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■女子中学生たちの出席番号(6)

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千里の慌ただしい登校1日目が終わり(慌ただしかったのは小春!そしてそれをサポートしたミミ子!)、4月15日(火)となる。この日は千里は最初からセーラー服を着て、家を出た。母が
 
「あんた、その服で通学するの?」
と言ったが、千里は
 
「だって女の子だもん」(小鳩くるみ風に)
と言って、堂々と出掛けるので、母も「まいっか」と思った。母も神崎さんからセーラー服を頂き、千里が「これで通う」と主張していたことを思い出していた。
 

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火曜日・6時間目の授業は学活に振り替えられ、身体測定・内科検診等が行われた。
 
先に女子が行われるということで男子はその間自習である。
 
女子がみんな席を立ち、ぞろぞろ出て行く。千里が「どうしよう?」みたいな顔をしていたら、田代君が気付いて
「村山さん、女子は身体測定に行って」
と言う。
 
蓮菜も気付いて戻って来る。
「こら、まだおかしいみたいだな。来なさい」
と言って、千里を強制的に女子の身体測定に連行した。
 

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「私、女子と一緒でいいのかなあ」
と千里は保健室に向かいながら、まだ言っているが
 
「少なくとも男子と一緒にはできん」
と恵香に言われる。
「千里ちゃん、小学校の時も女子と一緒に身体測定してたじゃん」
と優美絵にまで言われる。
 
「そういえばそんな気がして来た」
 
保健室に入り、セーラー服、ブラウスを脱ぐ。下着はそのままでいいと言われた。千里は少しドキドキしながら、服を脱いだのだが、千里は蓮菜に後から首に抱きつかれ
 
「この下着姿を見れば、千里が女子と一緒でいいことは明白」
と言う。
 
「千里、また少し胸が大きくなっている」
と美那からも言われた。
 
N小の2組だった尚子も
「千里ちゃん、凄く女らしい体型になっている」
と感心したように言った。
 
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なお、この日の千里は赤い玉のついた髪ゴムをしていた。
 

さて、小学生時代は、千里は“女子の先頭”で測定されていたのだが、中学では特別扱いとかはされていないので、普通に出席番号の順で測定された。千里は出席番号31で、クラス委員の(広多)侑果(No.30)の次である。
 
身長・体重を保健室の清原先生が計って読み上げ、それを保健委員の玖美子が記録する。
 
その測定の後は、そのままパーティション・カーテンの向こうに行き、女性のお医者さんの診察を受ける。先生は下着の上から聴診器を当てて診察してから
「生理は順調に来てますか」
と千里に訊く。
「えっと・・・」
と千里が言いよどむと、玖美子がカーテンの向こうから声を掛けた。
 
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「千里、手帳を確認しなよ」
「手帳?」
「千里、手帳に生理が来た日にマーク付けてたじゃん」
「そうだったっけ?」
 
それで千里は昨日もらったばかりの生徒手帳ではなく、今年のダイアリーを取り出すと、開いてみた。3月24日の所に赤いマークが付いていた。
 
「ちょっと見せてもらっていい?」
と医師が言う。
「どうぞ」
 
医師が見ると、3/24の前は、2/24 1/27 12/29 に赤いマークがついている。医師はそれを見て
 
「けっこうきれいに来ているね。だったら来週くらいに次の生理かな」
と言う。
 
「あ、そうなるのかな」
とは言ったものの、千里は、私、生理とかあるんだっけ?と疑問を感じた。
 

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でもそれで千里は解放されて、屋外に駐められているレントゲン車に入った。
 
中井亜美(29)と広多侑果(30)が順番待ちをしている。待っている内に千里(31)の次の横田尚子(32)が来る。撮影室から戸口萌花(28)が出て来て、代わって亜美が中に入る。萌花(N小2組出身)は服を着るが、服を着ながら千里の下着姿をじっと見ていた。千里は何だろう?と思った。
 
その内、玖美子もこちらに来る。玖美子は保健委員だったので結果的に最後になった。やがて千里の順番になって、中に入る。
「妊娠しているか、あるいはその可能性がありますか?」
と技師さんから訊かれる。
 
「大丈夫です」
「じゃ撮影していいですか?」
「はい。お願いします」
 
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それで撮影されて撮影室から出る。代わって尚子(彼女もN小2組出身)が中に入る。残っている玖美子は言った。
 
「千里、たぶん高熱が続いた後遺症だと思うけど、なんか色々なこと忘れている」
「自分でもそんな気がして来ている」
「これあげるから、後でよくよく見なよ」
と言って、玖美子は写真アルバム?を千里に渡した。
 
「嘘!?私が女の子の服を着てたくさん映ってる。でもページ数あるね。プリントしたの?」
「USBメモリで渡したほうが楽だけど、千里の静電気で壊れるから」
「私、だいぶ家電品とか壊してる」
「それは覚えてるみたいだね」
 

