【春動】(3)

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ΛΛテレビは12月26日から1月18日まで(12/31夜と1/1夜のみ除く)、毎晩深夜枠で2017年に制作したものの“諸事情”で半分まで放送した所で放送打ち切りになっていた、キャロル前田と七浜宇菜のダブル主演『変身ポンポコ玉』を22話。一挙再放送した(後半は初めての放送)。
 
これはサトウハチロウが昭和初期に書いていた『あべこべ物語』を原作とするもので、1973年にTBSが放送した『へんしん!ポンポコ玉』のリメイクになっている。
 
キャロル前田の当事の可愛いセーラー服姿や、七浜宇菜の立ち小便シーンなどもあり、なかなか萌え度の高い作品である。
 
原作の『あべこべ物語』が水物ビーナの画像付き朗読劇で話題になったので、それを機会に再放送したものであるが、物凄い反響があった。深夜枠とは思えない高い視聴率を出し、再リメイクの要望まで出て来ていた。
 
「やはり男の子は羽田小牧ちゃんだよね」
「羽田小牧ちゃんのセーラー服姿見たーい」
 
と勝手なキャスティング要望が暴走していた。
 

郷愁村に建てられ、昨年夏の『白雪物語』の撮影に使われた“白雪城”が1月2日から一般公開された(1月1日はホテル以外休業)。
 
コロナの折、入場制限をしており(1日限定1000組で前の人が入場してから30秒待って次の人は入れる)。入場希望者は予約をした上で、郷愁リゾート内のどこか(自家用車や宿泊者なら自室推奨)で待機し、「あと30分くらい」、「あと15分くらい」というメッセージを頼りに入場口まで来てもらうというシステムにしている。
 
映画は今ちょうど公開中であるが、その映画の人気とあいまって、こちらの入場者もかなりの数になっていた。
 
八犬伝村の方は、整備に時間が掛かっており、3月くらいの公開予定である。
 

千里は1月1日付けで、藍川真璃子の自宅と資料館!および土地を買い取る契約を結び、代金として1億円を振り込んだ。
 
「まあ“死後”の資金かな」
などと真璃子は言っていた。
 
「普通の人の“老後”ですね」
「いやあ、死んだ後、こんなに長時間存在し続けるとは自分でも驚異だよ」
 
藍川真璃子は元日本代表のシューターであり、ある意味、千里や花園亜津子、の先生であるし、佐藤玲央美の直接の先生である。
 
彼女は 1994.4.26に航空機事故で死亡(38歳) しており、その後、27年以上にわたり“幽霊”をしている。幽霊なのに、バスケットの指導をし、出羽の修行に毎年参加し、ジョイフルゴールドを わずか数人のチームからWリーに参戦するまで育てあげた。
 
ただ、いかんせん幽霊なので、いつ昇天して消滅してしまうか分からない。彼女の状態については、出羽の美鳳さんも首を傾げている。
 
彼女には子供も親族も全くなく、彼女が唐突に消滅してしまった場合、死亡届を出す人はもとより、失踪宣告を請求する人も存在しない。彼女の資産が宙ぶらりんになってしまうので、10年くらい前から、真璃子は千里に「買い取ってくれない?」と言っていた。千里は「気になるものがあった方が長生き?できる」と言って買い取りには消極的だったのだが、真璃子が「いい加減やばいと思う」と言うので、買い取ることにした。
 
真璃子はここ10年ほど、ジョイフルゴールドを所有するKL銀行の寮に住んでおり、家にはほとんど帰っていなかった。今後も寮に住み続けるので、消滅した場合は銀行が家出人捜索依頼などを出すかも知れない。
 

その日、お正月で妻の実家がある留萌に来ていた春都は、妻の恵香に言った。
 
「カーナビの音楽入れてたSDカードがどうも壊れちゃったみたいなんだよ。余ってるSDカード無い?」
 
「ちょっと待って」
と言って、恵香は自分の机の中を漁ってみる。小学生の時から使っていた机なので、実に雑多なものが入っているが、見覚えの無いSDカードが指に触れた。これ何に使ってたやつだっけ?と思うが記憶が曖昧である。容量は2GBである。
 
「これ使える?2GBだけど」
と言って夫に渡す。
 
「2ギガかぁ。小さいけど、家に帰るまで程度のお供にはなるかな、アルバム10枚か20枚程度くらいの容量だと思うけど」
と言って受け取る。
 
パソコンで開いて見る、
 
「なんかデータ入ってるけど消していいやつ?」
「何だろう?」
 
ひょっとして子供の小さい時の写真とかだったら消せないので確認する。
 
「何これ?」
「なんかディスクイメージファイルが1個、.psdってPhotoshopのファイルだっけ?それが6個、あと拡張子.inddって何のファイルだったっけ?」
「さあ」
「お前も知らないの?」
「うん」
 
