【女子中学生の生理整頓】(6)
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(C) Eriko Kawaguchi 2022-06-27
4月8日は部活の開始日でもあった。
剣道部には男子6人、女子5人の新入部員があった。男子には未経験者も2人含まれていて、勧誘パフォーマンスの効果があったようである。女子の5人というのは下記である。
羽内如月(はない・きさらぎ)N小・1級
月野聖乃(つきの・きよの)N小・2級
御厨真南(みくり・まな)N小・2級
清水好花(きよみず・このむ)P小・4級
高山世那(たかやま・せな)2年生・−−
新1年生の4人は全員、小学校でも剣道部に入っていて、スポーツ少年団の登録もあるので、すぐにS中女子剣道部所属として登録した。清水さんは身長が170cmあり、小学校時代はバレー部と兼部で、中学ではどちらにするか迷っていたらしい。でもオリエンテーションでのパフォーマンスを見て、ここの女子剣道部は強そうと思い、入る事にしたらしい。
セナについて千里(千里R)・玖美子・沙苗は話し合い、敢えて
「小学校では部活はしてませんでした」
と申告させた。
すると岩永先生は、新規登録者として、高山世那・女子を、スポーツ少年団のS中女子剣道部に登録してくれた。
剣道歴については、小さい頃町の道場に通ってただけで、級位も持っていないと申告したのだが、岩永先生に見てもらうと
「君は4級くらいの力があるよ」
と言っていた。
ということで、清水さんのちょうどいい練習パートナーになりそうである。セナは身長も167cmで清水さんに近いので体格的にも、やりやすいだろう。
(セナは小学校の時、顧問の先生から5級程度と言われていたのだが、男子基準で5級だったので、女子基準では4級程度に見えたのだと思う。1年間のブランクが無かったら3級程度に見えたかもしれない)
女子バスケット部には、4人の新1年生が入ってきた。
森田雪子(もりたゆきこ)
平井雅代(ひらいまさよ)
道城泰子(みちしろたいこ)
坂田伸代(さかたのぶよ)
「やった!部員が8人になった。試合中の交替ができる!」
と部長の久子が喜びの声をあげると、新入生たちは顔を見合わせて、不安そうな顔をしていた!
4人ともミニバスの経験者でスポーツ少年団の登録もあるので、顧問の伊藤先生はすぐに4人をS中女子バスケットボール部に登録した。
なおバスケット部は3年1組、剣道部は2年1組で会合をしていたのだが、この日バスケット部の会合に千里(千里B)は出席していなかった。
↓S中校舎略図
3年1組と2年1組は上下の関係で、距離は3m程度しか離れていないので、RとBは両立できない。なお1年1組の教室は職員室から43mほど離れている。生徒更衣室はメイン体育館の方に近い。
バスケ部顧問の伊藤先生が職員室に戻ると、千里と玖美子が剣道部顧問の岩永先生と何か話しているのに気付いた。
そういえば村山さんは剣道の方でもたくさん賞状取っていたなと思い至る。今日は剣道部の会合の方に出てたから、こちらには来なかったのかなと思った。それでそちらの話が終わって、千里と玖美子が退出しようとした所で声を掛けた。
「村山さん、ちょっと」
「はい」
と言って、千里が寄ってくる。玖美子は出て行く。
「言い忘れてたけど、新人戦には出てくれて大活躍だったんだね」
「あれ、私うっかり遅刻してしまって。剣道の午前中の試合に出られなかったんですよ。それで午前中だけこちらの助っ人をさせて頂きました」
「念のため確認するけど、村山さんって女子だよね」
「女子ですよ〜」
「生徒手帳見せてもらえる?」
「これですか?」
と言って、今朝もらったばかりの生徒手帳を見せる。
セーラー服の写真がプリントされており、性別は女と記載されている。
「念のため保険証確認させて」
「はい」
と言って、千里は自分の健康保険証を提示した。
ちゃんと、村山千里・女、と記載されている。
伊藤先生は頷いていた。
「村山さん、またお願いすることもあるかもしれないからさ、良かったらバスケット連盟に登録させてくれない?登録費用は部費から出すから」
「登録するだけならいいですよ」
それで伊藤先生は、千里の生年月日を確認した上で、バスケット協会に“新規登録”した。つまり、S中女子バスケット部に、“村山千里・男”という登録と“村山千里・女”という登録が一時的に同居する結果となった。
これはさすがに後日、バスケット連盟から問合せがあった。
伊藤先生はこう答えた。
「昨年は本人が男子の試合に出たいというので、やや強引に男子として登録させてもらったのですが、本人も妥協して、普通に女子の試合に出ると言うので、女子としてそのまま登録させて頂きました」
「性転換したとかではないんですね?」
「違いますよ。普通の女子生徒ですし、法的にも女性ですよ」
「だったら男子としての登録は削除してもいいですか」
「そうですね。性別が違っていると結局出場できませんし」
ということで、バスケット協会の「S中女子バスケット部選手・村山千里・男」という登録は削除されてしまった。でも伊藤先生は千里に古いidカードの返却は求めなかったので、その男子選手としてのidカードは2006年11月にN高校で宇田先生が回収するまで、千里は所持していたのである。
なお千里はスポーツ少年団の登録は小学校時代から女子である。
伊藤先生が呼び止める前、千里と玖美子が岩永先生と話し合っていたのは、実は沙苗の性別問題である。沙苗は昨年の春・夏の大会では男子として出たものの、新人戦では女子としての出場が認められた。この新人戦での出場を“前例”として、正式に女子として登録させてもらえないかと、剣道連盟に打診してみようということになったのである。
この打診は、結果的に新人戦での沙苗の出場許可が取り消され、S中の団体優勝も取り消されるリスクもある。
「その時はそれでもいいと思います」
と玖美子も千里も言った。
武智部長も同意したので、岩永先生は連盟に打診してみた。すると取り敢えず北海道連盟に上げて検討するということだった。
4月15日(木)、岩永先生に、
「原田さんの医学的検査をさせて欲しい」
という連絡があったので、本人・保護者の同意のもと、翌日16日(金)、岩永先生、母親の智恵、そして友人として千里が付き添って、指定されたA医大病院に向かった(沙苗と千里は公休になる)。
(千里Gは4/14に、きーちゃんに呼び出され、4/15に東京に移動している)
A医大で北海道剣道連盟の医学委員・阪口循子さんという方と会い、名刺を頂く。
「取り敢えず検査を受けて頂いて、その後少しお話しましょう」
と言われた。
「検査の中には少し不快なものもあるかもしれませんが」
「それは構いません」
岩永先生と阪口さんが、病院内のカフェで話している間に、沙苗は母・千里に付き添ってもらって、渡されたカルテの順番に病院内を回った。
なお、今日は沙苗も千里もセーラー服である。
最初に身長・体重・バスト(トップ・アンダー)・ウェスト・ヒップ・足のサイズ・肩の幅を測り、個室内で腕の数ヶ所の外周、足の数ヶ所の外周を測定。更に両手の指の長さも測られるのでびっくりした。その後、脈拍・酸素量・血圧を測定して採血された。
「指の長さまで測られるとは思わなかった」
と沙苗が言うと、千里は言った。
「男女で指の長さが違うからだよ」
「そんなもの?」
「後で岩永先生の指とか見てみなよ。女性の指は、人差指が薬指より長いか、せいぜい同じくらいの長さなんだけど、男性の指は、人差指より薬指のほうが長い」
「そうなんだ!?」
「ほら、私の指は人差指のほうが、薬指より長い。お母さん見せて下さい」
「うん」
「お母さんの手も人差指が長いね。これは女性の指。沙苗の手は人差指と薬指がほとんど同じ長さ。これは少なくとも男性の指ではない」
「そんな所に性差があったなんて知らなかった!」
と言いながら、沙苗は、私、薬指が長くなくてよかった!と思った。
それと同時に、千里って、やはり体質的に女の子なんだなあとも思った。
何か測定具のある部屋に案内され、ベッドに寝て腕や足に電極を付けられ、何か測定された。(電気抵抗から筋肉の量を測定したもの)
運動能力テスト!?を受ける。
左右の握力、背筋力を測り、シャトルランをやらされた!
