【夏の日の想い出・秘密の呪文】(3)
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(C) Eriko Kawaguchi 2021-03-20
2021年1月4日(月)、今年も3ヶ月間放送のドラマ『少年探偵団IV』の初回放送が行われた。今回はアクアが小林少年、北里ナナの双方を演じ、新人の羽鳥セシルが地上波ドラマ初登場(お正月のバラエティには数本出ている)。2000万円(?)掛けて制作した豪華なフルートを使用するという話題付きであった。予告編が何度も流されていたこともあり、20%を越える高い視聴率となった。
ΛΛテレビでは、この番組で使用したフルートを1月5日から1ヶ月間、六本木のテレビ局エントランスに展示すると、いったん発表したのだが・・・テレビ局の社長にコロナ対策大臣から直接電話が入り、エントランスでの展示は中止になった。
代わりに、ΛΛテレビでは、6階の40畳ほどの部屋に展示室を設置。事前予約方式(入場は無料)にして、密にならないようにコントロールすることにした。
展示品は最初触ってみられるようにするつもりだったが、これも感染拡大防止の観点から、見るだけに変更された。
展示するのは下記である。
“ロマノフの小枝”:ルビー・サファイア入プラチナフルート(キイ:ピンクゴールド)
“ロマノフの小枝のイミテーション”:番組内ではタングステン製という設定だったが、実際には洋銀のプラチナメッキ、宝石は安価なダブレット。
“ロマノフの小枝のレプリカ”10本(販売用)
レプリカを販売しちゃう!というのは、制作費を少しでも回収したいテレビ局上層部からの要請だったらしい。レプリカは洋銀のプラチナメッキ(これはイミテーションと同じ)だが、キイはピンクゴールドではなく、赤銅である。だから本物とは少し色合いが違う。填めてある宝石は、ルビーやサファイアではなく、レッドクォーツとブルークォーツである。青いラインは本物と同じウルトラマリン(ラピスラズリを原料とする顔料)でペイントしている。1/10-10/10という“限定ナンバー”の刻印入りである。
なお普段使い出来るように、宝石(というよりパワーストーン)は取り外して使用することもできるようになっている。取り外した時の保管用ポケットが付属のフルートケース内部に設置されている。
これを1本12万円(アクア・本騨真樹・セシルの直筆サイン付き)で販売しようという魂胆である。アクアにしてもセシルにしても、12万円もするレプリカが売れるのかなあと半信半疑だったが、1月中に10本完売して、びっくりした。
更には、歌手の芹菜リセが「さすがに本物は買えないけど、そのイミテーションでいいから欲しい」
と言って、200万円で買い取っていった。それで展示期間中は“売約済”の札が付けられていて、展示終了後に引き渡された。むろんアクア・本騨真樹・セシルのサイン付きである。
そして更に展示終了間際になって、本物の“ロマノフの小枝”が欲しいという人まで現れた。
レインボウ・フルーツ・バンドのフェイである。
ライブとかで使いたいというので、彼女(彼?)なら、番組のイメージを損なわないしということで2500万円で売り渡すことにした。
アクアとの“リモート食事会”付きである。フェイは一緒に食事しながら
「アクアちゃん、今年こそは『女の子になりました』と公表して、来年の成人式には振袖着ようよ」
などとアクアを唆していた。
「アクアは成人式に振袖を着ると思うか?」というネットアンケートでは全ての投票がYesに入って、Noの投票は1件も無かった!フェイ自身は5年前の成人式では「ボクは男の子だけど、背広とか紋付き袴より振袖の方が可愛いし」と言って振袖を着ている。
その後、レインボウ・フルーツ・バンドのライプのクライマックスでこの“ロマノフの小枝”を使用するのが定着し、ライブも大いに盛り上がることになる。普段は銀行の貸金庫に入れておき、ライブの時だけ持ち出すらしい。普段は普通の(?)プラチナのフルート(1000万円)で練習すると言っていた。
そういう訳でこの豪華なフルートの制作費は完全に回収できて更に売却益まで出たのであった。
もっともフェイは片付けができない人である。夫(妻?)のヒロシから
「おーい。プラチナのフルート、こんな所に転がしておくなよ。踏んで曲がったらどうすんのさ?」
などと叱られているのは内緒である。
「ごめーん。でもこないだ曲げちゃったヨーちゃんのちんちんもまだ元に戻らないね」
「あれまだ痛いんだけど」
「痛かったら、いっそちんちん元から切っちゃう?」
「いやだ。マコこそ、いいかげん、ちんちん切るつもりは?」
「子供産むのに妥協して戸籍は女に変更したけどボクは男の子だから、絶対にちんちんは無くしたくない」
「まあいいけどね」
と可愛いミニスカート姿でヒロシは言った。
なおフェイは“どちらもある”ので、ヒロシが男役の時は通常の男女のセックスとほぼ同じである。クリトリスの代わりに少々大きいものがあるだけである。もっともフェイは入れられるより入れる方が(気持ち良くて)好きで、ヒロシは入れるより入れられる方が(楽で)好きなので、男役はフェイがする方が多い。従って妊娠確率はヒロシの方が高い!?
