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■あなたが言ったから合コンの日(2)

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ショーツを穿き、ブラジャーを付ける。ホックがなかなか填らない・・・かなり苦労してやっと填めることができた。青い刺繍入りのTシャツと短めのスカートを選んで着てそれだけでは少し寒い気がしたのでカーディガンを羽織った。ヒゲの剃り跡を隠すのにお化粧しなければならないが、やり方が分からない。眉毛は細くしないとやばいと思ったので、はさみで何とか細くした。いったん顔を洗い、化粧水と乳液を付けてからファンデーション(こないだ使ったのは姉が持ち出していたが古いのが鏡台の引き出しにあった)を塗った。アイシャドウとかチークは、やると悲惨になりそうな気がしたので塗らないことにした。眉毛がきれいには切りそろえられていないので、アイブロウでごまかす。口紅を塗る。鏡を見た。
 
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なんか足りない。。。。分かった!マスカラだ。鏡台の引き出しからマスカラを取り出した。できるかな。鏡を見ながらおそるおそる塗ってみた。目にぶつかりそう・・・・でも何とかできた。ビューラーは使おうとしたがうまく睫毛を掴めないので、指で睫毛を上のほうへ向けて押さえて、なんとかカールさせた。あらためて鏡で見てみると、一応女の子に見えるよなと思った。というか我ながら可愛い気がする。出かけよう。
 
帰りはまたどこかで男の子の格好に戻る必要がありそうなので、ポロシャツと綿パンを畳んで手提げ袋に入れて持ち、財布を持って家を出た。お金がいるかも知れないと思い、貯金箱から五百円玉を数枚取り出して財布に入れておいた。しかし・・・女装外出は恥ずかしいなあ。それに足がスースーするし。
 
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約束のファミレスに着くと、見斗さんは知らない女性と何か話していた。「こんにちは、見斗、何かあったの?」と僕は女言葉で声を掛ける。
「あんたが見斗の新しい恋人なの?」僕はいきなり敵意むき出しの言葉を受けた。あはは・・・。僕は特に発言せずにその場に座っていたが、なんか日記などには書けないような言葉がたくさん飛んでいた。ううう、大人の世界って凄いなあ。僕は取りあえずコーヒーをオーダーして時々最低限の発言だけしていたが、話は全然まとまりそうになかった。
 
ちょっとトイレに立つ。先日のファミレスやカラオケでも僕は多目的トイレを使ったのだが、今日のファミレスには男女別のトイレしかなかった。ありゃ、困ったな。トイレの前で迷っていると、ファミレスのスタッフの人が通りかかる。僕を見かけて、女子トイレのドアを開け中を確認すると「空いてますよ」と声を掛けた。「あ、ありがとうこざいます」そう言われると、入らないといけない気がしたので、僕は女子トイレに入った。中は(当然だけど)小便器は無くて、個室が2つ並んでいる。女子トイレに入ったのは初めてだったので、不思議な感じがした。僕はその中のひとつに入り、座って用を達して息をつく。しかし、あの話まとまるのかな?見斗さんたちの話の行く末が気になっていたおかげで、女子トイレを使っていること自体はあまり考えずに済んだ。
 
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個室から出た時、他の女性が中に入ってきてドキっとしたが、僕は軽く会釈して手を洗う。その女性は僕が使ったのとは反対側の個室に消えた。その時やっと僕はここにいるのが恥ずかしい気になり、手を拭くと早く出ようと思った。ドアを開けようとした時、向こうから先に開き、見斗の元カノが入ってきた。「あっ」「あっ」
僕は出ようとしたが、彼女につかまった。
「あたしが出るまで待ってて」
と言われたので手洗い場で待つ。先に入ったほうの女性が個室から出て手を洗い外に出て行き、また別の女性が入ってきた。個室が空いているのに僕がいるのを見て問いかけるような視線を投げかけてきたので「どうぞ」と言った。その女性が個室に消えるのと同時に、元カノが出てきた。
 
