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(c)Eriko Kawaguchi 2012-06-05
理彩はその日非番だったのだが、勤務先の病院から急な呼び出しがあって村の自宅から奈良市まで急行していた。しかし途中で「患者は他の病院に転送した」
との連絡を受け、やれやれと思い、車を自宅へと戻す。理彩がちょっと疲れていたのでただいまも言わずに家の中に入っていった時、居間で何かを書いていた命(めい)がピクッとした様子で慌ててその書いていたものを隠した。
理彩は命(めい)の所に行き首に抱きついて
「ただいま〜、まい・はにー。今隠したものを見せなさーい」
と言った。
「おかえり。早かったね。まい・だーりん。別に何でも無いんだけど」
「何でも無いなら見せてくれてもいいよね」
「えーっと」
「浮気相手との交換日記とかじゃないよね?」
「最愛の理彩がいるのに、僕が浮気する訳無いじゃん」
「はい、見せる」
「分かったよ」
と言って命(めい)が見せてくれたのはかなり年季の入ったノートで「Shinkon」
と書かれていた。
「へー。かなりインクが古い。あー、なんか昔の日記だ。何か高校時代のこととかも書かれてる」
と言って理彩はその古いノートを読み始めた。
その日、星は朝から真那・海と一緒にお出かけしていたが、14時頃一緒に帰って来た。見ると星も海も女装だ。たぶん海は身体も女の子に変えられているのだろう。しかし、この家って男の子はみんな女の子になっちゃうんだろうか?と思うと理彩は少し憂いたい気分になったが、星がおみやげに持って返って来た赤福を見るとご機嫌になって、2階の自室で勉強していた月を呼び、お昼寝していた光も起こして、みんなで食べた。
「伊勢に行ってきたの?」
「そうそう。実は円さん(現役神様)から頼まれてね。二見浦の神様にお届け物してきた。行こうとしてたら真那が来たから一緒に行ってきた。ついでにおはらい町にも寄った」と星。
「神様同士の会話とかさっぱり分からないから、私は海ちゃんとカエルさん見て遊んでたんですけどね」と真那。
「でも女の子になって行く必要あったの?」
「ああ、ただの気分の問題。こないだ大阪で買ったこのスカート穿きたかったし」
「海は?」
「私が女の子になったら、海も女の子にしてと言ったから、性転換させて、ついでに連れてった」
「結局、趣味の問題か」
「星、あんた、最近女の子でいる時間の方が長くない?」
「まあ、私そもそも性別って無いから。男の子の姿は便宜上のものだし」
星は最近けっこう学校にも女子制服で出て行っている。先日も担任の先生から星の学籍簿上の性別は男のままでいいのでしょうか?女に変更しましょうか?などと連絡があったところである。本人に訊くと男のままでいいということだったので、そのままにしてある。最近はどこの学校も性別の取り扱いには柔軟になってるなと理彩は思った。中高生で性転換手術を受ける子も増えてきた。理彩も昨年は自分の病院で1件、高校生の性転換手術を執刀した。
真那はその日両親が出張しているということだったので、うちに泊めることにした。星と真那は部屋(居間の隣の、神社の分霊が祭られている部屋が星の自室である)で、ずっと勉強しながらおしゃべりしていたようであったが、夕方になると台所に来てふたりで協力して今日の晩御飯を作ってくれたので、理彩はずっと命(めい)の日記を読み続けていた。
しかしミニスカを穿いた星と真那が楽しそうにお料理しているのをみると、まるで仲の良い女の子の友人ふたりでいっしょに作業しているみたいだ。昔の自分と命(めい)も、母親からはこんな感じに見えていたのかなあ、などと思うと微笑ましい気分になってきた。
命(めい)は居間の隅に置いているワーキングデスクで何かの企画書を書いているようであったが、時々コーヒーを入れて、理彩や星たちのところにも置いて回っていた。理彩がしばしば日記を読みながら笑っているので、命(めい)はかなり気になる様子である。