一応フェイの出産予定日は5月である。多分出産するのはフェイであり、ヒロシではない。
ヒロシは「そういえばマコとの馴れそめは、ローズ+リリーさんの『愛のデュエット』のPV撮影だったなあ。マコ可愛かったなあ、などと思い出していた。
むろんフェイの方はそんなこと、きれいさっぱり忘れている。
1月1日(金)にデビューシングル『ココと子ギツネのロンド/風の中のココ』を発売した羽鳥セシルだが、当日ローズ+リリーのライブで歌った直後から、動画サイトにPVを流した。
PVは2種類あり、ひとつは四国で撮ったもので多数のおキツネさんがCGで書き込まれており、可愛いと評判だった。もうひとつは、ライブでやってみせたように、2人のセシルが並び、1人が歌を歌い、1人がフルートを吹く動画である。これを見て、双子のユニット?と思った人もあったようである。
セールスも好調で、デイリーランキングでは1位、週間ランキングでも12月30日に発売されたアクアの『探偵王子』(少年探偵団IV主題歌)に次いで2位であった。
歌番組からも声が掛かり、1月6日のスタジオμに出演して生歌唱を披露した。4日(月)の『少年探偵団』の放送で注目されたばかりだったこともあり、視聴率が物凄いことになった(実は1月5日の『茶道家元殺人事件』でも注目された)。
この日は、フルートについては、甲斐絵代子が吹いてあげた。彼女は年末に体調を崩して、カウントダウン・ライブも欠席し、小浜でのローズ+リリーのライブには常滑舞音が出たのだが、どうもかなり体調を回復させたようであった。
(セシルとYe-yo(甲斐絵代子)は後に一時期「この2人は不仲では?」「共演NGなのでは?」という噂が立つのだが、ちゃんと共演シーンはあったのである)
「セシルちゃん、性転換したという噂がありますけど」
と司会者のレイシー(スリーピーマイス)が訊くと
「そうなんですよ。ローズ+リリーさんのライブに出たら性転換しちゃって」
と言って
「これ男の子時代の私の写真です」
と言って、大胆に学生服を着た写真を見せる。
しかしそれを見たレイシーは
「女の子が学生服を着て男装しているようにしか見えないんですけど」
と言っていた。
「あ、私も男の子でした」
などとフルートを吹いた甲斐絵代子まで言っている。
「まあ性転換トリオかな」
などとセシルが言うと
「ボクは性転換してないんだけど」
とキーボードで伴奏した木下宏紀。
「あ?そうでした?ごめんなさい。木下さんは性転換済みとある人から聞いていたものだから」
とセシル。
「まあスカートくらいは穿くけどね」
と木下宏紀は笑って言っているが、木下さんの男装なんて見たことないと、甲斐絵代子は思っていた。
ちなみに木下宏紀は性転換済みだよとセシルに吹き込んだのは姫路スピカである。
なお、木下宏紀に伴奏をさせたのは、セシルも甲斐絵代子も生放送初体験だったので、経験の長い彼(彼女?)を付けてあげたからである。木下君は2016年のロックギャルコンテスで10位になり、信濃町ガールズに参加した現役信濃町ガールズの最古参である。ドラマ等の出演経験も多いし、CDこそ出していないものの、実はCM曲などはこれまでに何曲も歌っている。
なお、甲斐絵代子がこの番組で使用したフルートだが、お姉さんの甲斐波津子が買ってあげたという洋銀製のフルートである。
元々お姉さんがフルートを吹いていたので、彼女もフルートを吹くようになり、その時、元々お姉さんが吹いていた白銅フルートを妹に譲って、お姉さんは新たに洋銀製のフルートを親から買ってもらったらしい。しかしお姉さんがビデオガールコンテストに上位入賞して東京に出て来たので
「しばらくフルート吹けないかも」
と言って、洋銀フルートをいったん妹に譲った。
ところが実際には足立区の女子寮は練習環境が整っているし、部屋も防音なので、フルート練習できそうということで
「悪いけど返して」
と言ったということである。
それで甲斐絵代子が洋銀フルートを返しに来た所を川崎ゆりこがスカウトしたのである。それで結局妹も信濃町ガールズに入ったので、甲斐波津子は
「入団のお祝いに」
と言って、自分がそれまでもらっていたギャラで妹に洋銀のフルートを新たに買ってあげた。
そのフルートを現在、甲斐絵代子は使用しているらしい。
ギャラなんてまだ大してもらっていなかったろうから、貯金とかも使って?有り金はたいたのだろうと思う。美しい姉妹愛だなと思ったが、こんなことを政子などに話したら、2人に総銀のフルートを買ってあげるとか言い出しかねないので、政子には話してない。
そんなのは野暮すぎるというものである。
ところでローザ+リリンの付き人を昨年春以来務めているデンデン・クラウド(芸人クラウド→芸者クラウド→電車クラウド→デンデンクラウドと改名)だが基本的には多忙なローザ+リリンの運転手とか使い走りをしているのだが、彼に10月以降、新たな仕事が加わっていた。
10月2日にマリナが産んだ秋保ちゃんのお世話である。マリナはコスモスの命令!で9月中旬から産休に入り、出産後、約1ヶ月休んで11月から仕事に復帰した。それで秋保ちゃんにお乳(マリナが搾乳して冷凍している)をあげたり、おしめを替えたりする作業をマリナが仕事に出ている間、三鷹のマンションでしているのである。
マリナより少しだけ仕事が少ないケイナが先に帰宅すると
「それだけ赤ちゃんの世話ができるようになったら、お前いつ嫁に行っても困らないな」
などと言う。
俺、嫁に行くのかなぁ?身体が随分女性化してるけど、などとクラウドは悩んでいた。彼は自分のお股の“割れ目”のいちばん奥側にある何か凹みのようなものの正体については深く考えないことにしている。
小浜でのニューイヤーライブが終わった翌日の2021年1月2日、私たちは今年の震災復興支援イベントの実施要項を発表した。
日時:2021年3月6-7日(土日)
