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■神様のお陰・高2編(1)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-04-02
 
それは命(めい)たちが高校2年生の夏(2010.夏)である。朝から電話が掛かってきて、うちに来てというので、命(めい)は何だろう?と思いながら、理彩の家に出かけて行った。
 
すると、いきなり新しい2枚刃のカミソリを渡されて「お風呂場で足の毛剃って」
などと言う。「またかい!」と言いながらも、命(めい)は、まあそれも嫌いではないので、お風呂場を借りて、足の毛と脇の毛を剃ってきた。
 
「はーい。これに着換えてね」
と言って、女の子の下着とポロシャツ、スカートのセットを渡される。下着は度々この「お遊び」をするのに、理彩が用意しているものだが、ポロシャツとスカートは理彩のものである。ふたりは身体のサイズが同じなので、服を共用することができる。むろん、下着も共用は可能だが「技術的な問題」と言って理彩は命(めい)専用の下着を別途何セットか用意していた。
 
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着て来た服を脱ぎ、渡された服を着ると、女子高生・命(めい)のできあがりだ。
 
「うーん。いつ見ても命(めい)は可愛いなあ。私、男の子の時の命(めい)より女の子の時の命(めい)にときめいてしまうかも」
「理彩ってバイだもんね」
「命(めい)だってバイでしょ?」
「バイ同士で恋人になる?」
「そうだなあ・・・・その内気が向いたら」
 
理彩のお母さんがお茶を持って入ってきた。
「あら、可愛い!」
「あ、どうもいつもお世話になってます」
「命(めい)ちゃん、ほんとそういうのが似合うのね」とお母さん。
「いっそ、性転換して女の子にならない?なんて唆すんだけどね」と理彩。「性転換したら理彩と結婚できないから、それは無い」と命(めい)は笑って言う。「あら、ふたりともウェディングドレスで結婚式というのでもいいわよ」などとお母さん。このお母さんもどこまで冗談でどこまで本気かよく分からない。
 
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しかし結婚などという話題を出すと理彩はノーコメントを決め込むものの、まんざらでもない顔をしている。それで命(めい)は理彩も自分と結婚する気も少しはあるのだろうなといつも思っていた。ふたりは一応「友達でいようね」とはよく言い合っているので、現状恋人ではないのだが。
 
「おっと、まだ神棚に挨拶してなかった」
と命(めい)は言うと、理彩の家の神棚の前に座り、二拝二拍一拝する。
 
この村では家々にかなり大きな神棚が祀られている。水と塩と米をお供えしているが、水と米は毎日交換する。命(めい)も理彩も自分の家の神棚のお供え物を毎日交換しては挨拶していた。
 
そして命(めい)は理彩の家に来た時も、ちゃんと神棚に挨拶する。今日は来るなり体毛の処理を言われたので、挨拶する時間が無かった。理彩も命(めい)の家に来た時は神棚に挨拶する。ふつうは別によその家に行った時、そういうことはしないのだが、命(めい)と理彩は幼い頃からお互いの家で「他人ではない」
扱いだったので、相互にそれをしていた。これはふたりがお互いに特別な関係であることを意識しているからである。むろん、ふたりは正式に許嫁になったことは一度も無いのではあるが。
 
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その日は女装したまま、しばらくお部屋で一緒に勉強しながらおしゃべりしていたのだが、10時前にお母さんにお願いして集落から車で40分ほどの所にあるショッピングセンターまで送ってもらった。
 
ここで春代と待ち合わせていたのである。春代は命(めい)を見るなり
「女の子2人で来るというから誰かと思ったら命(めい)か。可愛いじゃん」
などと言って、喜んでいる。
 
「女の子3人なら下着買っちゃおうよ」などと春代が言ったので、ピーチジョンのショップに入り、3人で少し物色した。
 
「これ可愛いなあ」
「へー?そんなの着たいんだ」
「こんな雰囲気の結構好き」
 
などという感じでふつうに会話しているので、春代が感心している。
「命(めい)って、こういう所も平気なのね?」
「理彩によく教育されているから」
「自分の彼氏に女装趣味を覚えさせるって、理彩も変ってるな」
「いや、私たちは別に恋人じゃないし」
「はいはい、そういうことにしておいてあげるね」
 
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結局、春代は黒いブラとショーツの1000円セット、命(めい)はペールピンクのセット、理彩はライトグリーンのセットを買った。セールスで実際には各々800円であった。
 