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6時間目の後半は女子が教室で自習(おしゃべり!)で男子が測定・健診に行った。
 
男子が全員戻って来た所で、(男子の保健委員の連絡で)担任の菅田先生も来て、早めの帰りの会があり、その後、教室の掃除をした。
 
「千里、練習に行くよ」
と玖美子が声を掛ける。
 
「うん」
と赤い髪ゴムの千里は答えた。
 
更衣室に向かいながら話す。
 
「だけど、沙苗が女子の方に参加してくれると、こちらとしては凄く嬉しい」
と玖美子は言う。
「女子としては、いい練習になるよね」
「本人はもっと強い子とやりたいかも知れないけど」
「まあ男子“とも”練習するのは自由」
「確かに」
 
「鐘江さんは残念がってたけどね。今年の新一年生の男子で1級持ってるのは、沙苗だけだったからさ」
「沙苗は男子としては腕力無いから、それを技術で補ってた。だから型とかもきれいで1級取れたんだよ」
 
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「なるほどー」
 

S中の部活の時間は18時まで(11-1月は日が短いので17時まで)だが、剣道部はあまり遅くまでしないので17時すぎには切り上げる。2人はその後、一緒に買物をしてから、&&病院に行った。ところが、沙苗はさっき退院したということであった。
 
「ありゃ」
 
玖美子が自分の携帯で沙苗の自宅に掛けるが出ない。どうも移動中のようである。それで玖美子は
「あまり携帯にまでは掛けたくないんだけど」
と言いながら、沙苗のお母さんの携帯に掛けた。
「ああ。自宅に戻る所なんですね。じゃ私たちもそちらにお伺いします」
 
ということで、千里と玖美子はバスでC町まで行き、沙苗の自宅を訪れた。
 

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「元気そう」
と玖美子は言う。
 
4/6以降で彼女の姿を見るのは玖美子は初めてである。なお、昨日蓮菜と一緒にお見舞いに来たのは、千里Bなので、今日玖美子と一緒に来た千里Rも実は4/6以降初めて沙苗を見ている。
 
沙苗はまだ万全ではないのかマスクをしていたものの、目から分かる表情は活き活きとしていて、結構元気そうだ。
 
「私はわりと元気だったんだけど、念のためと言われて今日の退院になった」
と本人は言っている。
 

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「これ私たちからのプレゼント」
と言って、玖美子は沙苗に白い道着と袴のセットを渡した。
 
「わぁ」
 
剣道では、特に規定がある訳ではないが、男子は紺色、女子は白の道着を使用する人が多い。N小剣道部でも、(沙苗を含めて)男子は紺、(千里を含めて)女子は白を使用していた。
 
「すみません。結構お値段するのに」
とお母さんが言うが
 
「ジャージ製の安物ですから」
と玖美子は答えた。
 
実際にはセットで4800円だったので、千里と玖美子が2400円ずつ出している。お小遣いがわりと豊かな2人だから出せた。
 
「小学校の時も白を着ても誰も何も言わなかったのに」
「なんか切り替えるのが恥ずかしくて」
 
「洗い替えは自分で買って」
「うん。ありがとう」
 
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ジャージ製の道着・テトロン製の袴は乾きも早いので、帰宅してからすぐ洗濯して、暖房の入っている室内に干しておけば朝までには乾いてくれることが多い。それで千里も4年生の頃は1セットだけでやってた(5年生になってから新しいのを買い、昨年使っていたのを予備に回した)。
 

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沙苗・千里・玖美子は、沙苗の部屋に行って色々話した。
 
この部屋は“女の子の部屋”だなあと千里たちは思った。カーテンとかも可愛い柄のだし、勉強机はピンク基調の女の子仕様で、棚にシルバニアン・ファミリーが飾られている。ベッドにはパンダのぬいぐるみが転がっている。ドレッサーもあり、ドライヤーとかも置かれているが、それらが新品ではなく、結構使い倒されている感じなので以前から使っていたものであることが分かる。本棚には少女漫画が多い。
 
玖美子は剣道部の内部で話していたことを沙苗に伝えた。
 
「だいたいの件は、お父さんと教頭先生の話で聞いてるだろうけど」
と前置きをした上で玖美子は、藤田部長や岩永先生から伝えてくれるよう頼まれた細かい問題をメモを見ながら話した。
 
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「女子と一緒に着替えてというのは、昨日も千里とは話したけど、嬉しい半面不安もある」
と沙苗は正直な気持ちを打ち明ける。
 
(昨日話したと言われて千里はキョトンとしている)
 
「神社で巫女さんする時は、女子と一緒に着替えてるじゃん」
「そうだよね!同じだよね」
「下着交換する時はトイレで交換すればいい」
「さすがにそれはやばいよね、私、胸無いし」
 
下はいいのか??
 
