【春銅】(5)
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(C)Eriko Kawaguchi 2020-11-21
恵馬は自分の股間が平らで、女の子みたいにまるで何も無いように見えるのを見て信じられない思いだった。
睾丸は体内に押し込まれた。そしてペニスは後ろ向きにされた状態で女の子用パンティを穿かせられると、パンティの上から見る限りはそこに何も無いかのようである。
睾丸が体内に収納できることは知っていた。でもそれをしても、ブリーフでは空間がありすぎるので、すぐ飛び出してくる。でも女の子用のショーツだと空間がないから(そこに何も無い人用の下着だし)それがしっかり押さえられるんだなあ、恵馬は思った。
陸上をしている友人がサポーターを使っていて「実は女の子用のパンティでも行けるらしいけど、さすがにそんなの穿けないし」と言っていたので、サポーターあるいは女の子用ショーツならひょっとして睾丸が降りてこないように押さえられるかもという気はしたか、サポーターもショーツも持ってないから試してみられなかった
しかしパンティは足ぐりの部分もウェスト部分もたっぷりレースが使われている。こんなドレッシーな下着なんて着たこと無かったし見たことも無かったので、物凄くドキドキしている。お母ちゃんのはでっかいパンツだし、お姉ちゃんのはシンプルで装飾性のあまり無いタイプだ。しかしこのショーツはゴムとかが入ってないから、凄く頼りない感じもする。
ガードルを穿かせられる。
しっかり押さえられて、スッキリしたお股になった。本当にそこに何も付いてないかのように見える。
「サポート性の強いショーツなら、ガードル無しでもわりと行けるんだけど、このショーツは押さえる力がほとんど無いから、ガードル付けないと、こぼれちゃうからね」
あ、やはりそうだよね?
「ちんちんもタマタマも取っちゃえばこぼれてくるものも無くなるけど、何なら今取っちゃう?」
「ちょっとそれは・・・」
「じゃそれはまた今度ね」
“また今度”の時は、ちんちん取られちゃうのかな?などと思ってドキドキする。
上半身を起こすように言われ、上半身の服を脱がされる。(男子用の)シャツもゴミ箱に放り込まれた。脇毛を剃られる。そこの毛が無くなると、とても美しくなった気がした。普段でもここは剃っておこうかなという気になる。
「あんた、腕毛や胸毛は無いね」
「はい」
「男性ホルモンが弱いのかな」
「そうかも」
ボディコロンで身体を拭かれる。凄くいい香りがする。
可愛いフリルたっぷりのピンクのブラジャーを着けられるのでドキドキする。カップの中に柔らかいシリコン樹脂製のパッドが挿入された。肌に粘着する。この粘着があるので、歩いていても脱落したりはしないらしい。
「触ってごらん。できたてのハンバーガーのように柔らかいよ」
と言われてブラの上から触ってみる。本物のおっぱいみたい!
7月2日、COVID-19で3月から入院していた月村山斗が退院した。しかし退院したのはコロナウィルスが体内に見られなくなったから退院したというだけであり、症状は重いままで、家庭で酸素吸入が必要な状態だった。親友の横居剣一は彼の自宅に行って話し合い、実際にはほぼ名前だけになっていたが、プロデュースしていることになっていた、Fly20グループから月村が離れることを決めた。
横居はその後、レコード会社とともに、各グループをどこかが引き受けてくれないか、受け皿探しに奔走する。横居が主として東京で活動する各グループ、レコード会社が地方で活動するグループの受け皿探しをした。
地方のグループについては、11個のグループの内8個で受け皿が見つかり、そちらに移管されることになった。残りは解散である。
東京拠点の4グループだが、FireFly20については、先日のアルバムは望坂拓美の曲で構成していたので、横居は最初に、望坂拓美プロジェクトを主宰する王絵美さんに相談してみた。その結果、王さんは「楽曲提供だけならいい」と言った。それでFireFly20についてはKGレコード内の担当部隊をそのまま残留させ、横居自身が名目上のプロデューサーを引き受け、事務所も横居が関わっているシルバー・ヴァインに移籍させることにした。
ここは集団アイドル、ホワイト▽キャッツの事務所でもあるが、ホワイトキャッツとは別のグループが担当して社内で競争させる形にする。
WaterFly20がいちばんスムーズに話がまとまった。WaterFly20は先日のアルバムでは、近藤早智子さんから楽曲を提供してもらっていた。近藤さんは以前、色鉛筆という集団アイドルを運営していた経験もあり、月村さんの容態を聞くとOKしてくれた。事務所も色鉛筆と同じ$$アーツに移籍することになった。
残りの2つについては、引き受け手探しが難航した。
WindFly20に3月のアルバム制作に協力してくれたローズクォーツのリーダー(と横居さんが思い込んでいた)タカに打診してみたが、さすがに無理と言われる。ColdFly20についても、先日のアルバムの楽曲を桧山羽麗さんに提供してもらっていたので、そちらにお伺いを立ててみたのだが、桧山さんもとても自分には面倒見きれないと言われる。
WindFly20は、若いメンバーが多いので、バラ売りも考えたが、◇◇テレビの響原部長が「東郷誠一さんならやってくれると思う。頼んでみるよ」と言ったので、そちらの交渉は響原さんにお願いすることにした。
ColdFly20はメンバーの年齢が高いこともあり、どこもいい返事をしないので、この時点で横居は解散を決めた。
横居は7月9日(木)、ColdFly20のメンバーを集めて言った。
「月村さんが退院はなさったものの、とても音楽制作できる体調ではないので、引退なさることになった。それで各グループの受け皿を探していたのだけど、地方グループ11個の内、8個は受け皿が見つかり、3個が解散になった。東京拠点の4グループについて、FireFly20は望坂拓美先生、Waterfly20は近藤早智子先生、WindFly20は東郷誠一先生が引き受けてくださる見込みなんだけど、どうしてもColdFly20については引き受け手が見つからなかった。それで申し訳無いけど、解散とさせてもらいたい」
みんな一様にショックを受けている。
「元々他のチームから派遣されてきていたダンサーの8人については元のチームに戻ってもらうことにした」
と横居さんが言うと、その8人はホッとしている風。
「他のメンバーで芸能活動を継続したいという場合、個別に試験を受けてもらうことになるけど、他のグループの取り敢えず練習生になる手はある。またどこかの事務所に移籍したいという場合は、移籍金無しで移籍できるように交渉する」