そのあとドリンクショップでアイスティーを飲みながら、おしゃべりしていたら、同級生の男の子3人組が通りかかった。
 
「よお」とか言って寄ってきたので、6人でしばし雑談モードに入った。
 
「あれ?左端の子って誰だっけ?と思ったら、もしかして斎藤?」
「そうだよ。あ、今気付いたんだ?」
「すげー。ちゃんと女に見える」
「え?斎藤なの?あれ、そういえば斎藤の顔だ。全然気付かなかった」
「うっそー?なんでそんなに可愛くなるの?」
 
「命(めい)は女の子として美人だよ」と春代。
「女の子モードでこの界隈歩くのはけっこうしてるかな」
と命(めい)も平然として言う。
 
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「よし。男3人・女3人だし、マッチングしてペアでデートしない?」
と男の子のひとりが言い出す。
「あ、じゃ僕に当たった人は外れだね」と命(めい)。
「斎藤と当たった奴はセックスができないというわけだ」
などとひとりが言って速攻で理彩からパンチを食らう。
 
「じゃ、手を握る所まで。そこから先は、個別にお互い意気投合したら、あり得るかもというところで」
「じゃ、お昼をはさんで2時まで。お昼は各自自分で払う」
「OKOK」
 

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あみだくじでペアを決めた。命(めい)は西川君とペアになった。
「ごめんねー。僕で」
といって命(めい)はニコっと西川君に会釈する。西川君がドキッとした表情をした。
「あ、いや。まあお遊びだし、少し楽しもうよ。えっと・・・映画でも行く?」
「せっかくデートするのに映画なんて詰まらないよ。お話できないもん。お散歩しよ」
と命(めい)はニコニコした笑顔で言う。
 
「あ、それじゃコメリにでも行く?」
「ああ。ああいうの見るのも楽しいよね」
 
ということでふたりは並んで歩きながら別棟のコメリの方へ歩いて行った。
 
「そうそう。西川君、バスケットの大会は惜しかったね」
彼はバスケット部で、この高校のバスケット部は今年地区大会で4位になり、あと少しで県大会への進出を逃したのである。
 
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「ああ。あれね。準決勝はいつも優勝してる**だから仕方ないとは思ったんだけど、三位決定戦がね。あと少しだったんだけど」
「3点差だったもんね。あと1本スリーポイントが決まってたら追いついてた」
「ブザービーター狙ったんだけどね。外れたから」
「惜しかったよね。板には当たったんだもん」
 
命(めい)たちはしばしバスケットの話で盛り上がりながらコメリまで行った。園芸用品やら大工道具、また電気器具やらを見ながら、また雑貨などを見ながらけっこう話が盛り上がる。最初は立ち位置に悩んでいた感じの西川君も、いつの間にかふつうの女の子と話す感じの雰囲気になってきていた。
 
結局コメリで29円のサイダーを買って、ベンチに座って飲みながらおしゃべりした。
 
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「しかしさ。普段の斎藤と話してるのより話が弾む気がする」と西川君。「だって、僕本当は女の子だから」と命(めい)がニコっとして言う。
「え?」と言って西川君が命(めい)を見つめる。
「あ、冗談だよ」
「いや。今一瞬本気にした」
「ふふふ」
 
「声とか話し方とかも女の子そのものだし」
「小さい頃から、理彩に鍛えられてるしなあ。話し方は、僕女の子の友達が多いから自然にコピーしちゃった感じ」
「でも一人称は『僕』なんだ」
「そのあたりは微妙なアイデンティティの問題かな。一度理彩から『私』って言ったらキスしてあげるなんて言われた」
「で、どうしたの?」
「その日は『私』で話して、キスしてもらったよ」
「おお」
西川君はキスしてもらったという話に異様に喜んでいた。
 
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結局ふたりは少し遅めのお昼御飯を一緒に食べたところでタイムアップとなった。時間を超過して2時20分くらいになったところで理彩がテーブルに寄ってきた。
 
「盛り上がってるみたいだけど、この続きはまた個人的に後日ということで」
「あ、ごめんごめん。俺、また斎藤をデートに誘いたくなった」
「うん。いいよ。この程度のデートならいつでも。セックスはしてあげられないけど」
「いや、できるかもよ。きっと男の子とセックスする時は自動的に女の子の身体になっちゃうのよ」と理彩。
「そんな馬鹿な」
「でもね。。。すごく小さい頃、命(めい)が女の子の身体になってるのを見たことがある気がするんだよね。あれ?今日はおちんちん無いの?と訊いた記憶があるのよね」
「夢でも見たんじゃ」
「かもねー」
 
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「斎藤と奥田はセックスしてるの?」
と理彩とペアになっていた男の子が訊く。
「夢の中では命(めい)とセックスしたことあるな」
「夢の中?」
「でも命(めい)は夢の中では女の子だったんだよね。私が命(めい)をやっちゃった」
「じゃ奥田は男の子だったの?」
「女の子の命(めい)とやれたのだから、そうかもね。あるいはレズだったのかも知れないけど」
「ああ、奥田ってちょっとレズっぽい気がしていた」
 
