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■男の娘とりかえばや物語・取り替へたり(2)

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ちなみに、館で合奏していた女たちの方ですが、庭に男性が忍び込んでいたのには当然気付いていましたので、その日は戸締まりをしっかりし、男の番人なども立たせてから寝ています。
 
「でもどこの男でしょうね」
とひとりの女房が言いますと
 
「あれは式部卿宮のご子息で、現在の役職は権中納言様ですよ」
と言った女房がいました。
 
「式部卿宮のご子息ということは、帝の従弟君ですか?」
「そうそう。だから、殿様(右大将)の妹君が子供をなしていなかったら、あの方が次の天皇になられていたかも知れない」
 
「そんな立派な方が庭に忍び込むんですか?」
「男は、女を得るためには、そのくらいするんですよ。特にあの方は女性関係の噂が絶えなかったですからね」
 
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「“絶えなかった”というと最近は?」
「一昨年、どこかの高貴な姫君を盗み出して、その方に子供まで産ませたものの姫君は実家に取り返されてしまったらしいですよ」
 
事情を知っている海子・浜子の姉妹は、世間ではそういう噂をしているのかと呆れました。しかし2人とも権中納言の顔を見たのは初めてです。妹が何だかボーっとしているようなので
「やめておきなさい。適当に遊ばれて捨てられるよ」
と姉は浜子に注意しました。
 
「男の人が浮気するのは普通だもん。帝の従弟って立派な方じゃない?そんな方と契れば、将来ひょっとして、自分が産んだ子が帝になる可能性もあるでしょ?」
と浜子は言っています。
 
「まあ可能性が無いことはないね」
と姉は呆れ気味に答えます。
 
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「私たちからの親族関係はどうなるんだっけ?」
 
浜子としても、あまりにも血筋が近すぎると微妙になります。姉は少し考えましたが、やがて言います。
 
「私たちは権中納言様の従姪になると思うよ」
「お姉ちゃんは従甥だったりして」
 
「ここはいいわあ。男装してても叱られないし。私と尚侍様はある意味戦友」
「ああ。ふたりって、夫婦というよりは戦友だよね」
「話が合うのよね〜。早く里下がりしてこられないかなあ。たくさんお話ししたいのに」
「話が合うだけじゃなくて“貝”も合うんでしょ?」
「きゃー!」
「こらこら。未婚の娘が言うことじゃありませんよ」
 
実は海子は“涼子の妻”なので、花久の妻ではありません。それで花久も彼女を抱いたりはしません。萌子や楠子を抱いたのは、あくまで不審に思われないための、涼子の代理てす。もっとも涼子は、女同士で交わる方法を東宮様から伝授されたらしく、海子とは実はその方式で性の交わりしているらしく、萌子と寝て悦ばせていたのも8割くらい涼子の方だったりします(そういう日は花久が妹の代理で女装して尚侍をしている−そして妊娠中で帝の夜のお供をしていないのをいいことに東宮に弄ばれる!)。
 
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花久自身はあまり恋愛に興味は無かったりします(多分睾丸の機能が弱いせい)。実は唯一の例外が東宮です。花久も東宮には憧れる気持ちがありました。
 
また海子には元々男性的な傾向があり、漢文や古典、法律や地理などの知識も豊富ですし、馬術・弓矢などもこなします。それが東宮の代理をした時に役立ちました。この二条堀川の家では、父親の目が無いのをいいことに、半分くらい男装しています。男装しやすいように髪も短めにしている(この館に来た時にけっこう切った)ので、涼子が「いいなあ。ボクは髪を切れない」と羨ましそうに言ったりします。
 
(涼子と海子の会話はそばで聞いていると男同士の会話に聞こえる)
 

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さて、権中納言は、元々の性格がマメですし、女性関係のコネが多いので(その多いコネを使っても女右大将の行方は掴めない)、それを駆使して、二条堀川の館に居て、琵琶を弾いていた女性が誰なのか調べました。
 
それで彼は琴の琴(きんのこと)を弾いていたのが、右大将の正妻の、吉野の姉君で、琵琶を弾いていたのは、その妹君であることが分かります。
 
権中納言は何とかその妹君とツテが作れないかと、二条堀川の館に勤めている侍女などとのコネを確保しようとするのですが、どうにもガードが堅いようで、文などを託すこともできずにいました(海子が妹への権中納言からの手紙を絶対に取り次がないように指令している)。
 

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6月14日、右大将は、二条堀川の家に、多数の上達部(かんだちめ)・殿上人(てんじょうびと)を招いて、豪華な宴を開きました。この館の本殿南庭には、泉なども作り、池に面して釣殿などもある風雅な建物です。
 