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「待っててくれてありがとう。ね、あんたもしかして中学生?」
「はい。中一です」
「あいつロリコンだったとはね。もう寝たの?」
僕は一瞬意味が分からなかったがすぐにセックスしたのかという意味と理解して、赤くなってしまった。しかしその反応を向こうはyesと解釈したようだった。
「中学生やっちゃうなんて犯罪だな。あいつ、女たらしだからさ、気をつけなよ。私は今日は引き上げるけど諦めないからね」
僕と元カノが一緒にテーブルに戻ったので見斗はびっくりしていた。
元カノは「今日は引き上げるけど、また連絡するから」と言い、自分が注文した分のお金をテーブルに置くと出て行った。
 
「ごめんね、でも助かったよ」と見斗は言った。
「じゃ、私も失礼します」と言い、僕はコーヒー代をテーブルに置いて出ようとしたが「あっちょっと待って。少し話そうよ」と言われ、押しとどめられた。最初、姉のことについて色々尋ねられたので、答えても良さそうな範囲で答えておいた。しかしそのうち話が僕自身のことまで及んでくる。見斗の話はなかなか停まらない。
 
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時計が4時を指したのでいいかげん帰らなきゃと思い、僕は見斗の話を遮り、そろそろ帰らないとまずいので帰りますと言ったが、見斗は「まあ待ってよ」
と言って、話がまだ続く。
「でもここ既に2時間以上居ますし」と言うと
「じゃ、居酒屋に行かない?あ、中学生はまずいか。じゃカラオケ行こうよ」
「あの。。。。見斗さん、姉と付き合ってるんじゃないんですか?」
「いや、萌は萌としてさ、君もとっても可愛いし」
ちょっと待て、なんつう男だ?こいつ。
「私帰ります」と言って僕は少し怒って席を立った。ファミレスを出た所を見斗が追いかけてきた。僕がうっかり裏側に出てしまったので、大きな道に出る途中で捕まってしまった。
 
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「ね、ね、もう少し話そうよ。いいじゃん」
「いえ、もう帰らないと母に叱られますから」と言って先を急ぐ。
すると見斗は僕の手をつかんで
「そうつれない態度取らないでよ。ほんと君可愛いから好きになっちゃいそうで」
姉と付き合いながら、その妹も口説こうとする神経が僕は理解不能だった。
「離して。帰るから」
「ね、あと2時間、いや1時間でもいいから、付き合おうよ」
僕は手をふりほどこうとしたが、逆に体を密着してこられた。う・・・これはもしかして強引にキスしようとしてる?僕は抵抗しようとしたが腕力で叶わない。嫌だ。男の人とファーストキスなんて・・・・
 
そう思った時、ぐいっと見斗の肩をつかみ、僕から引き離した人がいた。
「やめとけよ」
鈴太郎さんだった。そばに蘭も立っていた。
「分かった」
見斗は「ね、この件、お姉ちゃんには黙っててね」と言って去っていった。もちろん言わないわけがない。帰ったらすぐ姉に言おうと僕は思った。
 
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「大丈夫だった?」
と蘭が近寄って声を掛ける。
「はい、ありがとうございました」
と言って歩きだそうとしたが、僕は歩けなくてそのまましゃがみ込んでしまった。あれ?なんで体が動かないんだろう?
「腰が抜けちゃったんだね?無理もない、あんなことされそうになったの初めてでしょ?」僕は頷く。
「ちょっと待ってて」と鈴太郎さんが言うとその場を離れ、缶入りのコーラを買ってきてくれた。「これ飲むといいよ。こういう時、炭酸が体にいいんだ」
という。「ありがとうございます」と言って、僕はコーラを飲んだ。
飲み終わってから立ち上がろうとすると・・・立てた!
 