それで春都はPhotoshopのデータを開いてみた。
 
「これは・・・・」
「千里に電話してみる。これきっと千里から預かってて忘れてたデータだと思う」
「うん」
 
連絡を受けた千里はその日の内に札幌に飛び、小樽から迎えに来た<せいちゃん>と一緒に恵香の家に行って、SDカードを受け取った。
 
<せいちゃん>はSDカードを取り敢えずそのまま持参のパソコンにコピーする。そして開いてみた。
 
「ディスクイメージファイルは『ワンザナドゥ』そのものだ。psdファイルは恐らくジャケ写だと思う。インデザインのファイルは封入するパンフレットだね」
「ということは」
「これはこのアルバムを工場に持ち込むためのデータだよ。タイムスタンプ見ると2003年12月28日だから、高岡猛獅さんが死ぬ前日。つまりこのアルバムが完成した直後のもの」
 
「なぜそんなものがこんな所に」
「たぶん千里が誰かから預かって、でもどこかで落として、それを布施さんが拾ったものの、布施さんも忘れてて、この部屋の机の中で18年間眠ってたんだな」
と<せいちゃん>。
 
「ありそう!私、全く記憶無いけど」
と千里。
 
「まあ千里は記憶無いだろうな」
と<せいちゃん>は言ったが、恵香も全く同意だった。
 
千里もまさか志水照枝が落としたものを拾ったものとは思いも寄らない。
 

「恵香。このデータ預からせて。必ずお礼するから」
「うん。持ってって」
 
それで千里は<せいちゃん>と一緒に東京にとんぼ返りし、データをコスモス(*4)と雨宮三森に見せた。2人とも驚愕していた。
 
「この絵は夕香ちゃんが描いたものっぽい」
と雨宮は言っていた。
 
雨宮はその夜の内にワンティス全員とアクアの承諾を取った上で、このジャケ写を2月発売予定の同アルバムに使用するとともに、この18年前のパンフレットは、新しいパンフレットと一緒にアルバムにサービスで封入することを決めたのである。
 
(*4) コスモスは「今日は千里が7-8人出没してないか?」と思った。
 
なお、ここで急遽札幌まで往復したのは“千里5”である。他の千里が全員何か作業をしていたので、元締めの5番が行くしかなかった。司令室の留守番を頼まれた花星と小道が悲鳴をあげていた。
 
(小道は小町の曾孫である)
 

1月4日0時過ぎに高岡の青葉家を出た千里は、後部座席に乗る桃香に
「寝ててね」
と声を掛け、伏木万葉大橋を越えて、鏡宮交差点方面に向かう。
 
「ね、ね、千里、海王丸パークあたりに駐めてちょっとセックスしない?」
とビールを飲みながらスマホでゲームをしている桃香は言った。
 
「しません!」
と千里はきっぱり言う。
「季里子ちゃんと約束したからね。変なことはしないって」
 
「言わなきゃバレないのに」
「桃香の浮気は全部すぐバレる」
「むむ。なぜだろう」
「とにかく寝てなよ」
「分かった。寝てる」
 
それで千里の運転する車は鏡宮交差点をそのまま南下し、小杉ICに向かう。そして北陸道に乗って、新潟方面に向かった。桃香はビールを飲み尽くすと静かになったようだ。
 
後ろの様子を感じ取る。
 
「寝たかな」
と呟くと、千里は「コリン、あとはよろしく〜」と言って、眠ってしまった。それでコリンは千里の中に入って、車を運転し続けた。
 
つまり・・・・・小浜から高岡までセレナを運転して早月たちを運んできたのは千里2だったのだが、青葉邸をインプレッサで出たのは千里4だったのである。4番はレスビアンの趣味は無いので、桃香とセックスするなんて、お断りである!
 

翌日早朝。千里は上里SAで休憩。ここで桃香と一緒に朝御飯を食べた。そして、その後は自分で運転して、桃香を勤務している塾にポストした。
 
「ありがと。キスとかしたらダメ?」
「ダメです」
「ケチ」
 
しかしそれで一晩ぐっすり寝た桃香は受験追い込みの時期の塾に復帰したのであった。
 
千里は黒いインプで“関東の家”まで走ると、車を駐め、自分の部屋のベッドに潜り込んで「疲れたぁ」と言って、ぐっすり寝た。
 
この年末年始は千里1,2,3,4,5,6が全員フル稼働に近い状態になっていた。
 

1月8日(土)、季里子は来紗(小2)伊鈴(小1)京平(年長)早月(4月から幼稚園)をセレナに乗せて、青葉宅を出た。チャイルドシートが4つ取り付けられるセレナでないとできないワザである。もっとも小学生の来紗は普通のチャイルドシートは卒業してジュニアシートを使用している。由美と緩菜(ともに3歳)は高岡にまだ残す。
 
「うちって、その内移動にマイクロバスが必要になるかも知れない」
と季里子は一瞬考えた。
 
大型免許、取りに行こうかな?
 
子連れのロング・ドライブは消耗するが、今回は桃香が一緒ではないので随分楽だった!(桃香は子供以上に手が掛かる!更にすぐセックスしたがるし。あの子は脳細胞が全て性欲でできているとしか思えん!)
 