「疲れたぁ」
「お疲れ、お疲れ」
30分休んでから全身のレントゲン写真を撮られた上で、MRIに行く。ここで沙苗は1時間近く検査されていた。多分、体内のどこかに睾丸が温存されてないかをチェックしてるんだろうなと千里は思った。睾丸って丈夫だから、たとえ足の先にあっても、男性ホルモンを生産し続けるみたい(*20).
全身のレントゲンを撮ったのは骨格の発達具合を見るためだろう。あの子、どうやって入手してたのか知らないけど、どうも小4頃から女性ホルモン飲んでたみたいだから(だから声変わりが来てない)、骨格は多分女性的だろうと思う。
既に男性的に肉体が発達し、男子選手として身体を鍛え上げている人は、たとえその後性転換手術を受けたとしても、女子選手として認めるのは困難だろう。朝青龍みたいな体格の人が性転換手術を受けたから女子サッカー選手になりたいと言っても、さすがに拒否されるのでは、と千里は思った。沙苗は男性的な発達が全く無いから半陰陽に準じて扱ってもらえる可能性があると千里は考えていた。
セナはいったん男性的に発達してしまっているから骨格を作り替えでもしない限り(換骨奪胎!?)厳しいけど、あの子は大会に出られるほどまで強くなる可能性は低い気がする。
(*20) ペニスと陰嚢は取って女性状の外陰部になりたいけど、睾丸は残したいという人が睾丸を大腿部に移動したりするケースがある。こういう人は男性ホルモン支配下にあるので、クリトリス刺激で射精が起きる。むろん精液に精子は含まれない。
1時間くらい待合室で待つが、この時、沙苗は岩永先生に
「先生指見せてください」
と言い、その指を見て頷いていた。
先生は訳が分からないようだったが、医学委員さんは微笑んでいた。沙苗が検査を受けている間、岩永先生は沙苗の学校での生活について話をしていたようであった。
千里は言う。
「この子、私と御近所で、よく近くの神社の境内で遊んでいたんですよ。当時からみんな、彼女をほぼ女の子扱いしてましたね。彼女もスカート穿いてることが多かったですよ」
「なるほどですね」
正確には沙苗はスカート穿いていたり、女物の和服を着ている時だけ“さなえ”と呼ばれていたのである!が、そういう細かい問題までは言わずにおく。
「腕力とかも普通の女の子並みだから、雪掻きとかの力仕事には参加してなかったですね」
とも千里は言ったが、どうもこちらのほうが重要だったようだ。
「小学校の頃も、男女に分かれて、男子はわりと重労働、女子は軽作業、なんて時には『沙苗ちゃん、こっちおいでよ』と言って呼んで女子の方に参加させてました。実際、男子の方に参加すると、足手まといになったり、時には危険な場合もあったみたい」
「ああ」
「この子、6年生で1級、昨年は初段になりましたけど、元々腕力が無いから、それを補うためにテクニックとかを鍛えたみたいですね。だから太刀筋がきれいだから、1級・初段に認定してもらったんですよ」
「なるほどー」
「だから小学生の時、1級は取ったのに、普段の練習では、2級・3級の男子たちに簡単に負けてましたね。男子とはパワーが全然違うもん」
「男子と女子の対戦ではそうなるだろうね」
「昨年春の大会では3位になりましたけど、あれは対戦した男子の剣士たちが、女と思って甘く見たから勝てたんだと思いますよ。向こうが本気なら勝てる訳ないです」
「そういうことか!」
と医学委員さんは納得していた。
「実際夏の大会ではBEST8までしか行ってませんしね〜」
「ああ、そうみたいね」
と医学委員さんは何かのファイルを見ながら言った。
「小学校の時はあんなに上まで行ったことないんですよ。小学校の時は普通に紺色の道着つけてたから、相手も普通に男と思って対戦してたんだと思います。中学に入ってから白の道着に変えて、見た目も女にしか見えないから、対戦する男子は本気になりにくいんですよ」
「まあ女子相手には自然と手加減してしまうだろうね」
と医学委員さんも言っていた。
「あまり強く打って怪我させたらとか思っちゃいますもん」
「確かに確かに」
婦人科の検診を受ける。
最初に全部服を脱いで下さいと言われ、裸の状態を女性の婦人科医が観察した。
「あなた、ペニスは?」
「ほぼ消滅しました」
「切断したの?」
「自然に小さくなってしまったんですよ。見ていいですよ」
と沙苗が言うので、沙苗は内診台!に乗せられて、股間を観察された。
そこには陰裂が見られ、ペニスや陰嚢などは観察されない。
「まるで女の子のお股のように見えるんだけど、性転換手術したの?」
「身体に一切メスは入れてませんよ。ペニスはその割れ目ちゃんの中にあるんです」
「陰裂を開いていいですか?」
「どうぞ」
それで開いて見る。医師は「あれ?小陰唇が無い」と思った。しかし、陰裂の内部にはクリトリスと思われる突起がある。
「女の子に似た形だね」
「ペニスが小さくなりすぎて、体内に埋もれてしまい、排尿に障害が起きていたので、それを改善するための処置をしてもらっただけです」
「へ?」
それで沙苗は内診台に乗せられたまま!S医大で受けた治療の内容を説明した。
・尿が排出される方向が不安定になっていたので、体内に埋もれているペニスを引っ張って外に引出し、亀頭を露出させた上で、手術糸で固定する。それで固定した尿道口の方向(斜め後方)におしっこは排出されるようになった。亀頭を露出させてから固定したのは、包皮に覆われていると尿の排出方向が予測つかなくなるのと、恥垢が溜まるからである。
