく分からないんだけど」
と朋子が言うので、千里は子供たちの関係を書き出す。
桃香を母とする子→早月・由美
桃香を父とする子→来紗・伊鈴
千里を母とする子→京平・緩菜
千里を父とする子→早月
由美・来紗・伊鈴は、京平・緩菜と遺伝子的な関係がない(*7)
(複雑になるので、小空・小歌・珠那・美甘は省略した)
(*7)本当は緩菜の遺伝子上の父は信次なので由美と緩菜は同父異母姉妹なのだが、そのことに千里はまだ気付いていない。
京平と由美は遺伝子的にも法的にも無関係で男女なので実は結婚可能である。それで2人に恋愛関係が生じないように気をつけようと、桃香と千里は話しあっていると朋子にも言っておいた。
千里が書き出した表を見て朋子は
「あんたたち、どちらも父親・母親の双方になってるんだ。難しい」
と言っている。桃香も
「実は私もよく分かってない」
と言っている。
「子供部屋は季里子の家のように小さな部屋4つにするか」
「ああ、それだと何とかなるかも」
それで南田も交えて、朋子・桃香・千里・青葉で意見を出し合っていたのだが・・・・・
桃香が言った。
「千里、1万円くれ」
「なんで?」
「私は1万円持ってないからだ」
「まあいいけど」
と言って、千里姉はバッグ(札束が400-500枚詰まっている)の中から1万円札を1枚取り出すと、桃香に渡した。
すると桃香は、その1万円札を青葉に渡す!
「青葉、これでおやつと今日の晩御飯を買ってきなさい」
「なんで〜!?」
「君は貧乏性(びんぼうしょう)すぎて、全く話が進まないからだ」
「え〜〜!?」
すると千里も言った。
「賛成。青葉の意見に沿って家のレイアウト決めたら最終的に2DKになってしまいそうだ」
「えーっと・・・」
「青葉、今晩のおかずは、鰤(ぶり)か鰹(かつお)がいいな」
と朋子まで言っている!
「おやつは、ミッシュローゼのケーキが好きだ」
と千里姉。
それって、イオンモールまで行って来いということ!?
(順調に行っても片道30分近く掛かるし、この道は混雑しやすい)
「ついでにチョコの大袋も」
「はいはい」
それで青葉はマーチ・ニスモに乗ると、新高岡駅そばのイオンモール高岡まで出掛けた。
そして、ヤケクソでお魚をたくさん(鰤・鰹・鮪・鮭・鯛・鮃・イカ・甘エビなど)、すし太郎、上等の焼き海苔、高そうなお吸い物の素、それにキットカットの大袋、三種のチョコの大袋、たけのこの里の大袋、お茶のペットボトルと買ったら、それだけで5千円くらい行った。ちょっと買いすぎたかなと思ったか、どうせ千里姉のお金だし。
そしてミッシュローゼのケーキを適当に5つ買って帰った。余ったお金でガソリンを入れた!
結局往復2時間近く掛かったが、青葉が戻ると
「青葉、間取りが決まったぞ」
と桃香姉が言っている。
試し書きしたホワイトボードが10枚くらい転がっているし、下書きの紙は30枚くらい散乱している。それで最終稿として見せられたのが↓である。
西側は太陽光を取り入れられる全面掃き出し窓で、冬季は防寒のため雨戸も立てる。
LDKの"15J(24J)"というのは、普段は15畳で使うが、(コロナ終息後)人がたくさん来た時は、仏間の全ての襖(ふすま)を外してしまえば合わせて24畳として使えるという意味である。北陸で仏間というのは、基本的に玄関を通らずに外から直接入れて、お祭りの時などにお客様(わりと通り掛かりの人!)を接待できる部屋を意味する。この直接入れる仏間があるのは、北陸の家のひとつの特徴である。
千里姉が紅茶を入れてくれたので、それを飲みながら、青葉が買ってきたケーキをみんなで食べながら、青葉はいくつか質問をした。
「書庫とかピアノルームとかあるけど」
「青葉が段ボール箱に入れている霊関係の本は本棚に並べた方がいいと思う。あとコンメンタールや判例集とか、様々な外国語の辞書とかも並べよう」
「まあいいけど」
「なぜ青葉の部屋には漫画が無いのだ」
「読まないし。ピアノルームというのは?」
「青葉は作曲で毎年何億も稼いでいるんだから、そのメインのお仕事のための部屋だよ。夜中でも気にせず音を出せる部屋は必須だと思う。だから防音室を作ってそこにピアノとか様々な楽器を収める」
「商売道具は大事にしないと」
と桃香。
「ピアノとか持ってないけど」
「S3Xくらい買ってあげるから、置いときなさい」
と千里。
「そんな大きなピアノが入る?」
「16畳あれば充分。S3Xを四畳半に置いたら反響で耳が、いかれるだろうけどね」
「そもそも置けない気がする」
「いやギリギリ置ける」
S3Xは186cm×149cm なので、椅子の分を50cmとして240cm程度になるから四畳半(狭い江戸間でも264cm×264cm)には“斜めに置けば”ギリギリ入るはずである。ただ、他には(常識的には)何も置けないだろうし、かなり強い吸音板を貼り付けないと、反響が凄まじいだろう。
「私の部屋が2つあるのはどうして?」
「ふだんは青葉は東側の部屋で寝泊まりすればよい」
「ふだんは基本的にはこの家の南半分だけで生活する」
「私か桃香が来ている時はお母さんの北側の部屋を使う」
と千里。
↓普段/千里or桃香が来ている時
「そして千里・私・更に彪志君まで来ている時は北側の部屋を使う」
と桃香。
↓千里&桃香&彪志が来ている時
「来紗ちゃん・伊鈴ちゃんが来た場合は、西四命の来紗は東の青葉の部屋、東四命の伊鈴はお母さんの隣の部屋に泊めればよい。季里子ちゃんは桃香と一緒に寝ればいいし」
と千里。
「なぜ私移動するの〜?」
「東側の部屋はリビングに近いしお母ちゃんの部屋とも近いから、お母ちゃんと青葉だけの時は近くで寝泊まりした方がいい。でも彪志君が来ている場合、東側の部屋は本命卦が兌の彪志君には絶命の方位ですごくきつい。全然休めない。北側の部屋なら、彪志君は禍害だから、そんなに辛くない」
と千里が説明すると
「ああ、それなら分かる」
と青葉は言った。
「私にはさっぱり分からん」
と桃香。
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