ひとりで運転するので大量の休憩を入れながら走って行く。でも自分が仮眠している間は、京平がみんなをまとめてくれているので、結構安心であった。
 
来紗の方が年上なのだが、来紗はわりと“ねんね”なので、結構年下の京平を頼っている。性格なんだろうなあと季里子は思う。(実際は、京平は人間の年齢では幼稚園児でも中身は高校生くらいなので、しっかりしている)。
 
季里子は翌日、浦和で千里(千里3)に京平と早月を渡すと、3時間休ませてもらって(青葉の部屋に寝せてもらった)から、自分のアクセラに乗り換え、来紗・伊鈴と一緒に千葉の自宅に戻った。
 
一方、季里子たちが青葉宅から退去した後、千里1がヴィッツに乗せて、桃香Bを旧宅から連れてきた。この後、しばらくは、朋子・桃香・由美・緩菜の4人での生活となる。
 

青葉は1月下旬の北島杯までは東京方面に滞在するので、忙しいケイと一緒に1月1日夕方には、Honda-JetBlueで熊谷に戻り、浦和の千里家に入った。
 
京平と来紗が戻って来てないので、この家には現在、貴司と猛獅だけがいる(千里は居るのか居ないのか、よく分からない!)
 
浦和の家に居る女が青葉だけとはいっても、青葉は超多忙なので、御飯を作ったりはしない。彪志もコロナで薬屋さんは忙しいので、朝早く出て夜遅く帰ってくる。それでこの家の主婦?は貴司になっていた。貴司はBリーグ2部のメトロ・エクシードに所属しており、だいたい昼頃自分の車で出掛けていき、試合の無い日は夕方、試合のある日は夜帰る。午前中に少し時間が取れるので、その時間帯で御飯を作ってくれていた。
 
もっとも唐突に夕方くらいに御飯ができていたりすることもあり、どれかのちー姉、あるいはちー姉の眷属さん?が作ってくれているんだろうなと思った。
 
この家には以前はよく龍虎(アクア)も来ていたが、昨年6月?くらいに八王子の家ができてからは来る頻度が減っているようだ。あの家が出来たので、荷物をかなり向こうに移動したため、代々木のマンションにはスペースのゆとりができてストックルームと和室を潰してピアノルームを作ったようである。あのマンションの10階のほうの部屋はもう売却したのかな??
 
そういえば八王子の家には大量の太陽光パネルが乗っていた。あれに比べれば、まだ高岡の新居のほうが、規模が小さいかな?(*5)(青葉はまだ新居に1度も泊まっていない)
 
でもソーラーパネルといえば、高岡の家には青山さんが工事に来たと言っていたなあと思う。普通の家なら4枚とか8枚くらいだろうけど100枚の設置には数日かかったろうと思う(*6) 彼(彼女?)を見たということは、その時、ちー姉は現場に来ていたのか。
 
と考えてから、青葉は凄く嫌な予感がした。
 
ちー姉ったら“余計な親切”してないよね??
 
ほんとにウェディングドレスで結婚式したりして?
 
(*5) 青葉の新居は32H×11HJ=88坪/八王子は母屋が21H×8H=42坪、西の対が21H×10H=52.5坪なので、載っている太陽光パネルの数も大差無いはず。南の対か完成すると青葉宅の倍以上になるかも:いつ完成するかは九重の気分次第:九重は10日の内9日くらい飲んだり雌の龍とイチャイチャしてて、1日くらい仕事をするパターンである:気分転換に猪や羆を狩る−彼は16年ほど運営を続けている“野獣牧場”の発案者であり、千里たちから社長に任命されている。
 
(*6) 120枚の設置に、男の娘社員5人+歩の6人がかりで、11/9の朝から夕方まで丸一日かかったようである。
 
青山は顔見知りなので、特に千里に挨拶して千里は「充分普通の女の子に見えるよ。結婚式では堂々とウェディングドレス着るといいよ」と言って、握手して励ましておいた。
 
なお、歩は事業所内ではほぼ男子扱いされている。彼女は声も低いので、部内には彼女を男の娘と思っている人も多い。歩は筋力もありメカに強いので、実は男の娘社員以上に現場での戦力になるし、男の娘たちから頼りにされている。ただし、トイレは「心が男というのでないなら」女子トイレを使うよう副所長から釘を刺されている。
 
スカートの制服で男子トイレに入り小便器を使われるのは色々問題がありすぎる!
 
歩がプライベートでしばしば男子トイレの小便器を使うのは、ズボンを穿いていると個室でズボンを下げてするより小便器の方が楽だからで、男になりたい訳では無い。彼女はただのレスビアンの男役であり優子などに近い。
 

1月5日にはアクアに関する制作会議をしたいということで、五反野の研修所(女子寮)に行った。出席者は、和泉、青葉、千里、ケイ、コスモス、三田原の6人である。
 
冒頭和泉から
「現在のアクアの路線は女の子路線に行きすぎている」
として強い抗議があった。
 
「アクアを女性タレントとして売り出すのであれば、自分はディレクターを辞任する」
と強い口調で和泉は言う。
 
青葉は、この人がいなかったら、とっくの昔にアクアは(Mまで)性転換させられて女性タレントになってしまっているなと思った(和泉がいても既に事実上女性タレントになっている気もしないでもないが。そういえば今Mは男の子の身体なのだろうか?また女の子の身体になっているのだろうか?)。
 