会場:仙台市若林公園
主催:08年組
協賛:ラトコーラ、★★レコード、TKR、サマーガールズ出版、§§ミュージック、フェニックストライン、ムーラン
協力:みちのく放送、FM東北、スピカ仙台、各アーティスト事務所
形式:ネットライブ・あけぼのテレビ方式
(画像参加1000+音声参加5000+書き割り参加1万人を抽選)
寄付:(観覧料-1000円)×販売チケット数、を岩手・宮城・福島の3県に寄付。(ネットライブは高額の中継費用が掛かるので1000円だけ引かせてもらう。但しЮЮラジオは-500円)
放映サイト:あけぼのテレビ・★★チャンネル・ЮЮネット(ラジオを含む)。
パンフレット・グッズなどは特設サイトで当日から約1ヶ月間通販する。なお、みちのく放送・FM東北では放送しない(課金放送ができないので)。
出演者 08年組&フレンズ、§§ミュージック・オールスター
チケットとタイムスケジュール(予定)↓
チケットA
3/6 10:00 リセエンヌ・ドオ
10:30 大崎志乃舞(17)
11:00 原町カペラ(18)
11:30 石川ポルカ(17)
12:00 花咲ロンド(21)
12:30 今井葉月(18)
13:00 七尾ロマン(15)
13:30 恋珠ルビー(14)
↑ここまで各30分↓この後各60分
14:00 姫路スピカ(20)
15:00 白鳥リズム(16)
16:00 西宮ネオン(21)
17:00 高崎ひろか(21)
18:00 品川ありさ(21)
チケットB
3/6 19:00(120分) アクア(19)
チケットC
3/7 10:00(120分) ラピスラズリ(15)
チケットD
3/7
12:00 AYA(29)
13:00 KARION(29)
14:00 山下ルンバ(22)
15:00 桜野レイア(24)
16:00 川崎ゆりこ(28)
17:00 Flower Four(28-33)
18:00 Golden Six(30)
19:00(120分) Rose+Lily(29)
ここしばらくアクアは2回公演というのが定着していたのだが、今回はネットライブで多くの人が同時に見ることができるので1回しか歌わない。代わりにアクアに次ぐ柱として急成長したラピスラズリも単独チケットにすることにした(でないと回線がパンクする)。
アクア、ラピスラズリ、そしてローズ+リリーだけが2時間歌う。ローズ+リリーが2時間歌うことになったので、KARIONの出演を早い時間にしてもらった。でないと1時間歌った後、1時間休憩して更に2時間歌うというのは現在の私の体力では無理である。
Olive Lemon は4人のメンバーの内2人(フェイ・丸山アイ)が妊娠中なのでお休みである。XANFUSもボーカル2人が揃って妊娠中なのでお休みである。しかし今回はAYAが独立したことから参加可能になった。
今回、画像参加・音声参加は各アーティストとごとに募集することにした。出演者が23組なので、画像1000×23=23000人、音声5000×23=115.000人が参加することになる。チケットの購入者はのべ1000万人を越えることが予想されるので当選確率は100倍くらいである。第3希望まで書いて申し込んでもらう。当然、アクアやラピスラズリはかなり厳しい競争率になる。
各アーティストの応募者が6000人に満たなかった場合は(1)画像音声の双方をつなげる人はつないでもらう。(2)それでも足りない場合はデュプリケイトする。つまりひとりの観客が数ヶ所のモニターに表示される!“売れてないシスターズ”はこれになる可能性がある(実際にはアクアやラピスラズリの抽選に漏れた人がなだれこんで、全アーティスト6000人以上になった)。
当選した人は、ウェブカメラを持っている人には接続ガイドをメールし、持っていない人にはウェブカメラを送付する(返却不要)。今年はこれを見込んでメーカーに事前に頼んで大増産してもらっている。実際にはメーカーからの直送になる。
ただここ1年のリモート授業・リモート出勤で、装備している人の率は相当上がっているのではないかとは思う。
昨年が仙台ハイパーアリーナ、その前の2019年が福島ムーランパークだったので、今年は順番から行くと岩手県なのだが、感染対策や中継の装備などの問題で、それが整備されている若林公園を使用することにした。それに交通の便もある。若林公園は仙台空港から車でわずか15-20分で行けるのである。
震災イベントは、私とマリが“ごく個人的に”震災の直後からしていたゲリラライブを発展解消する形で、2013年から毎年3月上旬におこなっているものである。
2013年は東北各地の住人さんを当日!1000人集めて福島で開催した。これはローズ+リリー単独開催である。
2014年は東京で開催して入場料の粗利を寄付する方式。この時KARIONとXANFUSが相乗りして初めて“08年組”によるイベントとなる。08年組は2013年に結成?されたものである。
2015年は宮城県で5万人ライブで、ここから§§プロ(当時)も参加し、入場料は全額寄付方式にした。以降この形式で下記の場所で開催している。
2016年3月(4日間開催)福島みどり体育館・球場 合計6万人
2017年3月(2日間に戻す)宮城ハイパーアリーナ 2.5万人
2018年3月 岩手県滝沢市アポロ 3万人
2019年3月 福島ムーランパーク 4万人
2020年3月 宮城ハイパーアリーナ(無観客ネット中継)
昨年は普通にチケットを売っていたのを中止・払い戻し対応としたのだが、実際には払い戻しの希望はほとんど無く、ほぼ全部寄付させてもらった。
2014年のイベントは東京で開催したので、今回は東北での開催じゃないし、ということで、私とマリはイベントの前に東北に行ってくることにした。
