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■男の娘とりかえばや物語・取り替へたり(1)

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21歳の4月、涼子の妊娠が判明しました。
 
これまで帝には女御が3人いたのに、誰との間にも子供がありませんでした。それで帝も左大臣も右大臣も大喜びです。そしてぜひ男の子であって欲しいと祈るのでした。
 
「取り敢えず仕事の負荷を減らそう。私の秘書役は“あまり”しなくていいから、上御局に“居る”だけでよい」
と東宮は涼子に言いました。
 
「私はとても自分の所に来る仕事をひとりではこなせないのですが」
と花久は言います。
 
「これまで同様、こちらに持って来させなさい。敷島にやらせる」
「私がやるんですか〜?」
「そなたの妹(中納言の君)と分担してもよいぞ。ふたりとも漢字は得意だろう」
「では単純な案件は。判断に迷うようなものは姫御子様に相談します」
「うん。どんどん片付けてやる」
 
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東宮のバックアップで何とか仕事の方はこなしていけそうな感じでした。
 

妊娠で、さすがに涼子は夜のお務めをする機会は減ることになります。結果的には涼子が帝の妻となる前に最も帝と夜を共にすることの多かった、梅壺女御(萌子の姉)が夜御殿(よるのおとど)に呼ばれる機会が増えます。
 
梅壺女御としては尚侍(ないしのかみ)の妊娠で、自分の父(右大臣)まで喜んでいるのが極めて不愉快で、こちらもしっかり帝の子を産んでやろうと、熱心に帝にサービスをするのでした。
 
過剰サービスにさすがの帝も音を上げて、弘徽殿女御を召す夜もあります。しかしこちらも対抗心から超過剰サービスです。
 
「やめろー!朕が壊れる!**が折れる!」
と悲鳴が聞こえてきて、中将の内侍がギョッとします。
 
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それで、もう自分は帝の子を産むことはないだろうと諦めている麗景殿女御を呼ぶと普通の接し方なので、ホッと“箸”休めになるという状況でした。
 
「無理に“しなくても”いいですよね?そばで添い寝させて頂きます」
「すまん。今日は“箸”を使う自信が無い。昨夜のがまだ痛い」
 
元々優しい性格の麗景殿女御は、尚侍にも優しく、あれこれ親切にしてくれました。また梅壺女御や弘徽殿女御からの嫌がらせの盾になってくれたりもして、涼子は彼女に大いに感謝することになります。
 

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ところで涼道と花久の名前なのですが、元々ふたりが宮中にあがった時には涼道・花子を名乗っていたので、ふたりが入れ替わって復帰した時は、花子が涼道を名乗り、涼道が花子を名乗るという面倒なことをしています。しかしこれは本人たち自身も混乱するので、“花子を名乗っている涼道”は、帝と結婚した時点で“兄の名前から1字取り”花子を涼子と改名しますと発表しました。
 
しかし実際には“右大将・中納言・藤原涼道”というのは、花久・涼子が分担して演じているので、これ以降“涼道”はいわば、花久と涼子の共同ペンネームのようなものとなっていくのです。
 
もっとも事情を知っている雪子などは、ふつうにふたりを「涼ちゃん・花ちゃん」と元の名前の愛称で呼んでいました。結局「花ちゃん」という呼び名は、雪子と涼子の他には海子などだけが使うものとなります。
 
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権中納言は、四の君・萌子が妊娠したという話を聞いた時は、誰か新たな恋人ができて、その男を招き入れているのだろうと思ったのですが、かつて愛した人だけに彼女を妊娠させたのは誰なのか気になりました。
 
それで色々噂を聞いてみるものの、萌子の所に忍んでくる男というのが、どうにも分かりません。それどころか最近、萌子は右大将とうまく行っているという話ばかりが聞こえてきます。
 
不審に思った権中納言は、萌子の乳母子・左衛門に手紙を書きました。
 
「色々そなたに話を聞きたい。こちらが女車に乗って伺うか、あるいはどこかに出て来てもらったらそこで会いたいのだが」
 
それで左衛門は四の君に権中納言に呼ばれていることを言った上で、決して手引きなどはしないと誓った上で、月の者の宿下がりの名目で右大臣宅を出ます。そして、権中納言の家(萩の君をお育てしている所)に伺ったのです。
 
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「ずっと四の君とも会っていない。つもる話もあるし、一度手引きしてくれない?」
と権中納言は言ってみましたが
 
「それはかたくお断りします」
と左衛門はきっぱり言います。
 
「現在、四の君は右大将様とうまく行っています。昔は右大将様は、まるで女同士で夜を明かすかのように、ただおしゃべりだけして夜を明かしておられましたので、気の毒な気がしていたこともあり、権中納言様の手引きも致しました。しかしそのことで四の君は親からも世間からも非難され、とても辛い目にあいました」
 
