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■男の娘とりかえばや物語・ふたつの妊娠(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2019-08-22
 
さて東宮は北陸から帰京した後、自分の“後ろ盾”ということになっている涼道を呼び、留守にしていた間に何か無かったか尋ねようと思いました。
 
ところが侍女を使いにやると、逆に源大将(四の君の姉・三の君の夫)が直々に東宮のおられる昭陽舎(通称:梨壺)にやってきて、
 
「中納言様は一週間ほど前からお休みになっております。実はそれで事務が滞っていて困っておりまして」
という返事です。
 
「またあいつ、何やってんだ?」
と雪子は怒り、そばに控えている花子に
 
「尚侍(ないしのかみ)、ちょっとお前の手の者に命じて、あいつを連れ戻してこい」
とお命じになりました。
 
そして源大将が帰った後、花子は小さい声で命じます。
 
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「午前中にその手配をしたら、午後からでもいいから、お前、ちょっと太政官と近衛府に顔出して謝っておけ」
 
「あのぉ、それってまさか・・・」
「むろんお前が中納言の代理をするに決まっている」
「え〜〜〜?また男装するんですか?」
 
「やはりお前、女になりたいんだっけ?」
「何度か言いましたけど、その気は全くありません」
「だったら男装はむしろ普通だろ?」
 
「でも男の格好とか慣れてないから、あんな服着てると変な感じで」
「やはり今すぐ玉抜きするか?牛の玉抜きに慣れているものなら手配できるが」
「私、牛と同じですか〜?」
「大差ないと思うけどなぁ」
「もう少し待って下さい」
「だったら、やってこい」
「はい、分かりました」
 
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と花子はしぶしぶ了承したのでした。
 

六条辺りの家。
 
仲昌は涼道の月の物が終わるまで、この六条の家に居座ってしまい、更には涼道が「仕事に戻らなきゃ」と言うのを押しとどめて、2人の滞在は5日、6日と延びてしまっていました。涼道も女姿になっていると、何だかいつもの調子が出ず、簡単に仲昌に言いくるめられてしまいました。
 
滞在が長期間になったため、付き添っている乳妹の小竹(高宗の妹)が心配して言いました。
 
「姫様、宮中や、右大臣様宅に連絡しなくてもよいでしょうか?」
 
「うん。文を書く」
と言って姫姿の涼道は萌子宛に1通、上司の大納言宛に1通、文を書きました。
 
使いの者に文を持たせた所で仲昌は言いました。
 
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「涼ちゃん。君はもう男の姿には戻らなくていい。ずっとこのまま女の姿で僕と一緒に暮らして欲しい」
 
「そんな訳にもいかないよ。明日か明後日には、内裏に戻ろう。君もそんなに長く休んでいてはいけないだろう?」
と微笑みながら涼道は仲昌に言いました。
 

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大納言への手紙を持って行ったのは高宗なのですが、太政官に入って行ったところで声を掛けられます。
 
「高宗」
「あれ?殿様??」
 
そこには六条の屋敷で休んでいたと思っていた涼道が居るのです。
 
「どうかしたかい?」
「殿様から大納言様への手紙を言付かったので持って来たのですが・・・」
「うん。急用を思い出したから、急行して来たんだよ。僕が先に着いてしまったようだね」
「ではこの手紙は?」
「不要になった。僕が預かっておこう」
「はい」
 
と言って、高宗は大納言への手紙を“涼道”に渡しました。
 
「そうだ。ちょっと頼まれてくれない?」
「はい」
 
「遠出になって申し訳無いのだけど、三河の雅之殿に文を書くから持って行ってもらえないか?」
「分かりました。行って参ります」
 
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それで“涼道”は自分の執務机で文を書くと、往復の費用と一緒に高宗に渡しました。それで高宗は(馬に乗り)三河に向けて出発しました。
 