海は夕飯を食べたらすぐ寝て、光も8時には寝た。月は勉強しながらゲームもしていたのを見つかり命(めい)にゲーム機を取り上げられたので、ふてくされて9時に寝た。星と真那は10時頃(布団を2つ敷いて)寝た。星は男性機能を持っていないので、このふたりが寝る時、避妊具を枕元に置いてあげる必要は無い。
海は寝るのと同時に男の子に戻されたようであったが、星は女の子の身体のまま今日は寝たようであった。男の子の身体で一緒に寝ると真那がイタズラするからなどと言っていたので理彩はまた自分たちの高校時代のことを思い出し微笑んだ。自分たちが寝る時は母がそっと枕元にコンちゃんを投下して行っていた。
命(めい)は仕事が一段落したようで、羊羹を切ってお茶を入れて居間の座卓に座った。
「なんか楽しそうね。たくさん笑ってる」と命(めい)。
「だって、もうたくさん嘘書いてあるからさあ」と理彩は笑いながら言う。
「本当のことと嘘がうまく混ぜられているから不自然さが少ないよね。これ、どこかに公表するの?」
「まさか。だって僕と理彩のプライベートなこと、たくさん書いてるし。星に自分が生まれた頃のこと書いてと言われたから書き始めたんだよね。最初書いたのは、星が小学生頃だよ。その後、少しずつ後のことを書き足して来た」
「じゃ、読むのは星だけか」と理彩。
「うん。月はこういうの読まないと思う」
「でも、これ正誤表が必要だよ」
「そうかな」
「だって・・・これ読んだら、命(めい)は星を妊娠する以前、ほとんど女装をしたことが無かったみたいに読めちゃう」
「えー、そんなにしてないと思うけど」
「嘘付くと、閻魔様におちんちん切られちゃうよ」
「僕、もうとっくにおちんちん取られちゃってるんだけど」と命(めい)。
「やはり、嘘ばかりついてたからだね」
「理彩だって嘘つきな癖に」
「ま、女の子って嘘つきかもね。よし。これ、コピー取って、加筆訂正しちゃおう」
「おいおい」
阪大の二次試験(前期日程)。僕と理彩は受検の前日、ふたりでバスと電車を乗り継ぎ、大阪に出た。普通なら、男の僕はひとりでいいとして、理彩にはお母さんが付いてくるところだが、僕と理彩は過去にもふたりだけで何度か大阪に出てきているので、すっかり放任状態になっている。部屋も普通ならシングル2部屋のところを、ひとつのツインに同泊である。僕たちはチェックインすると荷物を置いてまずは文具などを買いそろえてから一緒にファミレスで夕食を取り、それからホテルに戻って、ふたりでテーブルに並んで座り一緒に勉強した。
「なんかふたりで泊まるのも普通になっちゃったね」
「ふだんもよくお互いの家で一緒に寝てるしね。お母ちゃん、本試験だし付いて行こうか?って言ったけど、命(めい)とふたりの方が集中出来ると言って断った」
「信頼してるんだね」
「そうでもないな。これ渡されたし」
と言って、理彩はスポーツバッグから、何か薄い箱を取り出した。
「何?それ」
「私も箱は初めて見たよ」
僕はその箱を受け取ると、ひっくり返して裏を見た。何だ?これ・・・・と思って、しばらく見ていた時、突然、その正体に気付いて僕は真っ赤になった。
「あ、赤くなってる。純情なんだ」と理彩。
「僕もこれ、箱に入ってるのは初めて見た!」
僕たちはそれを「単品」でなら今までも何度か親に渡されたことあったし、僕たちがどちらかの家で一緒にお泊まりする時は、いつの間にか枕元に2個ほど置かれていたので、実物はおなじみなのだが、箱で見たのは初めてだった。
「1箱10枚入りなんだね。10枚までは使えるってことかな?」
「使うってその・・・・」
「今夜、このコンちゃん付けて、私とHする?」
「いや、そんなこと、受検前にやってたら落ちるよ」
「私も同感。でも『受検前』にってことは、受検終わった後は?」
僕はドキっとした。交通の便が悪いので、僕らは前泊・後泊である。受検が終わった後、1泊してから帰るのである。終わった後・・・・理彩とセックスする??