・排尿の際、かなり広い範囲が濡れてしまい、拭くのが大変だったし不衛生なので、陰嚢を畳んで大陰唇状にして手術糸で固定した。これで固定されたペニスがこの疑似大陰唇の中に隠れるので、排尿の際に濡れるのは、大陰唇内に限定され、排尿後に拭く範囲が狭くて済むようになった。
「結果的にほとんど女性の股間に見える」
「そうなんですよねー。だからこれしてもらってから凄く精神的に安定しました」
と沙苗が言うと、先生は頷いている。
「メスを入れずに糸で縫合しただけだから、これって、二重まぶたの加工なんかと同じ、プチ整形なんですよ」
「確かにプチ整形だ!そしてこれタックだよね」
ああ。性別検査をするだけあって、タックのことを知っているんだと思う。
「そうなんです。タックと同じです。通常のタックだと接着剤で固定するから数日しかもちませんけど、これは手術糸での固定だから、数年は持つだろうということです」
「うん。そのくらい持つと思う。一応ペニスのサイズ計らせて」
「どうぞ」
それで先生は沙苗の大陰唇を開き、中に隠れているマイクロサイズのペニスの計測をしていた。
「外に出ている部分が5mm, 直径は3mmかなあ」
「そんなものでしょうね」
「尿道が付いてなかったらクリトリスにしか見えない」
「自分ではクリトリスだと思うことにしています」
「うん。それでいいと思う」
内診台を戻してから先生は尋ねた。
「ペニスがいちばん長かった時期って何cmくらいだったか分かる?」
「たぶん小学3年生の頃かなあ。よくは分かりませんけど、4-5cmくらいでしょうか。昨年春にS医大で最初に測られた時3.2cmと言われたんですけど、いちばん長かった頃でも、その時期より少し長かった程度という気がするので」
「4年生頃から縮み始めたの?」
「その少し前、3年生頃から、こっそり女性ホルモンを飲み始めたので」
「なるほどねー。でも女性ホルモンの入手先は?」
「最初の頃はお小遣いでエステミックス買って飲んでたんです。でもあれ高いし、売っている所も少ないから留萌では入手しづらくて。そんな時、私がエステミックス飲んでることに気付いた、MTFの友人が、男に戻る気無いなら、いっそエストロゲン飲めばいいよって言って。それで彼女が女性ホルモンの入手ルートを持っていたので、分けてもらって(*21)、4年生の頃からエストロゲンを飲んでたんです。やはりエステミックスは男性化を停める程度の力しか無かったみたいだけど、エストロゲンを飲むようになって、乳首が立ったりするようになって脂肪も女性的に付くようになった感じです」
「ああ」
「ペニスがいちばん長かった頃、睾丸はどのくらいのサイズだった?この中から選んでくれる?」
と先生は言って、たくさん楕円球のブラスチック製模型が入った箱を渡す。沙苗は何個か握ってみていたが
「このくらいかな」
と言って、20という印字(*23)のされた玉を取りだした。医師は頷いていた。
(*21) 沙苗は実は小学4年生頃から“夢の中で”千里が自分に女性ホルモンの錠剤をくれたり、注射をしてくれるシーンを見るようになった。最初はただの夢かと思っていたのだが、本当に乳首が立つようになったし、睾丸が小さくなった気がしたし、“女性的衝動”を感じるようになって、同級生の男子をまともに見られない気分になってきたので“夢の中”の女性ホルモンが“効いている”ことを認識した。
リアルの千里が本当に女性ホルモンの錠剤をくれたのは6年生の10月が最初だが、その後、夢のほうは見なくなった。リアルの千里は沙苗がS医大で正式にGIDと診断され、女性ホルモンを処方してもらえるまで女性ホルモンの錠剤をくれていた。
(*23) 長径20mmの楕円球である。長径が20mmの睾丸は統計的に短径は12mm程度であり、その体積は 4/3 πabc の計算式により、1.0×0.6×0.6×3.14×4÷3 = 1.5cc となる。これは小学2-3年生男子の睾丸サイズであり、沙苗が“誇張”せずに正直に申告したことを医師は感じ取った。
「あなたの声は女の子の声に聞こえるんだけど、ずっとこの声?声変わりはしなかった?」
「声変わりかなあと思う変動はありましたよ。声質が少し丸くなったというか。そして声域が少し下の方に広がりました。最高音はむしろ高くなってるかも。これは歌が好きでずっと歌ってたからかもしれないけど」
「なるほどね。喉仏はできたことない?」
「そんなものできたら凄く嫌だと思ってたけど、幸いにもできませんでした」
「ヒゲとかスネ毛とか生えたりしたことは?」
「それも生えて来たりしなかったのでよかったです。そんなの生えてきたらどうしようってずっと不安でした」
「あなたの陰毛は女性型のように見えるけど、脱毛とかは?」
「女性型だってのは友人から指摘されたことあります。脱毛は水着を着るのにビキニラインは毛を焼き切るタイプで処理しますけど、レーザーとかでの脱毛はしたことないです」
「あなたオナニーしたことは?」
「そのくらいしますよ」
「頻度は?」
「月に数回だと思います」
「オナニーの方法は?」
「普通だと思いますけど」
「普通というと?具体的な方法は?」
「お布団の中で、あそこに手をやって、指であれを押さえて、ぐりぐりと回転運動を掛ける感じかな」
「握ったりしないんだ?」
「握れるようなものないですぅ」
「いいよ。それいつ頃からしてた?」
「幼稚園の頃にはしてた記憶があります」
「小学3〜4年生の頃から頻度が増えたりしない?」
「さあ。特に増えたような気はしませんけど」
「オナニーしたら射精はしてた?」
「射精の経験は無いです。到達した感覚はあるんですけど、特に何も出ません。だから到達したと思ったらその後、少しずつ回転速度を落としていって、その快感に浸っているんですよね」
ん?