この宴に右大将は、権中納言も招待しました。
 
わざわざ、母(春姫)の甥である、蔵人兵衛佐という人に使者に立ってもらい招待状を渡しました。権中納言は、女右大将の行方にヒントが得られるかもと思い、招待を受け、立派な服装をして出かけました。
 
楽人を招いて合奏させ、お酒もふるまい、料理もたくさん並べます。
 
宴もたけなわになってきた所で、右大将の笛が聴きたいという声が出て来ます。
「今日は楽(がく)に巧みな人たちを招いていますし」
 
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とは言うのですが、それでもぜひというので、右大将は
 
「でしたら権中納言も琵琶で参加してください」
と言い、結局、右大将の笛、権中納言の琵琶、左衛門督の箏(そう)、宰相中将の笙(しょう**)、弁の少将の篳篥(ひちりき)で合奏することになります。
 
この合奏には、居並ぶ多数の公卿・殿上人たちが聴き惚れていました。
 
(**)“しょう”と読む楽器は2種類ある。“笙”(しょう)は多数の管が縦に立っている楽器で、発音機構はバグパイプに似ていて音も似ている。その姿からしばしば鳳凰にたとえられ“鳳笙”(ほうしょっう)という美称もある、楽器の女王と呼ぶ人もある(多分男王は龍笛)。
 
もうひとつ“簫”(しょう)というのは、パンフルートのような楽器である。後に、そのパンフルートを構成する単管を独立させたような縦笛も同じく簫と呼ばれるようになった。この単管の簫が生まれたのはだいたい11世紀頃以降と思われる。つまり、とりかへばや物語の時代にはまだ無い。パンフルート型の簫(排簫はいしょう/パイシャオ)と区別して洞簫(どうしょう/トンシャオ)とも言う。表穴5個と裏穴1個という構造で後の明笛(みんてき)に似ているが、明笛が横吹であるのに対して、簫は縦吹きである。
 
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子守唄で「でんでん太鼓にしょうの笛」と歌うのは、こちらの簫(洞簫)である。さすがに笙のような楽器を子供のお土産に買うことは無い。
 
なお他にお祭りではおなじみの鉦も「しょう」だが、こちらはむろん打楽器である。これも雅楽でも使用されるほか、お寺でもよく使われる。一部の宗派では木製の鉦を使う所もあり、木鉦と呼ばれる。
 

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この豪華な顔ぶれで合奏した後、権中納言は
「女性も混ぜて演奏したいですね」
 
と言います。右大将も
「それもいいですね」
と言って、吉野の姫君姉妹のために御帳台を2つ用意し、そこに姉妹に入ってもらいました。
 
姉君の琴の琴(きんのこと)、妹君の琵琶(中国琵琶)、それに右大将の笛、権中納言の琵琶(日本琵琶)、左衛門督の箏、宰相中将の笙、弁の少将の篳篥、という合奏に、蔵人兵衛佐は扇を鳴らして歌を歌うという豪華な演奏となります。
 
こんな即興の組合せで合奏するのは初めてですが、みんな楽にたけているので、自然に役割分担も定まり、調和した合奏(セッション)になりました。
 
琴の琴にしても、中国琵琶(**)にしても、聴く機会の少ない楽器で、みんな珍しい音の入った演奏に歓声まであがっていました。
 
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(**)当時の中国琵琶は形としては現代の日本琵琶と似た形をしており、清代の琵琶や現在の中国琵琶とは結構形や構造に演奏法も違う。日本琵琶と似た形ではあるものの、日本琵琶は抱えて弾くのに対して、中国琵琶は床や台に置いて弾くのが違っている。なお日本で“唐琵琶”と呼ばれているものは、この唐代頃に本当に使用されていた琵琶とは全く違い、実は清代に発達した新しい形式の琵琶である(バチではなく義甲(ピック)で弾く)。なお現代の中国琵琶はギターの考え方が導入されて色々構造が変わっているし、指で弾く楽器である。
 

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杯(さかずき)も坏(つき:食器)もどんどん空きになったものが重ねられ、出席者もあるいは眠ってしまい、あるいは酔い潰れて、動いている人数は少なくなっていきます。眠ってしまった人たちには、女房たちが布を掛けてあげていました。
 
権中納言は完璧に酔っていて、もう酔い潰れる寸前なのですが、右大将に絡むように話しかけます。
 
「わざわざ俺をここに呼んだんだから、何かくれ」
と言います。何かというのは、もちろん女右大将のことです。
 
「ありし日の宇治の橋姫を、お前、どこかに隠してないか?」
などと言って、歌を詠みます。
 
昔見し、宇治の橋姫それならで恨み解くべき方はあらじと
 
あの宇治に住んでいた橋姫(女右大将)をくれたら、お前への恨みも解いてやる。(“解く”は“帯を解く”に掛けていて、セックスさせろというあからさまな歌)
 