アクアプロジェクトでは、青葉が(ほぼ名前だけの)プロデューサーで、和泉がディレクターである。もっとも実際のアクアの制作は、ほとんどコスモスが主導している。
 
ケイは
「アクアが自分で完全な女の子になってしまったりしない限りは、あの子を女性タレントとして売るつもりはないよ」
と明言する。
 
コスモスは言う。
「どうしても女役のオファーが多いんですよね。でも基本的に女役だけの仕事は断っていますから。やむを得ずやらせたのは、プリマが本番直前に怪我して他にできる人が居なかった『白鳥の湖』とか、撮影しているスタジオのそばを通りがかりに徴用されちゃった『大工と鬼六』ですね。『大工と鬼六』はプロデューサーさんが後でこちらに謝罪に来ましたけど」
 
「シンデレラは?」
「あれもコロナで突然ラピスラズリが使えなくなって、他に代替できる人が居なくて」
 
「まあシンデレラでは尺のほとんどでアクアは男装だったけどね」
と千里は言う。
 
「でも男装女子という設定だったし」
と和泉。
 
「ま、それで実はアクアに今度は逆に、女装男子の役をさせようという企画が進行中なのだけど」
とケイが言うと
 
「え〜〜〜!?」
と和泉は非難するように声を挙げた。
 

『黄金の流星ですか?』
と事務所でお留守番をしていた川崎ゆりこは、多忙の中わざわざ訪問してきた鳥山渚プロデューサーが言ったタイトルをオウム返しした。
 
「新作童話か何かですか?」
「いえ。ジュール・ヴェルヌ原作なんですよ。彼の最後の作品である可能性もあります。実は息子さんが少し加筆してヴェルヌの死後に出版されたんです」
 
「へー。でもそのタイトルは聞いたことない」
 
「ヴェルヌの作品の中では日本での知名度は低いかもしれないですね」
「なるほど」
 
「原題は『La Chasse au météore』で『流星の追跡』というのですが、50年ほど前に日本語訳が出た時は『黄金の流星』というタイトルだったので、それを踏襲しようかと。実際『流星の追跡』より『黄金の流星』のほうがタイトルとしてインパクトがあります」
 
「ですね!」
と、ゆりこも同意した。
 

それで鳥山はあらすじを説明する。
 
「ヴェルヌは"météore" 流星と書いているのですが、実際の物語内での天体の動きは、地球の重力に捉えられて一時的に衛星になった小惑星という感じです。さて、地球を周回する小さな衛星が発見されるのですが、その衛星は純金でできているという分析結果が発表されて世界は騒然となります。更にこの衛星の動きが天文学者の計算通りにいかず、天文学者たちも困惑する。ここで世の中の関心は、この衛星は、いづれ地球の引力に捉えられて地上に落ちてくると思われるものの、それがどこに落ちるかという問題です」
 
「落ちた所に未曾有の災害が発生する?下手すると人類滅亡」
 
「ヴェルヌはどうも小惑星激突のインパクトを理解していなかったようで、その問題は全くスルーされてるんです。それより、その流星が落ちてきたら、その黄金は誰の物になるのかというので大騒ぎになるんですよ」
 
「あぁ」
 
「領土の広い国は、落ちてきた国のものだと主張します。一方多くの国は全ての国で平等に分けるべきだと主張します」
 
「でも平等って、どういう比率か曖昧ですね」
「そうなんてすよ。均等割なのか、人口比なのか面積比なのか。で、この衛星の軌道が不安定なのは、実はある若い科学者が電波でこの衛星を操っていて、自分の好きなような軌道を変えていたからだったんです」
 
「SFっぽくなってきましたね」
 
「そしてこの科学者の伯父さんが出てくるのですが、彼は実は金融家で、この衛星が落下してきた時、大量の金が市場に投入されることにより、金の相場が暴落することを予測していました」
 
「きなくさくなってきた」
 
「それでここに1組のカップルが出て来ます。この2人は、この衛星をめぐって何度も口論したり、同じ意見になったりして、物語の展開の中で頻繁に結婚と離婚を繰り返します」
 
「へー」
 
「牧師さんの所に、あまりにも頻繁にやってきては、結婚式・離婚式を挙げていくので、物語の最後で2人が結婚式を挙げて去っていった後、牧師さんは呟きます。今のは『さようなら』ではく『ではまた』と言うべきだったかな、と」
 
「その2人が主役だ!」
 
「そうなんです。大国の政治家とか、衛星を発見したのはどちらが先かと言い争ってる天文学者とか、その2人の子供の恋人同士とか、衛星の軌道を制御している科学者とか、その伯父の金融家とか、全部脇役にすぎません」
 
「その主役を誰がするんですか?」
と、ゆりこは訊いた。
 
鳥山さんがわざわざ来たというのは、アクアか舞音へのオファーなのだろう。でもどちらも空いてないぞと思う。
 
「アクアさんにお願いできないかと思っているんてすが」
と鳥山は言った。
 
アクアか・・・・
 
「映画の撮影前になりますが、この2人は主役なのに出番は少なく、撮影も他の出演者との絡みが無くて、2人と牧師の3人だけで撮れます。だから飛び飛びでもいいから合計で20-30時間程度あればいいんですよ」
 
「その相手役は?」
「七浜宇菜さんにお願い出来ないかと申し入れています。彼女も映画前で多忙なのですが、アクアさんが出るのなら、自分も出ていいと言っています」
 
宇菜!?
 