「でもリアルではしたことないんだ?」
「同じお布団で寝たことはあるよね」と理彩。
「同じ布団でっていうか・・・・」と命(めい)が苦笑する。
 
「いや。うちの家族と理彩の家族とで、一緒に旅行しててさ。夜中に理彩が部屋を間違えて入って来て、そのまま僕の布団に潜り込んで寝てたんだよね」
「えへへ」
「朝起きたら右腕が重いから、何だ?と思ったら理彩の顔があるんだもん。さすがにびっくりした」
 
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「それ、斎藤の部屋で良かったな。余所の人の部屋の男の布団だったら」
「やばいよね」
「あの時は、うちの母ちゃんからは、てっきりやっちゃったものと思われて、弁解がたいへんだったよ。お前達そういう関係になったんなら、ちゃんと親にも言いなさいとか、きちんと避妊はしてるのか?とかいわれて」
 

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それも高2の夏だった。命(めい)は出張に行った父のお土産を数軒の親戚の家に自転車に乗せて持って行き、最後に(親戚ではないが)理彩の家にも持って行った。
 
自転車を玄関先に駐め、「こんにちは」と言って入っていくと、入口のところにお客様?が来ていたので軽く会釈した。
 
「あ、この子はどうですか?」といきなり、そのお客様から言われる。「その子は男の子ですよ」と理彩のお母さん。
「え?そうなの?ごめん、ごめん。可愛いものだから女の子かと思った」
とお客様。
 
「どうしたんですか?」と命(めい)はつい訊いてしまった。
「いや、うちのお花の会でパンフレット作ることになったんだけどね、その表紙にできるだけ若い子がいいからってんで、理彩をモデルに頼むことにして今日その撮影にわざわざ大阪から写真家の方に来て頂いたのに、理彩出てるのよ。昨夜もちゃんと言ったのに、なんか生返事だったもんなあ」
 
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「理彩はクーちゃんと一緒に奈良市に行ったと思いますが。僕も誘われたけど、今日はパスしたんですけどね」
クーちゃん(来海:くるみ)は理彩の従妹で2つ下の中3である。
「みたいね。さっき携帯にメールしたんだけど、奈良行きの特急の中だって話で。着いてからトンボ返りさせても戻るのに2時間以上掛かるし。理彩がいないから代わりにクーちゃんに来てもらおうかと思ったら、そちらもいないんだもん」
 
「なっちゃんじゃ無理ですよね」
「小学5年生ではちょっとね・・・・ね。ほんとに命(めい)ちゃん、モデル頼めないかしら? 命(めい)ちゃん、女の子でも通るもん」と理彩のお母さん。「確かに私、一目見た時女の子と思っちゃいましたから」とカメラマンさん。
「ちなみに、何着るんですか?」
 
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「振袖。着付けは私がするよ。命(めい)ちゃん、理彩と身体のサイズが同じだったよね」
「はい。お互いの服は全部着れます」
「じゃ、お願いできない? カメラマンさんは午後からは別のお仕事があるから、どっちみち理彩は間に合わないのよ」
「分かりました。じゃ代役引き受けます」
 
手足は写らないけど、気持ちの問題でお風呂を借りて足の毛を剃った。下着も写りはしないが気分の問題で、理彩の部屋に置いている命(めい)用のショーツだけ身に付けた上に、理彩の和装用ブラと肌襦袢を借りてつける。胸が無い分その補正が必要無い以外は、ほぼ理彩と同じ要領でできるようである。長襦袢を付け、振袖を着せられ帯を締められた。理彩のお母さんはかなり手際が良い感じであったが、それでも20分以上掛かった。振袖って大変なんだなと思う。これおしっこの近い人には着れない服だ!
 
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「お化粧してもいい?」と理彩のお母さん。
「いいですよ」と命(めい)は笑って答えた。
 
普通のお化粧は何度か理彩に悪戯でされたことがあるが、和装用のお化粧は初体験である。へー、こんな感じにするのかと思って命(めい)は鏡の中の自分の顔が変わっていくのを見ていた。
 
「お待たせしました。モデルさん、できあがりました」
「わあ、可愛い! 誰も男の子がモデルなんて思いませんよ」
 
命(めい)も我ながら可愛いと思った。振袖を着るなんて、まず体験できないことだし、と思う。
 
家の庭の所に立っているシーン、理彩の家の年代物の台所で立っているシーン、座っているシーン、お茶を飲んでいるシーン、などを撮影する。そしてお花を活けているシーンは多数取られた。
 
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