と横居さんは言った。
何人か、FireFly20 か WaterFly20 の練習生のオーディションを受けてみると言っていた子もいたが、リーダーの米本愛心はサブリーダーの田倉友利恵に言った。
「いっそ一緒にバンドか何かしない?ゆりちゃんギター弾けたよね?」
「それもいいかもね。だったら、スズちゃんを誘おうよ。あの子、ベースが弾けたはず」
と言って、花咲鈴美が加わることになった。彼女もバンドも面白そうと言った。
ちょうど3人が話していた所に栗原リアが通り掛かる。愛心は偶然彼女と目があった(これが結果的に“大女優”栗原リアの誕生につながることになる)。
「リアちゃんドラムスとか打てないよね?」
「お兄ちゃんのドラムスを時々打ってた。勝手に触るなって叱られてたけど」
「おぉ!打てる子が居た!一緒にバンドやんない?」
「やるやる!面白そう」
それでこの4人でバンドを結成することになり、横居さんに話して了承を得る。
「じゃデビュー曲を作ったら録音して持って来てよ。それでどこかの事務所で契約してくれないか交渉してあげるよ」
「すみません。お願いします」
それで4人はスタジオに集まって、少し合わせてみた。リアは乗りがよくて割と演奏しやすいドラマーだった。BAND-MAIDの『bubble』とか演奏してみると一発で決まる。
「私たち天才じゃない?」
などと言い合う。
この時点でのパート割は、KB/Vocal.米本愛心, Gt/Vocal.田倉友利恵, B.花咲鈴美, Dr.栗原リア であった。
「でもバンドデビューするなら絶対オリジナル曲と横居さん言ってたね」
「それはそうだと思うよ。バンドはクリエイションとパフォーマンスが一体のものだもん」
と田倉友利恵が何だか難しいことを言う。
それで各自1曲書いてきて、土曜日にまた集まることにした。
それで土曜日にまたスタジオに4人は来たのだが、実際にはリアは
「ごめん。全く思いつかなかった。何か書いててもどこかで聞いたような曲になっちゃって」
などと言って謝った。
「それたくさん曲を知っている人にありがちではある」
と鈴美がフォローしてあげていた。
他の3人が書いてきたのをお互いに見てみる。
「アイちゃんの曲は、少し錬ったら使える気がする。スズちゃんの曲は構成がしっかりしてる。作曲の勉強とかしてた?」
と田倉友利恵が言う。
「ううん。特に」
と鈴美は言ったが
「やはりお父さん譲りのものがあると思うよ」
と愛心は言った。
「スズちゃんのお父さんって何してる人だっけ?」
「何言ってんの?上島雷太先生じゃん」
「うっそー!?」
「そんな大物が?」
と友利恵とリアが驚く。
「知らなかったの?」
「それ隠してたのにー」
と鈴美。
「ついでにお母さんは花村かほりさんだよ」
「嘘!?『帰りたい』の?」
2004年のレコード大賞受賞曲だが、花村かほりは、この曲の後、ヒット曲に恵まれず引退し、2005年12月、上島の娘・律子を産んだ。
「大作曲家と大歌手の娘なら、音楽センスいい訳だ」
と友利恵が感心している。
「でも私、花村かほりさんって、てっきり女装の男性歌手だと思ってた」
「うちの母ちゃん、買物とかに出てても普通に男と思われる。女子トイレで通報されたこともある」
「本当に女性だったんだ?」
「まあ私を産んだのは事実みたいだけどね」
「だからFly20グループのメンバーはほとんどの子が本名で活動してるけど、花村かほりの娘の名前は知ってる人があるかも知れないというので、花咲鈴美という芸名を使っている」
と愛心は解説する。
「本名じゃなかったんだ!」
「でもあまり芸名っぽくないね」
などと言われている。
「ねえねえ、スズちゃんのお父さんにこの曲、添削してもらえないかなあ」
と友利恵が言い出す。
「うーん。まあいいけど」
それで鈴美が父に電話すると、上島雷太は水戸から出て来てくれた。
「わあ、本物の上島先生だ」
などと言って、リアがはしゃいでいる。
「ふーん。バンドを作るのか。いいんじゃない?」
と言って、上島雷太は(リア以外の)3人が書いた曲を添削してくれた。
「このあたりを改善すると、結構使えるようになると思うよ」
「ありがとうございました!」
「君たち、どこの事務所からデビューするの?」
「全然決まってないです。横居さんには、デビュー曲の音源ができたら持っておいでと言われたんですが。それを持って営業してくださると」
「プロデューサーとかは?」
「いません」
「音源作るのにも、監修する人がいないと、まともな商業音源にはならないと思うなあ」
と上島が言った時、友利恵が言った。
「あのぉ、上島先生に監修とかして頂けませんよね?」
「うーん。僕は不祥事起こして謹慎明けだし」
「そんなの誰も気にしませんよ」
「だったら、一度横居さんと話してみるかなあ」
「お願いします!」
それで上島は横居さんに連絡を取った。これがもう(7/11)夕方だったのだが、横居さんはすぐにも会いたいと言ったので、上島はリーダーの愛心だけ連れて、横居さんに会いに行った。
横居さんは笑顔である。
「正直、この子たちだけでは不安なので、誰かプロデュースとか監修とかしてくださる人がいないと厳しいなあと思っていたんですよ。僕は手一杯だし」
と横居さんは言った。
この場で、4人のユニット名はColdFly4にすること、事務所は上島と(正確には妻の春風アルトと)関わりの深い、§§ミュージックにお願いしようというのがだいたい固まる。ただ上島が§§ミュージックのコスモス社長と連絡を取ってみると、こちらはバンドの売り方のノウハウが無いからといって、友好プロダクションの♪♪ハウスを紹介され、そちらの白河社長と話して、引き受けてもらえることになった。明日にも白河さんに実際の演奏を見てもらうことにした。
それで今日はいい話ができましたと言って、あらためて横居さんと上島が“エア握手”し、上島と愛心が帰ろうとしていた所に、横居さんに緊急連絡が入ったのである。
「え〜〜〜!?東郷先生に断られたんですか!??」
WindFly20のお世話を東郷誠一に頼めると思うと響原部長が言っていたのであてにしていたら、東郷誠一さんは「とても時間が無い」と言って多忙を理由に断られてしまったらしいのである。
横居さんが頭を抱えている。上島と愛心は帰ってもいいはずなのだが、何となく帰りそびれている。
唐突に横居さんが言った。
「上島先生、WindFly20も引き受けてくださったりしませんよね」
「え〜〜〜!??」
上島はさすがにあんな大きな集団の管理は無理と言った。横居さんは、だったら名前だけでも貸してもらえないかと頼む。
それで横居さんと上島は、ローズクォーツのタカを呼び出した!