「バス停まで送るね」と蘭が言う「はい」
僕は歩きだそうとしたが、まだ少しふらふらする。
「少し休んでから帰ったほうがいいかな?」「そうね」
僕は蘭に支えられるようにして、大通りに出てところにあるカフェに入った。「助かりました」僕はふたりにお礼を言った。
甘いのを飲んだ方がいいと言われて、僕は甘いミルクティーを頼んだ。蘭はキャラメルマキアート、鈴太郎さんはブラックコーヒーを頼んでいた。お金は鈴太郎さんが3人分出してくれた。
 
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家に連絡したほうがいいと言われ、僕が携帯を持ってないというと蘭が貸してくれた。家に掛けると姉が出る。簡単に事情を説明したら迎えに行くと言われた。x
「萌が迎えに来るなら安心ね」
「じゃ、任せてていい?僕はもう行くから」と鈴太郎さんが席を立とうとする。
「あれ、すみません、デート中だったんじゃないんですか?」
と僕はびっくりして言った。
「ううん。違うの。3回デートしてみたけど、性格が合わないことが分かって、別れましょうということで話がまとまったところ」と蘭。
「えー?」
 
「話がまとまって、とりあえずバス停までは一緒に歩こうか、なんてやってたところで路地で揉めてるの見かけて」
「本当にありがとうございました。でもお似合いみたいなのに」
「うーん。中学生にこういう話するのはあれだけどさ、セックスの趣向が全然合わなくて。何とか落とし所を見つけようとしたんだけど、無理かもということでお互いもっと合いそうな人を見つけようということになったのよ」
「はあ・・・・」
「じゃ、あとよろしく」と言って、鈴太郎さんは出て行った。
 
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ふたりになると蘭は「見斗みたいな男って結構いるから、気をつけないとダメよ」
と僕に忠告した。「基本的には男はチャンスさえあれば女をやっちゃおうと思ってるんだから」「そういうもんなんですか?」「そうそう。特に今日のあゆみちゃん、スカート短いでしょう」「あ・・」「短いスカートはよけい男を刺激するから。心を許してる男と会う時でない限り、もっと長いの穿くか、敢えてパンツのほうがいいよ」「はい、そうします」
 
「でも、萌にこんな可愛い妹さんがいたなんて、全然知らなかったなあ」と蘭は言う。そりゃそうだ。妹なんていないんだから。
「中学1年だっけ?」「はい」
「小学生はさすがに大人の男の人はよほどのロリコンでない限り、恋愛対象外だろうけど、中学生になれば、一応範囲に入れられるから、自分の身は自分で守ること考えていこうね」
「はい、ありがとうございます」
「あと避妊具は持ってる?」「え?持ってません」
 
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「じゃ、これ少しあげる」と言って蘭はバッグの中から近藤さんを出して3枚分けてくれた。「あのさ、もしどうしても男の子の誘い断り切れなくてHすることになったら、これ使うといいよ」「はい」「生は絶対ダメだから」
噂には聞いていたけど。。。。実物を見るのは初めてだ。
「萌も持っているだろうけど、妹にはかえって渡しづらいだろうからな。男って生でやりたがるけど、これ出されたら渋々でも付けてくれるからさ」
「ありがとうございます」と言って、それをバッグのポケットにしまった。
 
蘭はそのあと男の見定め方や、恋愛のツボなどをいろいろ語った。
僕は恋愛そのものの経験が無いので、興味深く聞いた。女性の立場からの恋愛観というのは、凄く新鮮だった。恋愛話のあとはファッションの話になったが、僕は女の子の服の話がさっぱり分からない。素直に分からない言葉を訊くと面倒くさがらずに丁寧に教えてくれた。
「中高生の間って制服着てることが多いから、おしゃれの機会なさそうだけど休日のお出かけはいろいろ楽しめるから。ラブベリーとかは読んでると思うけどもっと上の年代向けのスイートとか、ノンノとかも読んで研究するといいよ」
「はい」
「お化粧とかも少しずつ練習するといいね。今日のあゆみちゃんのお化粧はやや適当かな」
「こないだの合コンの時は姉にしてもらったんですが、自分では全然分からなくて」
「最初はしかたないけどね。でもお化粧って、やってると楽しくなってきてさ。女の子に生まれてよかったな、と思ったりするよ」
「へー」
僕は男の子だけど・・・・でもお化粧、確かにうまく出来るとちょっと楽しいかもという気はした。
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■あなたが言ったから合コンの日(2)

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