それで私たちは『愛のデュエット』のマリ&ケイ版の撮影を終えた後、ふらりと一緒に東北新幹線に乗ったのであった。
2014.02.12(水) 愛のデュエット(ヒロシ&フェイ版)の撮影:よみうりランド
2014.02.13(木) 愛のデュエット(マリ&ケイ版)撮影:西武園ゆうえんち
『愛のデュエット』のPVは、当時ほとんど無名だったヒロシとフェイは本当に各々の楽器を演奏しているのだが、私とマリのはフェイクで、演奏しているふりをしているだけである。
「でも昨日のヒロシちゃんとフェイちゃんは凄かったね」
「うん。どんな楽器でもこなしちゃうって凄いよ」
「そうじゃなくてさ、ふたりとも男の子役も女の子役もできるのが凄い」
「まあ可愛かったね」
撮影が終わった後、私とマリはゲリラライブをやっていた頃と同様、ギターとフルートだけを持ち、東北新幹線に乗った。
西武遊園地駅(現多摩湖駅)→国分寺→西国分寺→南浦和→大宮→仙台
当時、私たちは初めてのオリジナル・アルバム『Flower Garden』を発表してから半年ほどの時期で、次のアルバムの構想を練っていた時期である。
和実はまだ仙台には移動していない。エヴォン新宿店のチーフをしていた時期である。またこの時期、若葉はエヴォン本店のチーフをしていた。また若葉は今ほどの資産は持っていない。当時は“数億円しか”持っていなかった時期である。彼女が現在の資産の元となる資産を形成したのは2016年春から2017年末までの期間である。
新幹線に乗っている間は雪が降っていたのだが、仙台に着くとやんでいた。
私たちは人が多そうな中央通りは避けて、南側の青葉通りを歩いて西に向かう。
「もう3年も経っちゃったんだね」
「あれは個人的にパラダイムシフトが起きた」
「パラダイスソフトって天国みたいなソフトクリーム?」
「うーん。まあいいや」
「じゃパラダイスでなくてもいいかもアイス買ってよ」
「この季節にアイス食べるの?」
「じゃラーメンでもいいや」
「あ、そこにラーメン屋さんがある」
「じゃ入ってみるかね」
それで私たちは青葉通りからちょっと入り込む道にあったラーメン屋さんに入ったのだが、ここのラーメンが物凄く美味しかった。むろん政子のご機嫌もとてもよくなった。(実は後にクレール青葉通り店になる場所である)
腹ごしらえもしたしラーメンで身体が温かくなったので、私たちは近くの街頭でゲリラライブを始める。
演奏のスタイルとしては、私のギターに合わせて2人で歌い、前奏や間奏・コーダにマリがフルートを入れる形である。
まずはブリーフ&トランクスの『青のり』から始める。歌詞の面白さに耳を留めて足を停めてくれる人たちが出る。そこで森高千里の『Hey!犬』に行く。これはマリがメインボーカルを取り、私は「ワンワン」というバックコーラス(?)を入れる。更にグループ魂『君にジュースを買ってあげる』を歌っている辺りで、私たちの“正体”に気付いた人たちがある。
「マリちゃん、『キュピパラ・ペポリカ』歌ってよ」
リクエストがあったら応えねばならない。私はたちはこの“訳の分からない歌詞”の歌を歌った。すると何語か分からない歌唱にまた興味を持って足を停める人たちがある。続いて『疾走』のリクエストがあるので歌う。『言葉は要らない』のリクエストが来る。歌う。
人だかりが多くなってくる。
そろそろやばいかなと思う。
歌っている内に、人混みの中に警官の姿を見る。
私たちは「では最後の歌」と言って『花は咲く』を歌った。
見ていた警官が涙を流している!
それで結局、警官はこの歌が終わるまで、私たちを制止しなかったのである。
私たちはたくさんの拍手の中、お辞儀をすると、ギターをケースに仕舞い、その場を立ち去った。
「どこまで行く?」
「行ける所まで」
「ここをひたすら行くと、東北大学のキャンパスを突っ切って、蔵王を越えて山形市かな」
「さすがにそこまで歩くのはしんどいね」
「たぶん蔵王で凍死する」
「まだ死ぬ訳にはいかないなあ」
そんなことを言いながら一番町まで来てしまう。
「まだ先に行く?」
「この先は?」
「東北大学とか」
「大学に行っても仕方ないし。どこか別の通りを通って帰ろう」
「右手に行けば商店街の中央通り、左手に行けば南町通り」
「南町通りには確か中華料理屋さんあったよね?」
「泰陽楼ね」
「じゃそこ行く」
「はいはい」
それで私たちは南町通りの方を戻ったのである。
ところが、私たちが中華料理店を目指して?歩いていたら、車のクラクションがする。
「雨宮先生!?」
雨宮先生はハザードを焚いて車から降りてきた。
「ちょうど良かった。ケイ、この車を運転して」
と雨宮先生はいきなり言った。
「へ?何でですか?」
「だってドライバーがいないからよ」
「ケイちゃん、ごめーん」
と言っているのは、先生に続けて降りてきた女の子で、見るとプリマヴェーラの夢路カエルである。雨宮先生は彼女がまだ高校生の頃から彼女を口説き落として恋人のひとりにしてしまった。そのカエルちゃんももう20歳を過ぎて、自分の行動に自分で責任を持つ年齢になっている。彼女は雨宮先生に伴侶がいること、結婚はできないことを理解した上で“おとな”の交際をしているので、敢えて私が何か言うべきものでもない。
なお“夢路カエル”の由来はフォスター作曲『夢路より帰りて』(Beautiful Dreamer) である(でもデビュー当初、しばしば蛙の着ぐるみを着せられていた)。相棒の諏訪ハルカは、同じくフォスター作曲『故郷の人々』(Old Folks at Home) の歌詞「遙かなるスワニー河」である。
「私は免許持ってないし、雨宮先生はお酒飲んでるから誰も運転できなくて」
とカエルちゃん。
「ちょっと待って。ここまでこの車を運転したきたのは?」
「きっと幽霊ね」
「運転代わります!」