「え〜〜〜!?ボクにWindFly20の監修をですか?それこないだもお断りしたはずですが」
「楽曲の制作は、松本花子にやらせればいいと思う。日常的な事務はレコード会社にやらせればいい。お金の問題は、○○プロあたりに投げようよ」
「だったら私がするのは?」
「音源制作の監修と、ツアーの統括かな。もっとも今年はツアーはできない。ネットライブはすることになると思うけど」
「うーん」
「もちろん、君だけでやるのは大変だと思う。ヤスさん、サトさんにも分担してもらって」
(マキはあてにされていない)
「うーん・・・」
「ローザ+リリンあたりも使って」
「あ」
「行ける?」
「ローザ+リリンのケイナがわりと使える気がします。あいつ結構規律に厳しいから」
「じゃ使おう」
「じゃそういう体制で管理するということで」
「ありがとう。恩に着るよ」
結局タカは「引き受けます」とか「やります」とか言わないまま、うやむやに押し付けられてしまった!
楽曲提供については、米本愛心がその場で醍醐春海(千里)に連絡して、結局WindFly20用に松本花子のシステムを1台増設してもらえることになった。
実はこの場で松本花子運営チームに唯一直接のコネがあったのが愛心だったのだが、この後、結果的にColdFly5が、WindFly20を事実上監修する形になっていくことにになる。
ColdFly5のベースとなったColdFly20はFly20グループの中でも平均年齢が最も高く、WindFly20は最も平均年齢が若かったので、これはファンの間でも自然なことと受け止められる。結果的に愛心たちは、WindFly20のプロデュース料や提供した楽曲の印税で潤っていくようになるのである。コロナ収束後は、同じ会場を同日に連続して使う“二毛作ツアー”なども行うことになる。これは客層が違うので成り立つのである。昼間にWindFly20のライブをして、中高生を集め、夕方からはColdFly5のライブをして大人のファンを熱狂させるのである。
またローザ+リリンもWindFly20の子たちに“お姉さん格”として親しまれ、彼女たちもWindFly20の売上で潤っていくことになる。ケイナもマリナもWindFly20の子たちから、人生相談までされていた。
ともかくもWindFly20については、上島雷太が名目上のプロデューサーとなり、制作を管理するディレクター格としてローザ+リリンを含むローズクォーツが担当し、実務的な作業はレコード会社のスタッフがすることにした。楽曲は松本花子を使う。事務所は上島が浦中副社長に電話して、○○プロが引き受けてくれることになった。
そういう訳で、上島はWindFly20, ColdFly4 の両方に関わることになったが、ひとりで2つに関わることになると、まるで横居さんの継承者が上島さんのように見えるかも知れないというので(本当に)プロデュースするColdFly4の方は、ワンティスの盟友・三宅行来(雨宮先生の妻:事実上の夫)に電話して名前を借りることになった。それで14日の月村山斗の引退発表では、WindFly20を上島が、ColdFly5を三宅が担当すると発表されることになる。(実際には三宅は何もしない)
ColdFly4のつもりがColdFly5になったのは、このような事情である。
ColdFly4のメンバーは、翌日、7月12日に♪♪ハウスを訪れ、愛心が書いて、上島雷太に添削してもらったデビュー予定曲『レーザーハート』を演奏披露したのだが、白河社長は腕を組んで難しい顔をした。
「ドラムスが悪い」
とハッキリ言う。
リアが顔面蒼白になる。私クビ?と思った。
「君、あまりドラムスやったことなかったでしょ?」
「はい。兄のドラムスセットを勝手に叩いていたりはしたんですが」
「それに君、腕が細いよね。腕力がないせいか、楽曲が進むにつれて微妙にテンポが落ちていくんだよ。これではライブとかでも、最後まで演奏できないよ」
「少しテンポが落ちていくなというのは感じてた。でも腕力鍛えれば何とかなるかなと思ったんですけどね」
と上島も言う。
他の子の顔を見ると、愛心だけはテンポが落ちていく問題に気付いていたようだが、友利恵と鈴美は気付いていなかったようである。
「君は他の楽器に移った方が良い。このバンドはリスムギターが居ないからリズムギターに回らない?君のリズム感では、ドラムスは厳しいけど、リズムギターならまだ使える気がするよ」
と白河社長は言った。
どうやらクビという訳ではないようだというので、リアは少しホッとした。
「分かりました。ギターで頑張ります」
「じゃドラムスはどうしようか?」
と上島さんが言う。
その時、鈴美が言った。
「上島先生、扇歌が使えませんか?」
(鈴美は父親ではあるが、人前なので「上島先生」と呼んでいる)
「ああ。あの子は行けるかも」
と上島は言った。
「“おうか”って誰?」
と友利恵か訊くが、愛心は知っていた。
「鈴美のお姉ちゃんだよ。歌もわりと上手いし、何よりバスケット部に入っていて、腕力はとってもあると思う。去年は都大会でベスト4まで行ったね」
「なんで愛心ちゃん、そんなことまで知ってるの〜?」
と鈴美のほうが呆れている。
(愛心の情報源は実は姫路スピカ。スピカは情報通だが、時々誤情報も混じるのが玉に瑕?)
