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■少女たちの東京遠征(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-09-09
 
2000年10月7日(土)
 
千里たち、留萌N小学校の合唱サークルのメンバー・関係者52名は合唱大会の本選(東京)に出るため、早朝、N小学校の校舎玄関前に集合した。メンバーは6年生11人、5年生9人、4年生8人(小春を含む)、それに顧問の馬原先生と保護者23名である。但し保護者の中で合唱サークル親の会の会長である小野園子さん(小野部長のお母さん)は引率者として馬原先生のお手伝いをする。
 
点呼を取り、一緒に大型バスに乗り込む。定員53名のバスなので補助席もほぼ全部出している。なお補助席に座るのは母親たちである!長旅なので主役でもあり、体力の無い子供たちはできるだけ疲れさせないようにという配慮である。
 
一行は国道233号で深川市まで走り、国道12号を東行、旭川の市街地をかすめて国道237号で旭川空港まで行く。約100km, 1時間40分の旅である。経費節約のためひたすら下道を走るが、実は北海道の下道というのは高速道路と大差ない区間が多い!
 
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部員たちはバスの車内で大会で歌う曲を最初の30分くらい練習したのだが、「練習終わり」と言われた後も、音楽の教科書に載っている歌、いわゆるキャンプソング、最近の流行歌(SPEEDやホワイトベリー、モー娘。など)をずっと空港に着くまで歌っていた。
 
本当に歌が好きな子供たちなのである。
 
ラッシュにひっかかった場合を考慮して早めに出たので到着したのは9:00であった。旭川10:55発(*1)のJAS192(A300)に搭乗する。
 
(*1)2000年10月の時刻表が入手できなかったので2000年3月の時刻表で見ています。2000.03の時刻表では 旭川10:55-12:40羽田になっていますが、2001.05の時刻表では旭川10:50-12:30羽田になっています。どちらもA300と書かれているので2000.10でも機種はこれで合っていると思います。
 
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旅行代理店を通してツアー扱いにしてもらったため、料金は往復の交通費と1泊分の宿泊費込みで1人29000円(11歳以下は18000円)である。正規運賃だと“片道”の運賃だけで32590円(11歳以下は約半額)になる。なぜ宿泊費込みでこんなに安くできるのかは、なかなか不思議である。
 
(航空運賃は小学生であっても12歳なら大人運賃になるのでツアー料金も12歳は大人料金になっている)
 
なお大会の主催者から(北海道と九州の参加校に限り)子供たちと引率者2名分の“都道府県の中心空港(新千歳)と羽田間の往復航空運賃”分が支給されているので、それを差し引くと結局保護者1人あたりの負担は20000円で済む。つまり20000円で東京旅行が出来るようなものなので保護者の中から23名も参加してくれた。
 
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むろん千里の母は不参加である!(千里の家では2万円なんて無理)
 
最初は鉄道で往復してもいいよと言ったのだが、旅行代理店の人によると飛行機だから割り引ける(特にJASは割り引ける)のであってJRではあまり割引できないらしく、それで飛行機を利用しての往復になった。なお、JRで行こうとすると、このような感じになる。
 
留萌5:57-6:49深川7:38(スーパーホワイトアロー2)8:45札幌9:46(北斗8)13:25函館13:39(はつかり22)17:53盛岡18:01(やまびこ24)20:26東京(*2)
 
(*2)2000.3の時刻表による連絡。
 
到着が夕方になってしまうので会場の下見にも行けない。それで正規運賃は片道24930円(小学生は約半額)掛かり、それプラス宿賃も2夜分掛かることになる。
 
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(この時代は東北新幹線は盛岡までで、盛岡−函館間に《特急はつかり》が運行されていた。東北新幹線の八戸開業は2002年12月1日である)
 
なお《夜行急行はまなす》を使えば宿代が不要だが、さすがに体力的に辛すぎる。とてもではないが大会でまともな歌唱ができないだろう。実は保護者は《はまなす》を使うという案もあったのだが、体力的に自信が無いという人が多かった。
 
留萌18:04-19:00深川19:18(スーパーホワイトアロー26)20:23札幌21:56(はまなす)5:18青森5:41(はつかり2)7:55盛岡8:11(やまびこ4)10:48東京
 