「到達したらそこでやめないの?」
「え?到達した所からゆっくり落としていきません?」
「いや、いいよ。そういう人もいるしね」
と医師は言っておく。
「夢精も起きてない?」
「経験無いです。きっと女性ホルモンを摂ってたせいなんでしょうけど」
「勃起は?」
「その経験も無いです。ちんちんが大きくなるものだとか小学5年生頃まで知りませんでした。きっと私は男の子としては欠陥品なんだろうなと思いました」
医師は沙苗の“言い方”が気になった。
「あなた男湯に入った経験は?」
「無いです。自分では自分は女だと思っていたから、男湯とかとても入れません。修学旅行では体調悪いと言って、部屋に籠もってて浴場には行きませんでした。だから実は私、男の子のちんちん自体を見たことないんですよねー。うちは男の兄弟も居ないし、父は裸で家の中を歩き回る人じゃないし」
「なるほど、分かった」
と言ってから医師は
「もう一度内診させてもらっていい?」
と言った。
「どうぞ」
それでまた内診台の下半身が持ち上げられ、恥ずかしい格好にされる。先生は大陰唇内にライトを当ててよくよく観察していたようである。
すると先生は“それ”に気付いた。
「この大陰唇内の奥にある穴は何?」
「それ先日S医大でも指摘されたんですが、正体不明だそうです。ひょっとしたらヴァギナができかけてるのかもしれないけど、あまりそういう例は無いから、取り敢えず様子見です」
「手術して作ったものではないのね?」
「私、生まれて以来手術は受けたことないです」
「この穴の中を観察してもいい?」
「どうぞ」
「入口がまるでヒーメンみたいに見える。これに傷つけないように細型の器具を入れるね」
「お願いします」
それで医師はどうもその穴に処女用の極細クスコを入れたようである。
「単なる窪みだね」
と医師は言った。側壁に多数のヒダがあり、膣内部のようにも見えることは敢えて言わなかった。
「でしょ?だから正体不明なんですよ」
「深さ3cmくらいかな」
「4月3日の診察では2cmと言われました」
「深くなってる?」
「誤差の範囲では?これがヴァギナに成長したら嬉しいんですけど、そんなファンタジー小説のできごとみたいなことは期待しないことにします」
「悪いけど、もう一度MRI撮らせて」
「いいですよ」
それで沙苗は服を着た上で、リアルタイムMRIの部屋に連れて行かれた。母と阪口さんも一緒に行く。千里と岩永先生は部屋の外で待機する。
下半身の服を脱いだ上で腰の付近をリアルタイムMRIで観察される。
女性医師はしばらく考えていたが、やがてMRIでの診断を終える。そして沙苗には服を着て部屋から退出し、外で待っているように言った。
沙苗が出ていき、千里と一緒に外で待つ。母と医学委員さんが呼ばれて中に入る。
医師は、写真を見せながら言った。
「陰唇内、通常の女性の膣がある位置に小さな窪みがあるのですが、これは膣の出来かけの可能性がありますね」
「S医大でもそういうことを言われましたが、経過観察しなければ判断はできないということでした」
と母が言う。
医学委員さんはもう少し詳しく聞きたいようだったが、この場ではこれ以上は何も尋ねなかった。
これで一連の診察は終わったが、肝心の性別判定の問題について、医師はこの場では結論は言わなかった。ただ、医師はこの診断の結果に基づき診断書を書くと言った。医学委員さんも頷いていた。
この後、医学委員さんは沙苗本人と2人だけで1時間ほど話したが、主として、これまでの個人的に把握している範囲の性的発達について聞かれたと言っていた。
4月20日(火).
きーちゃん、桃源、千里、によるチームプレイでの呪いグッズの処理はこの日の夜21時頃に終了した。最後の“大物”のお焚き上げは全員で実施した。
「お疲れさまでしたぁ!」
「いや、気の抜けない作業で疲れた疲れた」
「一応この部屋は今月いっぱいくらいは霊道が入って来ないように処理してるから、遺品を持ち出す場合は、それまでに」
「分かりました。ありがとうございました」
と左座浪と義浜は言った。
それで左座浪が高岡と夕香の遺族(実は高岡亀浩(白河夜船)と長野支香)に連絡するのに部屋の外に出たのだが、この時、桃源ときーちゃんは義浜に言った。
「あんた、いいかげん、男の振りして生きるのやめたら?」
「あははは」
「いい病院紹介してあげるからさ」
「貴子さんの紹介する病院って、なんか恐い気がするんですけど」
とハイレが言うと
「わりと勘がいいじゃん」
と桃源は言った。
やはり恐い病院っぽい。でもそういう所で“まな板の上の鯉”になってもいいかもしれない気がしていた。毬毛さんに言われたように、実際この後、男として生きていく自信が無い。全てを捨てて再出発してもいいかも。
一行は翌日4月21日に飛行機で北海道に戻った。
「今回はさすがに疲れたね。千里、今月のセッションはお休みでいい?」
と、きーちゃんは言った。
「うん。私も疲れたぁ」
と千里(千里G)も言った。
Rも今週は沙苗の件で大変だったみたいだしね!
左座浪からもらった1000万円の報酬について、きーちゃんはまず最も危険な作業をした桃源に500万渡し、千里に300万、物資の調達などのサポートをした月夜(つーちゃん)に100万と、千里のガード(真名(まことのな)を知られて千里に使役されていたようで驚いた!)をした櫃美に100万渡した。
しかし、櫃美は「返上する」と言うので、灰麗に渡そうとしたが、彼女も「自分がもらっては申し訳無い」と辞退する。
それで、つーちゃんに頼んで保険屋さんを装い「夕香さんの保険が出たから」と言って、支香に渡した。支香はかなり生活に困窮していたようで「助かる」と言って、泣いて喜んでいた。
きーちゃんは、支香とその母の生活を支援する必要を感じた。それで上島雷太の夢枕!に立って高岡猛獅の霊を装い「支香ちゃんの生活を支援してあげて」と言った。それで上島も支香の窮状に気付き、取り敢えず会って話を聞いた。それで、お母さんの治療費は「お母さんの婿の猛獅に代わって」親友の僕が出すからと言った。支香はそれで何とか生活が成り立つようになったようである。
4月21日(水).