「姉は友人のバンドでドラムス打ってるんです」
「それは期待できるかも。じゃ、その子を呼んでもらえる?」
と白河社長が言う。
それで上島は長女の木原扇歌の母親・本山たつこに電話し、扇歌を呼び出した。扇歌は自宅にいたが、1時間ほどでやってきた。
譜面を見る。
「ちょっと練習させて」
と言って譜面を見ながら叩いていたが、白河社長が頷いていた。
「合わせてみよう」
「リアちゃんはメインボーカル歌って。私はキーボードに専念する」
と愛心。
「了解」
それで『レーザーハート』をこういう構成で演奏したのである。
Vo.栗原リア, KB.米本愛心, Gt/Vocal.田倉友利恵, B.花咲鈴美, Dr.木原扇歌
白河社長が拍手した。
「ColdFly5のデビュー決定だな」
"ColdFly5"という名前は、この時、白河社長の口から初めて出たのである。この名前は横居さんにも承認され、彼女たちは ColdFly5 の名前でデビューすることになった。
7月14日(この翌々日である)の月村さんの引退発表直前まで水面下では、このようなドタバタが起きていたのである。
なおColdFly5の音源制作は上島監修のもと、このような構成で行った。
KB/Vocal.米本愛心, Gt1/Vocal.田倉友利恵, Gt2/KB.栗原リア B.花咲鈴美, Dr.木原扇歌
栗原リアは実はエレクトーンの6級を持っており、キーボードもかなり上手いので、音源制作では管楽器や弦楽器の代行をしてもらっている。高いテクを持っているので、本当にトロンボーンやホルン、チェロなどを演奏しているかのような音をキーボードで出すことができた。
その後、ライブでは割とこういう構成で演奏することも多くなる。
Vocal/Gt2.米本愛心, Gt1/Vocal.田倉友利恵, KB.栗原リア B.花咲鈴美, Dr.木原扇歌
愛心はキーボードが最も得意だが、ヴァイオリンやギター、サックスなど、かなり多くの楽器を演奏することができる。発売された音源に入っている、ヴァイオリン・サックス・フルートなどの音はたいてい愛心が演奏している。
なおバンドのドラムセットは経済的に余裕のある愛心(実は紅型明美の“一部”なので印税収入がわりと凄い)が買って扇歌に貸与する形にした。
しかし、愛心は元々§§プロの所属だったので、♪♪ハウスに所属するのは事実上の“出戻り”の形になった。
(2020年)7月4日(土)、千葉の川島家では、信次の三回忌を行った。
この日の早朝、季里子!がセレナを運転して、早月・由美・奏音を連れてきた(桃香は助手席)。ただし桃香も季里子も仕事があるので、子供たちを置いて帰ることにする。
「季里子さん、セレナは帰りに私が子供たちを運ぶのに使いたいから、代わりに私のアテンザで勤務先に行ってくれる?後で回収に行くから」
「OKOK」
「それと桃香、後でちょっと頼みたいことがあるのよ。来月くらいになると思うけど連絡していい?」
「じゃメールして」
「うん」
それで三回忌に出席したのは、康子、千里・早月・由美・奏音、太一、波留と幸祐の8人である。(京平はお留守番)
お坊さんに来てもらって仏檀の前でお経をあげてもらい、その後、8人でお墓にも行ってお参りする。その後、また川島家に戻り、仕出しを一緒に食べた。
幸祐と由美はなんか仲良くしていた。幸祐の方が弟なのだが、雰囲気的には幸祐がお兄さんで由美が妹みたいな感じだった。幸祐は4月1日生なので“早生まれ”になり、1月4日生の由美と同じ学年になる。
この場で、早月を信次の子供ということにしちゃおうという康子の計画が語られるが、太一が「この際、それでもいい。信次の子供はあと5〜6人増えてもいい」と言い、波留も了承した。
なお、信次の遺産については、千里・由美・幸祐・太一が相続放棄しており、康子が単独で相続した。ムラーノについてはあらためて康子が優子に譲った形にしたのだが、長年乗った車なので査定ゼロで贈与税などは発生しなかった。
将来康子が亡くなった場合、由美・幸祐には相続放棄させると、千里も波留も言っている。また早月に関しても信次との親子関係が認定されても康子の遺産相続は放棄させると桃香が言っているので、その場合は太一が単独で相続することになる。
太一からは亜矢芽の再婚と妊娠も報告された。
「その妊娠中の子供も康子さんの相続人になるんだっけ?」
「いや俺とは全く関係無いから相続権も無いよ」
「なんか家族関係が複雑すぎてよく分からない」
「元々の川島家が複雑怪奇だからねぇ」
太一は戸籍上は、前妻さんが産んだ子供ということになっているが、本当は康子の親友(康子の亡夫の愛人だった)が別の男性との間に作った子なので、太一は康子と血縁が無いのだが、康子が亡夫と再婚した時に康子の養子にしているため、法的には親子関係がある。信次も前妻さんが産んだことになっていて、法的には康子が養子にしているが、実は康子の実子。川島家は、太一・信次の2人ともが“藁の上からの養子”なのである。前妻さんは2人の子供を産んだことになっているものの、実は自分では1人も産んでいない。
康子が運転免許を取ったこと、またこの家が再開発に引っかかり立ち退くことになったので、康子は生まれ故郷の桶川に引っ越しするつもりであることも報告された。
三回忌の行事が終わり波留(+幸祐)も太一も帰った後、片付けものが終わってから、千里は康子に言った。
「実は三回忌も終わったので、これをお返ししようと思って」
と言って、千里は左手薬指につけていた結婚指輪を外すと、アルコール・ウェットティッシュで拭き、ジュエリーケースに納めてから、バッグから取り出したもうひとつのジュエリーケースとともに、康子に差し出した。
康子は黙って受けとった。
「桃香さんと結婚するの?」
「誰と結婚するかはまだ分かりませんけど、この辺りで区切りを付けた方がいいかなとも思って。信次さんは、波留さんの後(うしろ)に付いてるし」
「言ってたね!」
「それと籍も抜きたいんですが」
「うん。もちろんいいよ。由美の方は?」
「それは前にも話し合いましたように、川島信次の戸籍に置き去りにします」
「分かった」
実は川島の苗字を名乗る者がいなくなるのが寂しいので、良かったら由美の苗字はそのままにしておいてくれないかと言われていたのである。
婚姻により氏を変更していた人(日本では多くの場合女性側)は、離婚した場合には3ヶ月以内に、元の氏に戻るか婚姻中の氏を継続して名乗るか決める必要があるが、死別した場合の復氏届には提出期限が無い。何年経った後にでも提出することができる。ただし復氏届は本人だけに適用されるため、一般的には子供はあらためて(裁判所の認可を受けた上で)入籍届を出して母親の新戸籍に移動して同じ氏に変更する。千里はこの手続きをせずに、由美を川島信次の戸籍に置き去りにして、川島由美のままにするつもりなのである。むろん戸籍が分かれていても、由美の親権は千里が持つ。
恵馬は、起きるように言われたのでベッド(手術台?)から起きて立ち上がった。
キャミソールを渡されたので自分で着た。
ボク、こんな服を着ていいのかなあ、と背徳的な思いが込み上げてきて、それが更にドキドキさせる。ナイロンの肌触りが、これって本当は女の子だけに許されるものなのにという思いを引き起こし、更に悪いことしているような気分にさせる。
可愛いチェックのプリーツスカートを渡されるので穿く。ホックを留めてファスナーを上げる。
スカート穿くなんて、本当に女の子になったみたい!