大会では男子のほうに出てというのも納得していた。
 
「そうだよね。性転換手術とかでもしないと、女子としては出られないだろうね」
 

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「そういうのって、性転換手術を受けたら女子の部に出られるようになるんだっけ?」
と玖美子が訊く。
 
「その点は新しい基準ができるのではという噂がある」
と千里は言った。
 
「元々スポーツ界で性別検査とかするようになったのは、第二次世界大戦後の冷戦時代に、共産国で、性別の曖昧な選手を女子として出場させて、いい成績をあげようとしていたからなんだよ」
と千里(?)は説明する。
 
「へー」
 
「それに対して西側諸国は、女子選手に染色体検査を要求して、確かに女子なのかというのを確認しようとした」
 
(セックスチェックは1968年から行われ、当初、女子選手に裸で行進するよう求めたが(歩けばペニスを隠してても飛びでてくるだろうという発想)、女性側からの強い抗議により、すぐに染色体検査に切り替えられ、同年のメキシコ五輪から実施された。1968年以前にも怪しい選手には医学的な精密検査が行われ、女子選手としての資格が剥奪されたケースが数例ある。彼らは残っている写真で見る限りは男にしか見えない)
 
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「でも冷戦が終結して、染色体検査は1996年アトランタ・オリンピックを最後に廃止された」
と千里(ほんとに千里なの?)は言う。
 
「廃止されたんだ!」
 

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「それに代わる新しい性別確認の方法を、2000年シドニー・オリンピックを前に提示するのではという話もあったんだけど、シドニーでは見送られた。でも来年のロンドンオリンピックまでには新基準が出るのではないかという話。IOCが新しい基準を提示すれば、各競技団体、更にはIOCに入っていない競技でもそれに準じた基準を出すんじゃないかと思う。だから、沙苗ちゃんはいづれ性転換手術を受けてから、女性剣士として大会に出られるようになる可能性もあると思う」
 
と千里は言った。玖美子はこの手の話は知らなかったようで、感心していた。でも何か普段の千里と口調が違う気もした。
 
(実際はミミ子が千里に憑依して話している!千里は巫女体質なので簡単に憑依できる)
 
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「千里の場合は、半陰陽ということにして、性別を訂正したからね。その場合は最初から女子だったということになるから、何の問題もなく女子の部に出られるんだけどね」
と玖美子は言っている。
 
なんか私の性別のことは、みんな適当に噂してるなあと千里はこの時、思った。
 
実際には玖美子はN小剣道部顧問の角田先生から、千里の性別が法的に女に訂正されたことを聞いていた。N小の同級生で、千里の性別訂正を知っていたのは、実は玖美子と、クラス委員をしていた蓮菜の2人だけである。そしてこの2人には4/10の“記憶操作”が利かなかった。千里が「女の子に戻る」ための手がかりになるよう、小春がこの2人をガードしたのである。
 
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沙苗は、今日、顔のむだ毛の脱毛をしてもらったことを2人に話した。
 
「顔の脱毛したんだ!」
と千里も玖美子も驚いた。
 
「うん。実は私。入院している間、顔の無駄毛が伸び放題になっててさ」
「ああ」
「10日(木)に意識取り戻したから、自分で剃ろうと思ったんだけど、お母さんが、剃るのちょっと待ってと言って」
「うん」
 
「伸びているのちょうどいいから、これ脱毛してもらおうよと言って。それで主治医の先生に相談したら、体力回復しているみたいだし、その方が精神的に安定するだろうからというので、病院内の美容外科でレーザー脱毛してもらった。実はマスクはその跡を隠すためなんだよ」
 
「そうだったのか!」
 
彼女は
「あまり人に見せられるものではないけど」
と言って、マスクを取って、レーザー脱毛の跡を見せてくれた。
 
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「なるほどー。これはこれが治るまでは学校に出て来られない」
「その間、自宅療養ということで」
 

その日帰宅してから、千里(千里Red)は玖美子にもらった“写真集”を見ていた。
 
合唱サークルの制服を着た自分がいる。白雪姫の衣裳を着けた自分、運動会でチアの衣裳を着けた自分、鼓笛隊でスカートを穿きファイフを吹いている自分、振袖を着ている自分、その他多数の女の子の格好をした自分がそこには居た。
 
「私、こんなに堂々と女の子してたんだっけ?」
 
千里はひとつひとつの写真を見ている内に、色々な思い出が蘇ってきた。
 
「やはり私、3日間高熱が続いたので、記憶障害が出たのかも。私ここまで小学生の時に女の子してたのなら、中学ではもっと堂々と女の子していいのかなあ」
 
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と千里(千里R)は考えた。
 

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女子中学生たちの出席番号(6)

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