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■女子中学生たちの出席番号(8)

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「彼女は小学校の時は男子トイレ使ってたけど、個室しか使ってなかった。少なくとも小学1年生の時以降、原田さんが小便器を使っている所を1度でも見たことのある奴が存在しない」
と田代君は言う。
 
「幼稚園の時は?」
「あの子、幼稚園は行かなかったんだよ。たぶん男の制服を着て、男子トイレ使えと言われるのが、嫌だったんだと思う」
と千里は言った。
 
「小学校に入学してからも、だいぶ職員室そばの男女別が無い多目的トイレを使ってたけど、どうも叱られたみたいで、男子トイレに来て個室を使うようになった。でも最初の頃、男子トイレに入るのが恥ずかしそうにしてた」
 
「心が女の子なんだから、男子トイレには入りたくないよ」
「なるほどー」
 
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「更衣室はどうするんですか?」
と瀬戸君が尋ねる。
 
「私は個人的には女子更衣室で問題無いと思う」
と蓮菜が言う。
 
「小学校の時はどうしてたの?」
と亜美が尋ねる。
 
「一応男子更衣室を使ってたけど、黒板の陰(かげ)で、他の男子からは見えないようにして着替えていたよ」
と田代君が言う。
 
「女子更衣室に行ったら?と言ってたんだけど、本人、そんなことしたら叱られないかと怖がってたみたい」
と田代君は追加する。
 
「剣道の大会とかではトイレで着替えてたみたい」
と玖美子。
 
「でも巫女舞とかする時は、普通に他の女子と一緒に着替えていたよ」
と千里が言う。
 
「他の女子と一緒に着替えられるんだ!」
 
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「私は実は原田さんの下着姿を見せてもらったんですが」
と教頭先生(女性)は言う。
 
「他の女子と一緒でも問題無いと思いました。それで更衣室は女子更衣室の使用を許可することにしました」
 

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「でも女と一緒に着替えてて、チンコ大きくなったりしたら、問題無い?」
と瀬戸君が質問する。彼の存在は本当に便利だ。多くの男子が危惧する問題をきちんと指摘してくれる。
 
「この件は、とても微妙な個人情報なので、言いふらしたりはしないで欲しいのですが、彼女のペニスは元々勃起能力が無かったそうです。小さい頃から、一度も大きくなったことは無いそうです」
と清原先生。
 
「へー」
 

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「巫女舞の着替えの時に見た感じではあの子の下着姿は、バスト未発達の女子という感じだよね。ウェストの細い女性体型だしね」
と優美絵も言う。
 
「パンツが少し膨らんでるけど、それが大きくならない感じ?」
「いや、そもそもパンティーは膨らんでない。まるで何も付いてないように見える」
と蓮菜。
「それもしかしてちんこ取っちゃったとか?」
 
「どうだろう?誰もあの子のちんちんは見てないみたいだし」
と美那。
 
「私は、あの子、こっそり、ちんちんも切っちゃったんだと思ってたなあ」
などと優美絵は言っている。
 
「ちんこ無いのなら、完全に女子扱いでいいかなあ」
と瀬戸君。
 
「本人はペニスの有無は聞かないでと言っているけどね」
と清原先生。
 
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「それって本当にチンコ無いのでは?」
「どうなんだろね。あの子の裸を見たことのある男子も女子も存在しないから」
「修学旅行でお風呂とかは?」
 
「あいつ、夜中にひとりで入りに行ってた。男風呂に入ったか女風呂に入ったかは誰も知らない」
と田代君。
 
「それきっと女湯に入ったんじゃない?」
と瀬戸君。
 

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そういうわけで、先生たちの話は、沙苗は明日から登校する予定だが、基本的に女子生徒として扱うので、みんなにぜひ彼女を女子として受け入れて欲しいということ、また彼女が女子として学校生活を送れるように、できたらサポートして欲しいということだったのである。
 