北海道に帰る、天野貴子・藤原毬毛・村山千里の3人を羽田で見送ると、灰麗(ハイレ)は、いったん八王子の高岡たちのマンションに戻った。
作業中、灰麗はずっとマンションに泊まり込んでお弁当を買ってきたり、急に必要になった道具を買いに行ったりの雑用を引き受けていた。このマンションには桃源も一緒に泊まり込んでいたが、桃源は灰麗のことを女性とみなしているので、“同性”で泊まり込んでいる感覚しか無いと言っていた。灰麗の目の前で着替えたりするので、慌てて後ろを向くと
「純情ね」
などと言われていた。彼女の着替えも、天野貴子や村山千里の着替えも、灰麗が洗濯していた。
(千里と天野貴子は山小屋に泊まり込んでいる)
マンションに戻ると、灰麗は最終的に残った洗濯物を洗濯機に掛けた。これを乾燥機に掛け、更に半日くらい室内に干してから。まとめて天野貴子の所に宅急便で送る予定である。それで仕分けしてくれるはずだ。正直、灰麗にはどの下着がどの人のかは全く区別が付かない。
洗濯機が回っている間に、彼女たちの私物が残ってないかチェックした。
桃源さんの運転免許証!が落ちている。
これは困るだろうと思い、すぐに速達で送ろうと思ったのだが、貴子さんの助手をしていた月夜さんが唐突に姿を現し
「私が持ってく」
というので、彼女に託した。
月夜さん、どこに居たの!??
(月夜はその日の内に新千歳に飛び、空港から身動きできずに困っていた桃源に渡した)
洗濯物を乾燥機から取り出し干していたら、プリキュアのボールペンが落ちているのに気付いた。これは村山さんのだろうけど、急がないだろうからと思い、着替えと一緒に送ろうと思った。
「しかし、私にはよく分からないけど、物凄く緊張した5日間だったみたい。死人が出なくて良かった」
などと言って、洗濯物を干し終えた後、灰麗は取り敢えず居間のカーペットの上に寝転がった。
高岡亀浩さん、長野支香さんは、どちらも土日(4/24-25)に来ることになった。双方居る場で荷物を高岡の分と夕香の分に分ける。そうしないと、あとで揉めたりしたら困る。自分の仕事はその仕分けに立ち会った所で終了する予定である。
それでそのままカーペットの上で、うとうととしていたら
「ハイレちゃん、ハイレちゃん」
と呼びかける声がある。
まだぼーっとした頭で目を開けると、佐藤小登愛である!
「おとめさん!?」
「私の仕事の後始末してくれてありがとね」
「おとめさん、超生してるの?」
「私は死んでるよ。だから私は幽霊みたいなものね」
「今は中有の世界?」
「よく分かんなーい。転生とかあるのかなあ。人は死んだら消えるものと思うけど。今は残存思念があるけど、これも減衰して、死んで266日後くらいには完全消滅すると思う」
と小登愛の幽霊?は言っている。
「でもハイレちゃんは“転性”したほうがいいね」
「あはは」
「取り敢えず玉は取ってあげるね」
「え!?」
小登愛は灰麗のお股に手を伸ばすと、それを掴んで強く引っ張った!
「ぎゃっ」
と悲鳴をあげて、灰麗は気を失った。
目が覚めたら朝だった。4月22日(木)の朝である。
「夢を見たのかな?」
などと呟く。取り敢えずトイレ行って来てからシャワーでも浴びようと思い、トイレに行った。
便器に座っておしっこして拭いた後、まさかアレ無くなってないよね?と思い、袋を触ってみた。
ん!?
流して手を洗ってトイレを出る。
そしてあらためて横になり、スカートをめくりパンティーを脱いで触ってみた。
無くなってる!
嬉しい!!!!
この日、部屋の荷物の整理をしていたら、FAXに“白膠木”(ぬるで)の注文票が残っていることに気付いた。これは貴子さんの忘れものだろうな。着替えと一緒に送らなきゃと思い、テーブルの上に乗せる。
お焚き上げするのに今回、白膠木を使うというのは聞いた。これは本来護摩焚きに使う木であり、そんなものを使わなければならないというのは、処理する呪いの品が極めて強力だということなのだろう。
しかし灰麗はそこに書いてある料金を見て仰天する。
こんなに高いの〜〜!?
だったら、貴子さん、物凄い額の自腹を切ったのでは?
本当に申し訳ないなあ、と灰麗は思った。
しかしFAXというと、灰麗は少し心痛むことがあった。
12月26日の夜、灰麗は唐突に
「高岡さんたち疲れてるのに本人たちに運転させてはいけない」
と思った。
高岡さんは東京−大阪の480kmをおそらく5時間くらいで走るつもりだろうと思う。朝9時に大阪のテレビ局に出る予定があるから出発は4時頃と見て、灰麗は町田市の自宅から自分の車を飛ばして八王子のマンションに向かった。
到着したのが12/27 AM3時頃だった。Timesの駐車場に駐める。高岡さんたち、まだ居てくれ〜と願いながらマンションまで走り、鍵を開けて中に入ったが、部屋は空っぽだった。
「もう出たのか!頼む!安全運転で行って欲しい」
と灰麗は祈った。
恐らく最初は夕香さんが運転してるだろうと思い、高岡の携帯に掛けるが出ない。夕香の携帯に掛けても出ない。片方は運転中で出られず、片方は寝ていて出ないのかもしれないと灰麗は思った。
何か自分が打てる手はないかと考えていた時、灰麗はFAXに原稿が掛けられたままであることに気付いた。
原稿がセットされているのに送信されていない!
