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■神様のお陰・高2編(4)

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食事の後、21時まで講義があり、その後各自の部屋に戻る。明日までにやっておくべき宿題もどっさり渡された。
 
「なかなかハードだねえ」
「これ先生たちもハードだよね。朝から晩まで講義して、その準備だけでも大変なのに、宿題出してそれをチェックしたり」
「先生も鍛えられるね」
 
「さて、私はお風呂入って来ようっと。命(めい)も一緒に行く?」
「えっと、僕はちょっと風呂はパス」
「汗流した方がいいよ。ハードスケジュールだもん。疲れが溜まるよ」
「いや、どちらに入るという問題があって」
「ああ」
 
温泉ホテルなので各部屋にはトイレのみがあり、お風呂は大浴場に行って入る方式になっている。
 
「ちなみに私は女湯に入るよ」と理彩。
「理彩が男湯に入ったら大騒ぎになるね」と命(めい)。
「命(めい)も女湯に入る?」
「それには少々身体上の問題が・・・」
「じゃ、男湯に入る?」
「それは知り合いにあった場合にまずいという問題が・・・」
「個室にお風呂が付いてたら、良かったのにね」
「仕方ないよ。僕は勉強してるから、理彩ひとりで行って来て」
「OK」
 
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命(めい)がひとりで今日渡された宿題をしていたら、やがて理彩が戻って来た。
「さっぱりしたよ。命(めい)も行っておいでよ」
「いや。さすがに。みんないた?」
「うん。同じクラスの子が何人もいたから、ついついおしゃべりばかりしてた」
「何の話するの?」
「今夜はひたすら恋バナかな。私、命(めい)とはひょっとして恋人?とか聞かれたよ」
「えー? 僕のこと男の子ってバレてんの?」
「ううん。女の子同士で恋人ってのも、あるからね」
「確かにあるけどね」
「女子高にいる子とかは、それが普通みたいだし」
「ああ、なるほど」
 
「お風呂は24時間掛け流しでいつでも入れるから、夜中だったら人も少ないかもね」
「そっか。じゃ、夜中に入ってこようかな」
 
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ふたりでお茶を飲みながら、理彩が大量に持ってきていたおやつを食べながら勉強をして、夜1時になったので寝ようかなということになる。
 
「じゃ、僕お風呂行ってくるよ。この時間はさすがに誰もいないだろうし」
「そうだね。頑張ってね。どちらに入るの?」
「男湯だよ」
「女湯にも多分誰もいないよ」
「いや、身体を見られた時の問題が」
「そうだね。男湯で見られた場合は、名簿を男子の方に移動されるだけで済むけど、女湯で見られた場合は警察行きだね」
「あはは」
 
お風呂セットを持ち、大浴場に行き、男湯の暖簾をくぐった。ところがそこに人影が居た。
「え? 斎藤。こっち男湯だよ」
と声を掛けられる。
 
「あ、ごめん。間違った」と言って命(めい)は外に飛び出し、その勢いでつい女湯の方に入ってしまった。えーん。どうしよう。ここまで来ておいて、そのまま帰るのも変だし。幸いにも女湯の脱衣場には誰もいない。浴室の方を少しのぞいてみたが、誰もいない。女の子がこんな夜中にお風呂入りには来ないよね、きっと。そう思い直すと服を脱ぎ、浴室に入った。身体を洗い、浴槽に身体を沈める。ほっと息をつく。毎日このくらいの時間帯に入浴しようかな・・・・
 
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のんびりと入っていたら、突然ガラッと浴室のドアが開いた。え? 脱衣場の物音には気を付けていたつもりだったのだが、ちょっと気が抜けていたか?
 
入ってきたのは同じクラスで受講している千草だ。身体を洗って、浴槽に入ってからこちらに気付いたようだ。
 
「あ、こんばんは」と千草が挨拶するので命(めい)も「こんばんは」と挨拶する。
 
「あ、その声は命(めい)? 私、眼鏡外すと何も見えなくて」
と言って浴槽の中でこちらに寄ってくる。
 
もうここは開き直るしかないという感じで命(めい)はふつうに彼女と会話する。
 
「だけど、命(めい)っておっぱい小さいね」
「うん。もう洗濯板とか絶壁とか理彩に言われてるよ」
「なんか理彩と仲良いよね。あのふたり恋人っぽいね、とかみんなで言ってたんだけど」
「一応友だちのつもり。公式見解としては」
「おお、公式見解、公式見解。で、どこまでしてるの?」
「キスはしたことあるけど、まだそこまでかなあ」
「おお。充分恋人してるね」
と千草は喜んでいる。
 
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その後はふつうに勉強のこととか、おしゃれのこと、ジャニーズの話題に同じクラスで受講している男の子の話題などを話した。この程度の話題ならいつも理彩や春代などと話している時のノリと大差ないので平気である。
 