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橋姫は衣片敷き待ちわびて身を宇治川に投げてしものを
 
橋姫は衣を敷いて待っていたのに待ち人が来ないので身を宇治川に投じてしまいましたよ。
(宇治にいた人はあなたがなかなか来てくれないから、もう宇治川に身投げして死んでしまったのです:あんたが(萌子の心配ばかりして)放置してたからでしょと権中納言を責めている。そしてあの人はもう死んでしまったのだから諦めて下さいと言っている。古今集「狭筵(さむしろ)に衣片敷き今宵もや、我を待つらむ宇治の橋姫」をベースにしている)
 

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権中納言は酔ったふりをして(でも実際既にかなり酔っている)
 
「今夜はもう帰れそうにない。姫君たちの御簾の前で夜を過ごしましょう」
 
などと言いますが、
「それは重みの無い話ですね。こちらへいらしてください」
と自ら権中納言を案内して、立派な調度のある部屋に連れて行くと
 
「ゆっくりお休みになってください」
と言って、右大将自身は部屋を出て行きます。
「廊下に誰か待機していますから、用事があったら申しつけてください」
と言い残しました。
 

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それで権中納言も、さすがにかなり酔ったし、取り敢えず寝ようかなと思います。しかし夜中に目が醒めてしまいます(多分飲み過ぎ)。
 
どこかで笛の音がします。その笛は右大将の吹くもののように思えました。
 
権中納言は、もし1人で吹いているのなら、あらためて彼女(彼?)と話がしたいと思いました。それで権中納言は、笛の音に誘われるように部屋を出て歩いて行きます。結局建物を出て庭に出てしまいました。
 
そして権中納言が見たのは、池に張り出した釣殿の所にいる、小袿姿の女性が笛を美しく吹いている様でした。
 
(女性で笛を吹ける人は珍しい:涼子や東宮は吹くが例外的なもの)
 

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「涼ちゃん!?」
と驚いたように声を掛けると、笛を吹いていた女性が振り返ります。
 
それはまさしく2年前に宇治の館から居なくなった、愛しき人の姿でした。
 
権中納言はボロボロ涙が出ました。
 
「涼ちゃん、会いたかったよぉ」
と彼は言いました。
 
しかし笛を吹いていた女性は権中納言に微笑むと、さっと建物の中に入って行きます。権中納言はその後を追います。女性は回廊のような所を随分歩いて行っていたのですが、いくつか建物を過ぎた所の曲がり角でひょいと曲がります。
 
権中納言は続けて曲がりましたが、女性の姿はありませんでした。
 
「どこ行ったんだろう?」
と思います。権中納言は、キョロキョロ見ていたのですが、近くに部屋があることに気付きます。
 
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「涼ちゃんここ?」
と言って勝手に中に入るのですが、そこには涼道とは別の女性が居て、こちらを見て、驚いたような顔をしています。
 

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「吉野の妹君?」
「権中納言さま?」
 
権中納言は、思わぬ所で思い人の女性と遭遇したので、速攻で、女性にマメな性格が出ます。
 
「妹君様、あなたのお顔を5月にたまたま見る機会があって、それ以来、恋い焦がれておりました」
 
「まあ、権中納言さま。私もあなた様のことを耳にして、興味を持っておりました」
 
どうも相思相愛だったようです。
 
権中納言は早速、歌を詠みます。すると彼女も返歌します。権中納言は結構きわどい歌を書くのですが、女もそういうのは嫌いではないようで、お互いにやりとりするうちに楽しくなってきました。
 
「していい?」
「してください」
 
ということで、権中納言は彼女と床をひとつにしたのでした。
 
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朝になると、朝食が運ばれてきます。
 
右大将に挨拶に行くべきかと思ったのですが、まだすねているので、行かずにその日は丸一日、妹君・浜子とおしゃべりをしていました。女性を喜ばせる話題はたくさんあるので、浜子はたくさん笑い転げていました。そして明るい光の中で間近に彼女を見て、ほんとに可愛い子だなあと、権中納言も思うのでした。
 
結局権中納言はこの妹君の部屋に3晩滞在してしまいました。琵琶の合奏などもして楽しく過ごします。そして3回目の晩が明けた朝の朝食には、餅が3つ添えられていたので、権中納言はその餅を3つ丸呑みしました。
 
その日の夕方になって、右大将から使いの女房が来ます。権中納言もよく知っている、加賀の君です。
 
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「主人より伝言です。『こちらから参上して酔いの不始末などもお詫びしないといけないかもしれませんが、いっそこちらにおいでなさいまぜんか』とのことです」
 
「分かった。行こう」
 

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男の娘とりかえばや物語・取り替へたり(2)

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