念のため原稿の内容も見たが、夕香の字で詩が書かれており、高岡の字で
「上島、いい詩を夕香が書いたから、曲を付けて欲しい。これを俺たちの置き土産にするよ」と書かれていた。
これはそのまま送信してもいいだろうなと思い、灰麗は原稿をセットし直すと上島のアパートの電話番号を短縮から押して、留守電がFAXに切り替わったところで送信ボタンを押した。
原稿は、夕香がいつも作品を入れている机の引き出しに、愛用の青いボールペンと一緒に戻しておいた。
それでいったん高岡のマンションを出て自宅に戻る。すると朝7時に警察から電話があり、小登愛が死んだと聞かされ、仰天して病院に駆け付けたのである。(小登愛が泊まっていたホテルは義浜配次の名義で借りていたので、ホテルの宿泊名簿からこちらに連絡があったものと思われる)
そして病院に来た所に左座浪から、高岡さんたちを知らないかという電話があり、血の気か引いたのであった。
あの夜、このマンションを自分が訪れたことは誰にも言っていない。警察に話すと変な疑いを持たれそうな気がしたので黙っていた。しかしそのことが自分を苛む。それ以前に、灰麗はなぜあの晩、もっと早く高岡のマンションに駆け付けなかったのだろうと、自分を責める気持ちが強くあった。自分が運転していれば、ふたりが死ぬことは無かったのではという気持ちが、ひたすら自分を責め続けているのである。まるで地獄の鬼の責め苦のように。
午後からは、運送屋さんに行き、段ボール箱を大量に買ってきた。ナイトさん(高岡亀浩)と支香さんが使えるようにである。
でもなんで高岡亀浩さんって、みんなから“ナイト”って呼ばれてるんだろう?と思って考えみたが分からなかった。
(亀浩→亀氏(かめし)→きし→騎士→Knight ! さらにこの後、同じナイトでも夜のほうの Night になり、Night Cruising →夜船→白河夜船、と変化して行く)
服については、男物が高岡さんので、女物が夕香さんのだろうから、異論は出るまいと思い、ナイトさんたちの手間を減らすため、灰麗が分類して箱に入れ、T(猛獅)・U(夕香)の記号を箱に書き入れた。
その日(4/22)の夜、室内に干していた洗濯物を取り入れて、天野さん宛てに送る箱に入れ、白膠木の注文書、村山さんのボールペンも入れてから、コンビニに持って行って発送した。そしてお弁当を買って帰り、今日も疲れたなあと思いながら食べる。
実は、この部屋で「調理はするな」と言われたので、毎日お弁当を買ってきている(お湯を沸かす程度はよいらしいのでカップ麺なども作って食べている)。
それでカーペットに横になり、うとうとしていたら、また小登愛の幽霊が出て来た。
「あんたさ、26日の夜にここに駆け付けるのが遅れたこと悩んでるみたいだけど」
「うん。誰にも言ってないけど、ずっと悩んでる」
「それって呪いを掛けた奴が、周囲の人にそのことを思い至らせないようにブロックしてただけだから」
「そうだったの!?」
「あんたもう少し霊感があればいいんだけどね〜」
「ごめーん」
「あんたさ、落ち着いたら、お遍路でもしてきたら?」
「それもいいかな」
「お遍路してる間は私が守護してあげるよ」
「・・・」
「だから私とあんたで同行二人(どうぎょうににん)だね」
「それ意味が違う気がする」
(同行二人とは、ひとりでお遍路していても弘法大師様と一緒で2人であるという意味)
「お遍路が終わったら、私もあんたも新しい世界に行けばいいのさ」
「新しい世界?」
「私はあの世に、あんたは女としての人生に」
「・・・・・」
「今日はあんたにおっぱい作ってあげる」
「え〜〜〜!?」
「ほしいでしょ?」
「ほしい」
すると小登愛は何か肌色の物体を手にした。
「触ってごらん」
「やわらかい」
「焼きたてのハンバーガーのバンズみたいでしょ?」
「似てるかも」
「これをあんたの胸に埋め込んであげるよ」
「いいかも」
「間違ってハンバーガーを埋め込んだらごめんね」
「え〜〜〜!?」
「じゃ手術♪手術♪」
と小登愛は楽しそうに言うと、灰麗の胸にメスのようなものを当てた。
そして皮膚を切った!
「ぎゃー!」
と、灰麗は凄まじい痛さに悲鳴をあげると、気を失った。
意識が遠のきながら、灰麗は「小登愛ちゃん、麻酔とかは持ってないの〜?」と思った。
目が覚めたら朝だった。4月23日(金)の朝である。
おそるおそる胸に手を当てる。
おっぱいがある!
凄い。シャワールームに行って、全身の汗を流しながら、胸にたくさん触った。Cカップくらいかなと思う。こんな大きなおっぱいが自分のものだなんて信じられないという気持ちだ。昨夜夢の中で?メスを入れられた時は激痛がしたけど、現在は全く痛みは無い。どうなってるんだろうと思う。
しかし・・・この胸に合うブラジャーが無い!!
それでこの日は、ブラジャーを買いに行ってくることにした!
今まで使用していたAカップのブラジャーをスーパーホック二連!で使ってなんとか着けて町に出る。イオンモールまで行き、ランジェリーショップで素直にお姉さんに「ブラのサイズを計って欲しい」と言った。
すると「D80ですね」と言われた。D〜〜〜!? うっそーと思ったものの、そのサイズのブラを取り敢えず5枚買って、ついでにショーツとかスカートも新しいのを少し買った。また“この胸が収納できる”ブラウスも買った。
この日の夜、御飯を食べてうとうととしていると、また小登愛が出現する。
「女として生活するのにいちばん困るものを取ってあげる」
と言った。
とうとう、ちんちんを取られるのかなと思ってドキドキしたが、小登愛がこの夜取ってくれたのは喉仏だった。でも首を絞められて、マジで今日は死んだと思った!
4月24日(土).
灰麗はバストが目立たないように、D80のブラジャーを着けブラウスを着た上にLサイズの灰色のベストを着る。その上に(紳士用の)ジャケットを着た。
午前10時に、左座浪が支香とナイトを連れてきた。灰麗は、独断で申し訳なかったが、服とか化粧品とかは議論の余地がないだろうと思い仕分けしたと説明した。支香もナイトも念のため箱の中を覗いてみて、問題無いと言った。
(ナイトが平気で女の下着を取り出して「さすがにタケちゃんはこんなの着ないだろうな」などと言っているので、この人すげーと思った)
最も議論が起きそうな楽器類について、ナイトは
「弦楽器は猛獅君の、管楽器・鍵盤楽器は夕香ちゃんの、ということにしない?」
と提案。支香もそれでいいと言ったので、ギターやベースはナイトが取り、電子キーボードやフルート・サックスなどは支香が取った。
食器類はナイトが
「愛知まで運ぶのめんどくさいから、支香ちゃん全部もらっちゃいなよ」
と言うので、支香がもらって浦和の自分のアパートに運ぶことにした。
(この食器の大半は箱詰めされたまま支香のアパートの押し入れに放置されたので、後に龍虎が全部もらい受けることになった)
楽譜類に関しては支香が
「主として使っていたのは猛獅さんだと思う」
と言うので、ナイトが愛知の実家に運ぼうかと言っていたのだが、膨大な数があるので、結局、さいたま市内にレンタル倉庫を借りて、そこに収めることにし、すぐに電話して確保した。
机の中に入っていた膨大な詩作についても、そこに一緒に収めることにした。ただし、この分は支香の所有ということにする。
「今やってるみたいにTとかUとか書いとけばいいよね」
とナイトは言った。
「TakeshiとyUkaね」
「YだとTと紛らわしいからUの方がいい」
とナイトが言って、初めて灰麗はスペルミスに気付いたが、確かにYとTは見間違う危険がある。怪我の功名?