けっこう盛り上がった所で、一緒にあがろうということになる。
 
浴槽から上がる時に千草の視線が一瞬こちらの股間に来たのを感じた。でも、そちらは見られても平気だ。実は理彩がお風呂に行っていた間にタックしておいたのである。そうしょっちゅうするものではないのだが、今夜は半日女の子していたので、何となくしてみたい気分になってやっていたのだが、女湯に入るのにも役立つとは思わなかった。
 

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お風呂場から千草と一緒に戻り、七階のエレベータの前で別れて、命(めい)は自分の部屋に戻った。(女子の受講生は全員7階に入れられているようだ)
 
そっと中に入るともう理彩は寝ていたので、微笑んでそのまま寝ようとしたら「おやすみのキス」と言われた。「唇にしちゃっていい?」と訊くと「じゃ頬」
というので理彩の左頬にキスすると、向こうからもこちらの頬にキスされた。「おやすみ」「おやすみ」と言って寝る。
 
翌朝起きてから、深夜の浴場で千草と遭遇したことを話すと
「よくバレなかったね」と言われる。
「ほんとに」
「でも女湯に入るなんて大胆」
「男湯に入ろうとしたら、高橋君がいてさ。『斎藤さん、こっち男湯』なんて言われちゃったから『ごめん。間違い』といって飛び出して、その勢いで女湯へ」
「なるほど」
 
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「今夜からはもっと遅い時間を狙うよ」
「たまたま目の悪い子だったから助かった感じだね」
「そんな感じ」
「でも命(めい)は千草のヌードをしっかり見たんだよね。欲情しないの?」
「理彩以外には欲情しないよ」
「よしよし」
 

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そういう訳で、命(めい)はこの合宿の4泊5日を完璧に女の子で通してしまったのであった。お風呂は2日目・3日目は用心して、もっと更に遅い時間に入ったので、誰とも遭遇しなかったが、4日目にはさすがの命(めい)も肝を潰す事態が起きた。
 
明日で最終日か。この4日間、ほんとに鍛えられたし、刺激にもなったなと思いながらのんびりと湯の中で身体を伸ばしていた時のことだった。脱衣場でガヤガヤという声がした。若い女の子数人の声。受講生のようだ!たぶん3〜4人いる。やばっ。こないだは目の悪い千草1人だったから、何とか誤魔化せたけど、この人数では誤魔化せないぞと思う。彼女らが浴室に入るのと同時に入れ替わりで出れば何とか誤魔化せるかも、と思った時「10分だけだよ」という声が頭の中に響いた。え? と思った時、自分の体の感覚が変わったのを感じた。
 
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何?これ?
 
胸がある? 触ってみると柔らかい、できたてのハンバーガーのような感触だ。見た感じCカップくらいありそう。そして、お股の所はタックではなく本物の割れ目が・・・・
 
あれ?僕って女の子だったっけ? などと命(めい)自身も頭の中が混乱しているうちに、脱衣場の女の子たちは中に入ってきた。
 
「あれ〜、誰かいる〜」
「こんばんは〜」と命(めい)は開き直って挨拶する。
「あ、命(めい)じゃん。そういえば命(めい)とは一度もお風呂で遭遇しなかったけど、こんな時間に入ってたんだ!」
 
「講義がけっこうハードだから、講義終わったらいったん仮眠して12時すぎから勉強始めて、このくらいの時間にお風呂入ってまた寝るようにしてた」
「なるほどー。それもいいよね。12時間コースで勉強してると最後の方はもう頭が真っ白になるもんね」
 
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「ところで理彩と命(めい)って、洋服を共用してるよね」
「2日目に理彩が穿いてたスカートを昨日命(めい)が穿いてた」
「よく観察してるね。私たち、洋服のサイズが同じなんだよねー」
「それ便利だね。でも共用に抵抗が無いってのは、やっぱりふたりって友だち以上の関係?」
 
彼女たちとも話が弾んだ。しかし命(めい)はこの異変?が起きる直前に「10分」
と言われたことを忘れなかった。浴室内にある時計で8分たったところで、
「ごめーん。私、もう寝るね〜」
「うん。おやすみー」
といった会話を交わし、浴室から出た。
 
身体を拭き、パンティを穿いたところで身体が元に戻った。あっ、ちょっと惜しかったかな。もう少し女の子の身体が楽しめても良かったかな、という気もした。平らな状態に戻ってしまった胸にブラを付ける。さっきの胸じゃ、このブラには収まらなかったかもね、などと思ったりしたら、誰かがクスクスと笑ったような気もした。命(めい)は『どこのどなたか分かりませんが、助けてくれて、ありがとう』と心の中で言った。誰かが微笑んでいる気がした。
 
