広告:國崎出雲の事情-8-少年サンデーコミックス-ひらかわ-あや
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■これまでのあらすじ(4)

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また円も面白がって、よく命(めい)を女の子に変えたり、あるいは命(めい)と理彩の性別を入れ替えたりして遊んでいたし、命(めい)の中に入り込む時はわざわざ女の子に変えてから入り込むようにした。命(めい)は女の子に変えられている間、嬉しそうにしていたが、理彩も男の子に変えてもらうとその状態を楽しみ、立ち小便してみたり、いじってみたりしていた。
 
そういうわけで命(めい)は小さい頃から女の子の性器の構造に熟知していたし、理彩も男の子の性器の仕組みに熟知していた。そして実はふたりの最初のセックスは男の子になっている理彩が女の子になっている命(めい)に入れるという形で行われた。この時、きちんと避妊しなかったので命(めい)は緊急避妊薬を飲まされ、副作用に苦しむハメになる。
 
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ところで実は命(めい)が小さい頃に死にかけて円の力でも助けきれないと思われた時、円は窮余の策で、命(めい)の“胴体部分”を本人の「裏側」で休眠していた、健康な女の子の身体と交換していた。それで実は命(めい)は、手足・頭・男性外性器以外は女の子になっていたのである(実は前立腺も無かった)。卵巣・子宮があるので命(めい)は思春期になると生理まで起きて、本人も甚だ当惑した。但しバストの発達は円の力で18歳で妊娠してしまうまで抑制していた。しかし卵巣があるので実は命(めい)の骨格、特に骨盤は女性型に発達しており、これが後に星を産む時に役立つことになる。
 
ふたりが結婚した時、命(めい)は妊娠中だったので男性機能は一時的に消滅していたが、理彩は元々女の子の命(めい)が好きなのでふたりは実質レスビアンの夫婦のようなものであった。星を出産後セックスを再開した時も基本的に理彩が男役を務めていた。ふたりはじゃんけんで男役を決めたりしていたが、だいたい理彩がじゃんけんに勝つことが多かった。
 
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理彩と命(めい)が星を育てるのに一戸建ての家を借りたのは、ふたりがまだ学生の身であり、昼間は学校に通うので、その間、理彩の母と命(めい)の母が交代で大阪に出てきて、星の面倒を見てくれることになったからである。それで、母が寝泊まりする部屋、星の面倒を見る部屋、星の泣き声などに煩わされずに勉強に集中できる部屋と考えると、どうしても3部屋必要ということになり、3DKのアパートを探していた時、不動産屋さんから、安い一戸建てがあるのだけどと勧められたのである。
 
場所はJR岸辺駅や阪急正雀駅に近い場所だが、車で5分も走るとモノレールの摂津駅に到達できる。そういう便利な場所であるにも関わらずかなり傷んでいて取り壊し寸前、区画整理の予定もあるということで、3LDKの一戸建てが5万円で借りられたのである。摂津駅からはモノレールで各々のキャンパス(命は直通で柴原駅、理彩は万博記念公園乗換で阪大病院前)に到達できる。駅までの移動のため20万円の格安中古ヴィッツを買い、摂津駅近くに駐車場も確保した。
 
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この一戸建ては1階にLDKと6畳和室、2階に4畳半2つという構成であったが、昔風の「部分二階建て」であった。特に1階の6畳和室の北半分の上は直接屋根になっていて生活空間が存在しなかった。そこで、命(めい)はその場所に円を祭る祭壇を設置。供え物をして、朝晩祝詞をあげるようにした。ふたりがどうしてもその時刻に家に居ない時は、誰かに代わってあげてもらうようにして、絶対に祝詞を途切れさせないようにした。星が生まれてすぐの頃はまだ結構荒ぶれていた円の心が次第に穏やかになっていったのは、命(めい)のこの祭祀のおかげである。
 
この吹田市の家は、まどかにとっても良き休息の場となった。まどかは2013年10月にE村村内に家を確保して、黒猫のロデムと一緒に暮らすようになったが、御飯を作るのが面倒な時は、しばしばこの吹田の家に来て命(めい)たちをからかいながら一緒に御飯を食べるようになった。特に朝御飯は一緒になることが多いので、命(めい)も理彩も朝御飯はいつもまどかの分まで用意しておくようにしていた。
 
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しかし“神様”である星を育てるのは、大変であった。まだ小さい頃の星は善悪というものが分かっていないので、理彩たちがうかつなことを口にすると、それを実行してしまい、ふたりは焦った。それで理彩も命(めい)も星の前では決して「よくないこと」は話さないようにし、それは星の世話に来てくれる各々の母にもよく言って徹底してもらった。
 
