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■これまでのあらすじ(3)

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■円編
 
命(めい)が神婚をした神様が理(ことわり)で、理は命(めい)が踊った祈年祭の後、神社の正殿から西脇殿に移動した(先代神様)。星は時が来たら東脇殿に入ることになっている(次の神様)。そしてそれまで東脇殿に居て、祈年祭の後で正殿に入った神様(今の神様)が円(えん)であった。
 
理が生まれた時は、村のみんなが「神様の子」として大事に育ててくれた。しかし円が生まれた1953年当時は、みんなが科学万能思想に毒されていた時代で、神様の子供などという話は信じてもらえず、誰もが円を産んだ多気子をふしだらな女だと非難して、母子は逃げるように村を出た。
 
更に多気子が元々いい加減な性格で育児も適当であったことから、円は生まれて1年もしない内に死んでしまう。
 
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円は神様なので、肉体が滅んでも平気なのだが、1歳になって昇天して修行を始める前に死んでしまったのは誤算だったし、肉体が無いためE村の神殿に入る儀式ができなかった。それでも大きな存在の力で円は昇天させられ神様としての修行を積んだ。但し大きな存在の力をもってしても、正式の儀式を経ていない円はE村の神様になることはできない状況だった。
 
円はやがて修行を終えて地上に戻るが、肉体が無いので霊体だけの状態である。取り敢えず母・多気子の近くにいたが、多気子には見えない。ところが多気子のボーイフレンドの伯母で霊能者の西沢公子が円の存在に気付き、自分の家に連れ帰った。そして円を実体化させ、普通の子供のように育て始めた。
 
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この時まで円は男の子の姿を取っていた。しかし多気子を裏切った多数の男を見て、男というものに嫌悪感を持っていた円は、「男は嫌いだから女になろうかな」と言って、女の子の姿に変更し「西沢まどか」と名乗るようになった。「まどか」は「円」の訓読みである。
 
まどかは女の子の姿で居るのが気に入ってその後ずっと女の子として暮らすようになる。彼女によると元々自分には性別などと言うものは無く、男の子の形を取るのも女の子の形を取るのも方便(便宜上のもの)にすぎないという。
 
「だったらふだん女の子してても時々男の子になって、おちんちんで遊ぶのもいいかもね」
と公子は冗談半分で言ったものの
 
「私たちは男の子の機能は120歳になって次の神様を作る時まで使えないことになっているのよ。だから、ちんちんいじっても全然気持ちよくないし、立ったりもしないんだよね〜。あれはおしっこに使う以外は、ただの肉片。大きなイボのようなもの。でも女の子でいる時は、ちゃんとおマメさんで遊べるよ。妊娠出産もできるらしいよ」
 
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「ということは、あんたたちって実は基本は女の子なのでは?」
「うーん。それはひとつの見解かも」
 

まどかは普通の女の子として小学校、中学高校に通った。やがて大学にも進学するが、1972年、公子が癌で死去すると、まどかは公子を救えなかったことから医学の道を志し、医科大学の編入試験を受けて転学した。そして医学生としての日々を送るようになる。
 
この頃、まどかは高校の後輩だった西川春貴と再会した。ふたりは通学の電車でしばしば一緒になり、親しくなっていったものの、なかなか「恋人」という段階までは到達しなかった。そして8年後、春貴は別の女性と結婚してしまう。春貴はその女性との間に2人の子供を作った。
 
一方まどかは1977年に医師の資格を取り、1994年まで都内の病院に勤務した。外科部長まで務めたものの、院長になってくれと言われたので、そんな面倒なことしたくないと思って退職し、一時はコネを頼って和歌山県の小さな病院に勤務していた。まどかは多数の男性医師から求婚されていたし、見合いの話も多数持ち込まれていたものの「ずっと好きな人がいるから」と言って断っていた。
 
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1991年。
 
西川春貴(37)は会社をリストラされ再就職もできず、妻にも離婚され、子供の親権も妻の側が持って面会もさせてもらえないという状況に追い込まれていた。それで自分の人生に絶望し、自暴自棄の乱れた生活をしていた時、まどかに再会した。
 