あからさまに権中納言を非難しています。。
 
「でも右大将様は失踪からお戻りになってからは、普通に姫様を愛して下さっています。吉野の姉君を正妻に迎えられたのは悔しいですが、吉野姉君はまだ妊娠しておられませんが、四の君には須須様もおられますし、現在妊娠なさっていて、今回も右大将様の子供を産めるというので喜んでおられます」
 
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と言います。
 
「須須はボクの子供だよね?」
「いいえ。顔かたちが右大将様に似ておられますし、間違い無く右大将様のお子です」
 
そんな馬鹿な?と権中納言は思います。
 
権中納言は混乱しました。なぜ女同士で子供ができるのだ??
 

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権中納言は、右大将が毎晩ちゃんと四の君を抱いているという話、そして間違いなく四の君は右大将の種で妊娠したし、先に生まれた須須も右大将によく似ているという話を聞いて、混乱します。それで左衛門に色々尋ねるりですが、さっぱり分かりません。
 
夜も更けていくので、長く引き留めてはいけないと考え、左衛門には
「ありがとう。でも今夜は帰りなさい」
と言って帰します。左衛門も少しきつく言い過ぎたかなと思い、打ちひしがれている様子の権中納言を見て気の毒に思ったものの、そのまま帰って四の君に報告しました。
 
権中納言は右大将と一度話し合ってみる必要があると考えました。しかし権中納言は、かなり忙しそうで、大量の書類を処理していますし、地方官やあちこちの部署の者などとも会い、交渉事で飛び回っています。後ろ盾になっている東宮のところにもよく行っていますし、妊娠中の尚侍にもよく伺候しているようです。
 
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それで忙しくしているのを、相変わらず権中納言は右大将にくっついて回っているのですが(本当にこいつは何の仕事をしているんだ?)、2人きりになることが全くありません。右大将本人は、権中納言がくっついてまわっていること自体は、許容していて、特に面倒にも思っていないようです。
 

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今年の右大将は本当に忙しいようで、いつも射手を務めている賀茂の祭りの流鏑馬の射手も今年は辞退したようです。
 
4月23日、花久は涼子(涼道)から“メンテ”しておいてと言われ、麗景殿女御の妹・楠子に会いに行きました。
 
会ってみて、彼女が春に麗景殿女御に挨拶に行った時、こちらを見詰めていた女性であることに気付き、だからこちらを見ていたのかと納得しました。
 
「なかなか会いに来られなくてごめんね」
などと花久が言うと
 
「右大将様が失踪なさっていた時期もずっとお慕い申し上げておりました」
などと楠子が言うので、
 
おいおい、涼道の奴、一体いつからこの女を放置していたんだ?と呆れます。まあ確かにあいつは元々女に興味があるわけではないみたいで、萌子の所にはよく帰っていたけど、海子には結局全然手を付けてないみたいだしなあと思います。
 
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(本当は“女同士”の交わりをして充分海子を満足させてあげている。だから海子は涼子にバージンを捧げた)
 
実は花久自身も男性的な発達が遅れていて、結局いまだに声変わりの兆候も無いし、ヒゲも生えておらず、おかげで、東宮からの「そろそろ睾丸を抜こうか」という話も「また今度」と逃げている状態です。それで実は花久もあまり女性には興味が無いものの、ちんちんの無い涼子の代わりに“メンテ”をしているのが現状です。
 
「ずっと連絡しなくてごめんね」
などと謝った上で、涼子ならこんなこと言うかな?などと思うようなことを言ったりしている内に。盛り上がってしまい、女の部屋に入ってキスします。この時、女が戸惑っているので、やはり2年くらい放置していたせいかなと思い、優しく抱きしめた上で、優しく“して”あげました。すると、彼女の反応から、どうも涼子はこれまでこの女性に“何もしていなかった”ことを察し、何やってたんだ?と思います。と同時に自分が代わりに“しちゃって”良かったのかな?と少し後悔もしました。しかし花久は
 
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「これまで君があまりにも可憐だったので手を出せなかったけど、今日はとても気持ちが盛り上がってしまい、君をボクのものにしないではいられなかった」
などと言うと、彼女は感動しているようです。
 

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朝になるので彼女の部屋を出ますが、彼女が戸を開けてくれても名残惜しそうに後朝(きぬぎぬ)の歌などやりとりしてから、退出しました。
 
そして実は右大将が女の部屋から出てくる所を見ている者がいました。
 
いつも右大将にくっついて回っている権中納言です!
 