「一度この風呂釜いっそ壊れたら新しいのにしてもらえるのに、なんて言ったら速攻で風呂釜を壊しちゃったんですよ」
 
「わぁ」
 
「だから万が一にも誰々なんか死んじまえなんて口にした日には・・・」
「それ怖すぎる!」
 
そういう訳で神様を育てるには、結果的に育てる側も心正しい生活をしていくことになったのである。
 
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命(めい)と星がショッピングセンターで同様に赤ちゃん連れの友人・媛乃と会っていた時、若い女性の悲鳴を聞いた。そちらを見ると、吹き抜けの上の階からその女性の子供かと思われる赤ちゃんが落下した所だった。
 
命(めい)は星に『助けてあげて』と言った。それで星は赤ちゃんの落下速度を落とし、落下地点近くに居たスポーツ選手っぽいがっちりした体格の男性を赤ちゃんが落ちてくる真下に瞬間移動させた。
 
男性は反射的に赤ちゃんを受け止め、赤ちゃんは助かった。媛乃などは「運の良い子だね〜」などと言っていたが、星は命(めい)に尋ねた。
 
『ああいうの、全部助けてあげないといけない?』
 
星には半径数十km以内だけでも、人が落下したり事故に遭ったりして死ぬのが毎日何件も見えるのだという。確かにそれを全部助けていたらキリが無いし、助かり方が不自然になってしまうものも出てくるだろう。それで命(めい)は言った。
 
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『気が向いた時だけ助ければいいと思う』
『気が向いた時って、よく分からない』
 
『じゃ自分の本体がいる近くで、助けを求められた時ってのはどう?』
『何だか難しいなあ』
 
『基本的には神様はただ見ていればいいんだよ。でもたまには助けてあげてもいい。それを人は奇跡と呼ぶんだけどね』
 

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ある時は、理彩たちの大学の友人が自室で大量の薬を飲んで自殺を図ったのに星が気付き、命(めい)に尋ねた。
 
『こういうのも、ただ見ていればいいの?』
「助けなきゃ!」
と命(めい)たちは言い、彼女の住所を知っている友人に連絡して救急車を呼ぶ。その友人は、近くだから行ってみると言ったので、命(めい)は彼女や救急隊が部屋に入れるように、星に部屋の鍵を開けさせた。
 
星はもっと積極的に助けた方がいいか?と尋ねたが、命(めい)はここまでしたら、あとは本人の運に任せようと言った。理彩が
 
「私ならその飲んだ薬物を体外に移動させてとか言いそう」
と言うが、命(めい)は
「そういう自然の摂理に反することはしてはいけないんだよ。神様も宇宙の法則はちゃんと守らなきゃ」
と諭した。
 
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その様子を眺めていたまどかは、自分も小さい頃、西沢公子に同じようなことを言われたなと思い起こし、懐かしいような心が痛むような思いだった。そして星の“意識の隙間”を狙って、自殺を図って苦しんでいる最中のその子に強い吐き気をもよおさせ、薬の大半を吐き出させてしまった。
 
むろんこれはあくまでも、まどかの“気まぐれ”である。まさに命(めい)が言っていた「気が向いた時は助けてあげればいい」という線なのである。
 

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ところで理彩や命(めい)の高校時代の友人に橋本正美という子がいた。彼は女装趣味があったものの、この頃まではそれを隠していた。しかし理彩や春代たちが大いに彼に女装を唆し、それまで女装外出の経験が無かったのをたくさん女装であちこち連れ回した。それで彼はどんどん「その気」になっていった。結局彼は、大学に入ると完全女装生活になってしまう。
 
まどかは彼に大いに興味を持った。命(めい)がかなり女性化してしまっていたので「新しいおもちゃ」が欲しかったのである。まどかは彼を唆してまずは大学1年の時に《豊胸手術を受けさせ》てしまい、翌年には《去勢手術を受けさせ》てしまった。
 
どちらの手術の時も、正美は病院の玄関まで行った記憶はあるものの、そこで記憶が途切れていた。そして《手術》後は、確かにバストが大きくなっていたし、睾丸も無くなっていたものの、手術の痛みも無かったし、手術代の請求書とかも見当たらなかった。
 
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正美は結局大学卒業前に(妊娠も可能な)完全な女の子になってしまう。
 

理彩や同級生が大学2年生になった2013年の夏(命は出産のため休学したので命だけ大学1年生)、みんなで成人式用の振袖を見にいこうという話になり、奈良市の呉服店に行った。この時、命(めい)は当然連れて行ったが、正美も誘惑して連れて行った。正美も成人式に振袖着てもいいかなあ、という気持ちになっていった。
 