「写真で見る限りは女にしか見えないけど、取り敢えず本人見てみたいな」
と瀬戸君は言っている。
 
「まあ本人見たら、この子は女でいいだろうと思うと思うよ」
と蓮菜は言っていた。
 
沙苗は男装していると一応男に見えるが、女装の時は女にしか見えないからなあと千里も思った。
 

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木曜日の帰りの会で、クラス委員の田代君と侑果から
「席替えをします」
という発表があり、黒板に新しい座席表が張り出される。実は4時間目に話合いの後で、そこに集まっていたメンツで協力して模造紙に書き上げたものである。
 

 
「なんで原田君の席を女子の並びに移動するの?」
という質問があるので、クラス委員の侑果が
 
「原田さんは女の子になったそうです」
と言う。すると
 
「うっそー!?」
という声があがる一方で、沙苗を知っていた子たちからは
 
「ああ、とうとう性転換したか」
「本当に髪切る代わりにチンコ切ったのか」
「でも女子中学生になれたのなら良かったじゃん」
「性転換手術を受けるのに休んでたのかな?」
 
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などと理解(?)する声があがっていた。ついでに
 
「セナちゃんはまだ性転換しないの?」
などという声まであがって、本人は恥ずかしがるような顔をしていた。
 
千里はなぜ自分の性別のことは話題にされないのだろうと思っていた。
 
一方これまで人数の関係で男子なのに女子の並びに机が置かれていた祐川君は
 
「やっとセーラー服着ないの?とか言われなくなる」
と言って喜んでいた。
 
(「セーラー服着ないの?」と言われて喜んでた気もするけど!?)
 

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それで4月18日(金)、沙苗は入学式から11日遅れで中学校に初登校したのである。
 
「原田沙苗(はらだ・さなえ)です。長い期間休んでしまいましたが、今日から登校しますので、みなさんよろしくお願いします」
と言って、セーラー服姿の沙苗は教室の前でお辞儀をした。
 
教室内にざわめきがあるが、概ねは受容的である。
「沙苗(さなえ)ちゃん、セーラー服似合ってるよ」
という声も掛かり、沙苗は嬉しそうである。
 
「髪型が可愛い」
「えへへ。昨日、美容院に行って可愛くしてもらった」
 
彼女はトイレにも蓮菜に連れられて女子トイレに入ったし、3時間目の体育の時も優美絵に連れられて女子更衣室で着替えた。ブラジャーの下に微かに膨らんだバストが見えたので「かなり長い間女性ホルモン飲んでたのかな?」と思った子もあったようである。後から聞いたら、実はブレストフォームだという話だった。火曜日に退院し、金曜日から登校することにしたので、水曜日に札幌まで行って、アンダーショーツ、ブレストフォーム、その他の“女体偽装”?用品を買ったらしい。
 
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彼女の場合、ペニスが(本当に存在するなら)小さい上に勃起もしないので、ガードルは不要である。それにガードルを着けているのは、更衣室でよけいな疑惑を招く。普通のショーツ(但しサポート力の強いビキニ型ショーツ)だけで、変な形が出ていないのを他の女子に見せたほうがいい・・・というのを千里(千里R)が沙苗に提案していた。沙苗もお母さんも「確かにそうだ」といい、それで、ガードルは使わないことにして、念のためアンダーショーツを買ったのである。
 

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彼女は“声”に関しては何もしていない。彼女は声変わりはしているものの、少し高い所のトーンを使うと、女子の声としてそんなに違和感はない。何よりも彼女は(女装時には)“話し方”が女子の話し方なので、聞いている側は女子が話しているようにしか聞こえないのである。実際家に掛かってきた電話に出て、「お嬢ちゃん」と言われることも多かったらしい。また彼女は喉仏も目立たない。
 
沙苗は音楽の時間はアルトに入った。彼女はアルト音域(G3-E5)がほぼ出る。現時点での彼女の声域は A2-C5である。ここまで出ると中学高校程度のアルトパートはほとんど無理なく歌うことができる。ソプラノもほとんどの音が出るが、曲によっては出ない音もある(実はテノールも歌える)。それで取り敢えずはアルトに入ることにした。
 