(料金は《はまなす》は座席の指定席、やまびこを指定席にして他を自由席にした場合で24600円である)
 

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さて、今回の遠征に参加した部員であるが、道大会の時から転校した4年生のリサが抜け、サブピアニストとして5年生の阿部さんが加わっている(正ピアニストは6年生の鐙さん)。阿部さんは本当は「歌唱者」ではないのだが、一応歌唱者として登録して旅費が出るようにしている。
 
合唱サークルの制服は会場で着るので、この日は全員私服である。千里は、朝まだ父が寝ているのをいいことに、可愛いブラウスとチェックのスカートという格好で家を出てきた。スカートは美輪子のお下がりで、元々は膝上サイズだったと思われるが背の低い千里が履くとセミロングという感じである。
 
「おお、可愛い可愛い」
と蓮菜や穂花から言われる。
 
飛行機に乗るのは初めてという子が多い。千里もむろんその口である。空港に来たこと自体多くの子が初めてでずいぶんはしゃいでいたが、飛行機が離陸する時はその強い加速度と飛行機の揺れで悲鳴まで上がっていた。千里は「きゃー」とは思ったものの、悲鳴まではあげなかった。
 
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なお、今回航空券は手配してくれる旅行代理店の担当者に馬原先生が「児童は全員女子です」と伝えていたので、千里の航空券も年齢性別の所に 9F という表示がある。隣の席の蓮菜から「これ9歳・女という意味」と教えられて、じわっとした思いになった。
 
取り敢えず今自分は女として扱われているという思いが千里の心を感動させた。
 
「これでもし飛行機が落ちたら、私9歳女児って報道されるのかなあ」
などと言うと
「飛行機が落ちるとか、縁起でも無いことを言わないように」
と注意された。
「ごめーん!」
 
「だいたいスカート穿いていて、男の航空券持ってたら、あんたこれ違うと言われて飛行機に乗れなかったね」
「それは困る!」
 
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そんなことを言いつつ、千里はズボン履いていても女の子にしか見えないから性別Mの航空券持ってたらトラブってたろうなと蓮菜は思った。
 

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12:40着の予定が少し遅れて12:50くらいに羽田空港に到着する。飛行機を降りて荷物受取所の方に歩いて行っていたら、向こうの方から物凄いスピードで走ってくる男があった。その後ろから「待て!」と言って駆けてくる人たちもある。
 
「何だろう?」
などと千里たちは言っていたのだが、どうも逃げてくるっぽい男が拳銃のようなものを手にしているのに気付き、ギョッとする。
 
「端に寄って!」
と先頭を歩いていた馬原先生が叫ぶ。
 
みんな慌てて脇に寄るが、逃げてきた男は千里の少し手前で何かに躓くようにすると、バランスを崩して千里に激突してしまった。
 
「きゃっ!」
と声を挙げたのは隣にいた穂花である。
 
男が千里にぶつかった勢いで、千里は壁に激突してしまった。
 
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後ろから追ってきていた人たちが追いつく。警察官のようである。ひとりの男性警察官が男を千里から剥がして「銃刀法違反の現行犯で逮捕する」と言って手錠を掛ける。
 
女性警察官が千里を起こして「君、大丈夫?」と声を掛けた。
 
が女性警察官は「え!?」という声を挙げる。
 
千里は意識を失っているのか首をだらんと後ろにやっている。
 
「君、しっかりして!」
と言って身体を揺すろうとしたのを中年の警察官が
「天野君、揺すってはいけない」
と言って止める。
 
「はい、黒木警視」
と言い、その天野と呼ばれた女性警察官は千里の身体を床に寝せ、頭は自分の持っていたバッグを枕にして少し高い状態でキープした。
 
黒木警視と呼ばれた中年の警察官は千里の鼻の所に手をやり、更に手首を握って脈を取ると
 
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「宮田、AED持って来させて!」
と若い男性警察官に指示する。その宮田と呼ばれた警察官が走って行く。
 

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「千里?まさか死んじゃった?」
と穂花が口を手で押さえるようにしながら言う。
 
「いや、すぐ処置すればたぶん蘇生する」
と黒木警視は言っている。
 
逮捕された男も焦った顔をしている。もしこのまま千里が蘇生しなかった場合は過失致死に問われるだろう。
 
ところがここでため息をつくようにして蓮菜がそばに寄ると、千里の傍にいる女性警察官に
 
「天野さんでした?ちょっとその子から離れて下さい」
と言った。
 
「あ、はい」
と言って、天野が千里から少し離れる(*3).
 

