【私の高校生活】(1)

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based on rough story written on 1997-12-14 in Shinkansen(Tokyo->Hakata)(C)Eriko Kawaguchi 1998.3.03 
拝啓。秋、紅葉の候、如何お過ごしでしょうか? 
初めてお便りします。因幡直美と申します。しかし少なくとも2年前までは因幡啓一といっておりました。なぜこういうことになってしまったのか。そして今後私はどうすればいいのか、お驚きでしょうが、私の話を聞いてアドバイス頂けますでしょうか? 
●1年生4月私は現在高校2年生なのですが、全寮制の学校に入っています。
 
最初は1年生に入った時の新入生歓迎会の時でした。むろんアルコールなどは入らず、ジュースとお茶で楽しく歓談していた時、寮長の小西さんが「よおし。今年の犠牲者を決めよう」と言い出しました。
 
「犠牲者って何ですか?」新入生の山口和司君が大きな声で聞きました。
 
「犠牲者というのはだ、要するに毎年歓迎会では誰か新入生の男子の中から一人女装することになっているのだ。その誰がやるかを今から決めるぞ」
 
「えー!?」あちこちから驚いたような、嫌がっているような、面白そうな声が上がります。それとともに「小西さーん、こいつどうですか?」という声があちこちからあがりました。私もちょっと嫌な予感がしていたのですが、案の定、近くにいた3年生から「こいつがいいっすよ」と引っぱり出されてしまいました。やはり色白できゃしゃな体をしているせいで目を付けられたようです。
 
引っぱり出された新入生は全部で5〜6人いました。ちょっと可愛い感じの子ばかり集まっています。そこへ小西さんがやってきて、さっと見比べた上で「お前やれ」。。。。と指名されたのは私でした。
 
「えー」
「君、名前は?」
「因幡です」
「よし、じゃ因幡君をフェミニンの世界に案内して。はい、当番!」
と小西さんが笑顔で言って手を叩くと、数人の女子の先輩が出てきて、回りを囲まれ、「さぁ、行きましょ」と、私は腕をひっぱられて、更衣室へ連れて行かれました。
 
「さぁさ、全部脱いで」と言います。
 
こうなったら仕方ないので覚悟を決めて私は学生服・ワイシャツとズボンを脱ぎました。
 
「急いで、急いで。下着もよ」
 
「え?」
「だって、男物の下着に女の子の服は着れないでしょう。さぁさぁ」
と言われるので、人前で恥ずかしくてしょうがありませんでしたが、思い切ってシャツとパンツも脱ぎました。
 
すると「じゃあ、これつけてね。」と女物の下着を渡されます。どうしていいのか戸惑っていると、結局みんなで付けてくれました。何だか変な感じです。
そして「あとは分かるよね」とセーラー服の上下を渡されます。私はスカートを履き、上着をかぶりました。すると先輩が頭にかつらをかぶせてくれました。
 
「可愛い〜」
「ほんと、ほんと。びっくり」
 
とみんな喜んでいるようです。私は恥ずかしくて真っ赤になってしまいました。
 
「ねぇ、君とっても可愛いし、女の子の服着たことないの?」と一人が聞きました。
 
「なんでもぼくが生まれた時、ほんとは女の子が欲しかったとかで、けっこう女の子の服着せられてたそうですけど、物心つく前です」
「そうよね。男の子にしとくの、もったいない感じだもんね」
「それから小学5年の時の学芸会で、白鳥の湖のその他大勢の白鳥の役やりましたけど、白いスカートはいただけで、こんな本格的なのは初めてです。」
「ふーん」
 
先輩たちが何やら顔を見合わせていましたが、何を考えているのかは分かりませんでした。「さぁ、行こ行こ」と先輩たちは私のうでを取って宴会会場へと連れていきました。
 
「お待たせ!」と一人の先輩が言ってみんなで会場に戻ったのですが、ちょうど入口近くにいた小西寮長が最初に言った言葉はこうでした。
 
「あれ、あいつ逃げちゃったの?、川口」
「何言ってんの。ここにいるじゃない」と川口と呼ばれた先輩の女子が私の背中を押して寮長の方に押し出しました。
 
「え?」と言ったまま、寮長はしばらく私を見ていました。 「もしかして、ほんとに君、さっきの男の子?えっと因幡君?」
私は恥ずかしげにうつむいて「はい」と答えました。
 
「信じられないな。どう見たって女の子だよ。こんな可愛くなったのは史上初じゃない?」
「そうそう、去年の佐藤博之なんか、完璧なおかまだったよ」
「悪かったな」
と、そばで言った眼鏡の男子がその佐藤博之君なのでしょう。
 
小西寮長は嬉しそうに私をつれて会場の真ん中へ私を連れていき大きな声で私を紹介しました。
 
「諸君に紹介しよう。こちらが因幡...えっと何だっけ?」
「啓一です。」
「うーんと、じゃあ女の子の名前は何にするかなぁ。そのままけいこじゃ面白くないから、よし直美にしよう。」と言って、私は即興で「直美」という名前を付けられてしまいました。
「すまん、すまん。諸君、こちらが因幡啓一改め直美さんだ。今日を持って女性になってしまったが、男性時代同様、よろしく頼む」
 
