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■女子バスケット選手の日々・2016オールジャパン編(4)

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コートに戻ったエレクトロ・ウィッカのシステムにざわめきが漏れる。エレクトロ・ウィッカは花園を千里のマーカーに出したダイヤモンド1のゾーンを敷いたのである。とにかく千里以外の失点を防ごうというシステムであった。
 
1対1では河原−星乃も加藤−暢子も、40 minutes側がやや優勢である。しかしその1対1の状況を作らないようにして、どこからの侵入も許さないという態勢を取る。
 
そして花園は他のことは忘れて千里だけを抑えることに専念した。
 
すると雪子はひたすら千里にボールを供給する。千里はひたすら花園を抜いたり、あるいは距離を取ったりマークを外したりしてスリーを撃つ。
 
それでもこの後は最初の3分ほどの酷いことにはならず、結局第1ピリオドは16-22で終わった。千里はスリーを5本も入れている。一方の花園は速攻から撃ったわずか1本に留まる。
 
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第2ピリオドは、向こうの様子を見るのも兼ねて夕子/渚紗/来夢/麻依子/由実とラインナップを一新して出て行く。向こうは第1ピリオドとほとんど同じオーダーで出てきたがセンターは中丸華香に交代した。第1ピリオドで馬田が全くリバウンドを取れなかったので交代したようだ。向こうの監督は馬田の調子が悪いのではと思ったかも知れないが実際は誠美の凄まじい気魄に馬田が負けてしまったという所だろう。
 
このピリオドではこちらのオーダーを見て相手は普通にマンツーマンにした。それでエレクトロ・ウィッカ優勢かと思われるものの、夕子にしても来夢や麻依子にしても、一癖も二癖もある選手だ。変幻自在の攻めを見せるし、来夢のトリックプレイに加藤や河原が引っかかってしまう。
 
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それでこのピリオド、18-18の同点で持ちこたえた。
 
このピリオドでは花園は渚紗と来夢の連係プレイにやられてスリーを1本も入れられなかった。花園はこのチームが千里だけのチームではないことを思い知らされることとなった。
 

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第3ピリオドは千里を戻すが、花園はやはり千里を全く停められない。第2ピリオドを休んだ千里に対してずっと出ていた花園は疲れも出てくる。結局このピリオドは16-20で千里はスリーを4本入れ、対する花園は1本も入れられなかった。
 
第4ピリオド。
 
花園は全く休んでいないがまた出てくる。実際エレクトロ・ウィッカとしては花園無しではこの相手には勝てないとみて、他の選手とは交代させない。花園も気合いで頑張る。
 
5分が過ぎて点数は8-10である。10点の内6点が千里のスリーだ。ここまでの総得点は58-70と12点差である。
 
このままではエレクトロ・ウィッカの敗色が濃厚である。花園はコーチにタイムを取ってくれるよう要求した。コーチがタイムを請求する。
 
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それでベンチに引き上げて行った花園は水のペットボトルを2本両手に取ると、いきなり自分の頭に左右から掛けた!
 
え〜〜!? と他の選手が驚いている。
 
慌ててトレーナーさんがタオルを渡し、身体を拭くように言う。このままの状態でコートに戻す訳にはいかない。しかし本人が拭こうとしないので結局トレーナーさんが花園の身体を拭いている。そして身体を拭かれながら花園はコートを睨むように見詰めて仁王立ちしていた。
 

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コートに戻った花園の動きが違った。
 
休まず35分間出ていた選手の動きとは思えないスピードである。千里は彼女と対峙していて物凄い興奮を覚えていた。
 
そうだよ。あっちゃんはこうでなくちゃ!!
 
千里は恍惚に近い表情をしながら花園と対峙していた。
 
そしてこの後花園は立て続けに4本もスリーを入れたのである。点数は24-16となり、合計では74-76とわずか1ゴール差まで追い上げた。この間の千里のスリーは1本である。
 
しかし残りはもう43秒しかないし、40 minutesの攻撃である。雪子が慎重に攻めあがるが、そこに加藤絵理が雪子の死角から絶妙に近寄ってスティールしようとする。すんでで交わして反対側の手にドリブルを移したが、そこに武藤が飛び付くようにしてボールをはじいた。
 
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そしてそこに花園が走り寄ってボールを確保し走る。スリーポイントラインの所でピタリと停まって美しい動作でシュートを撃つ。
 
入って逆転! 77-76。残りは34秒。
 
ボールを審判からもらった暢子はすぐに思いっきり振りかぶってボールを遠投する。
 
見ると向こうのゴール下には長身の中嶋橘花が居る。センターの森下がこちらに居たのでエレクトロ・ウィッカはこの作戦に気づかなかった。
 
長いパスをキャッチした橘花は着地すると、その反動を利用してジャンプしながらシュートする。きれいに入って2点!
 