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(*3)天野は、蓮菜の雰囲気があまりにも堂々としていたので、一瞬子供の保護者かと思ったと後で言っていた。
 

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すると蓮菜はいきなり千里の足を数回蹴った!
 
「何をする!?」
と黒木警視が言ったが、蓮菜が千里の足を蹴った途端
 
「痛ったぁ」
と言って、千里が蹴られた足の所に手をやりながら起き上がった。
 
「きゃっ!」
と天野警部補が思わず後ろに飛び退く。黒木警視が驚く。
 
「蘇生した!?」
 
「この子、不整脈なんですよ。しばしば心臓が止まるけど、足を蹴ればたいてい蘇生しますから」
と蓮菜。
 
「持病なの!?」
と黒木警視。
 
「病気というより元々死んでるんじゃないかという説もあるんですけどねー。生まれて来た時も心臓止まっていたし」
などと蓮菜は言っている。
 
「蓮菜、もっと優しく蹴ってよー。それに蹴るより足を振ってくれた方が効果ある気がするんだけど」
などと千里本人は文句を言っている。
 
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「るみちゃんなら足を手に持って振れるだろうけど。私そんなに腕力無いもん」
と蓮菜。
 
「君、大丈夫?」
と天野警部補が声を掛ける。
 
「あ、平気です。私の心臓しばしば勝手に止まりますけど、簡単に再起動しますからって、何か騒ぎになってた?」
と千里は後半はそばにいる蓮菜に言う。
 
「千里にぶつかった人が、人を殺してしまったかとビビッてたみたい」
「すみませーん、お騒がせして。でも私で良かったかも」
「そうだね。普通の人はそう簡単に蘇生しないから」
と蓮菜は言っていた。
 
その頃、やっと宮田巡査がAEDを抱えて白衣の医師と一緒に走って来た。
 

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天野警部補が「病院に行きましょう」と言い、馬原先生や保護者たちもそうした方がいいと言ったものの、千里と蓮菜は
 
「いつものことですから大丈夫です」
と言い、蓮菜の母と馬原先生が天野警部補と連絡先だけ交換して全員手荷物受取所の方に進んだ。
 
騒ぎがあって足止めをくったおかげで、もう受取所の所には人が残っていない。N小学校合唱サークルのグループの荷物だけが回っていたのを受け取った。
 
「何かあったんですか?」
と声を掛けられたので
「1人死んだので」
と蓮菜が言うと
「え!?」
と言って驚く。
 
「でも生き返りましたから大丈夫です」
「ほんとですか!それは良かった。病院へは?」
「大丈夫です。いつものことなので」
「いつものことなんですか!?」
 
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ともかくもタグを照合してもらい受取所を出ると、待機していた貸切バスに乗り、大会が行われるホールまで行く。ここで子供たちと馬原先生・小野園子さんだけ降りて、他の保護者はそのまま貸切バスで浅草に向かった。そちらでお昼ごはんを食べた後、浅草寺・浅草神社などを見学することにしている。
 
一方子供たちは近くのマクドナルドでお昼を食べてから会場を見学する。
 
(田舎に住む子たちにとってはマクドナルドは充分な贅沢である)
 
この日は下見だけである。今日は高校の部が行われていて、千里たち小学校の部は明日である。下見に来たと言うと、係の人が会場内に入れてくれてロビーまで案内してくれた。ホールは今演奏中だし満席なので入れないものの、モニターで中の様子を見たりして、充分雰囲気を味わうことができた。
 
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その後、この日宿泊するホテルに移動する。
 
部屋は生徒たち(28名)は4人部屋7つ、馬原先生と保護者23名(男4・女19)が4人部屋6つである。実際には2人部屋にエキストラベッドを2個入れた感じの部屋だったが、できるだけ安くあげようというので、こういうことになっているようである。
 
なお保護者の中には夫婦で参加した人もいるが、男女は強制的に分離されている。しかし結果的に男部屋は酒盛りになってしまい翌日妻たちから非難されていた。
 

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少女たちの東京遠征(1)

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