すると会場のあちこちから「ほぉー」と感嘆の声が上がります。「おい、ほんとに男なの?」と声をかけた人がいました。「おぉ、さっきまでは男だったぞ。でも、今はもう立派な女の子だ。」と小西さんが答えます。そして私はそのまま小西さんに連れられて、各テーブルに挨拶をして回ることになりました。
もうこうなったら恥ずかしがっても仕方ないので開き直り「私、因幡直美です。よろしくお願いします」などとできるだけ可愛いらしく挨拶しました。「記念写真撮ろう」と言う先輩もあり、肩を寄せ合ってポーズを撮り、写真に収まりました。「きれいな足だね」「えー、全然ないんです」「ねぇ、ぼくの彼女にならない?」「えぇ、じゃあ100年後に」「女子寮にちゃんと部屋用意するから引っ越して来てね」「はい、お願いしまーす」などと冗談もいって、私もその場は結構ハイになってしまいました。
 
やがて宴会が終わり、私は着替えなければと思って、先ほど私を着替えさせた川口さんを見つけ、声をかけました。「ありがとうございました。あの着替えどこですか?」
「あら、まだ着替えたらだめよ。新入生歓迎会で女装した人は翌日の夕方までその格好でいないといけないの。そうそう今夜は女子寮で寝てね。部屋をひとつ開けるから」
「えー?そんな」
「小西君にも聞いてみる? それに、さっき直美ちゃんたら私が女子寮に部屋用意するからといったら、お願いしますって言ったよ」と川口さんはいたづらっぽい顔で言います。
 
冗談と思ったら本当だったようです。私は川口さんに連れられ、本来なら男子禁制の女子寮に入りました。そしてひとつの部屋に入れられました。「ここは私の部屋なんだ。今夜はここで寝て。私は他の子の部屋で寝るから。それからトイレはこの廊下の突き当たりね。じゃあね。」と言って行ってしまいました。
 
川口さんの部屋は女の子の部屋にしてはシンプルな感じです。私はためいきをつき、取り敢えずセーラー服だけ脱いで下着をつけたままベッドの中に入り、そのままぐっすりと眠り込みました。
 
翌日起きると私はまたセーラー服を着、トイレへと出かけていきました。が、はたと困りました。トイレとは書いてあるが、男子とも女子とも書いてない。
ここはどっち? と思っていたら、ちょうどそこに同じクラスの相田裕子さんが来ました。
 
「お早うございまーす。あれ、何してんの? あ、君、因幡直美ちゃんか?」
 
「あ、お早うございます。」
「そうか、今日一日その格好してないといけないんだってね」
「そうなんですよ。ところで、もしかしてここは女子トイレですか?」
「何言ってんの?女子寮に男子トイレがあるわけないじゃない。トイレに来たんでしょう。さぁ、入った入った」と中に連れ込まれました。
 
初めて見る女子トイレは不思議な感じでした。小便器がなく、ボックスだけが4つ並んでいます。何だか狭っくるしい感じがします。私がぼーっとしていたら、相田さんが「するんでしょう?」といい「だったら、まず中に入らなきゃ」とボックスの中に私を押し込みました。
 
私はよく分からないまま、ショーツを下げ、スカートをめくってしゃがみ、おしっこをしようとしましたが、最初なかなかうまく出ません。できるまでに散々苦労しました。やっとし終わってほっとしてボックスから出、手を洗い、トイレから出ると相田さんともう一人同じクラスの横田みどりさんが待っていました。「じゃ、直美ちゃん、一緒に朝ごはん食べに行こう」
 
女子寮の出入り口には寮母さんの部屋があります。昨夜は遅かったので窓が閉まっていましたが今朝はもう開いていました。そこを通るのはちょっとドキドキしましたが、連れがあることで少し心強い思いでした。「ふう。大丈夫だった」「あ、そうか。寮母さんの部屋ね。でも...ねぇ?」「うん、直美なら全然心配ないよ」「いっそ、ずっとこっちに入ってない?」「それは、ちょっと」
 
朝食が終わり、いったん部屋に戻ると川口さんが戻っていました。
「お帰り。食事してきたの?」
「ええ、はい」
「じゃ、下着の替えそこに置いてるから、着替えてから授業に行ってね。汗かいたでしょう?」
「あ、ありがとうございます。あのぉ」
「ん?」
川口さんはドレッサーの前で髪をとかしながら答えます。私は着替えながら質問しました。
「これ、誰の服なんですか?」
「あぁ。セーラー服はね、去年卒業した背の高い先輩から確保しておいたの。
でも、直美ちゃん、背がそんなに高くないからちょうど良かった。何センチ?」
「165センチです」
「元の持ち主は167センチだったからなぁ。大きくなかった?」
「ええ、大丈夫だと思います。」
「下着はこの余興のために自治会費で買ったものだから、大丈夫よ。どちらも記念にもらっといてね」
「そんな。もらっても仕方ないです」
「着たくなったらすぐ着れるようによ」
「別に着たくありません」
「うふふ。さぁ、授業に出かけましょう。あ、着替えたのはそこに置いといていいよ」
 