ゆりこはソファに体重を預け、腕を組んで考え込んだ。
 
「それ、どっちが男で、どっちが女なんです?」
と尋ねる、
 
「どちらがいいと思います?」
と鳥山さんは笑顔で訊いた、
 

五反野の研修室でのアクア制作会議が終わった後、一同は秋に竣工して早速使用している女子寮2号館を見学した。
 
「1号館よりかなり広くなりましたね」
と空き部屋を見て、みんなが言う。
 
「旧館は6畳サイズ洋部屋の1Kでしたが、新館は8畳サイズ洋部屋の1DKになっています。他に各フロアに2DKがひとつずつあります」
 
「それは姉妹用?」
「そうです。結構姉妹がいるんですよね。カップルでもいいことにしています」
「男を女子寮に入れるの!?」
「女同士のカップルでしたら」
「なるほどー」
 
「男の娘と女の娘のカップルなら?」
と千里が茶々を入れる。
 
「個別審査で」
とコスモスは言っていた。
 
「あれ?こちらベランダかと思ったら、こちらにも廊下がある」
と和泉が“部屋の奥”のドアを開けてみて驚いている。
 
「廊下は表裏にありますから、非常時はどちらからでも脱出できます」
「それはいいね」
 
「それに運気の問題もあるんだよ。個人個人で、玄関がどちらにある方が運気いいかが違う。だから、自分がしっくりする方から出入りしなさいと言っている」
「なるほどー」
 
「隣の住人と顔合わせたくなくて隣の人と反対から出入りしてたりして」
「それもいいんじゃない?お互い嫌な思いしなくて済む。どうしても相性の悪い人はいるから」
 
確かにそれもありだと青葉は思った。
 
「水の流れを作っているのは、湿度調整か何かですか?」
「うん。それと冷暖房費の節約というのもある。特に猛暑の夏は冷房だけでは冷やしきれないんですよね。でも水を流すと結構冷やせる」
「いいね、これ」
 
「それとクマネズミ対策もあるんです。高層ビルにクマネズミはつきものだけど、駆除が困難。ところが水路があると、ここにドブネズミがやってくる。ドブネズミはクマネズミの天敵」
 
「ドブネズミは居てもいいの?」
「別に人間に害はもたらさないので」
「へー」
 
「ネズミ対策なら、おキツネさんを住まわせてもいいかもね」
などと千里が言い出す。
 
「おぉ!」
「元々、稲荷神社でキツネが大事にされるようになったのは、大切なお米を食べてしまうネズミをキツネが食べてくれるから」
「なるほどー!」
 
「命婦(みょうぶ)たちと女の子たちが共生している女子寮というのも面白いかも」
「うむむ」
 
「ここに舞音ちゃんがいたら、それ猫でもいいですよねとか言い出しそう」
「言いそう!言いそう!」
 
「やはり困った無断生活者がいたら、その天敵を導入すればいいんだな」
と和泉も楽しそうに言っていた。
 
「合鴨農法と同じだね」
と三田原さんが言っていた。
 

通常は施錠している屋上にも案内する。
 
「この太陽光パネルは壮観だね」
「何枚あるの?」
「200枚ですね」
 
うちの倍か、と青葉は思った。
 
「これで一般家庭30軒分くらいの電気を生み出すから、東電の電気の使用量が劇的に減ったんですよ」
「30軒分か・・・」
 
ということは、私の家って一般家庭15軒分くらいの電気使ってるの?きゃーと青葉は思った。
 
「施錠してるのは自殺防止のため?」
「そうそう。寮の廊下の窓もはめ殺しですよ」
「やはり親元から離れて暮らしてると、精神的に疲れて、ふらっと死にたくなることもあるよね」
「それたいていは一時的な気の迷いですから、自殺する手段がなかったら、わりと諦めるんですよ」
「確かに確かに」
 
「寮母さんが毎日朝夕、寮の玄関の所で『いってらっしゃい』『おかえり』と声を掛けてるから、悩んでる子にも気付きやすいです」
 
「それが寮母の最大の役割か」
「最初は御飯を作ってもらうために雇ったのですが、個人で作れる量ではなくなりました」
「凄い人数だもんね!」
 

「そういえばラピスラズリが独立して寮を出るんでしょ?」
と和泉。
 
「はい。今都内某所に家を建てているのて3月頭に引越予定です」
とコスモス。
 
「寮から女子タレントが独立するのは、アクア以来だよね(*7)」
などと千里が言うと、和泉が不快そうな顔をする。
 
ちー姉も、アクアが本当に女の子になっちゃった時のための地盤固めしてるよなあと青葉は思う。
 
「やはりコロナがあったんで、感染対策の問題もあって、抑制してたんですよ。昔はデビューしたら寮を出るということになってたんですけどね」
とコスモスは言う。
 
「だよね!」
 
「でも実際デビューしたての新人の報酬では、マンションの家賃払えないよね?」
と三田原さん。
 
「東京は家賃高いですから」
とケイも言っていた。
 
(*7) 実際にはアクアの後で、山下ルンバ・桜木ワルツも独立しているが、ルンバ(花ちゃん)はタレント以外で、作曲家としての収入があったし、ワルツ(和紗)もアクア・葉月のスタッフ兼任で、そちらの収入が大きかった。
 