再逆転して77-78。残りは32秒!
 

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武藤が慎重に攻め上がる。エレクトロ・ウィッカとしてはできるだけ時間を使って得点し、40 minutesに時間をあまり残さないようにしたい。相手陣営と対峙しながらパスを回す。花園の所にボールが来た時、思いっきり千里が飛び出してそのパスをカットする。
 
ボールが転がった所に暢子が飛び付いて体勢を崩しながら雪子にパスする。
 
雪子がドリブルで走り出す。
 
エレクトロ・ウィッカのメンバーが必死に戻る。
 
雪子が千里にパスする。シュートする!
 

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しかしそのシュートに花園はジャストタイミングでジャンプしていた。
 
きれいに花園のブロックが決まる。
 
そのボールに加藤が飛び付くようにして手で叩くと、そのままドリブルに移行させて高速で走る。
 
いちばんこちら側に居た誠美が加藤の前に立ちはだかるが、加藤は一瞬で誠美を抜き去る。
 
そして美しいフォームでランニングシュートを決めた。
 
「2ポイントゴール、エレクトロ・ウィッカ加藤絵理」
というアナウンスが流れる。
 
再逆転79-78!!
 
そして残りはわずか3秒であった。
 

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矢峰コーチがタイムを取った。
 
しなければならないプレイは分かっている。
 
雪子・千里・誠美・橘花・由実という長身の選手を3人並べた陣容で出て行く。誠美・橘花・由実が向こうのゴール近くに立ち、千里は少し手前に立つ。相手プレイヤーもその4人のそばに付く。千里のそばにはむろん花園が付いている。
 
雪子が審判からボールをもらうと思いっきり投げる。
 

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ボールはジャスト千里の所に飛んできた。
 
千里は一瞬で花園を抜き去る。そして制限エリアの中に走り込んでシュートを撃った。
 
その直後にブザーが鳴る。
 
が、千里がシュートした次の瞬間、そこに走り寄った中丸華香が思いっきりジャンプしていた。
 

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ボールは中丸の指先に僅かに当たって軌道を外れ、そのままアウト・オブ・バウンズになってしまった。
 
そのボールが転々と転がっているが、誰も追いかけない。
 
そして全員がその場から動けなかった。
 
最初に動いたのは河原恭子であった。
 
「やった!」
と言って近くに居た武藤博美に飛び付くようにした。
 
それでみんな呪縛から解かれたように動き出した。
 
千里は頭を抱えて下を向いた。その千里の肩を花園が叩く。千里も泣き笑いのような顔になって彼女とハグした。彼女のユニフォームが濡れているので千里も濡れるが構わない。そして千里は自分のシュートをブロックした華香ともハグした。
 
審判が整列を促す。
 
「79対78でエレクトロ・ウィッカの勝ち」
「ありがとうございました」
 
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再度お互いに握手したりハグしたりしてからベンチに引き上げた。
 

「なんかいつも気楽に構えていたけど、この試合はマジになった」
と星乃が言う。
 
「マジになったから負けたのかもね」
と桂華。
 
「うーん。もっとお笑いに行くべきだったか」
「来年はお笑いで決勝戦まで行ってね」
「よし。頑張ろう」
 
こうして今年のオールジャパンでは千里たち40 minutesは準決勝で敗れ3位に留まったのであった(オールジャパンは3位決定戦は行われない)。
 
この日の「残念会」は焼き鳥屋さんでしたが暢子がかなり酔って他のメンバーに絡み、橘花に頭から水を掛けられていた。
 
「私も試合中にこれやるべきだったかな?」
と暢子。
「あっちゃん、始末書を書いたみたいよ」
と千里。
「やはりね」
 
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翌日1月10日の決勝戦では、サンドベージュがエレクトロ・ウィッカを倒して優勝した。しかし花園亜津子は負けはしたものの、この試合で三木エレンを徹底的にマークして1本もスリーを撃たせなかった。そして自らは8本のスリーを撃ち込んだ。
 