それで2人にはフェラーリ・612スカリエッティ (Ferrari 612 Scaglietti) の後部座席に移動してもらい、私が運転席、政子が助手席に座ったのである。
私は普段AT車ばかりなのだが、昨年秋卒論の取材も兼ねてイギリス旅行に行った(シェイクスピアの生家などを訪ねた)時に、向こうで車を運転する必要性から友人の麻央に教えられてMTも練習していた。その時の記憶が残っていたので、何とかこの車を運転することができた。
そして、私が運転を替わってから少し走った所で、何と警察が検問をしていたのである。
「先生、命拾いしましたね」
「まあ私は強運だから」
「ああ、先生は幸運なタイプじゃなくて、悪運が強いタイプですよ」
「まあ危ない橋は渡っても、うまく落ちない」
「というか、こういう時は代行運転でも呼んで下さいよ」
「あんたか醍醐春海に会う気がしたのよね」
「へー」
私はこの時期、醍醐春海の正体は知らなかったものの、数年前から雨宮先生が私と彼?(この時期私は醍醐春海の性別も知らなかった)を競わせているなというのは感じていた。2010年に出したチェリーツインのアルバムは、私が半分、醍醐春海が半分、アレンジを担当している。彼?の作品を見て、私はこの人は自分と似たような年代で、しかも自分と同様に、正規の音楽教育を受けていない人だというのを感じていた。
「明日の朝、大阪で仕事があるのよ。このまま大阪まで走ってくれない?」
「東京駅までお連れしますから、明日の朝の新幹線で」
「それでは間に合わないのよね〜」
「車で走っても900kmくらいありますから、15時間はかかりますよ」
「それは遅すぎる。この子は時速300kmで走れるはず」
「警察に捕まりたくないので」
「軟弱な」
「だったら羽田にお連れしますよ。確か6:10の伊丹行きがあったはずです」
「うーん。それならまあ何とかなるか」
それで私たちの行き先は羽田空港と定まった。
ちなみに政子が免許を取ったのはこの年の12月なので、この車に乗っている4人の中で運転ができるのは私だけであった。もっとも政子が免許を取った後だったとしても、こんな高そうなフェラーリを政子には運転させられない。
でも1人で運転する場合は休憩が必要なので、私はだいたい2時間単位で休憩させてもらった。
仙台宮城ICから東北道に乗った。雪は降ってきたが、スタッドレスを履いているということだったので、速度を落として慎重に走る。途中でスノータイヤ規制をしていたが、
「ああ、スタッドレスですね」
と言われて、そのまま通してもらった。
「でも先生たちは仙台はお仕事か何かですか?」
「いんや。この子が白身魚の着け丼は食べたことないというから、食べさせに連れてきただけ」
「ああ、確かに他の地域ではあまり見ないかもですね。マグロの丼はどこにでもあるけど」
「そのまま仙台に泊まるつもりだったけど、大阪テレビの横川さんから電話があってさ。明日朝のテレビ番組に出ることになっていたこと思い出した」
「先生はその手の話が多すぎます。誰かスケジュール管理してくれる人を雇うべきですよ」
「他人にあれこれ指示されるの嫌いだから」
「だいたい、雨宮先生って捕まらないですよね。電話しても出ないし、メールしても梨の礫だし」
とカエルちゃんまで言っている。
「あんたたちは劇団・杜のミラノ座の公演でも見に来たの?」
「すみません、その劇団を知りません」
「あら知らないの?すっごく可愛い男の娘がいるのよ。こないだはその子がロザリンドを演じていたけど、ほんとに可愛かった」
「ああ、(シェイクスピア『お気に召すまま』の)ロザリンドは女優さんより男の子にやらせた方がいいです(*1)」
「それが女の子じゃなくて可愛い男の娘にさせなよ、と思いたくなるほど可愛かった」
「先生の好みですね」
「あの子、何とか説得して性転換させたいな」
「それは個人の問題ですから」
「あのくらい可愛かったら、きっと女の子になっちゃいなよと周囲から唆されていると思うなあ」
「まあ最近は性別の壁が昔に比べて随分低くなりましたからね」
(*1) ロザリンドは親の決めた相手との結婚を拒否し、追っ手から逃れるために男装して森の中で暮らしている。その森の中で偶然彼女の恋人・オーランドと遭遇するが、オーランドは彼女に気付かない。(同性だと思って)恋の悩みを打ち明けるオーランドにロザリンドは、自分を彼女だと思って愛の告白を練習しなよと唆す。それで“男装のロザリンド”が女役をして、オーランドは“彼女”に愛の告白の練習をする。“男装”という仮面を利用してロザリンドは女性ではできないような、大胆な反応をオーランドの前で示す。そこがこの劇の見せ場である。
シェイクスピアがこの劇を書くのにベースにした原作 (Thomas Lodge "Rosalind") では、ロザリンドは好きだよと言われて頬を赤めるなど“女性的な反応”をしており、男装というシチュエーションを利用していない。しかしシェイクスピアのロザリンドは男装によって女としての殻を破っている。現代なら女から愛を語るのは普通だが、シェイクスピアの時代には考えられないことであった。"Woo me, Woo me"(ほらボクをもっと口説いて、口説いて)みたいなセリフは女の姿では言えないことばである。
ここでロザリンドは男装して女役をしているのだが、シェイクスピアの時代には女優さんは居ないので、実際にロザリンドを演じていたのは少年俳優である。
つまり少年が演じる女性キャラクターが、男装して女役をする、という三重の性転換が起きているのがこの劇の魅力であり、現代の多くの劇団がしているように、この役を女優さんが演じるのは、本来の形ではない。
安達太良(あだたら)SAで休憩して1時間仮眠。雪はかなり激しくなり、速度規制も掛かっている。佐野SAでも仮眠する。佐野では私が仮眠している間に、雨宮先生、カエルちゃん、政子の3人でラーメンを食べてきたようである。
