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■男の娘とりかえばや物語・取り替へたり(3)

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それで権中納言は、服装を整えて、加賀の君と一緒に、右大将のいる所に向かいました。
 
夏なので右大将はくつろいだ格好をしています。3年前の夏の出来事が頭に蘇ります。権中納言は右大将をよく観察しますが、今日の右大将は男なのか女なのか判断ができませんでした。
 
「私はあなたに見捨てられたかと思っていました。幼い子供(萩の君)のこともお尋ねにならないので、どうしたものかと思っていました。でも気に掛けてくださっていたことは喜んでおります。行方の分からない人(女右大将)の形見の子供も私がずっとお世話していますが、男の身なので常に付いているという訳にもいきません。あなたの近くに置いておくことができたら安心なのですが」
 
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子供にかこつけて、女右大将と一緒に暮らしたいと言っています。
 
「その子(萩の君)のことについては、申し上げようもありません。ところで、吉野の二の君のことなのですが」
 
「あの娘は俺にくれ」
 
「お互い気に入ったみたいですね。いや、あの子があなたに興味があると言うので、姉君も私もやめとけと言ったのですが、本人が乗り気なので、認めることにしました」
 
「じゃもらっていいんだな?」
 
「私は気が進まないんですけどねー。本人が契りたいと言っているし。でも、いやくしも女王様ですから、それなりの館は用意してくださいね」
 
(吉野の宮は親王宣下されていないので親王ではなく王になる。従ってその娘も内親王ではなく女王になる)
 
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「分かった。それは何とかする。それまではここに通ってきてもいいか?」
「女房や下働きの者たちに、手紙も本人も通してよいと言っておきますよ」
「頼む」
 
「そうだ。笛を聴かせてくれない?」
「いいよ。ちょっと待って。笛を取ってくる」
と言って、右大将は席を立ちましたが、権中納言の傍を通った時、落葉(お香の一種)の香りがしました。
 
その香りを嗅いでハッとします。
 
この香りは、女右大将が好んで焚いていたものだったのです。
 
やがて
「失礼しました」
と言って右大将が戻ってきます。そして龍笛を吹くと、それはとても美しいものでした。
 
しかし権中納言は、笛を吹いている右大将を見ていて何か違和感を感じます。
 
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「こいつは・・・男だ!」
 
それで権中納言は、今笛を吹いている右大将が男であれば、さっきまで自分と話していた右大将こそ、宇治の館から消えた女右大将その人だったのではないかと思い至ったのです。
 

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実際には、ここで笛を吹いてみせたのは、実は花久の再従兄弟に当たり、花久・涼道と容貌が似ている源和茂(能登国司の次男)です。3日前の合奏で笛を吹いたのも彼です。
 
ここ1年ほど、宮中の管弦の宴の類いでは、笛や琵琶は男装の涼子が演奏していたのですが(代わりに花久が尚侍の振りをして五衣唐衣裳を着、帝の近くに侍っていたりした)、涼子の妊娠が発覚した時点で、右大将の代役が必要になると考えた涼子と花久は能登から彼を呼び寄せていました。
 
彼はまだ14歳ではありますが、花久が男性的に未成熟なので、充分代役が務まります。彼を代役に使うため、花久は同じ模様の服を3着一緒に注文していました。花久・涼子・和茂で1枚ずつ着るのです。
 
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ちなみに基本的には右大将の代役なのですが、時には尚侍の代役をさせられ、女の服を着せられて恥ずかしそうにしていました、彼は声変わりは既にしているものの、元々ハイトーンの声を持っているので、何とか女の振りをしても破綻せずにやっていました。
 
ここまでの会話はもちろん花久が権中納言と話していたのですが、花久は笛がそんなにうまくないので、和茂に交替したのでした。
 

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権中納言と浜子のことに関しては、浜子がとても乗り気であったので、当初反対していた花久・涼子・海子も根負けしたこと、そして現在権中納言が育てている萩の君には、誰かしっかりした母親が欲しいというのもありました。萩の君の件に関して浜子は、自分が母親になってよいし、何なら現在右大臣家で冷遇されているという小夜も自分の所に置いていいと言うので、認めることにしたという背景もありました。浜子としては少々品行に問題があっても“帝の従弟”というブランド?がとても魅力的であったようです。
 

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権中納言は浜子を迎えるため、三条京極に土地を求め、立派な邸宅の建設を始めました。それまでの間、彼は二条堀川の右大将の館に通ってきては、浜子と会っていました。
 
彼がしばしば右大将邸に来ていることから、世間の人たちは、どうも権中納言は右大将と和解したようだと噂をしていました。権中納言としても、浜子がとても可愛いので、宇治の館から右大将に逃げられてしまって以来泣き暮らしていた頃に比べれば、随分心を慰められるのでした。
 

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浜子が萩の君の母親代わりになってもいいと言ったことで、萩の君は備前に伴われて頻繁に二条邸を訪れることになりました。
 
備前としては、権中納言が吉野の姫君と結婚するという話を聞き、それは宇治の館から居なくなった女君で、権中納言殿は、その人をやっと探し当てたのではと思ったのですが、会ってみると別人なので戸惑います。
 
「あのお、姫様には妹様とかお兄様とかは?」
「乳母殿。その件に関しては、あまり人に知られてはいけない事情があるのですよ。あなたには充分な報酬を私からも払いますから、あまり追及しないで頂けませんか?それとその件を権中納言には決して話さないで欲しいのです」
と浜子は備前に言いました。
 