ブラウスを渡されたが、ボタンをうまくはめられない。それでこれは填めてもらった。
「これは慣れだから、毎日練習するといいね」
「はい」
「最後にこれかな」
といって上着を渡されるので、それを着る。
「鏡を見てごらん」
「可愛い」
鏡に映っていたのは、とても可愛い女子高生の姿だった。
「君は本当はこういう服を着るべきなんだよ」
と言われる。
「いいかも」
と恵馬は陶酔した気分で答えた。
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2020年7月4日(土).
前日に週刊誌が、AYAのゆみと俳優・高橋和繁の熱愛報道があったのを受けて、この日2人はネットを通して記者会見を行い、交際中であることを認めた。2人はまだ結婚に関する話し合いなどは全然していなかったのだが、会見中にゆみが「指輪をもらったら考えてもいいな」と言った。それで高橋は翌5日(日)、ゆみを誘って銀座のティファニーに行き、1.2カラットのフローレスダイヤモンドを載せたプラチナ(Pt900)の指輪を購入した。それで夕方には帝国ホテルのレストランでコース料理を食べ、そのまま帝国ホテルのスイートルームに泊まった。これで、ゆみ・高橋の2人の間では婚約成立ということにした。
「既に結婚しているのではという説もあるのだけど」
「まあそう遠くない時期に婚姻届を提出するから、時間的誤差の範囲ということで」
7月6日の朝、2人は帝国ホテルをチェックアウトすると“いつものように”高橋の実家に赴き、高橋の両親に婚約したことを報告した。実を言うと、数ヶ月前から、ゆみは事実上ここに“住んでいる”のである。たまに荷物を取りに代々木のマンションを訪れているだけである。
むろん高橋の両親からは歓迎され、年内にも結婚式を挙げる方向で、各方面との調整をすることにした。(ゆみの両親は既に亡い:結婚式では上島雷太夫妻に親代わりをしてもらう方向で内諾を得ている)
ゆみは$$アーツから独立する予定で、前橋社長と条件面の確認をしている最中だったので、この各方面との調整は、独立した後の新会社の専務に就任予定の高崎充子が前橋の承認のもと、作業をしてくれることになった。
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7月5日(日).
千里は早朝からも早月・由実・奏音の3人を連れ、Gulfstream G450 で羽田空港から能登空港へ飛んだ(京平はお留守番)。実はこの飛行機には、輪島を取材する旅番組に出演するラピスラズリの2人と彼女たちのマネージャー・倉橋も同乗した。
由美はラピスラズリ2人のアイドルになっていた!
能登空港には、優子がムラーノで迎えに来ていたので、彼女に早月・由美とともに奏音を渡す。奏音は半月ぶりにお母ちゃんに会えて嬉しそうだった。優子はムラーノで早月・由美を桃香の家にポストしてから、奏音と一緒に自宅に戻った。
ラピスラズリはこの日、輪島で朝市、キリコ会館、輪島塗会館、永井豪記念館、を取材した後、輪島市街地近郊にある男女滝(なめたき)までレポートしていたが、男女滝は細い山道を結構走るらしいので、取材は大変だろうなと千里は思った。付近はトイレが無いよというのは、事前にリサーチャーの人が確認していたので、2人は市街地でしっかりトイレに行ってから、現地入りしたらしい。
千里は午前中、空港のまわりをジョギングした後、空港の駐車場でドリブルなどして汗を流していた。すると、ちょうど知り合いのJA学園(空港に隣接する。航空機整備士になるコースなどがあり、能登空港を併用している)コーチから声を掛けられ、同校の女子バスケット部を2時間ほど指導することになり、昼食まで頂いてしまった。午後はG450の機内で仮眠した後、空港内のテラスで、のんびりと作曲などしていたのだが、ラピスラズリと倉橋は夕方近くに戻って来た。それでG450はそれから能登を発って羽田に戻ったが、3人とも機内で熟睡していた。
今日はかなりハードな取材だったようである。
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7月7日(火)、ゆみは荷物を少し取りに代々木のマンションに行ったのだが、エントランスで偶然、アクアと遭遇する。ゆみは、アクアが先月末に水着写真の撮影をしたという噂をある方面から聞いていた。水着写真というのは、きっと女子水着写真だろう。
ゆみは以前、温泉の女湯でアクアと遭遇したことがある。その時アクアは間違い無く女の子だった。ただ、ふつうの17-18歳の女子に比べると身体の発達が遅く、まだ中学生女子くらいの感じに見えた。
ゆみは再度アクアの性別を確認しておきたい誘惑にかられた。
それで
「取って食ったりはしないよ」
などと言って、婚約指輪をもらったのを見せたいという理由でアクアを自分の部屋に誘った。
アクアは普通に女子用ワンピースなどを着ているし、胸の膨らみも服の上から確認できる。やはり高校を卒業して、男子制服とか着なくてもいいので、普通に女物の服を着て出歩いているんだろうなと想像する。
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普通にお茶など入れておしゃべりして、相手の警戒心を解いておく。そして
「指輪持ってくるね」
と言って、奥の部屋に入ると全部服を脱いで全裸になってしまう。
そして持ち歩いているバッグから指輪のケースを取り出すと、ケースを手に持ったままリビングに戻った。
つまり、奥の部屋に入らなくても、ゆみはバッグの中から指輪を取り出すことができたのである。奥の部屋に入ったのは純粋に服を脱ぐためである。
裸で入ってきた自分を見てアクアはギョッとしている。でもその表情は黙殺して
「ほらこれだよ」
と言って指輪を見せ、自分で左手薬指に填める。
それでおしゃべりしていると、アクアは逃げたそうな顔をしながらも会話に付き合っている。
そしてアクアの隙を見て襲いかかり!アクアの服を脱がせてしまった!