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彼女は生徒手帳も性別:女で発行してもらえることになった。名前は正式に“さなえ”になっているから、そのふりがなが記載される。手帳用の写真は初登校した18日(金)に撮影したが、連休前には何とか出来るだろうということであった。
 

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身体測定については、4月については、沙苗は1人だけ保健室で体重と身長を測定された。内科検診とレントゲンについては、病院に行って取って来てと言われたので、金曜日の午後、早引きして病院に行き、受診してきた。
 
でも女子としての初登校を取り敢えず午前中だけで早退させてもらったのは、本人としても、気分が楽だったようである。沙苗はこれまで「女子としての学校生活経験」が無いので、いきなり6時間フル活動には不安があった。
 
しかし取り敢えず金曜日の午前中だけでも「女子中学生」として無難に過ごすことができたので、本人も安心したようである。
 

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沙苗の性別問題について、18日の初登校時点では3種類の認識があった。
 
(1)沙苗は女子である。
(2)沙苗は小学校の時は男子だったが、性転換して女子になった。
(3)沙苗は医学的には男子であるが、以降女子として社会生活を送る。
 
(3)の認識をしているのは、千里・蓮菜・恵香・玖美子など“P神社グループ”の女子のほかは田代君・鞠古君くらいである。剣道部の男子部員たちも多くは、
 
「沙苗は性転換手術を受けて女になったけど、今の日本の法律では性別を変更できないので、戸籍上は男だし、大会も男子の部に出る。でも身体は女子だからセーラー服を着ているし、トイレも更衣室も女子用を使用する」
 
と認識していた。小学校の時から一緒だった竹田君でさえ、そういう認識をしていた。
 
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(1)の認識をしていたのは、他のクラスの子で、主としてP小出身の子(一部N小の6年2組だった子)ではあったが、他の子の噂話を聞いていて、多くが(2)の認識に移動した!
 
元1組の子の多くが(2)の認識だった。
 
性転換の“時期”については、入学式の10日後まで沙苗が休んでいたことから、
 
「沙苗は小学校の卒業式の後、3月24日に札幌の大学病院で手術を受けて女の子に生まれ変わり、4月15日に退院したので、18日から登校した」
 
という噂がいつの間にか流れていた。4月15日は留萌市内の&&病院を実際に退院した日だが、3月24日という日付が、一体どこから出て来たのか全く不明である。噂を耳にした本人まで首を傾げていた。また沙苗の卒業式の時の服装にしても、中学からは女の子になる予定だったので、セーラー服を着ていた!という噂まで流れていて、本人も驚いていた。
 
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「写真見れば学生服着てたの分かるのに〜」
と本人は言っていたが、恵香たちは
 
「あれ?学生服だったっけ?」
と疑問を感じた。(千里に関する記憶操作の巻き添え)
 
※現時点での卒業式の服装の記憶
(学:学生服、S:セーラー服、*:私服)
 
−−千里/沙苗/留実子
千里B:学学S
〃R,Y:S*学
沙苗:S学学
蓮菜:S*学(★真実)
恵香:**学(千里以外正解)
留実:S学S
6年1組:*SS
6年2組:SS学
 
玖美子は蓮菜と同じ、美那と穂花は恵香と同じである。
 
千里は3人とも自分が沙苗に女用の私服を貸したのを忘れていたので、てっきり沙苗は学生服を着ていたと思い込んでいたが、千里Rは玖美子の“写真集”を見て、千里Yも卒業式の集合写真を見て認識を修正した。Bも認識修正するのは時間の問題。
 
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つまり沙苗が学生服で出たと思っていたのは、この時点では本人と留実子の2人だけだった。私服で出たと正しく認識していたのは、最初は蓮菜・玖美子・恵香・美那・穂花の5人で、他は全員セーラー服を着ていたと思っていたが、卒業式の写真を見た子は記憶を修正することになる。
 
でも留実子の服装については、卒業式の写真が閲覧されたにもかかわらず、学生服派とセーラー服派が、ずいぶん後まで別れていた!(本人もずっと卒業式では不本意ながらセーラー服を着たと思い込んでいた:とても暗示にかかりやすい性質である)
 
 
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