また高崎ひろかは独立しようとして「いい物件あるよ」と言われたら、女子寮の寮母住宅だった!
 
桜野レイアは、姉の桜野みちるがローンで買ったマンションに住んでいる。残ローンは実質事務所が払ってくれた。姉に家賃を払う約束だったが、実際には全く払っていない!
 
三田原が言っていたように、実際問題としてデビューしたてのタレントの収入ではとても都心のマンションとかは借りられないので、仕事に支障をきたす可能性もある。ワルツは板橋区の結構不便な場所の安アパートに住んでいた。ラピスは江戸川区の不便な場所に家を建てているが、ドライバーがいるからこそ、できることである。ラピスは家政婦兼雑用係も雇う予定である。
 
(ラピスの2人にはとても食事まで作る余力は無いし、アクア同様自分でATMでお金を下ろしたりすることはとてもできない:サインを求める行列ができる)
 

ラピスラズリの新居で必要になる、家政婦について、青葉はある人物をコスモスに紹介した。
 
「篠崎希(しのざき・のぞみ)ちゃんです」
と青葉は彼女(?)を紹介する。
 
「1999年度の生まれで現在は都内の音楽系私立大学の邦楽コースに在籍していて、3月に卒業する予定ですが、もう授業はやってないので、卒業式に出るだけだそうです」
 
「邦楽なんだ?」
「お母さんが琵琶の師範さん、というより一派のリーダーなんですよ。そちらはこの子のお姉さんが後継候補になっているのですが、彼女はそのお姉さんより琵琶が上手いということで」
 
「それは凄い!でも君の方が上手いのに、お姉さんが継ぐ予定というのは、やはり生まれ順?」
「いえ。うちの琵琶は女琵琶なので、女しか後を継げないので」
「へ?」
 
「すみません。最初に言い忘れましたが、この子、戸籍上は男子なんです」
と青葉が言うと、コスモスは
 
「うっそー!?」
と驚いていた。
 

「この子、高校時代から、もう女子制服で通学していたんですよ。親にカムアウトした時は、かなり大騒動だったんですけどね。その時点で既に男性機能は無くなっていると言うと、お父さんも渋々彼女の女子制服通学を認めてくれたらしいです」
 
「優しいお父さんで良かったじゃん」
「結構恐かったですけど、微かに膨らんでいる胸を見せたら諦めてくれました」
「ああ、女性ホルモン飲んでたのね」
「はい。中学3年の時から飲み始めました。飲み始めた時期が遅かったから、声変わりは来てしまってたんですけど、その後、川上さんにもアドバイスしてもらって、女声の練習をして、大学に入る頃にはこの声が出せるようになりました」
 
「君の容姿でその声なら、誰も性別に疑問は感じないだろうね。ちなみにできたら教えて欲しいんだけど、去勢は?」
「大学に入ってから、バイトでお金を貯めて大学2年の時に去勢手術を受けました」
「了解」
 
「この子、いつかお嫁さんになれる日を夢見て、小さい頃から料理をしていたから、料理はうまいんですよ」
 
「男の娘さんにはそういう人が多い」
とコスモスは言っている。
 
「運転免許は?」
「普通免許、自動二輪免許を取っています」
 
「じゃ取り敢えず、女子寮の調理班に参加してもらえない?それで見極めて良さそうだったら“あの目的”に採用ということで」
 
「ありがとうございます!」
 

1月15日(土).
 
コスモスはその日、代々木のマンションにアクアを訪ねた。
 
この日、“アクア”はドラマの撮影に出ている。だから撮影中のはずの“アクア”が、代々木のマンションで休んでいるなんて、誰も思わない。
 
「私今撮影中なんですけど」
「分かってる、分かってる。だから内緒の話をしよ」
とコスモスは笑顔で言った。
 
これは“よくない傾向”だな、とアクアMは思った。
 
この日は休日なので彩佳が来ているが、彩佳はコスモスとアクアにお茶を出しただけで、自分の部屋に引っ込んだ。
 
「今年もアクア主演の映画を撮るから」
「4月から7月のスケジュールが空いてるから、多分その手の大きな話が入ってくるんだろうと思ってました」
 
「また日独合作で」
「へー」
「監督はまた河村さん」
「河村監督なら安心感があります」
 
「それで、アクアの相手役はこの人」
と言って、写真を見せてくれる。
 
男性だ!
 