私は3人が車に戻って来てから1人でトイレに行ってきたのだが、その時、私は夜空の中にほんの少しだけ、雲が途切れて星が見えている部分があることに気付いた。
私が空を見上げたまま立ち止まっているので、カエルちゃんが車を降りて寄ってきて
「どうしたの?」
と訊いた。
「ノエルちゃん、紙とポールペンか何か持ってない?」
「あ、うん」
それでカエルちゃんは自分のバッグから手帳を出して
「この後のほうの空いてるページに書いて」
と言って、ピンクのマイメロのボールペンを貸してくれた。
「ありがとう」
それで私はその星が見えている一角を眺めながら、ABC譜で曲を書き綴ったのである。
その星空はほんの5分ほどで雲で覆われてしまった。しかし私はその印象の記憶で曲を書き続けた。更に歌詞も書いていく。
結局15分ほどで歌が完成した。
「きれいな歌だね」
と私の書き綴る曲を見てカエルちゃんは言った。彼女もABC譜は読める。
「タイトルどうしよう?」
「アクロス・ザ・スノーとか」
「へー!」
その曲をいつか使いたいと思っていたので、私は『十二月』の次のアルバムは『アクロス』というタイトルにしようと思っていたのであった。
話を2021年に戻す。
ニューイヤーライブが終わって、1月2日に東京に戻ったアクアと西湖の“4人”は各々別の場所に向かった。
アクアFは六本木のΛΛテレビのお正月の生番組に出演し、西湖Mは新橋の◇◇テレビに行って、アクアがΛΛテレビの仕事を終えた後で参加する、バラエティ番組のリハーサルに代理参加する。
アクアMは都内のスタジオに入って雑誌の表紙の撮影とインタビューを受ける。(何でボクのスケジュールって同じ時間帯に2つ入っているの〜?と思う)
そして西湖(聖子)Fは、卒業するのにどうしても不足する授業数分の補習を受けるため、学校に向かった。
ΛΛテレビには(新年ということもあり)コスモス社長が一緒に行った(東京ヘリポートに自身のロードスターで迎えにきていた)のだが、コスモスは鳥山編成局長から言われた。
「ね、ね、コスモスちゃん、3月くらいでいいからさ、アクアちゃんでロミオとジュリエットを撮りたいんだけど、時間取れない?ギャラは5000万円くらい払うからさ」
「単発ドラマですか?」
と言いつつ、その金額なら長時間ドラマだろうか?などと考える。でも今アクアには“レギュラー”以外の仕事はさせたくない。
「6回くらいの短期連続ドラマで考えている。放送はゴールデンウィークに初回をぶつけて」
ゴールデンウィークから6回のドラマをすれば、その後7月の番組改編期から新しい番組を入れられるわけだ。
「まあ連続ドラマなら考えてもいいですが、相手役は?」
「まだ決まってないけど、佐原春樹くんか溝内武士くんあたりを考えている」
コスモスは一瞬悩んだ。
「あのぉ、佐原春樹さんとか溝内武士さんか女装でジュリエットするんですか?」
「まさか。ロミオだよ」
「アクアがロミオじゃないんですか?」
「アクアちゃんはジュリエットに決まってるじゃん」
「すみません。アクアは男の子なので、女役は困るんですけど」
「また何を今更な。アクアちゃんは昨年春、コロナでテレビ収録とかがお休みになった時期を利用して、栃木大学医学部で性転換手術を受けて正式に女の子になったんでしょ?その記念に女の子水着の写真集を出したのだとか。でもまだ20歳前で戸籍上の性別が変更できないんで今回まで紅白は白組から出たけど、来年からは紅組になるって聞いたけど」
そんな話、初耳だ!
どっから栃木大学なんて名前が??
アクアは小学生の時に渋川市の病院で腫瘍摘出の手術をしているので群馬県とは多少の縁があるものの、栃木県とは必ずしも縁が無い。
「アクアは別に性転換もしていませんし、するつもりもありませんので」
「そうなの?でも心は女の子なんでしょ?無理して男役させることないと思うけどなあ」
取り敢えずこのお話は断っておいた。
しかし最終的にアクアはジュリエットを演じることになるのである。
(2021年)1月6日(水)は、§§ミュージックから今年デビューする新人の第1号、七尾ロマンの『私のサンタさん』が発売された。
当日はロマン本人、コスモス社長、作曲家の水野朝観さん、の3人が出席してあけぼのテレビのスタジオからネット記者会見を開いたが、記者チケットを請求してこの会見に参加した記者は50組を超え、まずまずのスタートとなった。全てあけぼのテレビて(無料)ネット中継したが、接続回線数は5万回線を越えていた。youtubeにはこの日の朝からPVを揚げている。
「タイトルを聞いた時は、クリスマスの時期から外れているのにと思ったのですが、元々、遅れてきたサンタさんからのプロポーズということだったんですね」
「そうなんですよ。ちなみに私にエンゲージリング下さる方、歓迎です」
とコスモスは言って笑いを取っていた。
中継を観ていた政子が訊く。
「コスモスちゃんって彼氏いないの?」
「いないと思うよ。アクアと結婚したいくらいだなんて言っているし」
「バージンだっけ?」
「そこまでは知らない」
コスモスは過去に数回“筆降ろしさせてあげるよ”などと言ったりしてアクアを実際に誘惑したようだし、何度も一緒に泊まったりしているものの、ふたりは“少なくとも性交はしていない”というのがアクアの弁である。もっとも、そもそもアクアのちんちんが立つのかというのは微妙な気もする。
他にコスモスに彼氏あるいは彼女がいないかまでは知らないが、実際問題としてあれだけ忙しかったら、とても彼氏あるいは彼女と付き合う時間は無いのではないかという気がする。
副社長の川崎ゆりこの方は「2021年中に結婚したい」と言っていたので、アテがあるのだろう。「赤ちゃんできた場合、出産前後には旦那に女装させて代理を務めさせます」などとも言っていたし。(彼氏の仕事は大丈夫か?)