全部衣服を剥ぎ取るつもりだったのだが、アクアはパンティだけ死守した。
しかしそこには豊かなバストがあるし、くびれたウェストもある。パンティにはその下に何か突起物があるかのようなしるしも見られない。アクアが女の子であることは確実である。
結局、全裸のゆみと、ほぼ裸のアクアで2時間くらいおしゃべりした。この時、ふと思いつき、自分が結婚して正式に高橋の家で暮らすようになった時、ここは退去するので、このマンションを買いとってくれないかとアクアに打診した。アクアはそれも悪くないような感触だった。
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2020年7月7日(火)、松江市で旗仲真倫は旗仲佐理との間の娘・花音(かのん)を出産した。
同じ日、大坂の寝屋川市では、藤山渚が藤山竜太の息子・大海(たいかい)を出産した。
どちらも元男の娘の出産である。真倫はかなり辛い思いをしたのだが、渚は超安産で、出産直後に、喉が渇いたと言って自販機にジュースを買いに行き、さすがに叱られた。
マリナは出産の翌日、渚に電話で
「お疲れ様。そしておめでとう」
と言った。
「お見舞いに行けたらいいけど、コロナの折だし、こちらも妊娠中だし」
「うん。無理しないで。出産祝いだけもらえたらいいよ」
「昨日発送したから、今日明日にも届くと思うよ」
「さんきゅ、さんきゅ」
「御祝儀は振り込みしておいた。少額だけど」
「それがいちばん嬉しい。マリナちゃんも出産頑張ってね」
「うん。ありがとう」
風山早太は長距離のトラック運転手である。今年はコロナの影響で2月中旬頃から忙しさがハンパ無いものになり、3月下旬に一度休みをもらって妻の妹の婚約式(実際にはその場で婚姻届を書いたので内輪の披露宴のようなものになった)に出た以外は、ひたすら全国を走り回っている。
青森まで荷物を運んだら、「今度はこれを新潟に頼む」と言われ、新潟まで持っていくと「次はこれを高松へ」と言われ、という連続で、休みも無ければ自宅にも全く戻れない生活が続いている。もっとも人間なので、食事も必要だし、お風呂に入ったり睡眠を取ったりもしたい。一応荷物を運んだ拠点拠点で、営業所のお風呂に入ったり、仮眠室で数時間の仮眠を取ることもあるが、すぐにまたトラックを出して荷物を運ぶ。こんなに休めないって違法じゃないのかー?とも思うが、とにかく荷物の量が異様に多くて、完全に人手不足の状態のようである。
7月中旬。
早太は久しぶりに川口市の自宅に帰った。5月に一度帰宅してから2ヶ月ぶりである。玄関は鍵が掛かっていた。ピンポンを鳴らしてみるが反応が無い。
「買物にでも出てるのかな?」
と思い、自分の鍵でドアを開けて中に入る。
取り敢えずトイレに行った後、冷蔵庫に麒麟ラガービールが冷えていたので開けて飲む。それでしばらく待っていたが、妻は戻ってこない。テレビなど見て待っていたのだが、帰って来ないので、早太は妻のスマホに電話してみた。
「あ、そうちゃん今日はどこに居るの?」
と妻の明るい声がする。
「いや、自宅に戻ってきたんだけど、あゆは買物か何か?」
「ああ、私最近自宅には戻ってないんだよ」
「へ?実家かどこか?」
「いや、コロナの折、あまり通勤電車とか乗りたくないからさ。妹が渋谷区に事務所を借りたから、そこのお留守番を兼ねて、ずっとそちらに居るんだよ。そこからスクーターで会社まで通勤してる。そうちゃんもずっと家に帰ってこないしさ」
「俺、腹が減ってるんだけど」
「ごめーん。ピザか何か頼んで」
「え〜〜!?」
「だって今から川口まで移動して買物とかまでしてたら2時間はかかるし。その後調理とかしてたら、結局3時間くらい待たせることになるもん。ピザなら30分くらいで配達してくれるよ」
「うん。分かった」
それで電話を切ったものの、なんか凄く寂しい気がした。
せっかく自宅に戻ったのに!