「間一髪。全くあの子は去年も叱られたのに懲りてないなあ」
と“涼道”は独り言を言いました。
 

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一方、右大臣宅の萌子に手紙を持って行ったのは、いつもこの役目をしている、筑紫の君(物忌みの時に仲昌を引き入れてクビになった、尚侍の元侍女)です。
 
右大臣宅では、持病の治療と称して中納言が家を留守にてから日数が経っているので、右大臣が
「どういう病気か知らないが、治療の必要があるなら、ここが自宅なんだから、ここで治療すべきではないのか?」
と文句を言っています。
 
「まあ色々あるのでしょう」
と萌子は達観しています。
 
どちらも実際には中納言は別の女の所に行っているのだろうと思っています。そこに文が到着します。
 
《自分は生きる価値が無い気がしてなりません。でも全ての物に別れるのは辛い気がします》
 
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などと書かれています。右大臣は意味が分からず首をひねりますが、娘にすぐ返事を書けと、せかします。萌子は前々から言っていた出家のことだなとは思ったのですが、こう返事をしました。
 
《私でさえ、もう死んでしまおうと思い悩みましたけど、こうしてのうのうと生きていますよ》
 
萌子は仲昌との浮気、そして彼の種の子供を産んでしまったことからくる悩みのことを書いたのです。
 
それで筑紫の君が萌子のお返事を持ち帰ると、涼道は涙をぼろぼろ流しました。その手紙を覗き込んだ仲昌も、久しぶりに萌子の字を見てドキッとしています。
 
「僕は明日内裏に戻る」
と涼道は言いました。
「うん。僕も戻らなきゃ」
と仲昌も言いました。
 
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その頃、涼道の身代わりをして様々な書類を頑張って片付けている花子は『あいつ一体いつ帰ってくるつもりのかね』と、ぶつぶつ文句を言っていました。
 
花子は漢字があまり得意ではないので、助手代わりに、東宮の侍女で漢字に強い越前にそばに来てもらって書類の内容を確認してから、決裁の署名をしたり、内容によっては上司の大納言にお伺いして処置を決めていました。
 
「あいつがまだ戻ってこないのなら奥方のメンテもしておくか」
と独り言を言うと、その日の夜遅く仕事が一段落した所で“涼道”は右大臣宅に“帰宅”しました。
 
話が面倒になるので母屋にいる人たちには気付かれないようにそっと桐の対に行きます。心を落ち着かせるように箏を弾いていた萌子は手を止めました。
 
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「殿?」
 
「ごめん。長く留守して悪かった」
「ご病気はもうよいのですか?」
「だいぶ回復したよ。明日から仕事にも出るから」
 
そう言って“涼道”は萌子に口づけします。
 
「あれして」
「いいよ」
 
それで“涼道”は約1年ぶりに萌子を完全なる悦びの頂点に到達させてあげたのでした。
 

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さて、本物の涼道は、やっと右大臣宅に戻ったのですが、自分は昨日戻って来ていたことになっているので「あれ?」と思います。萌子も優しく
「殿様、今夜もあれして」
などと言っているのは
「また今度ね」
などと言っておきますが、そのやりとりで、姉上が来たのかと悟りました。
 
案の定、翌日参内してみると仕事は片付いています。そして姉の所に参上すると「全くあんたは」と叱られました。涼道も素直に姉、そして同様に心配していた東宮に謝りました。
 
これが9月25日のことでした。
 

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10月になります。
 
先月の月のものが来たのが9月13日で、六条辺りの家には結局10日ほど滞在してしまったのですが、その日付から考えると、次の月のものは10月12日頃に来るものと思われました。
 
その時はまた3〜4日休まないといけないしと思い、涼道は仕事を溜めないように、早めに片付けられるものは早めにと思いながら仕事をしていました。今月は吉野にも行かず、右大臣宅に毎日帰宅して、四の君にも優しくしてあげていました。四の君は“あれ”はしてもらえないものの、毎晩充分気持ち良くしてもらえるので、涼道に満足し、幸せな気分でいました。右大臣も、そういう婿を見て満足し、中納言の“持病”が治るようにと加持祈祷などもさせていました。
 