ところで1月1日に Windfly20 からの退団と婚約を発表した坂出モナだが、12月31日までの所属事務所である○○プロの中沢部長が、彼女がレギュラーあるいは準レギュラーになっていた仕事について各放送局などと交渉してあげた結果、ほとんどがそのまま継続して出演することができることになった。
ただモナは○○プロとの契約を終えてしまったので、最低でも事務取扱をする事務所が必要である。これについても中沢部長が折衝してあげた結果、彼女が羽鳥セシルと親しかった縁もあり、セシルの事務所でもある♪♪ハウスが、取り敢えず事務取り扱いすることになった。結局♪♪ハウスの親会社である§§ミュージックから○○プロに移籍金を“1円”払った!備忘価額である。○○プロとしては結婚を発表したアイドルなんて無価値だと考えて、この値段設定にしたようである。
「モナちゃん、移籍記念にソロのシングルでも出す?」
と♪♪ハウスの白河夜船社長は彼女に尋ねた。
「やりたいですけど、結婚を発表したのに買ってもらえますかね?」
「歌唱力のある人の歌は売れるよ」
白河社長は、§§ミュージックと関連の深い、松本花子!に楽曲を発注した。それで坂出モナは結局2月か3月にソロデビューすることになった。
その日、政子はテレビ(の録画)でプリキュアを見ていたのだが、唐突に言った。
「なんか呪文が長すぎない?」
「うーん。確かに長いかもね」
見ていたら、エレメントチャージ!→ヒーリングゲージ上昇!→プリキュア・ヒーリング・フラワー→と進むので、結構な時間を食っている。
「これだけ長いと、呪文唱えてる最中を狙われない?」
「そういうネタは過去に色々な漫画やアニメで使用されているね」
と私は答えた。
「「魔法陣グルグル」では、相手の魔物が最終形態に変身しようとしている所を倒してしまう展開がある。「カルラ舞う」では長い呪文を唱えて悪霊を倒そうとしている最中に襲われる話があった。仮面ライダーシリーズでは、変身を邪魔されたのが随分たくさんあったと思うよ」
「青葉とか、あまり呪文唱えないよね」
「何かの法を起動するのに多分本来は呪文は必要無いのだと思う。呪文唱えているのは、何か凄いことしているように見せる顧客サービス」
「ああ、そんなものかなあ。青葉ってわりとポーズも多いもんね」
「テレビ番組の場合は唱えたほうが、いかにもそれっぽいしね」
「結局視聴者サービスか」
「逆に、よく言われるのは『天空の城ラピュタ』の“滅びの呪文”バルスはあまりにも短すぎるというの。あんなの何かの拍子に誤って唱えてしまうかもしれない」
「確かにあれは危険すぎる」
「パスワードも短すぎるパスワードは簡単に突破されるからね」
「暗証番号4桁とかは短いよね」
「でも長すぎると覚えきれない」
「難しいなあ」
「ところで男の人って何歳くらいでオナニー卒業するの?」
「何を唐突に」
「女はだいたい50歳くらいで生理から卒業するじゃん。男の人もそのくらいの年齢でオナニー辞めるのかなあ」
「男の人は70歳でも80歳でもオナニーしてると思うけど」
「嘘!?できるの?」
「何歳くらいまで立つかは個人差があるだろうけど、立たなくても死ぬまでし続けると思うよ」
「信じられない。でも精液は出ないよね?」
「女性は50歳くらいで妊娠能力が無くなる場合が多いけど、男性は70歳とかでも妊娠させる能力が残っている場合もある。加山雄三のお父さん・上原謙は70歳で子供(仁美凌)を作った」
「70歳で子供を産んだの?」
「上原謙さんが産む訳無い。産んだのは奥さんの大林雅美さんだよ。確か32-33歳くらいだと思ったけど」
「70歳で子供が作れるのか。でも死ぬまでオナニー続けないといけないって男の人は可哀想」
「オナニーは気持ちいいからしてるんだと思うけど」
「70歳や80歳でも気持ちいいの?」
「気持ちいいんじゃないの?おじいさんになったことないから分からないけど」
「アクアはおじいさんにはならないよね。おばあさんになるよね?」
「知らないよ!」
「だっておばあさんのアクアは想像つくけど、おじいさんのアクアは想像つかない」
「まだ40-50年先のことだし、今悩む話じゃないと思うけど」
「アクアがちゃんとおばあさんになれるように、早く性転換手術を受けさせてあげなきぉ」
「要らないと思うけど」
でもなんでこういう話になったんだ?
(2021年)1月11日(月).