結局ピザも注文したが、コンビニに行って、カップ麺とかおにぎりとかチキンとかも買って来た(普段の食生活)。
そして早太が次に休みをもらって戻ってこられたのは9月であった(川口市の自宅ではなく、渋谷区の事務所の場所を訊いてそちらに行った)。
7月17日、Wリーグは今季のレギュラーシーズンの組合せを変更すると発表した。
本来は12チームの総当たりでリーグをするのだが、今年は東西6チームずつに分割し、その6チームの総当たり戦で実施することにした。これで移動を減らし、感染リスクを減らすという方針である。
ゆみとアクアはあの後、メールを通して話し合い、アクアがゆみのマンションを2億円で買い取る話がまとまり、8月1日(土)に双方の弁護士を伴って直接会い、売買契約書を交換した。今月中にゆみが退去し、クリーニングしてから引き渡すということにした。
(2020年)7月19日、ビデオガール・コンテスト2020の本選が東京都内のホテルを会場に行われた。そして、その参加者を“空輸”する作戦が前日の18日に行われた。参加者は20名で、その保護者(各2名以内)も運ぶので全部で60人ほどである。二次予選通過者の居住地は下記である。
旭川 青森 茨城 栃木 東京(2) 神奈川 山梨 石川(2) 愛知 大阪(2) 兵庫 広島 高知 福岡 熊本 奄美大島 宮古島
ケイと千里・江藤さんの3人でネット会議をし、このような“作戦”を建てた。
●石川県は能登空港、九州は佐賀空港、大阪は神戸空港、愛知は名古屋空港(小牧)、など、できるだけ余裕のある空港を使用する。
●茨城・栃木・東京・神奈川・山梨の子(6名+保護者)は車で会場に運ぶ。
●兵庫・大阪の子は車で神戸に運ぶ。福岡と熊本の子は車で佐賀に運ぶ。広島と高知の子は中間点に近い松山に運ぶ。ほか各々県内は車で移動する。
ホンダジェット(定員7名) AM.旭川→青森→羽田 (2×3=6)
PM.能登→羽田 (2×3=6)
G650(定員11名) AM.宮古島→奄美大島→小牧→羽田 (3×3=9)
G450(定員14名) AM.神戸(3)→羽田 (3×3=9)
PM.松山(2)→佐賀(2)→羽田 (4×3=12)
G450よりG650の方が少し大きいが江藤さんのG650はVIP仕様になっていて座席自体ゆったりサイズだし、ラウンジなどもあるため定員が少ない。千里のG450は元々16席仕様だったのをベビーベッドを設置するのに2席取り外したらしい。
空港のスケジュールは緩い所もあるが、かなりシビアな所もある(特に羽田は厳しい)ので、充分ゆとりのあるフライトスケジュールで組んだが、どの飛行機のクルーも正確に運航してくれて、ケイたちはホッとした。
コンテストは、雪渡知香・新里好永の2人がダブル優勝で、初代ビデオガールの名前をシェアする。その他、上位入賞者を勧誘して、下記の6名が信濃町ガールズに加わることになった。
須舞恵夢、菱田ゆかり、植野純央、横山朋菜、緒方飛蝶、杉浦舞美
杉浦さんは上位入賞者ではないが、本人がぜひとも参加したいというので、その熱心さを買って信濃町ガールズ参加を認めた。この中で植野さんは都内在住なので自宅から研修所に通って訓練を受ける。彼女に関しては事務所のスタッフが学校または自宅との間を送迎する。
須舞恵夢・菱田ゆかりの2名はコンテストの途中および終わった後に男子であったことが判明したので、来月作る予定の男子寮に入ってもらい、残りの3人+優勝者2人は足立区の女子寮に入ってもらうことになった。
コンテスト参加者および家族の地元への帰還については、優勝者や信濃町ガールズに入る子は手続きなどのために数日東京に留まったし、個人的な用事で数日後に帰りたいという要望もあったので、かなり分散して帰ることになり、もっと楽なフライトになった。
7月31日(金).
青葉は午前中の放送局での仕事を終えると、この日の午後は火牛スポーツセンターでの水泳の練習は休んで自宅で仮眠を取った。そして夕食を取ったあと、マーチ・ニスモに乗ると、夜通し、北陸道→上信越道→関越道と走って、8月1日朝、浦和の千里たちのマンションに辿り着く。
出勤する彪志(最近医療関係のバックアップで薬品関係も忙しい)とハイタッチして入れ替わるように彪志の寝ていた布団に潜り込んで数時間寝る(千里姉に起こしてもらった)。そして午後から、ケイ・ラピスラズリと一緒に作曲家さんの所に取材に出かけた。今回は4日間で4人の作曲家にインタビューをしている。
山上御倉・吉住尚人・吉野鉄心・関沢鶴人
今回は4人とも常識人で、青葉にしてもラピスラズリにしても、比較的リラックスして取材をすることができた。例によって各先生から、ラピスラズリに
「ぜひこの曲を歌って」
といって楽曲を頂き、あるいは指定され、ラピスラズリはまたたくさん曲を吹き込むことになる。
青葉の浦和滞在中、マンションの部屋はこのように使った。
Room 1. 彪志・青葉
Room 2. 千里・京平
2つの家庭が共同で暮らしている状態である。彪志が青葉の手料理を食べたがっているようだったので、千里は「あんたが作って」と言い“8月1-4日については”青葉が作った。食材については、青葉が事前に伝えておいたメモに沿って、準備してくれていた(買物は先週既にしてある。買物は原則として週2回:火・金である)。
青葉はテレビ局の仕事は4日(火)で終わったのだが、土日の代休で5-6日(水木)が休みになっている。更に7日も青葉の休日出勤が多すぎるからというので休みにしてもらったので、結局、8月10日(月)から出社すればよいということだった。それで8月8日(土)の夜に帰ることにしたので、約1週間、彪志と甘い日々を送ることになるかと(彪志は)期待していたようだが。
そうは行かないのは当然である!