まどかの助言で春貴は条件のいい再就職先を見つけることができた。そしてふたりの仲も復活した。2年後、まどかは春貴の子供・環貴を出産した。
 
なお、まどかは妊娠中も医師として勤務していたが、まどかは神様なので、妊娠中は自分のエイリアスを職場に置いて妊娠を周囲に気付かれないようにしていた(正確には“まどか”自身も円のエイリアスである)。出産は母の住む名古屋の病院でしたので、多気子は孫の顔を見ることができた。
 
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さて、E村のN神社では円が村に戻ってこられない状態になってしまっていることから残りの2人の神様の負荷がどうしても大きくなっていた。1995年春、円のことで心労も重なっていた円の父・珠が消滅してしまう。
 
つまりこの時点で本来三柱の神がいるべきN神社には理1人だけしか居ない状態になってしまった。すると本来3人でやるべき仕事を理1人でしなければならない。その負荷に耐えられずに残った1人の神様まで消滅してしまうと村には守り神が居なくなってしまう。そうなると村は10年もしないうちに崩壊してしまうだろう。
 
N神社の宮司・辛島利雄はこの状態に気付き、何とかしなければと考えて、古い文書を発掘。村に戻れない状態になっている東脇殿の神(円)を召喚する儀式を行った。
 
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これは術者の20年分の寿命と、生殖器を捧げる秘法であった。
 
(実際には1柱の神のみを召喚するには、生殖器自体を献げる必要はなく、その能力のみ献げればよいとして、切り落とした生殖器は円が戻してくれた。また献げる寿命も10年で良かった)
 
しかしこの儀式によって円はやっと村に戻ることができて、東脇殿に入った。そしてこの後、星が生まれるまで、村は理と円の2人の力で守られることとなった。円は理の数倍のパワーを持つので、理の負荷は著しく軽減されることとなった。
 

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辛島宮司の寿命は実は20年どころか10年も残っていなかったので、本来は召喚儀式をした時点で絶命するはずだったのだが、円が「サービス」で1年くらいだけ生かしてくれた。また円は人間体“まどか”の姿でよく宮司の前に現れたので、宮司は色々な相談事を彼女にしたが、円はパワーでは理を遙かに凌駕するものの、理ほど親切ではないので、結構ドライな対応をした。宮司はまどかのご機嫌を取るのに苦労した。
 
その相談事の中に斎藤家の息子が病弱でしょっちゅう熱を出したりしているのを何とかできないかというのがあった。まどかは「そういう子には女の子の服を着せて育てるといい」と助言した。
 
それから少し経った頃、まどかは神社の境内で遊ぶ“ふたりの女の子”を見たが、よく見ると、ひとりは女の子の服を着た男の子だった(命と理彩である)。それでまどかは「ああ、これが先日宮司が言っていた子か」と思い至る。そしてあらためてその子を見ると、ほんとに生命力が弱々しい。これでは明日死んでもおかしくないと思った彼女は、その子に少しだけエネルギーを注入してあげた。
 
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結局これがきっかけとなって、まどかはしばしば命(めい)と理彩に関わるようになる。命(めい)は霊媒体質でもあったので、まどかはしばしば命(めい)の中に入りこんで、実際の肉体が無いとやりにくい作業を命(めい)の身体を使って実行したりもしていた。
 
そしてまどか(円)の干渉のおかげで、1〜2歳頃は今にも死にそうなほど病弱だった命(めい)は無事小学生になり、やがて中学、高校と進学した。命(めい)は年齢が進むにつれ、どんどん丈夫な身体になっていった。
 

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命(めい)は小学校にあがるまで女の子の服を着せられていたことと元々の性格もあったようで、小学生になってもしばしば女装していた。それを理彩も結構唆していたし、母も容認していた。
 
それで振袖を着てモデルになってみたり、本来女の子だけでやることになっている神事に参加させられたりもしたし、理彩は命(めい)が自分の家に遊びにくると、しょっちゅう女装させて女の子同士の友だちのように遊んでいた。理彩の部屋にはいつも命(めい)用の女の子下着やスカートなどが置かれていた。
 
それで命(めい)の友人たちの中には女装の命(めい)を見たことのある子も多く、友人たちは命(めい)のことを「女の子になりたい男の子」なんだろうなと捉えていた。実際本人も
 
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「女の子になりたいけど理彩と結婚したいから男の子のままでいい」
などと言っていた。それに対して理彩は
「命(めい)が女の子になっても結婚してあげるよ」
と言っていたが、それはやがて現実となった。
 

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