§§ミュージックの女子寮がある足立区で成人式が行われたが、今年はコロナの折、インターネット開催となった。近藤やよい区長の祝辞がネット配信されたが、今年成人式を迎える予定だった、姫路スピカと信濃町ミューズの悠木恵美はせっかく振袖まで用意していたのに空振りである。特に悠木恵美は、あまりお金も無い中、自分のギャラの積み立て+御両親からの支援で、両者半々出してやっと振袖を買ったのに、本当にがっかりしていた。
それで私やコスモスは話し合って、彼女たちの成人式を実施することにした。
あけぼのテレビで1時間枠を取り、中継する(無料放送)。
参加したのは§§ミュージックの新成人である姫路スピカと悠木恵美、それに§§ミュージックに所属している訳ではないが、しばしば§§ミュージックの仕事をしている。スピカの従姉・竹中花絵、それから交友の広いスピカが誘った○○プロの佐藤小百合(WindFly20)・森風夕子、∞∞プロの山森水絵、@@エージェンシーの北野天子、ΘΘプロの月嶋優羽(三つ葉)、ζζプロのボニアートアサドの3人(沢部美穂・寺島奏和・弘沼希樹)、と合計11人に達した。各々のプロダクションとの出演交渉はほとんどのプロダクションにコネがある私がしているが、全員電話1本でOKしてもらった。
「ああ、それは助かる」
と言っていた所がほとんどだった。山森水絵など数百万円しそうな豪華な加賀友禅を着ていて、これを折角作ったのに使えなかったら可哀想な所だった。
司会役は2年前に成人式を済ませた花ちゃんが務める。自らも振袖姿の花ちゃんが開会の辞を述べた後、やはり振袖姿の高崎ひろかが国歌を歌唱する(ビアノ:川崎ゆりこ−やはり振袖)。
成人式実行委員長の品川ありさ(彼女は長身だが、千里お勧めのスポーツ選手などの振袖なども作っているお店で作った振袖を着ている)が挨拶文を読み上げてから、コスモス社長(彼女は黒留袖を着ていた−社長という立場だからか)の式辞がある。そして来賓として羽織袴の東堂千一夜大先生!の祝辞があって、新成人代表として姫路スピカが“決意のことば”を述べた。
その後、記念撮影となる。今年成人式を迎える予定だった11人が並び、写真家の桜井理佳さんに撮影してもらう。
その後“ゲスト”として、ゴールデンシックスが登場してお祝いの演奏をする。この日のゴールデンシックスは、
KB.カノン, Gt.リノン, B.美空, Vn.醍醐春海 Fl.羽鳥セシル, Dr,桜木レイア
という豪華なメンツであった。
「セシルちゃん、ゴールデンシックスに入ったの?」
と司会者の花ちゃんから訊かれて、セシルは
「別の番組の撮影でこちらに来たんですけど、なんかいきなり“愉快な仲間達”というバッヂを渡されたんですけど、これ何ですか?」
と戸惑うように聞き返していた。なお、セシルは“普通の”プラチナ・フルートを使っていた。プラチナに慣れてしまうと、銀のフルートがおもちゃみたいに感じて、物足りなくなってしまったと彼女は言っていた。
その後、ゴールデンシックスが伴奏して新成人の8組(*1)が各々の持ち歌または好きな歌(事前申請していた)を歌ったが、ぶっつけ本番だったはずのセシルがしっかり演奏していたのは凄いと私は思った。初見・即興に強いタイプのようだ。
視聴者の間では、この8組の歌唱が
「凄い」
「これは見応えがある」
と評価が高かった。みんなうまい子ばかりだった。
(*1)竹中花絵はスピカと一緒に歌ったが、ふたりが似ているので双子歌手のようであった。東堂千一夜大先生が「君たちにモスラの歌を歌わせたい」と言っていた。
最後に花ちゃんの閉会の辞があり、成人式および番組は終了した。
(2021年)1月13日(水).
§§ミュージックから今年デビューする2人目の新人、恋珠ルビーが
『サンバ・シャボン』を発売した。
当日はやはりリモートで発売記者会見をする。こちらも七尾ロマン同様50組以上の記者がチケットを請求して、賑やかな記者会見になった。
会見に出席したのは、恋珠ルビー本人、コスモス社長と、楽曲提供者のモライス小林さんの3人である。モライス小林さんはメディアへの登場は久々だったが、歌手として全盛期だった頃と同様、半ばひとり漫才のような感じのトークで記者たち、そして視聴者の笑いを取っていた。ルビー本人もしばしば吹き出していた。
正統派っぽい七尾ロマンに対して“脇道で攻める”恋珠ルビーという路線演出は結構うまく行った感じであった。どちらも似たような路線で売り出すと競合してしまうので、競合せずお互い刺激しあって伸びて行ってくれればというので私・コスモス・千里の3人で話し合って決めた方針である。ルビーは不満に思うのではと心配したが、コスモスからその方針を告げられてもルビーは明るい表情で「私はお嬢様じゃないですから」などと言っていた。
七尾ロマンも週間ランキングの1位を取ったが、恋珠ルビーもこの週のランキング1位を取得した。
1月17日(日).
千里が貴司さんとの婚姻届を区役所に提出した(結婚式は後日の予定)。
ふたりが内輪の結婚式をあげたのは2007年(1月13日)だったらしいので、14年掛けてやっと法的な夫婦になったことになる。日程は事前に聞いていたので、私は彼女に祝電を打ち、また会った機会に御祝儀も渡しておいた。もっとも千里からは
「冬はいつ彼氏と結婚するのさ?」
と訊かれる。
「そうだなぁ。20-30年以内に結婚できたらいいかな」
「50歳すぎてから赤ちゃん産むのは辛いよ。さっさと結婚しちゃいなよ」
「私が赤ちゃん産めるようになったこと、まだ彼に言ってない」
「だったらサプライズにするといいね」
私と正望は2011年に「その内婚約しよう」と約束し、2018年に婚約した。約束してから婚約まで7年掛かったから結婚は7年後かもね、とその時に冗談で言ったのだが、本当に7年後になるかも知れない。そしたら14年掛かった千里のことを言えないぞ、と私は思った。
ローズクォーツの代理ボーカルであるが、2019-2020年度の2年間にわたってローザ+リリンが務めたのだが、2021年度については、かねてから噂があった通り、鈴鹿美里が返り咲くことになった。彼女たちは初代の代理ボーカルである。とはいっても、フェスの時に1日だけ代理をしてもらっただけだったのだが。
例によって引き継ぎになる4月には、双方の代理ボーカルをフィーチャーしたCDを出すことになるらしい。
○○プロ内部にはこのままずっとローザ+リリン固定でいいのではという意見もあったらしいが、ローザ+リリンの日程が最近かなり忙しいことになってきているので、離れることになった。2人はもう既に私たちのものまね芸人という域からは卒業して、独立したタレントとして売れている状態である。
鈴鹿美里もかなり売れてはいるのだが、ローザ+リリンほどではないので、引き受けることにしたようである。
「男の子+男の娘ペアから、女の子+男の娘ペアに移行か」
「元々のローズ+リリーが女の子+男の娘ペアだったから、最も代理ボーカルとしてふさわしいのかもね」
などといった意見も出ていたようである。
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【夏の日の想い出・秘密の呪文】(3)