しかもかなりの肉体派っぽい。筋肉が美しい。これはスポーツで鍛えた筋肉である。体操?柔道?レスリング?なんかその系統のスポーツで鍛えた身体だという気がした。
 
「ステファン・シュメルツァーさんと言って、人気のアクションスター。高校時代はレスリングをしていた。でも柔道も二段の腕前」
 
「ああ、やはりその系統ですか」
 
しかし、相手役が男性であるということ、そして社長は“自分”に会いに来た、ということから、想像できることはひとつ!
 
要するに女役をやってということなのだろう。
 
予防線を張る。
 
「私は女役は受けませんよ。和泉先生だって認めないと思います」
 
和泉はMにとって、最も重要な防衛線である。
 
「女役じゃないよ」
「そうなんですか?だったら男同士の友情物語か何かですか?」
「そんなのが売れる訳無い。アクアを使うなら当然ラブロマンスだよ」
「男の人とラブなんですかぁ〜〜!?」
 
「この映画の最大の見せ場は彼がアクアに熱い愛の言葉を語る場面」
「ごめんなさい。何なら女役してもいいから、ゲイの役は勘弁して下さい」
 
女役をするのは今更だから、正直な所やってもいいけど、ゲイの役はしたくない。ボクみたいなストレートの役者がゲイの人の役をするのは、ゲイの人たちに失礼だ。
 
「もちろん観客は、男のステファンが、女のアクアに愛を語るシーンと思って見てくれる」
 
「意味が分かりません。まさか男装女子ですか?シンデレラみたいに」
「女役男装女子を演じる男の子の役」
 
アクアはコスモスの言葉が頭の上を飛んで行く感じがした。
 
「済みません。意味が分かりません」
 
「でも女役はしていいのね?」
「もしかして2役ですか」
「もちろん。MちゃんにもFちゃんにも参加してもらわなきゃ」
 

2022年1月18日(火).
 
千里のG450を使って、津幡組の南野里美・竹下リル・金堂多江・福山希美・広島夏鈴・筒石君康の6選手および、数人のスタッフを能登空港から熊谷に連れてきた。
 
1月20-23日(木金土日)に東京辰巳国際水泳場で行われる北島康介杯に出場するためである。これは東京都水泳協会の大会なので、本来は都内のクラブ所属の選手だけが出るのだが、東京オリンピックの代表は招待されるので、↑のメンバーおよび青葉が参加するのである。
 
1月20日には女子800m, 男子1500mの予選が行われた。津幡組からは下記が参加して全員、五輪代表の貫禄で決勝に進出した。
 
女子800 川上・金堂・竹下
男子1500 筒石
 
21日に女子800m, 男子1500mの決勝があり、女子の順位はこのようになった。
 
1.川上 2.金堂 3.竹下 4.永井
 
津幡組でメタルを独占した。なお、永井は五輪代表ではないが、東京都の所属。
 
筒石は1500mで2位だった。
 
また短距離で女子200m自由形があり、希美が銀メダルを取った。
 

22日は400mと400m個人メドレーの競技があった。津幡組の参加者は下記である。
 
女子400iM 川上・金堂・南野
女子400m 南野・竹下
男子400m 筒石
 
順位はこのようになった。
 
400iM 1川上 2金堂 3南野 4永井
400 1竹下 2永井 3南野
 
400iMでも津幡組がメダル独占した。
 
自由形では。永井さんが南野さんを抜いて2位に食い込んだ。大健闘である。筒石は男子400mで優勝し、五輪ゴールドメダリストの貫禄を示した。
 
また短距離で女子100m自由形があり、夏鈴が銀メダルを取った。
 
最終日23日には、女子200m個人メドレーが行われた。津幡組では金堂のみが参加する。結果はこのようになった。
 
1,金堂 2.榎箸 3.広嘴
 
結局今回津幡組の成績はこのようになった。
 
川上 800:G 400iM:G
金堂 800:S 400iM:S 200iM:G
竹下 800:B 400:G
南野 400iM:B 400:B
福山 200:S
広島 100:S
筒石 1500:S 400:G
 

大会は23日で終わったので、1月24日に熊谷からG450で全員能登に戻る。青葉もこれに乗って高岡に帰り、10月29日から3ヶ月弱に及んだ関東滞在を終了させるつもりだった。次は3月2日に、国際大会日本代表選手選考会があるので、それに合わせて出てくる予定である。
 
それで青葉が23日の夕方、荷物の整理をしていたら、冬子(ケイ)から電話が掛かってくる。
 
「金メダルおめでとう」
「ありがとうございます。(金堂)多江ちゃんが凄かったんですけどね。今回は何とか勝てました。3月(代表選手選考会)はどうなるか分かりませんが」
 
「明日高岡に帰るんだっけ?」
「はい、帰ります」
と青葉は明確に“拒否”の姿勢である。
 
「だったら申し訳ないけど、それを3-4日、延期してもらえないかなあ」
「無理です」
と青葉は言ったのに、ケイは続ける。
 
「ミュージシャン・アルバムの取材に付き合って欲しいんだよ」
「ミュージシャン・アルバム??」
 
何それ?
 