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こうして4泊5日の合宿は無事?終わった。帰り、理彩と命(めい)は大阪で更に1泊した。今回の合宿でみんなに教えてもらった参考書や問題集を探したり、また実際に阪大を見学したいなどと家に連絡したら、もう一泊してくればいいと言われ、理彩のお母さんが急遽ネットを使ってホテルを予約し、決済もしてくれたのであった。
 
大阪に出てまずはホテルにチェックインしてから、まずふたりで阪大の豊中市のキャンパスを訪れた。何かを見るというわけでもないが「へー」と思いながら、うろうろする。吹田キャンパスの方へはモノレールでも使って移動すればいいのかなと思って、その付近を歩いていた学生さんっぽい人に尋ねたら普段は学内連絡バスがあるのだけどゴールデンウィークで運休していると言われる。
 
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「でも、私今日は車で来てるから、送ってあげるよ」
などと言われたので、親切に甘えることにした。
 
「へー。今度、ここ受けるの?現役生?頑張ってね」と励まされる。
 
ふたりはよくよく御礼を言って吹田キャンパスで降りた。
 
「なんか雰囲気が好きだなあ。私やっぱりここ受けるよ」
「うん。僕も。1月の模試じゃ合格ラインの少し下だったけど頑張って勉強する」
 
ふたりはキャンパスの中にあった池のそばでしばし立ち止まって話した。
 
「塾とか通えないし、ふたりで毎日勉強しようか」
「そうだね。交互にお互いの家で勉強するとかは」
「いいね、それ。夏休みにもまた強化合宿あるみたいだし、参加したいね」
 
「うん。**市内の日中の講座なら、毎日車で送り迎えしてもらえたら参加できるけど、絶対大阪や京都の講座がいいよ。レベルが全然違うもん、たぶん」
「同感。やはり出来る子がたくさん参加している講座に行かないと、こちらの勉強にならない」
「でも、今回女の子で通しちゃったから、命(めい)は夏休みもまた女の子だね」
「あはは・・・・」
「今度はお風呂の付いているホテルだといいね」
「そう願いたいな」
 
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「でも命(めい)って、やっぱり女の子の服着るの、嫌いじゃないよね」
「うん。それは全然平気ってか、わりと好き」
「女の子になりたいんだっけ?」
「その気は無いけどなあ。そもそも僕、理彩と結婚したいし」
 
さりげなく命(めい)はそういうことばを混ぜた。が理彩は何もいわずに池の水面を眺めている。しぱし沈黙が続いたが、それは重苦しいものではなかった。
 
「そろそろ帰ろうか」と理彩。
「うん。千里中央で乗り換えればいいね」
 
今日のホテルは新大阪駅の近くである。
 
並んで歩いていたら、理彩が手を伸ばしてきた。命(めい)は微笑んでその手を握った。ふたりはしっかり手をつないで歩いて行った。
 
「私たちさ・・・・」と理彩が言う。
「うん」
「きっと、なるようになるよね。何かそんな気がする」
 
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「どういう意味?」
「うーん。私にもよく分からない。とりあえず今夜どうする?」
「どうするって?」
「まさかお母ちゃんがダブルを予約していたとはね」
「あれ絶対わざとだよね」
「うん。母ちゃんに電話したらごめん、間違いとは言ってたけどね」
 
ふたりがホテルにチェックインした時、予約がダブルなのに女性ふたりだったせいか、フロントの人が
「ダブルのご予約になっていますが、よかったでしょうか?」
と尋ねられた。理彩は咳き込んだが
「あのぉ、もし空いてたらツインに変更できますか?」
と尋ねる。
「はい。空きは御座います。料金は同じですから、そちらに振り替えますね」
 
などというやりとりがあったのであった。
 
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「せっかく同じ部屋に泊まるし、1度Hとかしてみる?」と理彩が訊く。命(めい)はドキっとした。ここで自分がうんと言えば、理彩はさせてくれるのかも知れない。でも・・・・
「この4日間も一緒の部屋だったけど、何もしなかったよ」
と答えた。
「命(めい)って好きだなあ。こういう抑制的なところが」
と理彩が笑いながら言う。
 
理彩は、命(めい)がしたいといったらセックスするつもりでいた。2月に実際にはしたのに、命(めい)がそれを覚えていないから、ふたりとも記憶に残る形で一度しておきたい気分だった。避妊具は命(めい)が買ってくれるだろうし。でも、まだもう少し先かな・・・・夏休みにも誘惑しちゃおう。
 
命(めい)の方は、理彩の反応を見て自分がそう答えるだろうと確信して、こんなこと訊いたのかな?と思った。理彩はけっこう大胆なことを言うけど、本気なのかどうなのか、いまいちよく分からない。でも今はまだこれ以上ふたりの仲を進行させなくてもいい、などと思いながら、しっかりと理彩の手を握った。
 
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そしてふたりは手を握り微笑みながら駅の方へ向かって歩いて行った。
 
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