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それで備前は、やはり自分の実家に金品を届けてくれているのは、あの女君で、おそらく、この方の姉妹(庶妹??)なのだろうと考えます。そして
 
「はい、もちろんです。決して誰にも話しません」
と浜子に誓ったのでした。
 

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6月の宴から半月ほど経った7月1日、尚侍は出産のため二条堀川の右大将の館に里下がりしてきました。本殿内の、元々尚侍のために設計されていた部屋に入れます。表向きに尚侍のために用意していたことにしていた西の対ではなく本殿に入ったことに首をひねった人もありましたが、妊娠中では何かと不便なこともあるだろうから、兄の右大将が充分な支援をするためと説明しています。
 
そして尚侍が二条堀川の館に入ったのを見て、これまでここに入るのを渋っていた萌子も8月1日に右大臣宅から、こちらに移動してきました。萌子としても、親の家では、これまでの“不始末”で何かと苦言をされることが多いのに対して、右大将は自分にずっと優しくしてくれるので、こちらの方が居心地が良さそうであったこと、また二条堀川に、吉野の姫君たちだけがいる状態ならそこに行くのに抵抗があったものの、尚侍も居るなら、自分も居やすいという気持ちもありました。
 
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萌子は当然右大将との子供である須須を連れてきますが、権中納言の子供である小夜に関しては、悩みました。一時は右大臣宅に置いてくることも考えたのですが、結局小夜も連れて行くことにしました。それは小夜が現在右大臣宅で辛い立場に置かれていて可哀想だと思っていたこと、右大将本人が「あの子もこちらに置いていいよ」と言っていたこと、更に吉野の妹君が権中納言と結婚してしまい、その妹君が小夜の世話をしたいと言っていたので、それに頼ることにしました。
 
結果的に小夜は、萌子と浜子という2人の母親がいるかのような状態で育てられることになります。ここ1年ほど、冷たい視線に曝され、泣いていることの多かった小夜が、ここては大事にされ、笑っていることが多くなったのは良いことでした。結局、小夜(4)と萩の君(2)は姉弟のような感じで、また萩の君と須須はまるで双子の兄弟のような感じで育つことになるのです。実際少し大きくなると、萩の君と須須は一緒に悪いことをしたりして一緒に叱られたりしていました。
 
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また尚侍は、萩の君が二条堀川の館に(一時的にですが)居るというのが、とても心慰められることとなりました。実質捨ててしまった我が子の姿を見て涼子は、母子の名乗りこそあげられないものの、さすがに涙が出ました。
 

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9月1日、萌子は男の子を出産しました。右大将にとって須須に続く2人目の男の子であり、佐佐と名付けられました。菊の季節に生まれたことから菊の君とも呼ばれることになります(これに対して須須は芒の君とも呼ばれる)。
 
萌子としては最初の出産(小夜)はみんなに祝福されつつも後ろめたい出産でしたし、2度目の出産(須須)は夫は失踪中で父親から勘当されて乳母の家での出産になり、精神的に最悪の状態で自分も死ぬかもという状況でした。しかし今度は夫(右大将)から本当に愛され、父親の右大臣も心から喜んでくれる、幸せな出産となりました。精神的に安定していたこともあり、出産自体も安産となりました。
 

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尚侍(涼子)が里下がりしている時期、右大将(花久)は、自分では判断のつかないことがあると、若雀を二条邸の涼子の所に行かせて判断してもらっていました。また地方官などからの手紙や、企画書などの類いも涼子に書いてもらっていました。涼子がほんとにしっかりした文書を書くので、花久としても、やはりこういうのは妹にはかなわないなあと思っていました。
 
この時期の宮中での管弦の催しなどは、和茂が右大将の振りをして演奏していました。歌比べのような行事では、予め涼子に歌を書いてもらっていました。
 
和歌を作ること自体は、花久も充分優秀な類いなのですが、涼子の“字”が欲しいのです。
 
涼子が二条邸にいると、海子はしばしば涼子の部屋に行き、夜を共にしていました。涼子自身は妊娠していますが、海子は妊娠していないので、充分セックスをすることができます!
 
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「ボク、涼ちゃんの子供なら産んでもいいなあ」
「赤ちゃん欲しいなら花ちゃんと寝る?」
 
「うーん。花ちゃんのことも嫌いではないけど、そこまでしたくもない。ボクは基本的には涼ちゃんの妻だし。だいたい、あの子まだちんちんあるんだっけ?」
 
「“時々”あるみたいだよ。あまり機能は高くないけど。あの子は尿筒(しとづつ)使えないから、普通の女の子と同様に虎子(おおつぼ)使うし。たからあの子の傍には必ず侍女が2名以上付いてないといけない」
 
「尿筒が使えないって、やはりあの子、もうちんちん無いのでは?声変わりもしないし」
 
などと言っている海子も涼道も尿筒の愛用者です!
 
「ボクも自信無い。結局萌子とはボクたちと同じ方式で“交わって”いるみたいだよ」
 
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「この二条邸で梨壺(東宮の居所)と同様に毎朝パンを焼いているのって意味深だよね」
「とっても必要なんだよね〜」
「食べると美味しいけどね」
 

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