「でも、僕と理彩、まだ恋人になってない」
「そうだねー。私たち『友だち』って建前だったもんね。セックスするなら、お互いの関係見直した方がいいよね」
「その話は・・・・受検終わった後にしない?」
「うん、そうしよう」
そんなことを言って、僕たちはまた勉強に戻った。
二次試験が終わったホテルでの夜。夕食を終えてホテルに戻った僕と理彩は部屋に入るなり、今まで我慢していたものが一気に吹き出すような思いで、熱いキスをした。もうそのままベッドに入ろうかという雰囲気もあったが、一応お風呂に入ることにした。
昨晩、その前の晩は試験前であまり時間も取りたくなかったからシャワーだけだったが、今日はふたりの実質的な「初夜」だからちゃんと湯船に入ろうということでお湯を入れた。理彩が先に入り、その後僕が入った。理彩はお湯を流していなかったので、僕は理彩が浸かったお湯に自分が浸かるというだけで興奮して、あそこが少し大きくなってしまった。
お風呂からあがると、理彩は今日買ってきた服を取り出して見ていた。
「可愛い服だね」
「でしょ。それに値段も可愛いのよ。このTシャツが300円、スカートも1000円」
「それはまた凄いね。さすが大阪!」
「ね?命(めい)も着てみる?」
「なんで、僕が着るのさ?」
「だって、いつも女の子の服着てるじゃん。最近ちょっと勉強で忙しかったから命(めい)を着せ替え人形にして遊ぶのやってなかったけどね」
「高校卒業とともに女装も卒業しようかと思ってたんだけどな」
「無理無理。命(めい)はたぶん大学に入ったら、1年以内におっぱい大きくして2年以内に去勢して3年以内に性転換して4年以内に妊娠すると思うな」
「妊娠は無理だと思うけど、まあ女の子の服を着るのは嫌いではないなけど」
「素直に女の子の服着たいと言いなさい。さあさ、これ着てみて」
「うん。着てみようかな」
僕はまあ試験も終わったことだし、こういうお遊び自体は好きだしと思い、理彩からTシャツとスカートを受け取ると、着ていた服を脱いで、それを身につけてみた。
スカートを穿くのって好きだ。ちょっと頼りない感覚もあるが、その開放感がたまらない。思えばこの快感が僕を女装の世界に誘ったのかも知れない。着てみると、スカートもTシャツもサイズぴったりだった。そもそも僕と理彩ってサイズ同じだしな。。。
「あ、足の毛剃ってある」
「それはいつも剃ってるよ。ヒゲもちゃんと抜いてるよ」
「ふーん。。。。大学入ったらまず永久脱毛だね。まあ、鏡見てごらんよ」
僕は浴室のそばにある姿見に自分の姿を映してみた。
「うーん。こういうの嫌いじゃないなあ」
「さすが、スカートが似合うね。もうずっとこういう格好でいなよ。大学生になれば好きな服着られるんだし。そもそも普段からスカート穿いてるんでしょ?」
「ううん。そんなに穿いてないよ」
「そんなに穿いてないって事は時々穿いてるのか。私がたまに穿かせてあげてるの以外にも」
「あ、いや、それは・・・・」
「別に隠し事しなくてもいいじゃん、私と命(めい)の間柄で」
「僕と理彩の間柄って?」
「こういうことする間柄」
と言って理彩はいきなり僕に抱きつくとディープキスした。
『あ・・・・』だめだ。理彩にこんなキスされると理性が吹き飛ぶ。
僕たちはもうただの男と女に戻って、ベッドの中に抱き合ったまま潜り込んだ。
「待って。僕たちの関係の見直し」
「こんなことするの、ただの友だちであり得る?」
「じゃ、僕たちもう恋人だよね?」
「ふふふ。その話は朝になってからちゃんとしよう。今は本能に任せようよ」
「分かった。好きだよ、理彩」
「私も好き、命(めい)」
その夜は物凄く燃えて、休憩を挟みながら、途中お腹が空いてコンビニでカツ重とかチキンとかまで買ってきて食べたりしながら、6回もセックスしてしまった。さすがに僕は精根尽き果てて最後は理彩がどんなに刺激しても立たなくなってしまった。
「もう立たないの? コンちゃん、まだ4枚あるよ」
と言って理彩は僕のおちんちんを振ったり揉んだりしている。
「ごめん。限界」
「立たないおちんちんは切っちゃうぞ」
「もう切られてもいいくらい、今幸せな気分。でも疲れた」
「寝てていいよ。その間におちんちん切っといてあげるから」
僕は何か言おうとしたが、睡魔に捉まってしまった。
目が覚めたらもう窓の外はすっかり明るくなっていた。「理彩?」と小さく声を掛けると「おはよう」と言って理彩が目を開けた。
「あ、ごめん寝てた?」
「ううん。私も寝てたけど、少し前に目がさめた。でも、気持ち良かったね」
「うん。凄く気持ち良かった。女の子の方も気持ちいいものなの?」
「そうでなきゃ、セックスしようと思わないよ」
「だよねー」
「下手な男にやられると、全然気持ちよくないらしいけど。私が気持ち良かったから、きっと命(めい)はうまいんだよ。夏にした時も気持ちよかったけど、今夜のは、あの時の倍くらい気持ち良かった。あれから、誰か他の子としたりした?」
「理彩以外の子とする訳無いよ。でもきっと、僕たちセックスの相性がいいんだよ」
「ああ、そうかもね。あ、そうそう。顔の感覚、変じゃない?」
「え?」
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Shinkon・理彩的見解(1)