§§ミュージック関係、特にアクア関係の打ち合わせで、ほぼ毎日信濃町の事務所や、大田区のあけぼのテレビに詰めることになった。帰りもかなり遅くなり、5日以降、青葉は彪志に手料理を作ってあげることはできなかった。でも一応コスモスが配慮してくれて、0時前には帰られるようにしてくれた(浦和まではスタッフが車で送ってくれる)。
更にコスモスからラピスラズリのファーストアルバムに入れる曲を頼まれ、これは高岡に戻ってから書いて送ることにしてもらった。
また帰るのも8日夜に帰ることができず、9日いっぱいまで仕事して、9日夜に結局、千里姉が青葉のマーチを運転して送ってくれた。
ゆみは8月3日(月)、マンションから一部の荷物を運び出した。家具などの大物は引越業者さんに頼むし、貴重品は和繁が自分の車で運ぶと言っている。しかし荷物の中には、あまり他人に(特に和繁とか高崎さんたちには)見られたくないが今捨てるにはしのびないものもある。それで自分ひとりでこの作業をしていたのである。
マンション内で荷物をバッグに詰め、手で持って下まで降り、近くの駐車場に駐めたレンタカーのノアまで運ぶ。だいたい積み終わったら、郊外のストックルームに持って行くつもりである。
2度往復して、3度目の荷物を持ち、部屋を出て下まで降りた所で、偶然その子に会ったのである。
「おはようございます、ゆみさん」
と彼女は挨拶した。その顔には覚えがあったものの名前を思い出せない。
「あ、すみません。私、アクアの親友で南川彩佳と申します」
「思い出した。アクアのファンクラブ会員番号31番さんだ」
「はい。ゆみさんは37番でしたね」
「番号が入れ替わっていたことあったもんね」
「1と7が似てるから、札を置いた人が間違ったんですよね」
「でもたくさん、お荷物お持ちですね。手伝いますよ」
と言って、彩佳はゆみが4つ手に持っていた荷物の内の2つを手に取った。
「あ」
と一瞬声を出したが、ゆみは
「ありがと。アクアちゃんの所に行く所だったの?」
とすぐに言った。
「はい」
「じゃアクアちゃん待っているのでは?」
「いえ。自分の鍵で開けて入ってきました」
「鍵持ってるんだ!?」
「28歳になったら婚約しようと言っているので」
「それ婚約じゃないの?」
「アクアは男女交際禁止ですから。何度か誘惑したんですけど、あいつ、いつも逃げるんですよ」
「あはは」
ゆみは、アクアが逃げるのは女同士だからではないのかと内心思った。
結局、彩佳に半分持ってもらって駐車場に向かう。実は3往復目なので、結構疲れてきていて、手伝ってもらうのはありがたかった。それにこの子、口が硬そうだしとも思う。
ゆみと彩佳はその後、更に2往復して“やばい”荷物をノアに移し終えた。彩佳が「これ向こうでも大変ですよ。私、付いていきます」というので、結局ゆみの運転するノアに同乗してストックルームに行き、そこに荷物を移した。
ノアをレンタカー屋さんに返却に行き、ゆみは自分のフェアレディZに乗り換えて彩佳と一緒に代々木のマンションに戻る。部屋に行き、ローズヒップティーを入れた。少しおしゃべりしていたが、ゆみは彩佳が割としっかりしてそうだと思い、彼女に言った。
「でもあの子、女の子だよ」
「構いません。レスビアンのテクニックも勉強しました」
「へー!」
「それにですね。あの子、私も不確かなんですけど、性別が不安定なんですよ」
「不安定?」
「あの子を何度か裸にまではしてみたことあるんですけど、ちんちんがある時と無い時があるんです」
「嘘!?」
「それどころか、中学生の頃、裸になってイチャイチャしている最中に唐突にちんちんが出現したこともあるんですよねー」
「そんなことがあるんだ?」
ゆみは、ずっと以前にクリトリスが性的に興奮するとペニスサイズまで大きくなる人がいると聞いたことがあったのを思い出した。もしかしてそういう体質とか??
「それでセックスしようよと言ったんだけど、もう少しお互いが大人になってからにしようよと言われちゃった」
「へー。まあ中学生にはセックスは早いよね」
と言いながら、ゆみは“あの頃”を思い出して心が痛む。
「凄く特殊な半陰陽なのかもしれない気がします」
「半陰陽というのは、私もそんな気がするよ」
「まああの子は肉体的には性別が微妙なんだけど、心は男の子だから、結婚してもいいかなと思うんですけどね。あいつの精神的な性別は、どうも“女装が好きな男の子”みたいなんだけど、恋愛自体は分からないと言うんですよ」
「ああ」
「誰かに拉致されて強制的に性転換手術されちゃったりしたら普通に女の子として生きていけるだろうけど、自分の心は男だと言うんですよね」
「あの子、きっとうまく唆されて自分で性転換しちゃうか、本人の意志無視して勝手に性転換されちゃうかだと思うよ。もしまだ男の子だったとしても」
「あいつのタンスの中は9割が女物です。私、時々あいつの部屋に行っては男物捨てちゃうんだけど、しつこくまた買ってるんですよね。実際にはほとんど女物しか着ないくせに」
「なるほど、その作戦遂行中だった訳か」
とゆみも微笑む。
「女の子の裸を見ても何にも欲情しないらしいです。といって別に男の子の裸にも興味は無いらしいです」
「それって睾丸が無いからじゃないの?」
「睾丸には触ったことあるし、存在はするんですよね。でも本物かどうかは怪しい気がします。ひょっとしたら、シリコンのダミーを入れているのかも」
「でないと、18歳にもなって声変わりが来ないことは説明できないと思うよ」
とゆみは言う。
「ですよねー。ちんちんは立つから、ちんちん自体は本物だと思うけど」
ふーん。“立つ”ことまでは確認している訳か。でもこの子まだバージンだよね?
「だったら、いっそ、ひょっとしたらセックスができるかも知れない女友だちくらいの感覚がいいのかもね」
「私はあの子のこと好きだけど、実際向こうは女友だちの感覚に近いと思います。でも私のこと嫌いではないみたいだし、ちんちんがあったら普通の男女セックス、女の子だったらレスピアンセックスすればいいかなと開き直っているんですけどね。おっぱいくらいは別にあっても構わないし」
「おっぱいはあるよね?」
「既に中学の頃にはAカップはありましたよ。一緒にブラ買いに行ったこともあるし」
「やはりね」
アクアが女性体型なのは、やはり女性ホルモンが作用しているからなのだろう。天然のものか人工的なものかは分からないが。
「でもそこまで割り切っているのなら、そういう子もいいかもね」
結局、2人は2時間くらいアクアのことでおしゃべりした。お腹が空いたので途中で冷凍ピザをチンしたり、(やはり冷凍していた)ウィンナーをボイルしたりして一緒に食べた。
「でも今日は、ありがとう!助かったよ」
「いえ、お互い様ですよ」
「じゃさ、お礼代わりに、彩佳ちゃんに“アクア”をあげるよ」
「え?」
「だからさ、こういうことしない?」
と言って、ゆみは彩佳に、思いついた“悪巧み”を語ったのであった。
8月12日、Wリーグ、ステラ・ストラダの選手に感染が確認された。チームでは選手やスタッフで彼女と接触のあった人全員のPCR検査を行い、選手2名の陽性が判明した。チームは今回陰性であった人も、念のため一週間の自己隔離をしてもらうことにし、チーム活動は当面停止することになった。
1 2 3 4 5 6
【春銅】(5)