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第3節・更にまた保健室の放課後
そしてそれは明日、木咲雅海と杉中昌美が来るなと思っていた放課後だった。その生徒は入ってくるなり言った。
「先生〜、オナニーの仕方を教えて下さい」
私はまたまたため息をついた。男子生徒でこういうことを言ってくる子は時々いるが、女子では珍しい。
「女の子は無理に覚えなくてもいいと思うよ。あれこれやってみて、気持ちよくなれたら、それで正解。やり方自体、いろいろな方法があるからね」
「たとえば、ヴァギナにローター入れたり?」
「えっと、君たちの年齢では、そういうことはやめようよ」
「私、処女じゃないから、ヴァギナに物入れるのは平気ですけど」
「処女じゃなくても、あまりお勧めできないなあ」
「やっばりクリちゃん刺激するのがいいですか?」
「うん。それがいいかもね」
「先生はクリちゃん派ですか?」
「あ、えっと・・・まあ、そうかな」
「こないだ別れた彼氏がGスポット開発しろとか言ってたのはやはり外れかなあ」
「男の子は女の子の身体のこと分からないもの。そういうのに乗せられちゃだめよ」
「ですよねー」
「クリちゃんの刺激の仕方って、どういうのが気持ちいいですか?」
「あのね・・・・・君、実際には色々やってない?」
「あれこれ試してみたんですけどね〜、なかなか気持ち良くならないのよね」
「うーん。感じ方には個人差もあるしね」
「やっぱり人によって性感帯って違うもの?」
「そりゃそうよ」
「私、脳逝きってのがよく分からなくて。クリちゃんとかGスポットとか刺激するのより気持ちいいのかな?」
「ああ、女の子には時々いるよね。Hなこと想像してるだけで逝っちゃうという子」
「想像力だけでほんとに逝けるもの?」
「逝く人はいるみたいよ。でも、たいていはクリちゃん触ったり、直接触らなくても、お股のあたりを何かで刺激したりしてると思う」
「相乗効果か・・・・」
「だね」
「でも、先生、こういうことに真面目に答えてくれて嬉しい」
「そう?でもこういうことって、結構10代の頃は悩んだりすることだもんね」
「友だちはなんか恥ずかしがって、よく教えてくれないしなあ」
「まあ、それは仕方ないよ」
「私、実は女の子になりたてなんです」
「え!?」
「半年前に性転換手術受けて」
「えー!?」
「それまで学生服で通学してたのに、突然女子制服で通学するの恥ずかしかったから、この4月からここに転校してきたんですよね。でも去年まで男の子だったことは、誰にも言ってません。先生に初めて打ち明けた」
「そうだったの・・・・」
「女の子のことが実はよく分からないことも多くて」
「そうでしょうね」
「時々、先生にいろいろ聞いていい?」
「うん。いいよ。何でも聞いてね。私で答えられる範囲のことは答えてあげるから」
「ありがとう」
「でもよくあなたの年齢で性転換手術とか受けられたわね」
「アメリカの大学病院でしてもらいました。アメリカは地域によってはゆるい所もあるものだから。現地時間で12月31日の午後、女の子に生まれ変わった」
「へー。でもそういう大きな所だと安心でしょうね。費用は親御さんが出してくれたのね」
「えへへ。当時のボーイフレンドが出してくれた」
「ちょっと待って。親御さんは?」
「冬休みに渡米して手術終わって帰国してから言ったら、ぶん殴られた」
「私が親でも殴るわ、それ」
「まあ、それは覚悟してたんですけどね。だって、親が認めてくれる訳ないと思ったもん。お金も無かったろうし」
「でもそのお金出してくれた彼氏と別れちゃったの?」
「はい。で、そのあと作った彼氏ともこないだ別れたところで」
「はあ・・・」
「でも転校して、転校した先の学校で女の子として再スタートするという件は、親も了承してくれたんです」
「そう・・・・あなた手術の痕とか痛まない?」
「それは大丈夫みたい。私の身体、けっこう丈夫だから。一応国内のそれ関係の病院で毎月1度診てもらってます」
「うん。それはちゃんと受診したほうがいい」
「ホルモンも手術前は実は個人輸入して飲んでたんだけど、今はそこのお医者さんに処方箋書いてもらって買ってます」
「うん、そのほうがいいよ。でもそのホルモン代とかはどうしてたの?」
「バイトして稼いでました。お弁当屋さんとかハンバーガー屋さんとか」
「うん。健全なバイトでよろしい」
「援交とかしたら、自分で手術代稼げるかもと思ったことはあったんだけど、見ず知らずの人とセックスするのとか、私抵抗があったから」
「それはやめておきたいね」
「私恋多き女なんだけど、ふたまたとか浮気とかはしないポリシーだし」
「まあ、いいことだね」
「で、去年付き合ってた彼氏がお金持ちの息子で、手術する気あるならお金出してあげようか?なんて言うから、渡りに船で」
「ああ」
「彼と別れる時、手術代、借用証書を書こうかっていったんだけど、あげたお金だからいいって」
「いい彼氏じゃん」
「ですね。今でも好きかも」
「でもそんな素敵な彼氏となぜ別れたの?」
「うん。。。やはり彼、女の子になってしまった私にときめかないと言って」
「ああ、そういうことか」
「彼、男の子の身体の私が好きだったみたい」
「まあ、それは仕方ないね」
「ええ。そういう趣向の人だったらしょうがないなと割り切りました」
「難しいよね、恋愛って」
「ほんと。。。。ね、先生、先生ともっとお話したいな。おうちとかに遊びに行ってもいい?」
「うん、いいよ。いつでもおいで」
「じゃ、明日行ってもいいかな」
「明日・・・・」
「都合悪かった?彼氏とデートとか?」
「デートじゃないけど、ちょっと他にも2人生徒が来るものだから。でもあなたと話が合うかも」
「あ、私と同じ傾向の子?」
「そうそう」
「じゃ、明日行きます。住所教えて」
「うん。あ、君の名前は?」
「3年9組の山原真沙弥です」
「君もマサミさんか!」
「というと?」
「明日来る、他の2人もマサミさんなんだ」
「へー、面白い」
彼女は楽しそうな顔で手を振って保健室を出て行った。