彼はこの時の右大将の姿が“男”にしか見えなかったので驚愕します。
 
そもそも女と寝てきたようですし。
 
思いあまって、右大将が帰ろうとする所に、権中納言は声を掛けました。右大将もまさかこんな所まで付いてきていたとは思わなかったので、さすがに驚きます。権中納言は、宇治の館から君が突然姿を消して以来・・・と、ここ1年ほど言えなかった恨み言をたくさん言いました。
 
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右大将は、権中納言からきついことを言われても怒らずにじっと聞いていました。むしろこいつも結構真面目に女を愛しているんだなと見直しました。
 
「あなたとは、一度ゆっくり話したいと思います。でも僕たちも幼い頃と違って各々の立場もあるし、責任とかもあって、安易なことは出来ないですね」
 
と右大将は答えました。
 
権中納言は彼と話していて、たしかにこいつは男だと再度確信しました。では女の右大将はどこに行ってしまったのだろうと疑問を感じます。
 
「もう明るくなってしまったなあ」
と右大将は言って、尚侍のいる宣耀殿に向かいました。
 

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右大将と、宇治の館以来、久しぶりに言葉を交わしたものの、権中納言はどうにも納得がいきません。おそらく男の右大将と女の右大将は何らかの血縁のある人ではないかと考えます。
 
最初は女右大将の兄弟なのではと思ったものの(実は正解!)、男の兄弟がいたのであれば、女右大将がわざわざ男の振りをして宮中に仕えたり、女と結婚したりする必要はありません(まさにその通り!)。
 
なお、権中納言は左大臣の子供が2人とも女の子だったので、姉が男装して右大将として宮仕えしていると思い込んでいます。
 
では今見た男の右大将は誰なのだ?と思うのですが、ひょっとすると、本来はあまり世に出せない、身分の卑しい女に産ませた兄弟か、あるいは従兄弟か何かかも知れないと考えました。
 
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何としても、もう一度ゆっくり彼と話したい(そして話した上で女右大将の行方を聞きたい、そして聞いて口説きたい!)と思い、彼は5月のある日、右大将を二条堀川の館に訪ねていきました。
 
ところが、右大将は右大臣邸に行っているようです(実は萌子がいるので、花久はここに帰るより右大将邸に帰ることのほうが多い)。
 
こちらにはあまり人もいないようだったので帰ろうかと思いました。ところが、そこに“琴の琴(きんのこと)”の音が聞こえてきました。
 
ここでこれが琴の琴の音であることに気付くのが、さすが音楽に詳しい権中納言です。日本ではめったに弾く人のいなくなった楽器(宮中では実はたまに涼子が弾いている)なので、音を聴いても楽器が判別できない人が大半です。
 
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権中納言が耳をすまして聴いていますと、箏や琵琶に似た音も聞こえます。どうも何人かで合奏しているようですが、中でも琴(きん)の音色がこの世のものとは思えないほど素晴らしい。
 
それで権中納言は邸内に忍び入って、こっそりと覗き見をしました。
 
(純粋に音楽に興味を持っただけであり、女を覗こうという気持ちは無い)
 

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中で声がします。
 
「こんな所、誰も覗き見したりしませんよ」
と言って、御簾が巻き上げられます。
 
箏(そう)を弾く人は巻き上げたすだれのそばにいます。今そっとすべるように端に出てきました。ほっそりと髪の具合や頭の格好、姿など、若い侍女風です。琴(きん)と琵琶を弾く人は長押の上に座っています。隅々まで照らす月の光に、こちらに向かって座っているのでよく見えます。
 
琴(きん)の人:実は姉の海子:は少し奥に座っています。その琴を向こうに押しやり、月をじっと見て居る様がたいそう気品があり優雅です。尚侍と雰囲気が似ている感じもします。もうひとりの女(妹の浜子)は、台に乗せた琵琶に寄りかかって、たいそうふっくらと愛嬌があり、子供めいたふうで愛らしい。権中納言はその琵琶が中国琵琶であることを見抜きました。
 
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権中納言は、この中国琵琶の人が好みだなあ、などと思いました(一目惚れ)。
 
しかし、もうひとりの、今ではほとんど弾く人のなくなった琴(きん)を弾きこなしている人も感激だ、などと思います。
 

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やがて月も沈んでしまったので(つまりかなり長時間眺めていた)、合奏も終了し、琴の琴の人(姉君)も琵琶の人(妹君)も侍女たちとおしゃべりしています。その琵琶の人の姿が本当に愛らしく心がときめいてしまいます。
 
権中納言は宇治に女右大将を連れて行くまでは多数の女と付き合っていたものの、その後は女との関わりは、筑紫の君だけになっていました。それで、このような気持ちになったのは久しぶりでした。
 

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