「太陽族とウララ娘だったりして」
とナイトが言うと、支香が吹き出した。
済みません、それ何!?
そのようにして、この日は1日掛けて、荷物の仕分けだけをした。実際の搬出は明日業者も入れておこなうことにする。
ただし楽譜類と詩に関しては、この日の内に、ナイトと左座浪が自分たちの車で借りたレンタル倉庫まで運んだ。
この日の夜、小登愛は
「女にはふさわしくない体毛を永久脱毛してあげる。お遍路中に、ヒゲが生えてきたら大変だもんね」
と言い、顔のむだ毛。足のむだ毛お腹のむだ毛、などを脱毛してくれた。でも顔のむだ毛の所に脱毛用のワックスを塗られて一気に剥がされたので、あまりの痛さに失神した。
(毎日失神させるためにやっているとしか思えない)
むろん、25日(日)の朝には、顔、足、お腹などのむだ毛は無くなっていて、その後、二度と生えてこなかった。脇毛は処理されていなかったが、このくらいはいいやと思って普通に剃刀で剃っておいた。
日曜日は業者さんがやってきて、ナイトと支香が見ている中、最初に高岡関係の荷物を運び出した。これは愛知の高岡の実家まで運ばれる。午後には別の業者さんが来て、夕香関係の荷物を運び出し、浦和の支香のアパートまで運んだ。
それでマンションはほとんど空になった。
「あとは掃除して、月末で引き払いますので」
「はい、よろしくお願いします」
ということで、ナイト・支香・左座浪を送り出した。
でもこの日は掃除までする気力は無く、そのまま寝た。
この日(4/25 Sun)の夜に出て来た小登愛は
「あんた、肩が張ってるから女湯に入った時に怪しまれる。それに腰の骨が狭くて、それでは赤ちゃんを自然分娩できない」
と言われ、骨格を修正すると言われる。
その方法だが、鯛焼きの型みたいなので、女性の形が作られており、そこに入るように言われて超プレスされた。例によってその圧力で
「身体が潰れる〜!」
と悲鳴をあげて気絶した。
でも翌日(4月26日・月)、起きてからシャワーを浴びてみると、自分の肩が撫で肩に変化していて、腰の骨が凄く大きくなっていることに気付いた。安産型かも〜と思うが、赤ちゃん産むための器官が無いしなと思った。
でもこれなら確かに女湯に入っても怪しまれないかもという気がした。
ちんちんを何とか隠せば!!
月曜日は頑張って1日かけてお掃除をした。マンションの管理会社側でも業者を入れてクリーニングするだろうけど、やはりきれいにしてから引き渡すのがマナーだよあなと思った。
この日で片付けは完了したのでもう退去していいのだが、マンションの管理会社の人は4月30日(金)に来ることになっているので、それまではここに居てもいいかなという気がした。それにここに居る方が“小登愛と会える”気がしたし。
その夜は小登愛から
「女のシンボル作ってあげるよ」
と言われた。それでナイフでお股を切り裂かれて、その痛さで気を失った。
翌朝(4/27 Tue) 起きてみると、きれいな割れ目ちゃんができていたので感動した。
開いてみると、大陰唇の中にちゃんと小陰唇もある。ただし、ヴァギナは無いし、クリトリスがあるべき場所には大きなペニスが陣取っている。
ペニスって不格好で美しくないなあ。美しいクリトリスに交換したいよと灰麗は思った。
27日(火)は町田市の自分のアパートに戻り、手配していた便利屋さんの手で、アパート内の荷物を全て、レンタル倉庫に移動した。自分の部屋も解約することにしたのである。
小登愛からお遍路に行きなよと言われたので、実際行ってくることを決めた。何ヶ月かかるか分からないので、いったんアパートは解約しようと思ったのである。4月23日に連絡したので、契約は5月末で解除になり、5月分までは家賃を払う必要がある。しかし今月中によそに引っ越すのでと言って、今月中に引き渡しをすることにしている。
引越作業の後、一休みしてから、八王子に戻る途中ドラッグストアに寄り、お化粧品と生理用ナプキンを買ってきた。部屋の中でお化粧をして、またパンティにナプキンを装着して過ごした。でもナプキンを着けると本当にちんちんが邪魔である。これ早く取ってもらいたいな〜、と思った。
ちんちん取るのは自分で手術受けてと言われたりしたらどうしよう?
その日(4/27)の夜、出て来た小登愛は
「ハイレちゃんが男の子と交際できるようにしてあげる」
と言うので、とうとう、ちんちん取ってもらえるかなと思ったら
「ヴァギナを作る」
と言われた。なんか、槌とノミを持っている。
「何するの〜?」
「穴を開けるだけだよ」
「ひぇ〜〜〜!?」
それでノミを当てられ、槌で叩かれた。身体の髄に響くような痛みを感じて灰麗は気を失った。
でも翌朝28日(水)の朝起きてみると、陰唇内のいちばん奥の所に穴ができている。入口に何か抵抗のある膜?のようなものがあるが、膜には結構細かい穴も開いているので、箸を熱湯消毒してそっと入れてみた。10cmくらい入った。たくさん入るので「すげー」と思う。これやはりちゃんとヴァギナになってるみたい。男の子のあんな大きなちんちんを丸ごと入れられるって女の子の身体って凄いなあ、などと思った。
これで男性とのセックスが可能になった。
でもセックスしようとすると、ちんちんが付いてるの見られちゃう!
この日は、自分のアパートに戻り、お掃除をした。夕方、管理会社の人が来て、室内をチェックしてくれた。
「奧さんですか?」
と訊かれるので
「はいそうです」
と答えるが、ドキドキしている。
「特に傷んでないですね。敷金はたぶん1万円だけ引いて残りは返還できると思います」
「ありがとうございます」
実際にはそこから更に5月分の家賃を差し引いて残額が返還されるはずだ。
それで鍵は郵便受けに入れてくださいということだったので、その日は忘れ物をチェックしてから部屋を出、鍵は郵便受けに入れてから、八王子のマンションに戻った。
その日(4/28)の夜、小登愛は赤ちゃん産めるように子宮を作ってあげる、と言った。29日の夜には、今度は卵巣を作ってあげると言った。
どちらも膣口から何か挿入して体内で開いたようだが、いづれも身体の内部を切り裂かれるような激痛で失神した。
30日(金)の朝起きてみたが、この日、外見的には昨夜、一昨夜と変わりはないものの、下腹部の左右に暖かいものがあるのを感じた。それで卵巣ができたんだというのを実感した。
卵巣があって子宮があって膣もあって、小陰唇・大陰唇もあれば、完璧に女の子じゃん、と思うと物凄く嬉しくなる。
でもまだちんちんがあるんですけど!?