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(涼道は毎月3日ほど休むのを周囲には持病治療のためと称している)
 
そして、中旬になり、そろそろ月の物が来る時期だよなと思っていたのですが、なかなか来ません。元々涼道の月の物は周期が不安定で、半月で来ることもあれば、1ヶ月飛んで2ヶ月後に来たりすることもたまにあるので、今回は少し空いているのかなと思っていました。
 

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さて、六条辺りの家で一週間ほど女装の涼道と過ごした仲昌は、もう涼道とは一晩も離れて過ごせない気分になってしまいました。内裏に出仕していても、かなり長時間、涼道の傍に来て話しています(こいつの仕事はどうなってるんだ?)。むろん人目があるので変なことはできません。
 
右大臣宅までやってくることもありますが、
「疲れているので、明日宮中でお話を聞きます」
などと言わせて、涼道は会おうとしません。
 
たくさん文も書きますが、涼道は適当にあしらっておきました。
 
その日もまた右大臣宅まで押しかけてきたのですが、その日は、玄関の所で人を呼んでも誰も出て来ません。仲昌は、まあいいや、よく知ってる家だしと思い、案内も無いまま勝手に中に入ってしまいました。
 
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「涼ちゃんいる〜?」
などと声を掛けて部屋の中に入ると、左衛門が驚いたように大きく目を見開いてこちらを見ています。他の侍女はいません。
 
「姫様はお会いになりません。お帰り下さい」
と左衛門は言います。
 
「いや、中納言に会いに来たんだけど」
「殿様は出仕なさいました」
「ありゃまた入れ違いになったか」
と言って、帰ろうかと思ったのですが、急に帳の中に居る四の君(萌子)のことが気になりました。
 

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「萌ちゃん、ご無沙汰してたけど、元気?」
などと勝手に帳(とばり)の傍に寄って声を掛けます。むろん萌子は返事などしません。
 
左衛門が仲昌と帳の間に無理矢理身体を割り込ませて
「おやめ下さい」
と言いました。仲昌としてはちょっと言葉を交わすことができたら、そのまま帰るつもりだったのですが、左衛門に抵抗されて、かえって変な気分になってしまいました。彼は左衛門を手で払いのけます。床に倒れた左衛門はめげずに仲昌の身体に取りすがるようにして動きを止めようとします。仲昌は左衛門を殴り倒してしまいました。
 
そして荒々しく帳(とばり)を開けると、中で怯えている萌子に
「萌ちゃん、君のことも好きだよ」
などと言って、押し倒してしまったのです。
 
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一通りのことまでしたら、萌子は泣いています。一時的に失神したものの意識を回復した左衛門が
「騒ぎにならない内にお帰り下さい」
と強く言うので、仲昌も
「今日はごめんね。でも本当に君のこと好きなんだよ」
と名残惜しそうに言ってから、仲昌は退出しました。
 
これが10月13日のことでした。
 
左衛門はその日の午後帰宅(普通の人は昼前に帰宅するが涼道は忙しいので、しばしば帰宅が午後や夕方までずれ込む)した涼道に、姫に聞かれないよう別室に導いてから、正直に今日の午前中に起きたことを話しました。心の広い殿なら、無理矢理された“過ち”なら、許してくれるのではないかと見込んで相談したのです。案の定、涼道は「萌子には罪は無い」と明言しました。
 
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「しかしあいつは何とかしないといけないな」
と涼道は考え込むようにしました。
 
「殿様、男の警備員を立たせる訳にはいかないでしょうか」
と左衛門は言ってみます。
 
「確かにこういう事態がまた起きた場合、女だけでは防げんな」
と涼道も言います。
 
「許す。誰か信頼できる者なら良い」
 
と涼道が許可したので、左衛門は自分の弟(つまり萌子にとっても乳弟になる)の寛勝という者を番人として侍らせるようにしました。実はその後も仲昌王は何度か強引な侵入を試みたものの、男の番人が侍っているのを見ると、さすがに諦めたのでした。
 

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