決勝戦が終わって少しして表彰式に移る。
 
この日は40 minutesの黄色いユニフォームを着て、メンバーは入場口の所に行った。
 
小野寺イルザ『頂点を目指して』の曲が流れる中、プラカードを持った女性に続いて、1〜3位の4チーム、サンドベージュ、エレクトロ・ウィッカ、40 minutes, ビューティーマジックが入場する。
 
サンドベージュに皇后杯が授与される。キャプテンの三木エレンが笑顔で受け取った。彼女にとってまさに花道となった。そのほか様々なトロフィーが授与され、ウィニングボールは湧見絵津子が受け取っていた。そして選手全員が金メダルを掛けてもらう。三木さんと一瞬視線が合った。千里は最後にまた三木さんとここで対決したかったなという思いがした。
 
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続けて準優勝のエレクトロ・ウィッカが準優勝のプレートを受け取り、銀メダルを掛けてもらう。
 
その後、40 minutesとビューティーマジックに3位のプレートが授与される。キャプテンの夕子がプレートを受け取り、副主将の千里は賞金100万円の目録を受け取った。そして全員銅メダルを掛けてもらう。オールジャパンでの初めてのメダルだ。できたら金色のが欲しかったけど、銅色も充分嬉しい。
 

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個人表彰が行われる。
 
大会のMVPは準優勝エレクトロ・ウィッカから花園亜津子が選ばれた。準優勝チームからの選定に亜津子本人がびっくりしていた。敢闘賞に優勝チームのサンドベージュから中堅選手の平田徳香が選ばれた。
 
「個人別成績を発表します。得点女王、佐藤玲央美・ジョイフルゴールド」
 
ジョイフルゴールドのユニフォームを着た玲央美が来賓席の付近から出てきて役員さんの前に立った。
 
「スリーポイント女王、村山千里・40 minutes」
 
千里は賞金目録を桂華に預けると、微笑んで前に出て行き、先に立っている玲央美と笑顔で握手を交わした。鋭い視線が背中に突き刺さる。亜津子だなと千里は思った。
 
「リバウンド女王、森下誠美・40 minutes」
 
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誠美は呼ばれて驚いたようだが、出てきて千里の横に並んだ。千里と玲央美が手を伸ばして誠美と握手した。
 
「アシスト女王、武藤博美、エレクトロ・ウィッカ」
 
武藤さんが出てきて並ぶ。誠美、千里、玲央美と笑顔で握手した。ひとりずつ前に出て賞状と記念品を受け取ってから下がった。
 
「次にベスト5を発表します。PG.比嘉優雨花、ビューティーマジック、SG.花園亜津子、エレクトロ・ウィッカ、SG.村山千里、40 minutes、SF.佐藤玲央美、ジョイフルゴールド、PF.平田徳香、サンドベージュ」
 
千里はびっくりした。自分がスリーポイント女王は取ってもベスト5は亜津子だろうと思っていたのである。シューティングガードが2人選ばれたあおりでセンターがひとりも選ばれていない!
 
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名前を呼ばれたのでスリーポイント女王の賞状と記念品を今度は麻依子に預けて前に出て行く。他の4人と握手するが、亜津子の握手は痛かった!
 
またひとりずつ名前を呼ばれて賞状と記念品をもらった。
 

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川淵会長のお話があった後、大会テーマ曲『頂点を目指して』に合わせて選手は退場した。ロビーで他のチームの選手と多少の交款があった。千里の所に花園亜津子が来て
 
「決勝戦で追いつこうと思ったけど追いつけなかった」
と言った。
「私は1,2,3回戦、準々決勝・準決勝と5試合だもん。あっちゃんは今回3回戦、準々決勝、準決勝、決勝と4試合。こないだのアジア選手権と逆の立場だよ」
と千里は言ったが
 
「1試合あたりのスリー成功数でも、ちーが上だったから今回は完敗」
と亜津子は言っていた。
 
今回千里のスリー成功数は49本、亜津子は37本である。
 
ふたりがしばらく話していたら三木エレンが来て、ふたりの肩を抱くようにする。
 
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「フラ、サン。もうおばあちゃんは去るけど、オリンピックで金(きん)取って来いよ」
と言う。
「はい取って来ます」
と千里も亜津子も笑顔で言った。
 
その近くで暢子と星乃が
「今日の打ち上げは天麩羅屋さんもいいね」
などと話していた。
 
今日も宴会するのか!
 
「ところでサンがお股の金(きん)を取ったのは結局いつ?」
などと星乃が言うので
「ステラ、最近おやじ化してる。ちんちん生えてない?」
と千里が言うと、自分のバスケットパンツの中を確認していた。
 
 
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