私は川口さんと一緒に部屋を出て、校舎の途中で分かれ教室へと向かいました。廊下にはたくさん生徒が歩いています。私は恥ずかしいのでうつむき加減にして、内股で歩いて教室まで行きました。みんな承知のこととはいえ、教室に入るのはまた勇気がいりました。騒がれるかなぁ、と思いながら中に入り、自分の机に着席しますと、その時になってはじめて後ろの席の大石倫子さんが「あれ直美ちゃんだったのか。違和感ないから全然気付かなかった」といい、その声で気が付いたクラスメートたちがやっと集まってきました。
 
「直美ちゃん、直美ちゃん、立ってみて」
「こう?」
「回ってみて」
「こう??」
私はくるっと一回転し、スカートのふちをつかんで挨拶の仕草をしました。
「ほんとに女の子みたい」
「きれいだしさぁ」
「うらやましい」
などとワイワイ騒いでいると、担任の中島先生が入ってきました。
 
「はい。着席着席。出席を取ります」
「相田」「はい」
「東」「はい」
「因幡」「はい」
返事をした私を見た先生の目が止まります。
「先生、因幡さんは今日は直美ちゃんなんです」と級長の村上瑛子が言いました。
「ああ、毎年の犠牲者か。頑張れよ、因幡。名前は何だって?」
「直美でーす」全員合唱の声が返ってきました。
「そうかそうか。では出席簿を書き直しておこう。な・お・み、と。しかしえらく可愛くなったなぁ。例年は気持ち悪いのに。さて、次、江藤」「はい」
「奥田」「はい」
 
中島先生が出席簿を書き直したお陰で、今日の授業の先生はみんな因幡啓一が直美になっていることをすぐに知り、そして本人を見てまた「きれいだねぇ」
と感嘆の声をあげて行きました。6時間目は技術家庭科でした。「直美ちゃんは今日はこっちよぉ」とクラスメートの女の子たちが被服室に連れていきます。
 
出席をとるときに村上さんが「先生、今日は一人増えてます。因幡直美ちゃんです」と紹介しました。
「あら、転校生なの?」と家庭科の目時先生は私が男の子とは気付かない様子。
「えーっと、男子の方から転校して来ました」
「え?あぁ、そうか例年の新入生の犠牲者ね。そういや職員室で噂になってた。でも、それは転校ではなくて転換っていうのよ。性の転換ね」
どっと歓声があがります。
「今日はこっちで受けるのね。はいはい。じゃ出席簿に書き足しておくね。名前は?」
「因幡直美でーす」また合唱です。
「因幡...直美っと。でも、君、男の子には見えないわね。ずっとこちらで受けてもいいわよ。料理とか裁縫は好き?」
「料理はいつも晩御飯の支度手伝ってました。天ぷらやカレーライスくらいならできます。裁縫はミシンで手提げ袋を縫うくらいはできます」
「すごいじゃないの。ずっとこっちで受けなさいよ。」
「いえ、今日だけでいいです」
という毎度のやりとりがあって授業が始まります。
 
その日は採寸のやり方の勉強でした。メジャーを持ってお互いに体の寸法を測り合います。私は相田さんと組むことになりました。女の子の体に触るのはちょっとドキドキします。が、相田さんは平気な様子で「はい。どうぞ」と言います。私はまず相田さんのウェストにメジャーを当てました。
「ウェスト....61。。。ヒップ.....85。。。」と測っては記録紙に書き込んで行きます。
「アンダーバスト....76。。。トップバスト...88。。。Bカップですね」
バストを測る時にちょっと手が触れた相田さんの胸はハンバーガーのように柔らかい感じでした。
「ありがとう。今度は私の番よ」
と、交替です。
「少しお腹ひっこめてみて。うん、そう。ウェストは67でいいね。」相田さんはけっこう強くメジャーを引っ張って言います。「ヒップは、93ある。既製服が合わなくて困らない?」
「ウェスト76を買って、ベルトで落ちないようにしてるんです」
「この体型ならほんとに女の子の服着た方がいいよ、直美ちゃん。アンダーバストは82。。。トップバストが85か。これは仕方ないね」
「ホルモン注射して大きくする?」と横から言ったのは鈴木絵里さんです。
「うち産婦人科だからね。ママに話してあげるよ」
「いえ、別にいいです」とは言ったものの、私は、さっきの相田さんのバストの感触を思い出して、あんな胸が自分にあったら、というのを一瞬想像してしまいました。
 
その日の夕方、食事が済んでからやっと、川口さんの部屋で私は自分の服を返してもらいました。 その場で着替えさせてもらおうとしたのですが「あら、今男の子に戻っちゃったら、女子寮を出れないよ」と言われます。
そうです。男の子の格好では寮母さんの部屋の前を通れません。
「じゃあ、このまま出て更衣室で着替えてから、明日クラスの女の子の誰かに渡しますので」
「そのまま持っていてもいいのに」と川口さんは笑って言いましたが「いやぁ、十分特異な体験をさせてもらいましたから」と言って私は女子寮をあとにしたのでした。
 
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