そして理彩たちの保護者然として付いていった、まどかも、自分が成人式に出ていなかったということを理彩たちに話すと「まどかさんも振袖着て成人式に行きません?」と彼女たちは誘った。まどかは1953年生なので本当は2013年で60歳なのだが、神様なので容貌的には40歳くらいにも見える。それで「ダブル成人式ということでいいんじゃないですか?」と言っている子もあり、まどかもその気になった。まどかの成人式出席に関しては成人式の実行委員にもなっていた春代が話を付けて「特別参列者」として出席してもらい、記念写真にも一緒に納まった。
 
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まどかは20歳の時、公子から振袖を買ってもらったものの、成人式前に公子が亡くなり、振袖姿を見せてあげる相手が居なくなってしまったことから、成人式に出なかった。ただ、振袖を自分で着てエイリアスを使って写真を撮らせ、現像ができたところでその写真を持って公子のお墓に持って行き、公子に成人の報告をし、涙を流した。
 
それから40年、振袖を着る機会も無かったものの、自分が散々苦労して育ててきた命(めい)の成人式であれば、一緒に振袖を着てもいいかなという気分になった。
 
まどかは40年前の振袖を出してくると、お正月の年始詣でにその振袖を着て、成人式には命(めい)たちと一緒に作った振袖を着た。
 

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西川環貴は、物心付いた頃から、お母さんというのはうちに通ってくる存在であった。奈良市に住んでいた幼少の頃はだいたい朝出かけて行って夕方帰って来ていた記憶があるものの、高槻市にいた小学1−2年の頃は平日は居なくて土日だけ一緒に過ごしていた。名古屋市に居た3−4年の頃も似たペースだったが、父の転勤で東北の気仙沼で過ごした5〜6年生頃は月に1度くらいしか来ず随分寂しい思いをする。当時、環貴は両親は離婚したのだろうかと思っていたという。
 
九州の太宰府に居た中学生時代も月に1〜2度、週末や連休に家に来ていた。
 
両親は手紙で連絡を取り合っているようで、この手紙が1日おきくらいに来て、その一部は環貴に当てたものだった。環貴も母に手紙を書き、父はそれを自分の手紙と同封して母に送っていた。
 
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しかし母からの手紙には「西川まどか」という名前だけが記載されており住所は書かれていなかった。また父は母への手紙の宛名を決して環貴が居る所では書かなかった。
 
高校時代、環貴はE町に1人で住んでいたが、この時期が環貴にとっては一番幸せな時期で、母はほぼ毎日夕方に来て、環貴の晩御飯を作ってくれた。母は夕方から夜に掛けての6〜7時間滞在するだけで、夜中0時頃には帰ってしまっていたものの、この時期、環貴は母の温かみを感じ、それで勉強にも励むことができて、国立大学に合格することができる。
 
しかし環貴が東京の大学に入ってやはり東京に住んでいる父(もう転勤は無いと言っていた)とふたり暮らししていると、母の通ってくる頻度はまた月に1〜2度に落ちてしまった。もっともさすがに大学生にもなると、母が不在でも、そう寂しがる年齢ではない。とは言いつつも
 
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「次、母ちゃん、いつ来るの?」
などと父に訊く。
「分からん。あいつ最近けっこう忙しいみたいだし」
と父は言う。
「親父と男2人で飯食ってても全然うまくないし」
と環貴。
「男2人が嫌なら、お前女になる?」
「なんでそうなんだよ?」
「性転換したいなら、いい医者紹介するけど」
「そういう趣味はねーよ」
 

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2014年のゴールデンウィーク。環貴がゴールデンウィークにライブで大阪まで来て、産能大に入った紀子も実家に顔を出すのに奈良に来るということだったので、迎撃同窓会をしようということになる。
 
それでK町のファミレスで食事会をし、その後近くのプールなどでも遊んだ後で解散する。何となく流れで、環貴は命(めい)と理彩の車で大阪に出て、新幹線で東京に帰ることになる。予約していた新幹線の時間までまだあるしということでいったん吹田市の命(めい)たちの家に寄った。
 
そこで休んでいた時、唐突にまどかが来訪した。何か大変な作業をしていて御飯もままらなかったようで、晩御飯食べさせてなどと言った所で、ポカーンとした顔で、自分を見ている環貴の顔に気付き、まどかは息を呑んだ。
 
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そして環貴は言った。
「お母ちゃん、なんでここに居るの?」
 
 
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