「作曲家アルバムがリニューアルして、作曲家だけでなく様々なミュージシャンの御自宅を、大宮万葉とラピスラズリが訪問する番組になる」
 
「え〜〜〜!?」
と青葉は、あからさまに嫌そうな声を挙げた。
 

しかしそういう訳で、青葉は極めて不本意ながら、24日の能登行き飛行機には乗らず、1月24-26日に『ミュージシャン・アルバム』の第1回取材が行われたのである。
 
1/24 長沼清恵
1/25 XETIMA, 富士川32
1/26 アクア
 
アクアは代々木のマンションに彼(彼女?)を訪ねた。テレビ局は「女性歌手の取材だから」と言って、女性のカメラマンを付けてくけた。
 
作曲家アルバムでは、御自宅の外観から映していたが、ミュージシャンアルバムでは、よりプライベートな空間になるということで、建物の外観は映さず、マンションの戸(こ)の玄関からの映像になった。
 
しかしさすが3億円のマンション(*8)である。その戸の玄関からして超豪華だったので「さすがアクア」と言われた。
 
(*8) 元々3億で買ったのはAYAのゆみである。アクアは結婚して彼氏の家に同居することになった、ゆみからここを2億円で買い取った。そしてその資金で、ゆみは長年所属していた事務所から独立した。
 
当初は買い取ったものの使い道を思いつかなかったのだが、直後、彩佳たちのマンションが崩壊して、避難してきた彼女たちを10階の部屋に住まわせて、アクア自身がこの18階の部屋に引っ越した。
 
彩佳たちが新しい住まいを千里に紹介してもらって退出した後、10階の部屋は実はアクアFが使用している。つまりMは18階に住み、10階にFがある目的のため“何か”を置いているのである。
 

今回のアクアへのインタビューでは、アクアのデビュー以降のことについてのみ取材し、昨夏に発表した両親のこと、小さい頃の病気のことなどには触れなかった。デビュー初期の代表作、夏に出した写真集、そして公開中の映画『白雪物語』などについて質問した。
 
町田朱美が面白がって、高見沢みちる役をしているアクアとか、白雪姫やジュリエット衣裳のアクアとか、人魚姫のコスプレをしたアクアとか、アクアの可愛いあるいはセクシー!な写真ばかり出してきたが、アクアはそれを全部にこやかに、いなして行った。
 
最後には、最近改装して作ったピアノルームを拝見し、そこに置かれているピアノ SX-3 で東雲はるこが伴奏して、アクアは『白雪物語』の中の曲『白い恋の物語』を歌った。
 

ところで、青葉は次は3月2日の、国際大会日本代表選手選考会に出るのに、また東京に出てくる予定でいたのだが、この選考会で上位に入ると、下記の大会の代表になることになっていた。
 
2022.05.13 世界水泳(福岡)
2022.06.30 ワールドユニバーシティーゲームズ(中国の成都)※大学生のみ
2022.09.10 アジア大会(中国杭州)
 
ところが1月24日、国際水泳連盟は、コロナの状況が落ち着かないので、福岡での世界水泳を2023年7月に再延期することを決定した。
 
福岡での世界水泳は、元々2021年7月16日から8月1日に開催される予定だったが、東京五輪が1年延期されて、この日程とぶつかってしまったため、2022年5月13-29日に延期された。夏ではない時期に大会を開くため、福岡市は暖房費および水を温める装置の導入などの多額の追加予算を計上した。ところがまだコロナが落ち着かないのでということで2023年7月に再延期された。新しい日程は7月なので福岡市の投資は全く無駄になった。
 
しかしこれでは2019年大会(韓国光州)から4年も空いてしまう(本来2年に1度)ので、急遽今年ブダペストで1度世界水泳をするという話が決まってしまう。実は光州の次の世界水泳は元々ブダペストでやる予定だったのが、都合でできなくなり、福岡が新たな開催地に選ばれたという経緯があった。どうもそれで、先にブダペストでやろうという話になってしまったようである(この付近の詳細な経緯は不明)。
 
それで3月の代表選考会は、福岡世界水泳てはなく、ブダペスト世界水泳の選手を選ぶ大会となったのである。
 
(代表選考会で選ぶことになっていた他の2つの大会も最終的に延期される)
 

アクアの取材が終わった直後、青葉は今度はコスモスからの電話を受けた。
 
「大宮先生、ぜひお願いしたいことがあるんですけど」
 
負けるものか!
 
「済みません。向こうのテレビ局にも顔を出さないといけないので」
と青葉は言って、やや強引に1月27日(木)、Honda-Jetで能登空港に飛んだ。
 
能登空港には母に迎えに来てもらうことにしていたのだが、空港で青葉を待っていたのは真珠だった!
 
「助かった。青葉さん、お帰りなさい。お待ちしてました。霊界探訪の3月放送分を何とかしないといけないんです。取り敢えずテレビ局に来て下さい」
 
それで青葉は、真珠が運転するマーチニスモ(青葉の車!)に拉致され、そのまま金沢の〒〒テレビに連行されたのであった!!
 
 
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【春動】(3)