この日の午後、マンションの管理会社の人が来て、引き渡しの処理をする。
「全く傷んでないですね!」
と管理会社の人は驚いていた。
「実質ほとんど住んでいなかったようなので」
「なるほど」
と言いながら、あちこちチェックしていた。
「では規定通りに計算して、敷金の残額は指定口座に振り込みます」
「よろしくお願いします」
「鍵は今日中に郵便受けに入れてから退去して下さい」
「分かりました」
こちらも鍵の返却はアパートと同じ方式のようである。
しかし「今日中に退去」というのは、明日の朝でもいいよね?と灰麗は思った。
それでその夜までこのマンションで過ごした。小登愛と会うにはここに居た方がいい気がしたからである。
その夜小登愛は出て来て言った。
「いよいよ最後の仕上げだね。ちんちんを切るよ」
「それ切ってもらえなくて放置されたらどうしようかと思った」
「その時は自分で切ればいいね」
と小登愛は言った。
小登愛は灰麗のちんちんをまな板!の上に乗せた。そして包丁を当てる。
え〜〜!?そんなので切るの〜〜〜!
小登愛は包丁をギュッと押すようにして引き、灰麗のペニスは身体から切り離された。それを見て、灰麗は「やっと長年の苦しみから解放された」と思った。
でもこれまでで最大の激痛で、灰麗は気を失った。
翌朝起きて見ると、ペニスは無くなっていた。むろんこれまでと同様、痛みは全く残っていない。そしてペニスのあった場所には小さな突起ができている。クリトリスだぁと嬉しくなる。トイレに行ってみるとおしっこは、これまでと違い、身体の随分後ろの方から、真下に落ちていく感じだ。
これが女の子のおしっこか!と感動する。
おしっこの出た所を拭き、トイレを流す。手を洗ってトイレを出た。
でもこの10日間で自分って、まさに“換骨奪胎”されたよなあと思った。
紙が1枚落ちていた。高岡さんか夕香さんのもの??とも思ったが、書いてあるのが数字やアルファベットの羅切・・・じゃなくて羅列!なので、不要なものかもと思い、自分のカバンに入れた。この紙には、このような記述があった。
1 -T 2 +B 3 -A 4 -H 5 *S 6 +L 7 +V 8 +U 9 +O 10 -P+C (*24)
(*24) 解題
1 - Testicles 2 + Bust 3 - Adam's apple 4 - Hair 5 change Skeleton 6 +Labia majora/minora 7 +Vagina 8 +Uterus 9 +Ovary 10 -Penis/+Clitoris
忘れ物が無いかどうかを再確認して、灰麗は約半月滞在したこのマンションを出る。部屋を出てから再度鍵で開けようとしてもロックは反応しない。既にこの鍵は無効になっているようだ。エントランスを出た後で、再度玄関にタッチしてみたが、もう開かない。それで灰麗は鍵を郵便受けに入れてから、近所のTimes駐車場に駐めていた自分の車に乗る。まずはレンタル倉庫に移動して、荷物を調整した。そして町田市内の、自分の車の契約駐車場まで移動する。
駐車場に駐めたまま、車内から左座浪に電話した。
「マンションの掃除が終わり管理会社に引き渡してきました」
「ありがとう。お疲れ様。この後、どうする?誰か付き人を探してるアーティストを紹介しようか?」
「いえ、それよりも私は、お遍路に行こうと思って。高岡ご夫妻の菩提を弔いたくて」
と左座浪に告げる。
「そうか。気をつけて。でもそれなら退職金を高岡君に代わって払うよ。事務所にはそれを払う義務があると思う」
「でしたら、それは佐藤小登愛のお兄さんに払ってあげて下さい」
「なるほど。分かった。じゃ君の退職金は佐藤さんに渡すけど、お遍路に行くなら、僕個人から餞別をあげるよ」
「そんな申し訳無いです」
「今どこに居るの?」
「実はもう四国に向かっている最中で」
もう“この姿”では左座浪に会えない。男物の服は全部捨てちゃったし。
「だったら君の口座に振り込もうか」
「助かります」
「じゃほんとに気をつけて」
「ほんとにお世話になりました」
灰麗はこの日までは、まだ男の声だった。それで左座浪は灰麗の男声を聞いた最後の人になった。
灰麗は旅支度を整え、車は駐車場に置いたまま、新幹線と特急を乗り継いで、徳島まで行き、徳島市内の旅館に泊まった。ここは旅館なので、灰麗は個室に泊まることができた。個室に泊まれるのはこれが最後かもと思った。
でも旅館なのでお風呂は共同である。それで灰麗は初めて女湯に入った。
脱衣場の暖簾をくぐる時は結構ドキドキしていたが、灰麗はそもそも女性の下着姿やヌードには何も感じない。周囲に男性が居ないので、緊張せずに服を脱ぐことが出来た。お股を洗うのもここ数日毎日してたので普通にする。浴槽に浸かる時に少しドキドキしたが、すぐ平気になった。むろん誰にも注意されることもなく、無事に入浴を終えることができた。
そしてその日、旅館の個室で、小登愛はまた出現した。
あのマンションじゃなくても出てくるんだ、と思い少しホッとした。
小登愛は言った。
「うっかり忘れるところだったけど、声を女の子の声に変えてあげるね」
「助かる!」
でもまた喉を締められて気絶した!
5月2日(日)、義浜灰麗は1番札所・霊山寺(りょうぜんじ)から新しい女としての第1歩を踏み出した。
もうこの世に義浜配次という男は存在しない。
灰麗は2週間後の5月13日(木)、初めての生理を経験した。数日前から予兆があったので、ちゃんとナプキンを付けて寝ていた。それで下着や服を汚さずに済んだ。
この日は、高知県安田町の民宿に泊まっていたのだが、灰麗が
「生理が来ちゃったんですけど、生理中にお参りしても失礼じゃないですかね」
と民宿の女将さんに尋ねると
「失礼とか何とかじゃなくて、生理中は無理しちゃだめ。落ち着くまでここに泊まってなさい」
と言うので、結局ここに3日滞在した。
そういう訳で、灰麗のお遍路は、雨が降ったら休み、生理が来たら休むというゆっくりペースで続いていったのであった。
その日、沙苗は朝から「なんかお腹の調子が悪いなあ」と思いながらトイレに行った。するとパンティが血で真っ赤になっていたので仰天した。
「何?何?何があったの?私どこ怪我したの?」
と沙苗はパニックになった。
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【女子中学生の生理整頓】(6)